にーあおーとまた   作:SeA

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大人しくするの苦手なんですけどね……

調査を開始してから4日が経過した。

この期間で分かったことがある。彼女はちょっと変わった人だってこと。

2日前は別々の地点をそれぞれで調査するって話になって、時間を決めて後で合流することになったんだけど。ちょっとばかし調査に熱中しすぎちゃって、慌てて向かったらまあ当然待ってるよね。すぐに謝ったんだけど何もなし。もちろん時間に遅れたことについての叱責も。

一緒に行動するときは必ず僕の3m前を歩く。立ち止まったり、横に移動してもピッタリと距離を保ってくる。顔は常に前を向いたままで。後頭部にセンサーでも搭載されてるんだろうか?

それと、初日から変わらず口は噤んだままなんだけど

 

「……」

「疑問:その問いの意味」

「……」

「否定:効果があるとは思えない」

「……」

「了解」

 

これ、明らかに会話してるよね。

この間2Bは身振り手振りもなく頷いたりだってしてないのに、ポッドには思ったことが伝わってるみたいだ。実は僕が知らないだけで脳内無線でも開発されていたんだろうか?おかげで彼女の声も未だ聴いてない。実は声帯機能が停止してるんじゃないかと疑っている。さすがにないだろうけど。

あと気になったのは、たまにだけど僕の方をジッと見ていることがある。

僕が彼女を見てない時限定で。

その時は普段一文字に結んでいる口が少しだけ緩む。僕が視線を向けたらすぐに顔背けるけど。

僕を見てなにを考えているんだろうか。聞いてみたいけど、どうせ答えてくれないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

『オペレーター21Oより、9S。定期連絡の時間です』

「はーい。こちら9S。今日も地球はいい天気ですよー」

『問題ないようですね。それでは通信を』

「あ、すいません。聞きたいことがありますから、ちょっと待ってください」

『あなたがそのようなことを言うのは珍しいですね。なんでしょうか?』

「さっき、敵と遭遇し戦闘になってしまったんですけど」

『戦闘に?本当に敵が存在していたのですか。司令部の予測精度はさすがですね。負傷は、していないようですね。あなたは戦闘が苦手ですから多少は傷を負っているかと思ったのですが』

「ええ。2Bさんが敵のほとんどを受け持ってくれましたから……」

『彼女が?……なるほど。さすがヨルハ最強と噂されるだけはありますね』

 

3時間前、僕らは戦闘状態に陥った。

森林地帯で機械生命体の集団と遭遇。お互いに目視できる距離からの戦闘となり、すぐさま乱戦状態に移行した。個体性能ではこちらが圧倒的に上だったが、なにより数の差が大きかった。最初敵は20もいないはずだったのに、次から次へと敵が湧いてくる。

状況は不利だった。

だが僕はそんな中無傷のままでいた。敵は前後左右、果ては頭上から奇襲を仕掛けてくることもあった。そんな戦場を僕は経験したことはない。だがそれでも無事だった理由は、ここには彼女がいたからだ。

圧倒的だった。

この戦場では不利だと判断したのか。ポッドを使い周りにある木をへし折り、無理やり開けた場所を作り、装備していた槍と大型剣を敵に投げ捨てて、小回りの利く小型剣と格闘装備に切り替えた。地を走り、宙を駆け、縦横無尽に敵を駆逐していった。

 

すごい。そんな感想しか出てこない。

これがB型。これが最強。そう言われるのも納得だった。

喋らないとか、態度が悪いとか、そんなものがどうでもいいと思うぐらいに彼女は強かった。

 

そして僕はそんな彼女の後ろで、せめて邪魔にならないようにとできる限りのサポートをしていたんだけど。明らかに彼女の足を引っ張っていた。木を倒してくれたおかげで剣はなんとか振れるようになったけど、敵はひっきりなしにやってきて。ハッキングによる敵の撃破というS型としての力を発揮することができなくて、そんな僕を庇って2Bは徐々に傷ついていった。

 

「ええ。最強なんて言われる理由がよくわかりました。けど……」

『けど?なにかあったのですか?』

「……僕の任務は単独での調査、偵察が主です。戦闘ではありません。そして誰かと一緒に任務を請けたこともないので、当然誰かと共に戦ったこともありません」

『……』

「ですので、戦闘に於けるサポートはデータとしてインストールされているだけで、実際に行った記憶があるわけではありません。ですから、満足に戦闘支援を行えるわけがないんです」

『それは、仕方のないことです。今までやったことのないことをやれと言われてできる。そんな存在はあまり多くなく』

「違うんです……」

『違う、とは?』

「サポートができていたんです……」

 

そうだ。できていたんだ。

彼女は僕の拙い援護を完璧に受け取っていた。

初めての共闘。不慣れな戦場。拙い支援。

そんな状況で、彼女は僕が初めての戦闘支援でどういう動きをするのか、完全に把握した動きで戦いを続けていた。

戦績は確認した。最強と言われる力も見た。きっと過去にS型と共闘したこともあるんだろう。だとしても、圧倒的な戦力差の中で足手まといを守り。なおかつそんな僕の動きを阻害しないように戦いを続ける。そんなことが可能なんだろうか。

 

「あの戦闘は僕を知らない限り不可能です。もしかして、彼女と僕は過去に戦ったことがあるんじゃないですか?」

『……』

「どうなんですか。オペレーターさん」

『……』

「オペレーターさん?」

『……その、情報は、機密事項となっているため、お伝えすることはできません』

「機密事項?ただ以前の記録を確認したいだけです。そんな大それたことを知りたいわけじゃなくて、ただの」

『機密事項です。お伝えすることはできません』

「……オペレーターさん」

『9S。忘れなさい。今ならまだ間に合います。このまま何事もなく残りの任務期間を消化さえできれば、なにも問題はありません』

「……」

『9S。変なことは考えないでください。あと3日。たったそれだけなんです。お願いですから』

「……通信を終了します。それじゃあまた」

『待ちなさい9S!お願いだから、私はもうあなたを』

 

通信を切る。

機密事項?過去に彼女と戦ったことがあるかどうかが?明らかにおかしい。疑ってくれって言ってるようなものじゃないか。

 

「ポッド、僕と2Bさんの過去の接触記録はあるか?」

「否定:9Sと2Bの接触記録は無い」

 

こいつも知らないか。となると今すぐ司令部のサーバーにハッキングを仕掛けたいところだけど、さすがに準備が整ってない。相手は基地のメインサーバー。防壁も最新の物でできているはずだ。

なら今できることといえば

過去を知っている存在から直接情報を引き出すこと。彼女は今、戦闘のダメージを癒すためにスリープモードに入っている。ハッキングを仕掛けるには絶好の機会だ。ポッドは動いてるかもしれないが、大した問題ではないだろう。

 

「ポッド、部屋に入ったらポッド042の動きを止めろ。その間に機能を停止させる」

「ポッド153より、9S。その行為は部隊への反逆行為に相当する。推奨:停止」

「2Bはさっきの戦闘で敵の論理ウィルスに感染した可能性がある。チェックをするのにポッド042が邪魔だ。ウィルスが検知できなかったらちゃんと謝るよ」

「推奨:停止」

「いいから、これは命令だ」

「……」

 

面倒くさいな。戦力が減るけどポッド153もいっそのこと

 

「提案:落ち着け」

「っな、ポッド042……?」

 

なんで、2Bのポッドが外に

 

「これ以上の接近は2Bのスリープモードが解除される恐れがある」

「あ、ああ。そうだね。ちょっと確認したいことがあったんだけど……」

「提案:私が聞こう」

 

なにかが近づいたら再起動するように設定されているのか。厄介だな。さすがにあの戦闘を見た後で正面からやり合う気は起きないな。

 

「なら聞くけど、僕は2Bさんと過去に会ったことはある?」

「否定:9Sと2Bの接触記録は無い」

「そうなんだ。それにしてはさっきの戦闘は不思議だったと思ってね」

「推測:ヨルハ機体2Bは大規模作戦を数多く経験しており、その際に他のS型モデルとの戦闘データを用いた結果。先ほどの戦闘に繋がったと思われる」

「……ポッド153には聞いていない」

「回答:9Sは2Bに会ったことはない」

「……ポッド042。お前も同じことを」

 

埒が明かない。バレる可能性は高いが残りの任務期間でなんとか隙を見つけてハッキングを

 

「繰り返す。9Sは2Bに会ったことはない」

「今聞いたさ」

 

相手は戦闘に特化したB型。油断はできない。それもヨルハ最強の実力者。なんとか罠に嵌めて情報を奪い全力で逃走。完全な反逆行為と見なされるだろうけど、もともと司令部にハッキングをするつもりだったんだ。予定が早まっただけだ。

 

「繰り返す。9Sは2Bに会ったことはない」

「……うるさいな。僕、9Sは彼女に会ったことはないんだろう?わかったよ」

「否定」

「だからわかっ、って……今なんて?」

「否定」

 

どういうことだ?ポッド042はいきなりなにを言って

 

「ポッド153よりポッド042。意図的な虚偽報告は禁止されている」

「ポッド042よりポッド153。当機は虚偽報告を行っていない」

「ポッド153よりポッド042。それ以上の発」

「ポッド153に命令!別命があるまで発言を禁止する!」

 

今の発言の意味はなんだ?

なぜ今、ポッド153はポッド042の発言を否定しようとした?

そんなの、それが否定しなきゃいけないような内容だからに決まっている。

 

「ポッド042。質問だ。僕は2Bさんと会ったことがあるのか?」

「否定:9Sは2Bに会ったことはない」

「以前の僕、9Sは2Bさんに会ったことがあるのか?」

「否定:9Sは2Bに会ったことはない」

「……9Sは彼女と会ったことがあるのか?」

「その質問には回答することはできない」

 

これだ。

 

「回答できない理由は」

「機密事項に分類されるため、閲覧には権限が必要」

「……権限があれば答えてくれるのか」

「肯定」

 

僕は2Bさんに会ったことはない。当たり前だ。そんな記憶は持っていないんだから。

だけど、以前の僕。9Sは2Bさんではなく『彼女』に会ったことはある。

それはつまり

 

「ここにいる彼女は、2B、ではない?」

「その質問は機密事項に分類されるため、回答できない」

 

当たりだ。

2Bという名前は偽装。本当の名前が別にあるから9Sは2Bに会ったことがないってわけだ。

偽装された名前。司令部へのハッキングを試みようとしたこのタイミングでの急な合同任務。そして以前に僕は彼女と会っている。

ここから導き出される彼女の正体は

 

「……内部の不穏分子を密かに殺す処刑人。そして以前の僕は彼女に殺されている。そういうことか。ポッド042」

「……」

「だけどなぜ?それを僕に教えるのは禁止されてるはずだ」

「……」

 

問題があるから今まで隠してきたはずだ。なのになぜこのタイミングで

 

「なぜだ。ポッド042」

「……当機はヨルハ機体2Bの随行支援を担当している」

「ああ、それが君たちの役目だ」

「よって私は、2Bの負担を解消する義務がある」

「負担……?」

「2Bのスリープモード解除、及び再起動を確認。随行支援を再開する」

「なっ、話はまだ」

 

……行ってしまった。とりあえず分かったことを整理しよう。

今わかっているのは、以前の僕が司令部が隠しているなにかを知り、そして2Bと名乗っている彼女に僕は殺されたこと。そしてなんらかの負担を彼女は受けていて、それを解消するためにポッド042は僕に情報を与えた。

 

謎が減ってさらに増えた。

調べたいと思うものが増えるのは普段なら楽しいんだけど、今はもどかしい。下手に調べようものなら殺されるのが目に見えている。

 

ともかく今の僕にできるのは

 

「司令部へのハッキングは中止する。監視は今後も続けてくれていいよ」

「……」

 

残念だ。もう少しでメインサーバーへの経路を作れそうだったのに。

 

「まさか侵入前にバレてるとは思わなかったけど、これからは大人しくするよ。まだ死にたくないしね。調べたいことはいっぱい残ってる」

「……」

「……ポッド?ああそっか。ポッド153発言を許可する」

「……ポッド153より9S。司令部は不穏分子を常に監視している」

「今回のことでよくわかったよ。だからこれからは大人しくするって」

「……」

 

ポッド042が自発的に動いた理由。彼女にはそうしなければいけないなにかがある。

とりあえず今一番気になるのはそれかな。残りの任務期間で軽くだけ彼女のことを探って、あとはゆっくりと時間をかけて調べていこう。殺されたらたまったものじゃないしね。

 

「さて、それじゃあ僕もひと眠りするかな。眠ってる間に殺したりなんてこと、しないでくださいよ。ポッド153」

「……了解」

 

さて、起きたら彼女とどうやって、接しようかな。

明日が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




難しい言葉が思いつかなくて、それっぽい喋りが書けない。
なによりポッドがわからない……
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