にーあおーとまた   作:SeA

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9Sモデルは優秀なことで有名なんです。

「その、落ち着いた2B?」

「……うん」

「そっか。その、よかったよ」

「……うん」

 

気まずい。

ものすごく気まずい。さっきはつい勢いで思ってることそのまま言っちゃったけど、やっぱり言わなきゃよかったかな。さっきから2B真っ赤な顔でこっちのことチラチラ見てるし。

おかしいな。今日は別に好きとかそういうことを伝えるつもりじゃなかったんだけど……。いやでもあれは仕方ないよね。あんな風に自分のこと卑下して、思ってもいないことを無理矢理口に出してる2Bなんて、見たくなかったし。うん。しょうがない。そういうことにしよう。いや、だとしても好きって言った相手と二人っきりっていうのは精神衛生上よろしくないというか

 

「……その、9S」

「なっ、なに2B!?」

「その……」

「う、うん……」

 

好きって言ったのは失敗だった気がする。いやその気持ちに間違いはないんだけど、やっぱりこのタイミングで言うことじゃなかったし。好きだから助けるってのは逆に言えば好きじゃなかったら助けないって言ってるように聞こえたんじゃないか?いや、そういう風にしか聞こえない気がしてきた。いきなり失敗してる気がするぞ僕。

 

「……好きって言ってくれた。ほんとう?」

「う、うん。一応本心というか、つい言ってしまったというか」

「そっか……」

「うん。そう、なんだ……」

「……その、9S。ごめんなさい」

 

終わった。

きつい。死にたい。さっきあれだけ2Bに色々言ったくせにこれだ。本当に僕ってやつは……。そりゃ2Bもこんな奴は好きって言われてもこま

 

「いまは、答えられないというか、余裕がないというか。多分、いま答えてしまったら、私は9Sに全部縋ってしまうから」

「え、あ、つまりそれって……」

「9Sが私を助けてくれたあとで、ちゃんと考えて答えを返すから待ってほしい。勝手なことを言って、ごめんなさい」

「いや、いやいや!全然気にしないでいいよ!その、こんな時に言った僕が悪いんだし!そうだよ。全部僕が悪いんだから2Bは気にする必要なんて一切無いから。本当に。全然」

「……ありがとう。9S」

 

ありがとう世界。ありがとう人類。僕と2Bを作ってくれて本当にありがとう。

今ならB型並みの戦闘ができる気がする。2B並みは無理だけど。

 

「それじゃあその、2Bの悩みというか、恐れているもののことを教えてもらっていいかな」

「……わかった。ポッド、あなたは外に出てても屋内の声を聞き取ることはできる?」

「可能:当機はヨルハ部隊アンドロイドの随行支援ユニット。各種機能はどのような状況でも対応できるよう搭載されている」

「そう……。機能停止。再起動タイマーを3600秒後にセット」

「了解」

「えっ、ちょっと、2B?」

「9Sもポッドの機能を停止させて、聞かれるわけにはいかない」

 

ポッドにも話せない話なのか?

いや。司令部に伝わることを危惧してるのか。

 

「わかった。ポッド153に命令。機能を停止させ、再起動タイマーをセット」

「拒否:当機は9Sの随行支援ユニット。任務期間中の機能停止は受諾できない」

「ポッド042よりポッド153。推奨:機能の停止」

「ポッド153よりポッド042。非推奨:機能の停止」

 

なんかポッド同士で言い争いが始まったんだけど。大丈夫なのかこれ。

っていうか相変わらず2Bのポッドは変わってるな。普通に考えて153の方が正しいのに。一切の迷いなく機能停止を選んだぞあいつ。

ん?2Bどうかし

 

「ハッキングして」

「へっ?」

「私をハッキングして」

 

なに言って、ってかちかいちかいやわらかいかわいい、じゃなくてっ!

 

「な、なんでハッキングを」

「……電脳空間内ならまだ多少は安心できるから」

「安心って」

 

ポッドを止めるのに、さらに外に漏れる可能性を考えてる?そこまでのことなのか?

 

「ポッド、終わった?」

「肯定:ポッド153の停止は完了した」

「そう。ありがとう」

「構わない。……9Sこれを」

 

なんだこれ?真っ黒な球体?これはいったい。

 

「現在ヨルハ部隊技術部が開発を行っている電波遮断装置。ブラックボックス反応も一定時間の間感知不可能にすることが可能」

「なっ。そんなものが開発されたなんて話聞いてないぞ」

「……?私そんなの持ってたっけ」

「現在所有しているこれは使い捨ての試作型。当機が2Bの名前で使用申請許可を得ている。処分は受ける」

「ううん。いいよ。……ありがとうポッド」

「……機能を停止する。9S。あとは頼む」

 

勝手に2Bの名前を使って、勝手に2Bが知らない道具を手に入れて、勝手に本人が望んでいないことをする随行支援ユニットか。

 

「いいやつですね」

「うん。……いつも頼りっぱなし」

 

さて、それでは

 

「いきますよ」

「うん」

 

ヨルハ機体2号B型を対象にハッキング開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……、大まかな流れはそんな、感じ……」

「なる、ほど……」

 

2Bの抱えているものについては粗方聞き終わった。

一言で言えば、理解できない。これに尽きる。

2Bは未来の大まかな流れが分かると言う。なぜそんなことが分かるのか?答えられない。

2Bは司令官さえ知らないことを知っていると言う。なぜ知っているのか?答えられない。

ハッキリ言って論外だ。新手のウィルスの可能性も考えられる。

けど

 

「信じるよ」

「えっ……」

「信じるよ。2Bのこと」

 

僕は彼女を助けたいと言った。

彼女は僕に助けてと言った。

信じる理由はそれだけで十分だ。

まあ、さすがに裏付けは取らせてもらうけどさ。それは許してほしい。特にヨルハ計画の正体とかはちゃんと確認しないといけないし。2Bも言ってたけど間違ってる可能性もあるらしいしね。その辺は後でこっそりやるさ。

とにかく、今聞いた話の中でまず解決しないといけないのは

 

「バンカーが墜ちる、か」

「うん。私たちの家が消えることになる」

「それによって、各個体の自我データを保存してるサーバーも破壊され、ヨルハ機体は義体の機能が停止してしまうと巻き戻れず、本当に死んでしまうと」

「そう」

 

そしてそれは、今年中に起きる。正確には9月より前に、か。

さすがに解決するにはいくら何でも

 

「時間が足りない……」

「……ごめんなさい。私がもっとはやく相談してたら」

「えっ、あ、いやいや、2Bはなにも悪くないよっ!全部敵のせいなんだから2Bは気にしなくていいんだよっ!本当に」

「……うん。ありがとう9S」

 

そうそう。2Bはなにも悪くなんてないんだから。そんな顔しないでほしい。つい口を滑らした僕が悪い。もっと言えばヨルハ計画を考えたやつが悪いんだ。

でも、そうか。バンカーが墜ちてバックアップが消滅するのか。でもそれってつまり

 

「バンカーにあるバックアップを他の場所。それこそ月面のサーバーとかに移動させることができれば、とりあえずは解決するのかな?」

「……」

「どうかな?とりあえず今思い浮かんだのはそれぐらいなんだけど」

「……」

「えっと、さすがに簡単すぎたかな。こんな方法じゃいくらなんでも無」

「9S!!」

 

なっ、いきなりどうし

 

「そう!それだ!すごい!!やっぱり9Sは頭いい!!!」

「ちょっ、2B、揺らしすぎっ、てかあたって」

 

近い柔らかい暖か、くはない。ちくしょう!なんでここは電脳空間なんだ!?なんで現実じゃないんだ!?

 

「とっ、とにかく落ち着いて2B。まだなんとかできるって決まったわけじゃないんだし」

「どうして?それで全部解決する気がするけど……」

「いやいや、僕が敵だったらいきなりバックアップの保管場所を移動したら不自然に思うし。作業が終わる前に仕掛けるよ」

「……そっか」

 

シュンとしてる2Bかわいい。

違う。そうじゃなくてなんとかする方法だよ方法。やばいな。告白してから僕の思考回路どこかイカれたんじゃないかこれ。あとで自己ハッキングして確認しよう。

 

「でも、移動することができればなんとかなりそうだね。一応確認するけど、月のサーバーにはさすがに敵も潜り込めてないんだよね?」

「確か……。そんな描写はなかったと、思う。はず。うん……」

「となれば秘密裏に移す方法か。さすがに今すぐは思いつきそうにないから、また次の時に一緒に考えよう。ポッドもそろそろ再起動する時間だしね」

「うん」

 

起きたらまずは、任務をパパっと終わらせないとな。残されてる時間は少ないからすぐにでも色々確認しないといけないし。場合によっては司令官に話す必要も出てくる。そのための説得の証拠になるものも手に入れないと。敵がバンカーに侵入してるとなると動きづらいけど、なんとかしてみせる。

 

「9S」

「なに、2B?」

「助けるって言ってくれて嬉しかった。ありがとう」

「……ううん。仲間を助けるのは当たり前のことだよ。2B」

「……そっか。そうだね。ありがとう」

 

やっぱり2Bは笑顔のほうがかわいいな。

 

 

 

 

 

さて、優秀な9Sモデルの実力、発揮するとしましょうか。

 

 

 

 

 

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