「敵撃破。周囲の反応は?」
「……なし。任務の達成を確認。推奨:報告」
「繋いで」
「了解」
今日は敵の殲滅任務。まあ今日はっていうか、最近はずっとそうなんだけど。最近はあまりバンカーに帰りたくないから、敵を倒したらすぐ次へって感じだけど。
「2Bよりオペレーター6O。任務目標を達成。次の任務を」
『オペレーター6Oより2Bさん。さすがですね。今次を、って、あれー、おかしいなー』
「……?どうかした?」
『いやー、南東に敵の反応が1つ残ってますねー。これはまだ任務続行ですねー』
「こちらでは確認できない。なにかの間違いじゃ?」
『いや、確かにあります。ということで今すぐ向かいましょう!行きましょう!』
「えっいや、でも」
『位置情報を送るので、あとはお願いしますねー。ではではー』
「通信終了。マップデータを受信」
「……なんで?」
「推奨:任務の達成」
なんだろう。敵は確かに倒し終えたはずなんだけどな。通信も無理矢理切られたし。それともついに6Oに嫌われてしまって、これは遠回しにお前とは会話したくないってことなんだろうか。6Oに嫌われるとかマジ無理。死ぬ。
「推奨:任務の達成」
「……わかった。行こう」
いや、まだ嫌われたと決まったわけじゃない。本当にこっちで確認できないだけで敵がいる可能性だってあるんだ。そもそも6Oに嫌われるようなことをした覚えなんて
「どうしよう……。思い当たることがありすぎる」
やべえよ。いっぱいあるよ。任務サボって釣りとか動物と遊んだりとかよくしてたよ。そのたびに司令官に説教食らってたよ。で、でも、任務は真面目にやってたし……
「愛想尽かされたのかな……」
「目標地点に到達」
「……到達って言っても、やっぱりなにもいないように見えるけど」
「周辺に敵の反応なし」
というかここって
「なんで海?」
「マップデータは海底に敵が潜んでいるとされている」
「海底?そんなのどうやって」
俺、前ならともかく今はアンドロイドだから当然泳げないし。頭冷やして反省しろってことなんだろうか。
「推奨:釣り」
「……は?」
釣り?なんで?
お前いつだったか反対してただろうが。ってか今任務中だし。
「……敵の反応がないなら、そんなことをしても意味はない。多分6Oのいたずら。もう一度6Oに連絡して確認してもらおう。もしダメだったら、仕方ないけど司令官に直接連絡しよう」
「推奨:釣り」
「ぽ、ポッド?」
「推奨:釣り」
ポッドまで俺のことからかってるのかよ。いいだろ釣りなんかしなくても、別にそんなことする意味無いし。今は真面目な話だろ。だいたい普段から釣りなんてよくやって……
「……私、前に釣りしたのはいつだっけ」
「10か月と4日前」
「そう、だったっけ」
「2Bは当機の記録を信用できないか」
「……ううん。ずっと頼りにしてる」
全部が終わるまで、ずっと味方でいてくれるって知ってるさ。
でも、そっか。そんなにやってなかったっけ。
「……やろうか。釣り」
「了解」
「……」
「……」
「……」
「報告:新鮮」
「よし。次」
「……」
「……」
「ヒット:ゴミ」
「あとで捨てといて」
「了解」
なんか久しぶりだな。こういうの。
もう時間もあまりないからか、ストレスが溜まってる自覚あったし、それを発散させるのに敵と戦ってばっかりだったし。休む時間もあまりとらないようにしていたからな。未だに9Sと顔合わせるのはちょっと抵抗あるからバンカーにも帰ってないし。
「ポッド。6Oに繋いで」
「了解」
6Oにも、心配かけてたのかな。
「2Bよりオペレーター6O。今、大丈夫?」
『はい。こちらオペレーター6Oです。いやちょっと今忙しくてまだ次の任務は指示できなさそうなので現地でもう少し時間をつぶしてほしいというか、なんというかって感じで』
「……6O」
『ですので、2Bさんはこっちが落ち着くまでゆっくりしてもらって』
「ありがとう」
『え』
「心配してくれて、ありがとう。こんな嘘までつかせてしまって」
私情での任務内容の変更。バレたら当然問題になる。俺のために、わざわざそんなことまでさせてしまった。ただでさえ、俺の担当してるってだけで周りから厳しい目を向けられてるってのに。
『……ごめんなさい。2Bさん。困らせてしまいましたね』
「そんなの別にいい。いつも私の方が迷惑をかけている」
『そんなことありません!2Bさんはいつも頑張ってるじゃないですか!』
「でも、味方を見捨てて敵に向かって行ったのは事実」
一年前。ある大規模作戦で俺は仲間を見殺しにした。
俺が作戦を無視して一人で突撃したおかげで、味方は壊滅。気づいた時にはポッドが俺を止めようとしていて、6Oが通信越しに泣いていた。そして、目の前には動かなくなった仲間がいた。
『……あの時の2Bさんはちょっと疲れてましたから、しょうがないですよ……』
「しょうがなくない。我を失っていたなんてのは仲間を見殺しにしていい理由にはならない」
『それは……そう、かもですけど』
「そのせいで私だけでなく、6Oも色々言われてるのは知ってる」
『なっ、なんで2Bさんがそれを』
いつも庇ってくれてたんだよな。俺を守ってくれてたんだ。それを俺はずっと知っていた。それなのに何もしようとしなかった。自分が苦しいから辛いからって、周りに目を向けようとしなかった。
「だから、本当はもっと早く言わなきゃいけなかったんだ」
『……2Bさん』
「ありがとう」
『……』
「私を見捨てないでくれて、一人にしないでくれて、ありがとう」
『そんな、こと』
「やっと言えて、よかった」
『そ、そんなこと、当たり前じゃないですか!わたしは2Bさんの担当オペレーターなんですから。嫌だって言われてもずっと傍にいますからね!これからも絶対にぜーったいに2Bさんをひとりぼっちになんてさせてあげないんですからねっ!わかりましたか!?2Bさん!!』
今日は11944年11月23日。
全てが終わるまで、時間はほとんど残ってない。死にたいと思っていたはずなのに、死ぬのが怖いって気持ちが日に日に大きくなっていく。
けど、6Oが傍にいてくれるなら。
もう怖くなんてない。
きっと俺もあいつみたいに最後の瞬間も笑っていられるはずだ。
「うん。これからもよろしくね。6O」
『はいっ。こちらこそよろしくお願いします。2Bさん』
この後、司令官にバレて6Oと一緒に怒られた。
ちょっと痛かった。