にーあおーとまた   作:SeA

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考えるとつらいから、考えない。

 呼び出しを受けた。

 

 6Oに写真を渡して隣に座って一緒に見ながらその花がどんな感触で、どんな匂いがするのか話していた最中に。

 

 司令官から。

 

 気分がガクッと落ちていくのを感じる。吐くものもないのに吐き気がする。

 隣にいた6Oがこっちを気遣うような、優しい表情でギュッと抱きしめてくれた。

 6Oマジ女神。

 少しだけだが、気分が楽になった気がした。

 

 司令室に向かう。

 ゲームでは司令官がいるのは司令室の真ん中だったが、実際はずっとそこにいるわけじゃない。私室にいることだってあるし、エネルギーを補給するために席を離れることだってある。

 そして今回みたいな時は、司令室から繋がっている奥の部屋。

 ゲームには登場しなかった作戦会議室と呼ばれる部屋がある。実際に会議で使ったことはないらしいけど。

 基本的に中規模、大規模な作戦は司令部と他の部隊とで考えるらしいけど、オペレーターは権限がないから口出しできないらしいし、実質、ヨルハ部隊単独での作戦は、司令官一人で考えてるんじゃないかとか言われてる。さすがにそれはないだろうけど。

 それはともかく、6Oが言うには、会議室が使用された中で会議をした記録なんてのは今のところないらしい。

 だから、今まであの部屋が使われたのは司令官からの呼び出しの時ぐらいで、あの部屋はオペレーターの間では、「説教部屋」と呼ばれてるそうな。

 そしてその説教部屋に呼び出された数が一番多いアンドロイドというのが、

 

「失礼します」

 

 俺だ。まあヨルハのアンドロイドは普段ふざけてても、任務には忠実な個体が多いからあまり他のやつは呼ばれないらしい。

 

 司令室に入り、オペレーターの怪訝な目を受けながら、説教部屋の扉を潜る。

 また6Oに写真持ってかないとな。月の涙ぜんぜん見つからないんだよな。

 

「来たか。2B」

 

「はい。司令官」

 

 ヨルハ部隊司令官。名前をホワイト。名前で呼ばれてるとこは見たことないけど。

 ゲームだったら1週目でいい上官だなってなり、2週目でマジかってなり、3週目でファッ!? ってなる。何言ってるかわかんねえな。

 舞台の過去編では一番印象が変わったキャラだったから、よく覚えてる。

 

「予想していたと思うが、任務だ」

 

「……機械生命体相手のですか?」

 

「いいや……。君の本来の、2Eとしての仕事だ」

 

 知ってた。

 くそったれ。最悪な気分だ。こんな感情を司令官に向けたとこで意味なんてないけど、最悪に気分が悪い。

 というかなにより早すぎる。前回は5日前だぞ。いくらなんでも早すぎんだろ。もう辿り着いたのかよ。チクショウ。アイツ本当に優秀すぎんだろ。くそ。

 

「とは言うが、正確にはいつもとは違う仕事だ」

 

「それは、どういう?」

 

 今回のアイツが無茶苦茶すぎるぐらい有能で、もう逃げだして足取りを追えないとか?

 だとしたら正直すげえ嬉しいんだけど。そのままどこかで幸せに暮らしてほしい。

 

「対象が違う」

 

 ……対象が、違う?

 あいつじゃないの?

 

「ある意味では、いつもより難易度が高い任務となるだろう。失敗する可能性も高い」

 

 待った。

 俺がやるような相手で、いつものやつとは違くて、失敗、つまり死ぬかもしれない相手って、まさかとは思うが。

 

「その対象の名前は?」

 

「A2。ヨルハのプロトタイプ部隊における、最後の生き残りだ」

 

 最悪だ。最悪すぎる。もうマジ無理。

 どうしろってんだよチクショウ。

 

「彼女は以前の作戦時に敵機械生命体に対して機密情報の漏洩を行った可能性が高く、その作戦で他のヨルハ部隊員の命を奪い、そのまま脱走。敵に利した裏切り者でもある。このような存在は、一刻も早く処理しなければならない」

 

 プロトタイプ。最後の生き残り。裏切り者。

 これだけでもうなんかヤバいよね。強キャラ臭すごいするよね。

 

 『A2』。ゲームに出てくる3人目の主人公。

 まさかのゲーム後半からじゃないと動かせないし、ゲームの展開もヤバくてそれどころじゃないし、過去も壮絶だし。ていうか本当に過去が壮絶過ぎてマジ泣ける。ゲームで知って涙目になって、朗読劇で泣いて、舞台で号泣したわ。

 

「A2……。裏切り者、ですか」

 

「そうだ。我々は断じてA2を許してはならない」

 

 どの口で言っているんだというか、言わされてるんだろうというか。

 最近気付いたのは司令官は嘘の命令をする時に、体を大きく動かす癖があるということ。速めに直したほうがいいと思う。

 とりあえず、自分も騙せない嘘を吐くのは辛いからやめたほうがいい。俺もよくなるし。どうせ俺が部屋から出た後で一人になったら、すげえ苦しくなるだけなのに。

 教えて上げたほうがいいのかな。

 そうだ。まとめて全部教えてやればいいんだ。司令官も知らないヨルハの秘密も、機械生命体の秘密も。

 俺と違って頭もいいから、きっと、全部うまくいくようなことを思いついてくれるかもしれない。

 うん。いいかもしれない。じゃないとあと数年もしたらヨルハもバンカーもなくなって、全部終わってしまうんだから。うん。思いつきにしてはいいかもしれない。

 人類会議なんて無視しちまえばいいんだ。そう言ってやれば司令官もきっと吹っ切れて、自分のやりたいことを好きなように―――

 

 ―――やめよう。

 

 これ以上は意味のない思考だ。そんなこと言ったって、信じてくれるわけはない。そんなのはただのご都合主義だ。

 俺にはなにもできないって、諦めるって決めたんだから。考えるのはやめよう。

 ただ俺は俺のために、好きなように残りの時間を過ごすって、決めたんだから。無力でバカな俺には、なにもできっこないんだから……。

 

「……2B? どうした? 大丈夫か?」

 

「……はい。いえ、大丈夫です。いつもの任務と違って少し驚いていただけです。任務内容は把握しました。今すぐ向かうべきですか?」

 

「ああ、素早い対処が求められている」

 

「了解しました。ヨルハ機体A2の処分に向かいます」

 

「頼んだ。詳しい情報はこのチップに入っている。十分に気をつけて行ってくれ」

 

「…はい」

 

 とりあえず急いで準備しないとな。消耗品を補充して、回復を多めにして、現地に着く前にA2の情報も読み込まないといけないし。急がないとな。さっさとここから出て―――

 ―――ああ、待った。出る前にちゃんと挨拶はしないと。どんなに俺が気安く思っていても相手は上官なんだし、なにより礼儀は大事だしな。

 たとえバカでも、それぐらいはわかってる。

 

 では司令官。

 

「人類に、栄光あれ」

 

「人類に、栄光あれ」

 

 いってきます。

 

 

 

 

 

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