多分今後も更新不定期になります。ごめんなさい。
「ポッド! データ照合!」
「了解……。
報告:データ一致」
「なら、これは本物の……」
――ついに、見つけた。
この3年間任務先で色々探してみたけど、全く見当たらなかった。
本当は無いんじゃないかって、思いもした。
だけど、今、確かに目の前にある。
やっと、見つけた。
「―――月の、涙」
くぅ~。
やばい。感動してちょっと泣きそう。
この3年間で3番目くらいに嬉しいかもしれない。
「あー、あのですね。2B?」
「ポッド、撮影モードに移行」
「了解:ポッドaでの画像撮影。bでの動画撮影。cでのライトアップを開始する」
「あノ、村コッチコッチ」
「壁が邪魔だな……」
「非推奨:周辺の破壊は対象に傷がつく可能性があり、環境の変化により枯れる可能性もある」
それもそうか。
この隅っこにあるからここまで育ったかもしれないんだもんな。
残念。全方位からしっかり写真撮りたかったんだけどなぁ。
「……ポッド、次、ライトを下から当てて」
「了解」
不満はあるけど、発見した喜びが勝るから問題なし。
ふっふっふ。
6O喜ぶだろうな。なんたって幻の花だからな。
きゃー、2Bさんステキー。
とか言われたり、抱きしめてきたりしちゃったりなんかして。
「ポッド、次は引きで撮って」
「了解」
今度、バンカーに帰った時にサプライズプレゼントしてやるぜ!
楽しみだなぁ。
「……」
「……」
「……ごめん。2Bが落ち着くまで待ってもらっていいかな?」
「ウン。村には遅レルッテ連絡シテオク……」
「これを持っていってください」
「これは……?」
「アネモネさんに頼まれていた、燃料用の濾過フィルターです。
渡していただければ、私達が平和的な種族である事を理解していただけると思います」
「……わかった」
オッケー。パスカル任せてくれ。しっかり渡してくるよ。
今回はすぐ帰るけど、次来たときは折角だし子供たちと遊びたいな。
それじゃあ早速戻ろうぜ。9S。
「そうですね。真っすぐに、寄り道せず、最短で、最速で、戻りましょう」
「う、うん」
ど、どうしたんだろう。9S。
そんなに急いでキャンプに帰りたがるなんて………
キャンプになにか急ぎの用事でもあるんだろうか?
まあ、そういう事なら急いで帰ろうかな。
いつも助けてもらってるし、たまには俺が9Sの助けにならないとな。
持ちつ持たれつってやつ?
キャンプ戻ったら9Sの用事済ませて、そして今後の話でもするかな。どういった形で立ち回っていくのかとか、ちゃんと相談しないといけないし。
これからイベント目白押しだからな。
『オペレーター6Oより、2Bさんへ。定期連絡の時間です』
あれ、もうそんな時間だったっけ?
一体いつの間にそんなに時間が経ってたんだ?
「こちら2B。問題なし」
『それなら良かったです。さっきまで遊園施設にずいぶん長い時間留まってたかと思ったら、今度は急に森に向かい始めたから何かあったんじゃないかって、ちょっと心配してたんでですよ?
その近辺で多数のアンドロイドが消息不明になったって聞いていましたから』
本当に6Oは優しいな。
ちょっと月の涙の撮影に時間かかったぐらいで心配して――
「――別に何もなかった。うん。問題なし。大丈夫」
『えっ、なんですかその反応? 2Bさん、今度は何をやっちゃたんですか?』
やっべえ、サプライズするって決めたんだから。なんとか誤魔化さないと。
こう、俺の華麗な話術でなんとか別の話題に持って行かないと。
「6O! メールに書いてた木星占いについて聞き――」
『――ポッド、2Bさん今度は何したんですか? また始末書ものですか?』
ポッドに聞くのは反則じゃないかな!
俺ともっと楽しいおしゃべりしようよ6O!
ポッド、ポッド!
わかってるよな。大丈夫だよな。サプライズだぞ。どっきりなんだぞ。
さすがにわかってるよな。頼むぞほんとに。
「…………報告:ヨルハ機体2Bは遊園施設にて平和的な存在と自称する機械生命体の集団と遭遇。
この機械生命体はレジスタンスとの間で物々交換を行っているとこと。
現在は確認の為、キャンプへの帰還を目的としている」
『平和的な機械生命体……ですか? 最近各地で報告されている攻撃してこない個体ではなく?』
さすがだぜポッド。
信じてたよ。きっと上手く誤魔化してくれるって信じてたよ俺は。
「そう、それ。
まだちゃんと確認取れてないから、報告できなかっただけ。
うん。ほんと。それだけ」
ほんとほんと。2B嘘吐かない。
『…………はぁ。わかりました。今はそれで説得されちゃいます。
でも2Bさん、危ない事は極力避けてくださいね。
わたし、本当に心配したんですから』
「……わかった。心配してくれて、ありがとう」
『どういたしまして。あんまり心配かけさせないでくださいね?
それじゃあこれで、定期連絡を終わります。
あ、あと木星占いはなんか嘘だったみたいです。ええ。嘘に決まってますあんなの。
それでは、失礼しますね』
あー。
6Oマジ女神。
なんていうか自分の事を誰かが心配してくれるって、なんか嬉しくなるな。
6Oと喋るとそれを強く実感できる。
9Sもそうだけど、なんでこう俺が嬉しくなるような言葉を的確にかけてくれるんだろうな。
それだけで、なんか頑張ろうって気が湧いてくるし。
……きっとこういうのは俺だけじゃないんだよな。
地上で戦ってる戦闘員も、軌道上で情報支援してるオペレーターも。皆。
辛い時とか苦しい時に、『頑張れ』って言って言われて。
元気になったりしてるんだろうな。
まあ、さすがに俺並みにメンタル弱いやつはそうそういないだろうけども。
やっぱり、そういう事を思うと
「――死なせたくないな」
守りたいな。
地上にいるヨルハも、バンカーにいる皆も死なせたくない。
最後にヨルハは3人しか残らない、なんて結末にはしたくない。
完全無欠のハッピーエンド目指して行かないとな。
まあ、まだ全くどうしたらいいか思いつかないんだけど……
9Sがなんか色々してるらしいし、きっと大丈夫だ。
俺は戦闘モデルだし、そっちで頑張ろう。
また変な事して9Sに怒られたら嫌だし……
ともかく、次は確か2回目のエンゲルス戦だったはずだし、まずはそこで頑張ろうかな。
戦うだけならあまり考えなくて済むし。
うん。そうだな。それが良い。
そうと決まれば、ちゃっちゃとキャンプに帰って戦闘の準備しないとな。
「……? 2B、なにか言いましたか?」
「ううん…………9S」
「なんですか?」
「私、頑張る」
「―――はい。僕も2Bと同じくらい頑張ります」
よっしゃ、やってやるぞー!
機械生命体がなんぼのもんじゃーい!
負けないからなー!
あ、あと、それはそれとして
「9Sは私より大変だから、私以上に頑張って」
「え」