鈴夜が自宅であるアパートの入り口に着いた時だった。
背後から人の気配がしたので振り向いた。するとそこには茶髪で肩まである短髪にかなり整った顔立ちの鈴夜より頭一個分背の低い中学生くらいの制服姿の少女がそこには立っていた。
「
少女、御坂は話がしたかったというとついて来てと歩き出す。は?おいちょっとまてよ!と鈴夜は唐突すぎる彼女の行動に動揺しつつもめんどくせェなァと追いかける。
ついたのは鈴夜と兵藤が初めて堕天使を見たあの公園。鈴夜は廃屋の帰りに買った缶コーヒーをビニール袋から取り出しながらベンチに腰掛けるとンで話ってのはなンだ?と問いかける。御坂は自身の体からバチバチと電気を発生させて知り合いの前で能力を使ったのよ、と小さな声で呟くようにそう言った。
そう、この少女、御坂美琴も鈴科鈴夜と同じ超能力者であり、超能力者開発育成施設での実験の生き残りである。その超能力は電気、磁力、電磁波と言った電気を自在に操る。彼女の能力は凄まじいもので最高十億ボルトの電撃を発生させることができるらしいが使いすぎるとしばらく使えなくなる。能力名は
「…そンでどォなった?」
カチっと缶コーヒーの蓋をあける心地い音が公園に響き渡る。
「『人間じゃない』、そう言われたわ。」
一口ゴクッと喉を鳴らしコーヒーを口の中へと流し込む。
「なンで能力なンざ使ったンだァ?」
鈴夜の鋭い赤い瞳が悲しげな少女の瞳を見つめる。
「今日さ、友達と遊んだ帰りに工事現場に通りかかったんだけどちょうどそこに鉄骨が降ってきてさぁゲーセンのコインを能力でぶっ放して鉄骨を退けたんだけれど友達は『人間じゃない』、そう言い残して帰っちゃって周りにいた人たちからも『人間じゃない』って言われちゃってね」
御坂の瞳から一粒の涙が零れ落ちる。無理もない。超能力者といえどまだ年端もいかない『人間』の少女だ。そんなただの少女が周りの人間から『人間じゃない』なんて言われれ続ければいつしかその心は壊れてしまうだろう。
それで自分はなにができるのだろうかと鈴夜は思う。別に自分はカウンセラーでもなければましてやなんでも助けられる『ヒーロー』でもない。
何もできない自分にイラッと来たのか鈴夜は缶コーヒーを一気に飲み干す。
だがしいて言うならば
「話くれェなら聞いてやる。オレも昔同じ目にあってたわけだしなァ」
昔、あいつがしてくれたように。少しずつでいいからそれを解消すればいつかは普通のいつもの自分に戻ることが出来る。自分がそうだったように。
「
自分は人を救うことは出来ない。だがそれの手助けくらいならばできる。それを
「オレの名前なンざ好きに呼べ、話してェことがあンだったらさっさと話せ、ねェなら帰るぞ」
そう言って空になった缶コーヒーの缶を公園のゴミ箱へ投げ入れるとベンチから立ち上がる鈴夜。
「ちょ!あるからちょっと待ちなさいよ!」
そんな御坂の声を後目に夜空を何となくで見つめる鈴夜だった。
¥
「あァ~くそねみィ…ふァ…」
長い学校へと続く歩道のど真ん中で寝不足で悪態をつきながら欠伸をかいているのは白い髪に赤い目、中性的な整った顔立ちといった独特の顔をした少年、鈴科鈴夜である。年齢は17才。職業は高校生、通っている高校は駒王学園。能力名はアクセラレータ、通称漢字で一方通行、能力は触れたもののベクトルを変換することができるというものでやろと思えば地球の自転力も引っ張り自身の攻撃に応用できる。性格は数年前のある施設での事件ががきっかけでかなり荒れていて一時期心を閉ざしていたが兵藤一誠という友人のおかげで念願だった普通の生活を送ることが出来たが事件のことがトラウマで未だに兵藤以外に自分の心を開く者はいない。ちなみ言葉遣いは事件の影響で荒れていたのが残っているのか教師に対しても決して敬語は使わず荒い言葉使いで会話する。
そんな彼だが毎日コンビニでお気に入りの缶コーヒーを買いながら学校に登校するという意外な日課がある。
とそういうわけで今日も今日とて自分が求める至高の缶コーヒーを入手すべくコンビニに足を踏み入れた鈴夜。
鈴夜はお昼ご飯の焼きそばパンを取るとすぐさま飲料品コーナーへと向かいとりあえず今日は眠いからと5種類の缶コーヒーを棚から取り出すとレジへ。
「710円になります」
鈴夜は腕時計で時間を確認しつつ財布を取り出すと指定された金額ピッタリ710円をレジの店員に出しコンビニを出る。まだ時間には余裕があったため近場のベンチで買ったばかりの缶コーヒーのふたをカチっと開けると一口飲んでみる。
「悪くねェな」
口の中に残る自分好みの苦みに缶を見つめながら自然と評価の言葉をこぼすと鈴夜は昨日の出来事を思い出す。自身の能力は一般人に見せてはならない。なぜなら『化け物』、『人間じゃない』などといった呼び方を世間や周りの友人だった人間からされなければならなくなるからだ、それも下手をすれば一生。自分は何とかやりくりして自身の能力を知る人間も少なく『化け物』と呼ばれなくはなったが御坂の場合いろいろな人間が通る道で超電磁砲なんて大それたものを放ったのだから高い確率で後者になるだろうしかもニュースやテレビなんかで報道でもされたら高い確率どころか100パーセントだ。
「どォすっかなァ…」
彼女、御坂美琴には数年前の自分の二の前にはなってほしくはない。だからこそ何かしらの行動を起こし何とかしてやりたいが自分にできるこなんてたかが知れてる。自分は向きを変えることしか脳がない。だから今ここでそんなことを考えても答えなんて出てこないと缶コーヒーの残りを一気に飲み干すと鈴夜はベンチから立ち上がる。同時にちょっといいかしらと聞き覚えのある声がしてあァ?と鈴夜は振り返る。そこにいたのはオカルト研究部、部長の赤髪の悪魔、リアス・グレモリーだった。
と鈴夜は彼女の姿を見た瞬間数日前のことを思い出した。悪魔や堕天使の力。それは人間の一部の記憶を消すことが可能だということを。見つけたぜ、自分にやれることを、そう心の中で鈴夜は歓喜するように呟いた。
「ちょうどいいところに来たな、グレモリー。」
「ちょうどいいところ?どういうことかしら?」
リアスはどういうことかと首をかしげる。
「頼みがあンだよ。確か数日前に堕天使が力つうのを使って自分に関する記憶を抹消してただろう?それと同じようにお前にも同じように力を使うことができるはずだァ。」
「確かに可能だけれど…悪魔に頼みごとをするという行為がどれだけ重いものかあなたは知っているのかしら?」
「重いねェ、それがどうしたァ?知ってんだろオレはあの地獄みてェな研究施設でさえも持て余す怪物だった、そんなオレが今更悪魔の頼みだ契約だでビビるかよォ」
「……確かにそうね、いいわ、それで頼みというのは何なのかしら?」
「昨日御坂美琴つうオレと同じ超能力者が人がいることろで能力をつかってな。ンで頼みつうのはその御坂美琴が能力を使ったという人間の記憶その一部を消してほしいこれが頼み事だ。御坂についてならオレのこと調べたンだから知ってンだろ?」
「ええまぁ確かに知っているには知っているけれど…他人の事で頼み事ねぇ…いいわやってあげる。じゃあ契約の代償として…」
リアスは一呼吸置くと
「その理由を教えてもらってもいいかしら?」
「そンなンでいいのか?てっきり腕とか足だとか体の一部もってかれンのかと思ってたンだがなァ。まァいい。理由つうのはただ単純にオレの二の前になって欲しくねェてだけだ。オレの過去を調べたンだったらその辛さがどれだけ凄まじいか分かンだろォ」
「そう、優しいのね。」
「優しい?笑えねェ冗談はよせ。オレはただの人殺しの屑でしかねェ、優しさなンてもンあるわけねェだろォが」
鈴夜は顔を俯かせる。
「そうね、わかったわ。じゃあ契約成立ということで明日には能力を使ったという記憶は目撃者全員消えているはずよ」
「あァ、助かる。」
鈴夜は最後にそういうと腕時計で時間を確認して舌を鳴らすと早歩きで学校に向かったのだった。
「言いそびれてしまったわね…」
リアスは歩き去る鈴夜を見ながらそう呟くと自分も学校へと歩みを始めた。
¥
「あァ?なンだオマエ、変なもンでも食ったのかァ?熱はねェみてェだが…」
「私は真剣に謝っているんだけど…?」
放課後昨日の約束通り鈴夜はオカルト研究部の部室に来ていたのだがついて早々リアスの謝罪を受けていた。
「オマエがオレに謝る理由がねェだろ、第一されてもねェしなァ。それともあれかァ?私たちの世界に巻き込んじゃってごめんなさいってかァ?だとしらとんだお門違いだ。オレは兵藤が襲われたところに偶然居合わせただけだ」
「違うの、そのことじゃないわ。私はあなたのことを利用しようとした、だからいまあなたに謝っているのよ」
なるほどなァと鈴夜は分かったようにそう言うとその鋭い目線をリアスに向け彼女を睨め付けた。
「過去を見たからかァ?っくだらねェ。過去を知ったから、可愛そうだと思ったから利用するのをやめて謝った。だからなンだよ、勝手に人の過去閲覧してあァ可哀想だからって同情ってかァ?」
鈴夜は少し強めの口調でリアスに言い放つ。
「そうね、これは同情かもしれないわ。でも私には佑人やあなたみたいにつらい過去がないからあなたが当時どんな感情だったかなんて想像出来ないし分かりもしない。だからこそ私はあなたに謝らなくちゃいけないのよ」
はァと訳が分からないと言わんばかりに鈴夜はため息を吐く。
「ンだよそれ。わりィ言ってることの意味が理解できねェ」
「簡単な話じゃない。私の謝罪を素直に受け入れればいいのよ」
「…もうわァったよ、謝りたきゃ勝手に謝れよ面倒くせェなァ」
そういうといろいろめんどくさくなったのかそう言って鈴夜は近くにあったソファーに座り込むとリアスは頭を下げた。
「本当にごめんなさい。」
ったくと鈴夜は悪態を付きながらも謝られることにならていないのか複雑な表情をすると兵藤がいないことに気付きそういや兵藤はどうしたとリアスに聞いた。
「イッセーなら仕事中よ」
鈴夜は子供のように首をかしげると「仕事だと?」
「ええ、もちろん悪魔のね。そういえば何か話すことがあったんじゃないかしら」
「ン?あァそうだったな。なァに簡単な話だ。オレをオカルト研究部に入れろ」
それを聞いたリアスは唐突な提案をした鈴夜になぜ?と動揺しながら問う。そんな動揺したリアスの問いに鈴夜は暇だからと簡潔に答えた。しかしそんな答えで満足するはずもないリアスはちゃんとした理由が聞きたいのと鈴夜を問い質す。
「……オレはただの
鈴夜は何の変哲もない天井を見上げながらその理由を語る。
「そうね、あなたが堕天使を負かしてしまったあの日からずっと堕天使側はあなたという存在を警戒しているようだし、近いうちに堕天使があなたという危険な因子を排除しようてしてくるのは明白だものね」
リアスが言い終わると同時に鈴夜はソファーから立ち上がった。その様子にリアスがもう帰るの?と
「あァ。これ以上いても意味ねェし言いたいこと言ったからな。さっさと帰らせてもらう」
鈴夜は最後にそういってドアノブに手をかけたのだった。
次回、堕天使死す。デュエルスタンバイ!