そもそもの話、俺はあまりこの仕事が好きじゃない。
というか嫌いだ。大嫌いだ。
当たり前なんだが、元々ただの一般人だったやつがいきなりエイリアンが作った兵器と命を懸けて戦えとか、一緒に戦う仲間を殺せ。なんて仕事を好きでやってるやつなんてのは普通はいないだろう。もしかしたらどっかにはいるのかもしれないが。
つまりなにが言いたいかというと今の俺はその大嫌いなお仕事中。
具体的に言えば単騎での敵機械生命体の撃破だ。
事の発端は2週間前、とある地域のレジスタンス部隊の反応が丸ごと消失したことから始まった。
最初は通信機材のトラブルが疑われたが、時が経つごとにその付近のアンドロイド達の反応が消失していくことから、機械生命体による攻撃を受けていると司令部は判断。
ヨルハ司令部は、B型D型S型の3機での任務を発令し現地の調査、あるいは撃破を命じ、その結果原因は敵の大型機械生命体によるものだったと判明し、同時に撃破に失敗したのが2日前。
そして本来の仕事を終えて精神的に休息を取っていた俺に、その大型機械生命体の撃破が命じられたのが昨日。
そして今俺は、その大型機械生命体と一人で戦いを挑もうとしている。
「なんで私は一人であんなのと戦おうとしているんだ……」
「回答:司令部より単騎での敵機械生命体の撃破を命じられたため」
「前回の作戦時は、3人で戦って勝てなかったと聞いたけど?」
なんで3人で戦って倒せなかったやつ相手に、俺は1人で戦わなきゃいけないんだよ。
司令部も頭おかしいんじゃないか。
「回答:調査を担当した22B、3D、11Sはロールアウト直後で実践経験などといったデータが不足していたことにより、敵兵器の撃破までには至らなかったと見られている」
「それでも基本データはロールアウト直後でもインストールされているはず。新人3人で無理だったとしても、次の戦闘ではせめて同程度の人数で行くべきじゃないの?」
「回答:司令部から、当機の随行支援対象である2Bの戦闘能力は同時期に稼働開始した4B、8B、14B、24Bなどと比べて撃破率、任務達成率が著しく高く、被撃墜数もいまだないことから、他のB型と比較した場合約4倍程度の戦闘能力を所持していると認識されている」
……は?
いや待て、確かに、俺はまだ死んだらこの『俺』の記憶がどうなるかわからないから、いつも死に物狂いで頑張ってきたさ。おかげでまだ一回もやられてないし、確かに任務も一度も失敗してはいないけど。
でも、さすがに4倍はおかしくないか? それ、俺1人で単純にB型4機分ってことになるんだけど。
「……確かに、私は任務を失敗した覚えはない。けど、だからといってその評価はおかしい」
「疑問:随行支援対象である2Bの自己認識能力。稼働してからの5ヶ月での戦闘任務125回、防衛任務42回、威力偵察任務13回。敵機械生命体の撃破数12702体。以上の記録が他のアンドロイドとの合同任務を除いての当機随行支援対象である2Bの記録である」
確かにそう言われると俺の戦闘力やばそうだけども。
でも俺そんなに頑張ってたっけ? 誰かが数を間違えたとかじゃなくて?
「……その記録本当?」
「回答:この記録は当機、ポッド042によるもの」
お前かい!
確かにずっと一緒にいたし、戦ってきたけども。だったらなおさら俺の力がそんなにすごくないのはお前が一番知ってる筈なんだけど。
遠距離攻撃で敵の数を大量に減らしたのはポッドの力なんだし。
「疑問:随行支援対象である2Bは当機による記録を信用していない?」
そうじゃないけどさー。
「信用してないわけはない。今までポッドが虚偽報告をしたことなんて、一度だってないもの。……ただ、そこまで活躍した覚えがないだけ」
そうそう。この5ヶ月ずっと戦ってきたけど、余裕なんて一度もなかったし。好き勝手に生きてやるなんて考えてたけど、戦わないなんて選択肢は無かったから無我夢中で戦って、でも戦闘の時はいつも怯えて、敵に近づくのも怖いから遠距離からひたすらポッドで攻撃してばっかりで。それか周りの建物壊して敵を巻き込むとか、川を堰き止めて敵がきたら一気に押し流すとか。そんな無茶苦茶な戦いばっかりしてただけで、一応ほかのアンドロイドでもできるようなことしかしてなかった筈なんだけどな……。
「……なんで一人なのかはわかった。だからといって、アレと正面から戦うつもりはない。とりあえず敵の行動を阻害したり、罠をかけられる場所に誘導して少しでも有利な状況を作りたい。ポッド、前回作戦時の付近の調査データを見せて」
「了解」
ほんといやな仕事だ。無茶ぶりばっかりでいつも疲れる。
まあ、それでも俺の本来の仕事と比べたら精神的にすっごく楽だから、そういう意味ではこういう仕事は好きなのかもしれない。
だからといって、嫌いな仕事なのにはかわらないけど。