講義、作曲を全部投げ出したいと考えるほどテンションがおかしくなってきた頃。
といっても、作曲しろと言われて一週間しか経っていないが。
朝、下駄箱にラブレターなるものが入っていた。
『昼休み、例の場所に来てください』
とだけ書かれてあり、差出人の名前もない。
本当の告白か、イタズラか。それとも集団で待ち伏せていて襲われるのか。
ただ、思い当たることがあるので差出人は何となくわかるのだが。
三人に話してはいないが、少し前に一度襲われかけた。いや、あれは襲われたのか。それとも俺が襲ったのか。
どちらでもいいが、しゅがーではーとだとのたまう奴だ。
第三次性徴期に入ったらしく。
講義で俺のことを知り、一人になるタイミングを狙ってきたのだそうで。
誰もこないような場所へと連れていかれ、正面から思いっきり抱きしめられた。
「すっごいスウィーティーな香りがしてたまらない……。ね、ねえ。お姉さんといい事しな──ひゃっぅ!?」
たわわに実った胸の感触とか、女の子のいい香りだとか。
……逆転してる世界で初めてかも。
年が近い女の子にこんな事されたの。
いまだにちっひーと奈緒。加えて楓は距離感を保ってるし、他の女の子たちからも告白すらされた事ない。
少し嬉しかったが、初めてがココは嫌だったので離れてもらうため。
ほぼ同じ身長だから丁度いい位置にあった首筋に噛み付く。
といっても、歯は当てずに唇で挟むような感じだが。
それだけで十分な刺激らしく、俺から慌てて離れたしゅがーではーとな女の子は、首筋に手を当てながら驚いた表情で俺を見てくる。
「な、なななななっ!?」
「こういう事、期待してたんじゃなかったの?」
リボンの色からして俺の一個上だが、敬語とか気にしなくていいだろう。
気付けば立場は逆転し、俺が一歩踏み出せば、彼女は一歩下がり。
二歩踏み出せば、三歩下がっている。
そんな事をしていたらすぐ彼女の背は壁にたどり着く。
逃げ場を探そうとしているが、俺の横を抜ける以外に道はない。
だけど何故、逃げようとするのだろうか。
望むような事をやってあげるだけなのに。
「あ、ああああ、あのあの、こ、これ以上はちょっとまずいかなー、なん──んんっ」
さっきのお返しとして腰に手を回し、正面から抱きつく。
また押し当てられて形を変える胸の感触を楽しみながらキスをすれば、石像のように固まって動かなくなってしまった。
ファーストキスは周子ちゃんだけど、自分からキスしたのはこれが初めてだな。
十秒ほど経ち。二、三歩後ろに下がって離れると、糸の切れた人形のようにペタンと座り込んでしまう。
そしていきなり鼻から血が出て来たので少しビビってしまった。
制服に血がつくのもあれなのでティッシュで拭き、鼻に詰め込むが反応は未だにない。
だからそのまま放って帰ったのだが、そのことについての文句だろうか。
取り敢えず、三人に話すとついて来そうな気がするのでなんとか抜け出さねば。
「ごちそうさん」
「なんだか今日は食べるの早くないか?」
「講義の質問で呼ばれてて。俺一人で大丈夫だから、三人はご飯食べながらこれ聞いててよ」
パパッと昼飯を食べ終え、三人にはとりあえず完成した曲のデータを渡し、さっさと教室を後にする。
何か言ってるような気がするけど聞こえなーい。
誰も後をついて来てない事を確認して、例の場所へと向かえばすでに彼女はそこにいた。
「やあ、お待たせ」
待たせたお詫びにまたキスの一つでもしてあげようかと近づけば、距離を取られてしまった。
貞操観念逆転ぷらす発情期っていうものまであるのに、何故?
その事について考えようとしたら咳払いが聞こえたため、そちらを見る。
そこには顔を真っ赤にさせたしゅがはがジッと俺を見ていたかと思えば。
「わ、私と付き合えよっ☆」
ここにきて急にしゅがは登場
かわいい。結婚したい
九石翠
ラブレター、初めて貰った
佐藤心
話し方は少し意識してるけど、まだ「しゅがは」ではない
向こうからキスしてくるとか☆
もう付き合って結婚まっしぐらでしょ☆