雨が降った次の日は周子ちゃんと紗枝ちゃんも一緒に観光地を見て回った。
二人は何度か来ているらしく。ここでも案内をしてもらい、穴場とか素晴らしかった。
一日中歩いていたため、陽が傾き始めた頃には足が痛くなるほどだ。
また明日、会う約束をして分かれ。
「今日を迎えたわけなんだが、何する?」
「昼飯食べたら帰らなくちゃいけないですもんね」
「もう帰っちゃうの?」
「予定してたのが四泊五日だったからね」
旅館の出入り口に二人を迎えにいったが、どこかに出かけるわけではなく。部屋でゴロゴロしている。
うつ伏せで寝転がっている俺の腰あたりに周子ちゃんが乗っかり、帰らないでと揺さぶってくる。
「翠にーさん、京都に引っ越せば……」
「いいこと言った! おにーさんがこっちに引っ越せばいいんだよ!」
「残念ながら行く高校決まっちゃってるからなぁ……」
「えー、美味しいお菓子とかたくさんあるよー!」
「翠くん、少しいいなと思ってたりしません?」
和菓子とか美味しかったなと考えていたら、それを察したちっひーにジト目を向けられながら突っ込まれた。
「そんなら、二人が来ればいいんだよ。俺らが通ってた中学とか高校にきたら、後輩になるよ?」
「確か、寮もありましたよね」
「一応は有名だからな」
てきとーに選んだ学校だったが、寮とかあるの初めて聞いたんだが。
他県から人が来るほど有名だったのか。
どうりで、たまに方言が聞こえてきたりするなと思ってた。
親の都合で引っ越してきたとかじゃなく、寮だったのか。
「行く!」
「でも、今のままだと周子には厳しいかもな」
「えっ!?」
「そこそこ勉強ができないと入れないですよ?」
俺らからしたらそこそこなのかもしれないが、きっと周子ちゃんからしたらとてつもないと感じるだろうな。
本気で頑張る気があるなら、そのためのサポートぐらいはするけど。
だからそんな落ち込まなくても。
「勉強は嫌だけど、おにーさんと一緒がいいな……」
「何かを得るため、時にはやらねばならない事がある」
「そんな大層な事でもないが」
「連絡先も交換しましたし、私たちもサポートしますよ?」
紗枝ちゃんも頑張るぞって感じでグッと手を握っている姿が可愛い。
俺に見られていることに気づいて照れた笑みを浮かべるまでがセットです。
「まあ、まだ頑張れば余裕だし。こっちに来たら今度は俺たちが案内してあげるよ」
「俺たちってよりは、私たちって感じだが」
「周子ちゃんたちが来るまでに俺もたくさん出かければええんよ!」
中学に来たとしても三年は余裕がある。
それだけあればいろいろと出かけるぐらいできるだろう。
「それじゃ、二人とも元気でね」
「また遊びに来てね」
「翠にーさん、またね」
わざわざ駅まで見送りに来てくれた周子ちゃんと紗枝ちゃん、二人の母親。
手土産をたくさんもらい、色々してもらったことに対してお礼を言われたが、こっちも案内とかしてもらったし。
そろそろ時間が迫って来てるので、カバンから紙袋を取り出して周子ちゃんと紗枝ちゃんに手渡す。
「これは俺から二人にプレゼント。大事にしてね」
「「ありがと!」」
二人に渡したのは簪だ。
今も似合うと思うが、大きくなった時はもっと合うだろう。
他に男ができると考えたら少し寂しいが、これからも笑っていてほしい。
「そういえば、私たちにプレゼントはないんですか?」
「貰ったこと、一度もないな」
新幹線が駅を出てすぐ、二人がそのような事をいいながら俺を見てくる。
「……勉強?」
「確かにそれもそうですが……」
「形として残るものを貰ってないという事だ」
すっとぼけると思われてるのか、奈緒がどストレートに言ってきた。
…………ふぅ。
「仕方ない。二人にはこれをやろう」
カバンからまた紙袋を二つ取り出し、ちっひーと奈緒に手渡す。
まさか貰えると思っていなかったのか、二人が驚いた顔をしている。
「周子ちゃんと紗枝ちゃんに渡したら言ってくるだろうなとは思ってたから買ったんよ」
「あ、えと……あ、ありがとうございます」
「そ、そのだな……うん、ありがとう」
「何を照れているん?」
ちっひーは出会った頃からずっと後ろ髪を伸ばしている。だからそれを留めるため、オシャレな髪ゴムを。
奈緒は髪を伸ばしていないため、前髪を留めるヘアピンにした。
邪魔にならない程度の装飾が付いているやつを選んだ。
お菓子と装飾が一緒の店で、トイレに行くと抜け出して買ったものだ。
抜け出すのにも苦労したし、買うのにも苦労した。そしてそれを隠すのにも。
今考えたらそこまでする必要はないと思ってしまうが、周子ちゃんと紗枝ちゃんの喜ぶ顔。
ちっひーと奈緒の驚く顔が見れたから良かったとしよう。
当然、碧と母さん、家政婦さん二人の分も買ってある。
じゃないと絶対に母さんが煩いから。
「ん?」
スマホにメールが来たので確認すると、周子ちゃんから写真が送られてきていた。
「…………ふふっ」
さっそく簪をつけてくれたようで。
二人とも似合っている。
☆☆☆
翠たちが帰っていった後の周子と紗枝は周りの男に興味を示さなくなった。
大人からみたらまだ子供なのだが、同年代からしたらどこか大人っぽい雰囲気を感じ。
それに惹かれてか、二人は男子たちからモテまくるのだが、それに靡くことはなかった。
常に二人の心には翠が居り、それに釣り合うよう努力していた。
周子は勉学に励むようになり、分からないところは翠ではなく、ちひろか奈緒に聞いていた。
紗枝もちひろと奈緒に今より進んだ勉強を教えてもらいながら、振る舞いを母親から学んでいった。
二人
その存在に釣り合うことができるのか不安になるときもあったが、それでも努力した。
また、楽しく遊べる日を夢見て。