「由良…ここだけの話なんだけど。私ね、さっき建造ドックで不思議な女の子を見たのよ。豪華な着物を着たお姫様みたいでね… 」
「お姫様!? 」
由良は着物姿のお姫様と聞き、テレビで観た戦国時代の姫様を思い浮かべる…
「うん、金髪ロング巻き髪でゴージャスな美少女だったわ。まさにお姫様って感じなのよ? 」
しかし、次に足柄の口から語られた内容は思い浮かべたイメージを斜め方向に外す。姫様というより…そのチグハグ加減はまるでアニオタ御上りさんの外国人観光客ではないか!? ここが東京なら昨今見慣れた風景かもしれないが、九州鹿児島のさらに田舎の鹿屋である。
「はぁ!? なにその変な人? 何処の国の姫様よ!! 」
「あら、そう言われてみると変ね? でもいいんじゃない? 外国人って着物が珍しいから着てみたかったんでしょう。それよりも、その少女‥もしかしたら… 」
「…もしかしたら? なに? 」
「外国の艦娘じゃないかと思うのよ。だって金髪よ! 」
「外国の艦娘? どうしてそんな娘がこんな基地に? 」
「それはわからないけど、あの姿‥きっと
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! プリンスって『王子様』よ? 男の娘ってこと? 」
日本の軍艦と違い、外国の軍艦は人名であることも珍しくない。男の名を冠した艦娘…
「……。と、兎に角! あ、あの娘は艦娘に違いないわ! ほ、ほらクイーンなんとか…」
「……」
そこで会話は途切れ、二人はお互いに思案顔のまま無言になり調理を進めてゆくのだった。
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人払いを済ませた建造ドックに人間は俺だけである。精霊の周りにはいつの間にか様々な姿の妖精達が現れていた。ヘルメットを被った者ばかりなのは、この場がドックだからだろう。
「話を聞かせて貰おうか」
「よかろう…。まず、此処までに五年の歳月を費やした理由から話す。一言で申せば『順応』…人は置かれた境遇に慣れてゆくものである。既にお主はこの世界の常識を身に付けておるだろう? 」
順応…確かに俺はこの世界に来てからの五年間に元の世界との違いに戸惑いながらも身に付けてきた。時にはアクティブに、時にはパッシブに否応なしに…。今では会話の中で失言の頻度は下がり、当初のように奇異の目で見られることはほぼなくなった。失言というのは、例えば‥俺は海軍の軍人である立場上、軍事用語の間違いは御法度である。任官から日が浅いことが幸いして自衛隊用語から切り替えて行くのは然程に時間は掛からなかった。『砲雷撃戦』なんてのは【艦これ】で慣れ親しんでたしな!
憲兵隊を無意識に『警務隊』と呼んだ時は焦ったが…
『あ? あぁ、今は特警隊では無くて憲兵隊に呼称変更されたのですよ』
聞いていた兵曹が勝手に解釈してくれて助かったが、憲兵隊への呼称統一は比較的最近の事だってことを後で知った。
とまぁ、軍事用語に関しては【艦これ】のお陰もありで案外すんなり俺の中で擦り合わせが出来ていった。
一般生活に於ける常識の方が大変だった…
まず、こちらの日本は同じ21世紀とは思えない程に相違点が多かった。先の大戦での敗北から戦後世界が全く異なっているからであろう。戦前までの歴史に相違点は僅少なのに、そこからの歴史は大きく変わって行く。時代とともにその流れはどんどんと俺の知る世界とは異なる方向に向かって行く。大河の流れを大きく転換する筈だったGHQは存在せず、それにより日本は明治・大正・昭和と続く流れに沿って進んだ。それは日本だけでなく、世界の流れも…
1950年代
大戦後の米ソ二大国主導の東西冷戦は起こらず、米ソに加え英・独・日の五大国が牽制し合う世界が到来していた。国連と呼ぶ組織は『国際連盟』が存続した。それはそうだ、連合国(国際連合)の勝利で終わらなかったのだから…。
主要国として首脳会議に参加国の面子は上記五大国に仏・伊が加わる。
東西冷戦が無いためか核兵器を筆頭に軍拡競争は緩やかなものにすぎず、その弊害と言ってはだが…民生品への技術転用も細々としたものだ。
朝鮮戦争が発生していない為、日本は朝鮮戦争特需の恩恵が得られずに戦後復興事業は茨の道を逝くが如し…
1960年代
宇宙開発競争は流れからして発生の余地無し。
月へ人類が行くどころか、人工衛星打ち上げも成されず…。ケネディ大統領暗殺事件の衛生中継は…そもそも暗殺事件が起きていない。
1970年代
日本は高度経済成長…してない。モータリゼーションではなくて鉄道である。この頃既に北海道・九州新幹線の工事が始まっている反面、高速道路網の整備は遅々として進まない。ちなみにオイルショックは起きていない。中東戦争が無かったことが原因だが、この日本には満州国内に存在する油田があることから影響は大きく無かったかもしれない。
1980年代
狂喜のバブル好景気…なんですかそれ?
大卒初任給が10万に届いてない…
1990年代
驚いたことに、民間旅客機ジェット化がやっと始まる。
2000年代
携帯電話発売…いや、携帯ストラップ? 肩から掛けるベルトに下がるショルダーバッグみたいなのが電話です。受話器が上に乗せてある…軍用無線機みたい。
2010年代
今ここ…
ざっと思い返すが、30年くらいか? 元の日本で換算すると昭和60年代あたりの世の中だよな?
付け加えだが、この日本は全入学時代じゃない。その理由のひとつが戦後に軍用地を潰して乱立した地方自治体ごとの国立大が存在していないことにある。まず大学自体が少ないのだ。昔、田舎の婆ちゃん家に遊びに行った夏休み…
『ここは昔、陸軍の連隊があったんよ』
婆ちゃんが指差す先には国立大の正門があり、出入りする学生達の姿があった。
勿論、こちらの日本では相変わらず陸軍歩兵連隊の広大な敷地がひろがっている。
「まあ、そうなるか。人生経験の‥いや、社会人としてなら大半はこちらの世界の住人になったな」
あちらでは社会人経験としたら任官して一年足らずだ。既にこちらの方が長い。海自より海軍‥何もしてないがね…
「この時を待っていた。お主の提督としての存在意義は在るべき時と場所が合わさり初めて成す。何故に艦娘の発生に艦種ごとの偏りがあると思う? 」
艦娘の建造に際して特に重要なのが『提督の資質』と云われているが、建造により現れる艦娘は提督が持つ基本情報を基に此の世に於ける一般常識を身に付けるらしい。初期に海上にてドロップした艦娘に記憶や常識が欠如していたことを考えると建造により生まれた艦娘が即戦力と成りうる理由のようだ。外部者の俺がいきなり建造を行うと何かと不都合な事態になりかねんと…五年も軟禁状態で飼い慣らされたってこと? 一瞬怒りがこみ上げるが、今更…だ。グッと堪えて冷静に考える。
大精霊が言うように艦娘の発生には偏りがある。建造システムが導入され二年となるのに未だ艦娘の総数は二桁でしかない。しかも戦艦や空母といった強力な艦が出現していない。
「そう言えば‥空母の艦娘が発見されてないな? 戦艦があの情況だから…まさか空母の艦娘も俺が探すのか? 」
空母の艦娘、それも正規空母は未発見だ。戦艦もそうだったが、偶然俺が出会え‥否、偶然とは思えない。ならば空母の艦娘も既に市井に紛れ生きているのだろうか? その身の上を知らずに…
「探す…。先程の戦艦のように人間の娘として生を受けているのか、それとも未だ海底にその魂を眠らせたままなのかは妾にも判らぬ。何れにせよ艦娘の魂を引き揚げるのはお主に課せられた使命。努々忘れぬことだ…」
「ちょっとまて! あんた大精霊様だろ? なんで艦娘の魂がどこにいるか判らんのだ? 」
精霊という存在は見方によっては『神様』みたいなもんじゃね? 妖精達も付喪神みたい…艦娘もか?
「森羅万象の理。その領域は神のみ知る世界… 」
あんたからみて神様ってか? こいつの言う神とは所謂『八百万の神』ではなく、様々な神様と呼ばれる存在の更に上に在る最上位…
「その神様にあんたは… いや、やめとこう」
答を求めるべくもないと感じた俺は言葉を切った。
「艦娘を建造ドックにて引き揚げるには提督と呼ばれる者の資質、それに妖精が手を貸す形で成される。重要なのは提督が何れだけ艦娘をイメージ出来るかじゃ」
イメージ?
「それは狙いの艦娘の姿形を思い浮かべろってことか? 」
「そうじゃ‥如何に艦娘の姿形や性格を知っているかで成否は変わる。これまでに人間と妖精が繰返し建造に挑戦しても成功率が極端に低い原因がわかったであろう? 」
この世界は【艦これ】の中と言って差支えない内容だ。言うなればこの世界の住人は全て『中のヒト』である。誰も【艦これ】を知らないのである。知りもしない艦娘をイメージしろとは無茶もいいとこだ。そんな芸当は『外のヒト』であった俺にしか不可能だってことだね。
「まあ、なんとなく理解はした。では、艦これ始まるよっと? やるぞ建造とやらを! 」
「我ら四人が手を貸す。始めようぞ‥先ずは掃除じゃな」
妖精達が掃除道具を俺に差し出して生温く微笑んでいる。
「俺がやんの? …ええぇっ!? 」
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司令官自ら風呂掃除する羽目になるとは…
ピカピカになったな‥バスタブ。
俺は【日本海軍監修】と書かれた建造マニュアルを開き見ながらバスタブに水を満たして行く。
「これでよし‥じゃ、建造用の資材を投入するか。何々‥正規空母レシピは未知数? そりゃそうか? 」
マニュアルには駆逐艦や巡洋艦などの建造レシピが掲載されおり、それは過去に成功率が高い実績に基づいたものだ。現時点まで成功していない正規空母のレシピなど在る筈無いのだ。しかし! 俺様は【艦これ】プレイヤー(元)
「正規空母のレシピは確か‥単純な数値だったからな!
あ…まさか」
横の壁面には四つの小部屋に仕切られた資材庫に砂利道の如く無造作に積まれた燃料・弾薬・鉄鋼・ボーキが各々札が付いていることからわかった。
置いてある大・中・小の計量枡には各々『100』『10』『1』と数字が書いてあることから計量するのはこの枡で人力だと判断する。
「100の枡デカ! ぐおぁ! 重いだろ!」
俺は先ず100の枡に摺切り一杯を盛り持ち上げ…重い! 腰を痛めそうだ! あまりの重さによろけながらもなんとかバスタブにザラザラと音を立て投入した。次々と資材を投入し終えると水は灰色に濁っている。セメント作ってるみたいだ…。いや、誰が見てもセメントだろこれ?
「で、次は攪拌を行ないます‥と。約10分間満遍なく攪拌すべし‥ふむ」
【攪拌棒】と書かれた木の棒というかアイスのデカイバージョン板を手に取る。まるで某有名温泉みたいだな?
アタリと書いてないかなフフって含み笑いを溢しながらバスタブの中へ突き刺し攪拌! ‥攪拌? ‥ぬおぅ! …重い。
「草津ヨイトコ~♪ ってな具合いにやれるかっ! 目茶苦茶重労働じゃねーか!! 」
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「ソロソロゴフンナノ! 」
「テイトクサン オツカレサマ」
「フロニハイッテアセヲナガストヨイ」
汗ダクになりながら10分間満遍なく攪拌作業を終えた俺に妖精達が労いの言葉を掛けてくる。
たまには良い対応するんだな? お言葉に甘えてひとっ風呂浴びたいな!
「存分に汗をかいたようじゃな? 頃合‥入りなさい」
大精霊様はなんとセメント風呂を指差し俺に入れと…
「おいおい! 真面目な顔して冗談キツいだろ? …マジで? 」
大精霊は無言で真っ直ぐに俺を見詰め頷いた。
「服は脱ぐ‥よな? 」
渋々軍服を脱ぎ全裸でバスタブへ足を伸ばす…水面に目をやるとどんより濁って沼のようである。セメント風呂に入れなどと…罰ゲーム‥いや、最早イジメである。
「肩まで浸かり念じるのじゃ! お目当ての艦娘の姿を! 声を! 仕草を! 」
言われた通りに狙いの艦娘を脳裏に描きながら俺は覚悟を決めセメント風呂に足を恐る恐る……!!
「ヒャァ! ハァー‥冷たいっ!! 」
爪先に感じる冷たさに驚いた! バスタブだからとお湯が入ってる訳ではない。南国鹿児島とは言え冬が近いのだから水はかなり冷たかったために変な声を上げてしまう。
「シッカリシロ!」
「キアイデス!」
「ミズモマタスズシイ‥」
妖精どもが何やら俺を鼓舞する…水が涼しい? それを言うなら『火もまた涼しい』だ!
気を取り直し再度‥
俺の裸体はセメントの中に沈んで逝くのであった。
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精霊が言うには、提督が体内から絞り出すエキスの様な物質を加味することでより加硫が良くなるらしい。加硫って…確かゴムとかの製造工程じゃなかったか? 弾性や粘性が良くなるのかな? 艦娘だけにオッパイやお尻が高弾性・高粘性に…よくわからんが俺の股間が高剛性化しそうだ。
そんな心頭滅却してる間に調合完了したらしく、妖精達に促されバスタブから上がる。気づくと濁った水はエメラルドグリーンに変り、まるでバス⚫リンを入れたようである。俺の身体も汚れるどころかキレイになっていた!? ……何故かいい匂いがする? なんというか、お風呂上がりの女の子の香りみたいだ?
「これで‥成功したのか? 」
「ふむ‥これは空母の艦娘に間違いはなさそうじゃな? 」
俺の問いに手応えを感じた様子で大精霊の答は空母とかえってきた!
その言に安堵したのか腹の虫が鳴る。
「もう昼か…足柄特製カレーが出来上がってる頃だな! 」
俺は初っ端から空母建造に成功した達成感を抱きながら建造ドックを後にするのであった。
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厨房に入るとカレーの香りが漂い、艦娘達が昼食の用意をしている姿がある…が、足柄と由良の二人のまわりには駆逐艦の艦娘達がぎこちない手つきでお手伝いしている様子。それにしても‥覇気が無い。
この基地に所属する駆逐艦は主に『睦月型』と『吹雪型』で、睦月・皐月・卯月・三日月・菊月そして白雪・初雪・深雪・磯波に加え曙の10名。
「あそこにいるのは睦月ちゃん… 」
暗い表情の駆逐艦の中で深雪や曙と三人で他の娘達を仕切っているようだ。確か一番艦と言って長姉の立場にあるのが睦月型ネームシップである睦月なのだ。艦娘として覚醒して自身が金剛型三番艦であると知ってからも実感が湧かないでいるハルナは妹達を慈しむような睦月の姿から…
「私の姉…金剛…お姉様……お、お姉様って?‥? 」
無意識に口走った自らの言葉に驚き声を上げていた。
「あっ!? 江田島大尉! いらしてたんですか? 」
その声に、入り口に佇んでいるハルナに気づいた足柄が気づき声を掛けた。その途端に呆然としていたハルナはハッと我に返った。
「あ、ええ。その‥私もお手伝いしようかと思って」
「そ、そんなっ、副官様にお手伝いなんてさせられませんよ! それにもう出来上り‥あっ! 司令官?! 」
「うまそうな匂いがするな~ そろそろ出来上りかと覗きにきたのだが? 」
「出来上り次第執務室へお持ちします‥が? え…? 」
司令官の声に応えながら足柄が振り向くと…彼はそそくさと隣の食堂で席に着いていた。
「私もここで皆と一緒に食べる。駄目‥か?」
前提督は艦娘と一緒に‥いや、そもそも艦娘の兵舎などに入ろうとしなかった。海軍に限らず軍では基本、士官と兵が一緒に食事をしない…ましてや、基地司令官が兵どころか兵器扱いの艦娘となど……ありえない。
「…あ、いえ! 司令がそう仰るなら異論などありません…! 直ぐにお持ちします。江田島副官もお席へ…睦月、貴女はお二人の配膳を頼むわ」
「え‥!? 執務室へ行かなくていいの? 」
「…? 提督はここで召し上がるから執務室へ行く必要ないわ‥よ? 」
睦月のおかしな言い様に首をかしげる足柄であるが…。
「ま、いいか! さあ、皆も手伝ってちょうだい」
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「足柄さんのカレーおいしかったですね! 」
やや後ろを並んで歩く榛名から機嫌良さそうな雰囲気が伝わる。副官として鹿屋基地に着任する頃から俺に対する態度が変化してきているのだが、本人も気付かない内に艦娘として覚醒しつつあるのかもしれない。未だに本人の意思では艤装展開が出来ず、都度妖精の助けに頼っている。実は例外的に指輪を嵌めている時には展開出来る…俺が贈ったダイヤモンドの指輪である。
本物でなく、硝子玉で構わないとハルナ自身も言ったのだが…諸事情により高額な本物を購入する羽目になった曰く付きの品だ。
建造ドックの建屋に戻ると湯煙?‥に霞む建造ドックには白い和装に赤い袴姿の艦娘が具現化しつつある。白い弓道着に赤い袴ときたら間違いない…一航戦の誇りの赤いほうだ!
キタキター! いきなり空母ゲットだぁ!
俺は待望の艦娘を手にいれた確信を胸に抱き、またその為か身体の芯から熱を帯び興奮している。
彼女の姿はくっきりと脳裏に焼き付き忘れる筈無いのだ。何故なら彼女こそが俺の秘書艦! さらには指輪を贈った相手だったのだ! …ゲームだがな。
次第に靄が晴れて彼女の姿が…
突然眩い閃光に包まれ、光が弾けた!
「商船改造空母、隼鷹でーす! ひゃっはぁー!」
「ひでぶっ!!……」
不覚にも変な声を上げてしまった…
光の中から登場したのは軽空母『隼鷹』だった。
絶対的確信を感じ待ち構えていた俺は盛大にズッコケそうになるのを寸前で堪えて彼女に向き合う。
その後、資材が貯まる度に建造を試みるものの(勿論、狙いは赤城)
「瑞鳳です。軽空母ですが、錬度があがれば、正規空母並の活躍をおみせできます」
「きたきたぁ! 鬼怒、いよいよ到着しましたよ!」
「ごきげんよう、三隈です。最上さんはどこにいらっしゃるのかしら?」
「陽炎型駆逐艦十二番艦、磯風。大丈夫、私が護ってあげる」
全て外す結果を繰り返したのだった…
何故か永倉長官からは誉められる…まあ、彼なりの慰めなのだろう? いつも最後には『この調子で頑張ってくれ。…次こそ空母を頼む』などと言われちゃ凹むがな。
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いつしか時は流れ、鹿屋基地も随分と賑やかになっていた。軽空母や航空巡洋艦は横須賀・呉・佐世保など鎮守府へ編入されてゆき、残されるのは軽巡洋艦と駆逐艦ばかりではあったが…
現在、鹿屋基地には鬼怒・矢矧・大淀の軽巡洋艦三人と磯風・浜風・江風・舞風・浦風・谷風‥何故か『風』ばかりが揃った。
風といえば、同名の海上自衛隊初のミサイル護衛艦DDG-163【あまつかぜ】は思い出深い艦だ。実は俺が初めて乗艦した艦なのだ。正確には小学生の頃に一般公開で乗ったんだがな。
【天津風】は無論のこと、【あまつかぜ】も既に海の底だが、さすがに後者の艦娘はないな。ミサイルを装備した艦娘は有り得ない…が、ここでふと考えた。
――沈んだ艦なら艦娘に生まれ変わるのかな?――
「ふ、馬鹿馬鹿しい…その理屈なら帆船まで出てくるじゃねぇか。そもそも、こっちに護衛艦は存在すらしないし‥」
俺は自身で一笑に付していた…
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どれだけの建造を行っただろう?
正規空母の【赤城】‥いや、赤城に限らず戦力となる空母の建造が急務との海軍上層部からの催促に応えるべく邁進した。勿論、そのためのバックアップとして潤沢な資材提供もあった。しかし‥現れるのは『艦これ』ではレア艦とされる駆逐艦が次々と完成したのであった。
そして本日の新造艦が目の前で具現化しつつある。
――あ、また駆逐艦‥――
溜め息が漏れそうだ…
薄っすら見えてきた姿は体つきからして駆逐艦であろう。若干サイズが大きめだから軽巡洋艦かもしれないが…
予想通り、現れた艦娘は駆逐艦である。
俺は内心に蔓延する落胆の気持ちを押し隠し、提督らしく威厳のある態度で彼女に向き合い尋ねた。
「よく来てくれた! 君の名は? 」
「わ、私は…あまつかぜ? ここは? いえ、それより何故、私はヒトの姿…?! 」
駆逐艦【天津風】‥か、ククク‥またレア艦だよ。『艦これ』をプレイしてるのならば俺は歓喜したであろう。しかし! この世界に於いて駆逐艦はレア艦であろうとも駆逐艦でしかない。この世界でレア艦を建造しても誰一人知らないのだよ。そう…『レア艦』などという言葉は存在しない。
「君は再び生を受けたのだよ。軍艦の魂を其身に宿す艦娘としてな! 」
「軍艦…? 」
「そうだ。君は大日本帝国海軍駆逐艦としての生涯を閉じ、海底に沈んで眠っていたのだ。他の艦娘同様に艦であった時の記憶は残ってはいないのではないか? 」
「記憶は有ります。軍艦と仰いましたが、私は正確には軍艦ではありません… 」
あぁ‥そうだね、駆逐艦は軍艦とは…
「私は海上自衛隊所属の警備艦です」
俺は耳を疑った!!
海上自衛隊…だと?
「私の名はDDG-163護衛艦あまつかぜです」
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新造艦の艦娘は駆逐艦ではなく、護衛艦と名乗った。それは俺にとっては嘗て聞き慣れた名称だ。改めてよく見ると艦首を型どった部分には『163』と白くペイントがあり、艤装は3インチ連装砲が二基ある。さらには背中に背負った誘導用イルミネーター…そしてターター発射機。要するに対空ミサイルシステムである。
「そうか、君は護衛艦のほうの『あまつかぜ』なんだな。まさか海自の艦娘が建造されるとは…なっ! なんだと…? 」
おかしい!! 海自の艦でも出てくる可能性あるかもなんて納得しかけて気づく。この並行世界は『自衛隊』が存在しないのだ…出る筈がない。すなわち彼女も俺と同じく別の流れに放り込まれたのか?
「あの‥司令官? で宜しいのでしょうか? 」
「ん、あぁ‥私のことは司令官もしくは提督と呼んでくれ。ここ鹿屋基地司令官の瓜生大佐だ。間違うなよ、一佐じゃなく大佐だぞ。それから、海自ではなく海軍な」
「鹿屋基地? 鹿屋は確か…航空部隊では? 」
これは…他の艦娘から隔離して教育と言うか口裏合わせが必要…
「提督‥こちらでしたか。あら? 」
ドックに入ってきた大淀が見慣れない艦娘に気づいた。
ま、不味い!!
ど、どう言い繕えば良いの??!!
「あ‥あぁ‥ 」
頭ん中はまっ白で何も浮かばん!!
「…とく? 提督? どうされました? 」
「ん、んん? あら? ……夢か」
執務机の上に涎を垂らして寝ていたらしい。大淀が少し戸惑いながら伺うように見つめていた。
「すまん、うたた寝したようだ。どうした? 」
「お疲れのところ失礼します!聯合艦隊司令部から作戦指令が届きました! 」