貞操観念逆転ガールズ   作:不思議ちゃん

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中学生編からうんたら書いたような気がしますが、予定変更
中学生編でちっひーの親睦を深めることにし、高校生編で暴れることに
なので中学生編も若干飛ばし飛ばしになります

世界観の設定を書き加えました
(千川と翠の息抜きでの会話。背の部分)


中学生編
緑の悪魔の話


「あの、九石翠さんですか?」

「ん?」

 

 中間テストの順位が張り出された翌日の朝。

 靴を上履きに履き替えていると名前を呼ばれたので声がした方を向けば、一人の女子生徒が立っていた。

 ……が、俺にはその子が誰なのかまったく分からない。

 一応、言葉を交わした人の顔は覚えている。

 ということは、初めましての子だろう。

 

「千川ちひろと言います。放課後、話したいことがあるのですが、お時間ありますか?」

「んー、多分大丈夫だと思う」

「でしたら放課後、図書室で待ってます」

 

 律儀に頭を一度下げ、千川さんは去っていった。

 多分大丈夫と言っちゃったが……まあ、母親に多少煩く言われるだろうけどなんとかなる。

 クラスメイトに挨拶をしながら教室へ…………ん?

 

「…………」

 

 去っていったほうを見ても既に後ろ姿はないのだが……あの子、千川ちひろって言った?

 千川ちひろって、あの千川ちひろ?

 鬼、悪魔、ちひろのちひろ?

 緑の悪魔の?

 

「九石くん、どうかしたの?」

「おはよう。ちょっと考え事してた」

「うん、おはよう。そっか。ジッと動かないから心配したよ」

 

 考え事をして立ち止まっていたらクラスメイトの男の子に心配されてしまった。

 そのまま一緒に教室まで行き、自分の席についてもう一度さっきのことを考えてみる。

 

 知ってる髪型ではなかった。

 だが、確かに顔立ちは似ている。

 早速目をつけられてエナドリ売りつけられるんですかね……。

 

 

 

 こういう時に限って時間が経つの早く感じる。

 放課後になり、いつもなら家に帰って碧と家政婦さんが作ったお菓子を食べてゴロゴロするのだが……。

 電話かメールしか使えないスマホ(連絡先は母さん、碧、家政婦二人の四人だけ)で母さんに少し遅くなるとメールすればすぐに電話がかかってきた。

 いま出ると怠いからブッチ……できたらいいなぁ。

 下手にそういうことしたり電源切ると乗り込んできそうだ。やった事はないけど何となくそんな気がする。

 

 なので母さんのいうことは無視して『友達と少し話してく。邪魔したらしばらく話さない』とだけ伝えて電話を切る。

 すると再び電話がかかってくることはなかったので、これで落ち着け……ないな。

 あの千川ちひろに呼び出されているのだから。

 

 少し重い足取りだが、止まらない限り目的地にはついてしまうわけで。

 図書室の戸を開けて入れば千川が一人、本を読んでいた。

 

「お時間いただき、ありがとうございます」

「話したいことって何かな?」

 

 近づいていけば俺気付いたようで、席に座るよう促されたので腰掛ける。

 ……今更だが、もしかして俺に春が来た可能性もあるのか?

 放課後、誰もいない部屋に二人きり。

 そう考えると急にドキドキ──。

 

「九石さんにはどのように勉強しているのか、お聞きしたくて」

 

 ああ、うん。恋愛なんてあるわけないよね。

 それにしてもどのように勉強、かぁ……。

 

「嫌味になるかもしれないけど……特に何も……」

「何もしてない……?」

「……基礎さえできればあとは応用だし」

 

 なんだか気まずいので髪を指先に絡めてクルクルと弄って気をそらす。

 ……髪の毛、伸びたなぁ。

 切りたいんだが、母さんと家政婦さんたちならまだしも、碧にまで言われたら断れない。お菓子食べたい。

 

(……私が間違えたのも基礎だし)

 

 何やら小声で呟いてるが、用が済んだなら帰っていいのだろうか。

 遅くなりすぎても母さんになんだか悪いし。

 

「あの」

「ん?」

「授業で分からないところを教えてもらってもいいでしょうか?」

「今のところ、分からないところはないんだけど……」

「あっ、いえ……その、私が分からないところを、九石さんに聞いても……」

 

 …………恥ずかしい間違い方をした。

 体質的に顔が赤くなると分かりやすいから余計に恥ずかしさがある。

 

「……休み時間とかでいいならいつでもいいけど」

「ありがとうございます」

 

 用も済んだようだし、カバンを肩にかけて母親の元へ向かう。

 そこまで時間が経っていないにせよ、少し早足になっている。

 

「お待たせ。……電話でキツイこと言ってごめん」

「ううぅ……翠に嫌われたらもう生きていけない……」

「…………今日、一緒に寝てあげるから許して」

「分かった!」

 

 車に乗り込めば母さんはガチ泣きしていた。

 謝った程度だとこの状態が続くのは経験済みなため、ここは恥ずかしいのを我慢するしかない。

 

 この母親、未だに俺が部屋を欲しがって一緒に寝れなくなったのを根に持っている。

 碧も俺と一緒の部屋で寝ているため、余計酷く。

 

 だから一緒に寝ると言っただけなのに、さっきまで泣いていたのかと疑うほどいい笑顔を浮かべる。

 もう少し子離れしてほしいものだ。

 

☆☆☆

 

 期末テストが始まるまで千川は昼休みに何度も俺の教室まで足を運び、分からないところを聞いてきた。

 

 ここにきて質問し、戻って昼飯食うのも面倒そうだ。

 質問に来る頻度が多いなと思ったから、弁当持ってきて一緒に食えばいい。と提案してからは多少仲が近づいた気がする。

 名前の呼び方が少し変わり、口調も少し柔らかくなった。

 

 それを見たクラスメイトたちも授業で分からないところを聞きに来るといったことが増えた気がする。いや、メッチャ増えた。

 千川を見て、聞けば教えてくれると分かったら聞きに来るとは。

 皆、向上心があっていいことだ。

 ただ、肩が触れたりするほど距離が近いのは少々いただけない気がするが、俺的には役得なので大歓迎である。

 

 そして迎えた期末テストの結果であるが、その結果は。

 

『成績上位者』

一位 九石 翠   500点/500点

二位 千川 ちひろ 497点/500点

三位 日草 奈緒  492点/500点

 

 といった感じになっていた。

 中間テストの時もそうなのだが、三位と四位の間に点数の差が10点ほどある。

 千川とまだ会ったこともない日草さんはそうとう勉強ができる。

 俺は半ばズルだから、そこまで誇れるものじゃないのだが。

 

 それにしても今週が終わったら夏休みに入る。

 日差しが強くなるからなぁ……。

 家から出ないとはいえ、気分的な問題で好きじゃない。

 あと暑いから。

 

 中間テストのとき、オール満点とったらたくさんの本とCDを買ってもらえた。

 これまで音楽すら聞いてなかったんだなと今更ながらに思ったものだ。

 今回の期末テストでオール満点取れたらピアノを買ってくれると約束しているのだが……安物で十分なのに、バカにならない金額の本格的なやつである。

 ……うん。これで今年の夏休みはそれほど暇しないだろう。

 

 スマホが震えたので確認すると千川からメールが来ていた。

 母さんに『友達となら連絡交換してもいいわよ』と言われていたので交換したのだ。

 交換したのが女子だと分かった途端に連絡先消されそうになった時は焦ったが、なんとか認めてもらえた。

 

 ちなみに今きた千川のメールは『次こそ満点とります』とだけ。

 他に何も書かれていないからこそ、母さんが認めたんだが。

 

 そういえば俺の所属するクラスだけ平均点が高いらしい。

 これも皆が頑張ってきたからだろう。

 夏休みにサボらないといいんだが。

 

 

 

 

 

 夏休みに入って一週間が経ち。

 バカにならない金額のピアノが届いた。

 俺の知らぬ間に防音部屋もしっかりと用意していたらしく、今日から練習を始める。

 母さんは弾けないらしいが、家政婦さんが二人とも弾けるらしく。日替わりで教えてもらうことに。

 

 宿題なんてものはピアノを待つ間の一週間で終わらせてある。

 後はみっちり練習の日々と意気込んでいたのだが。

 

『一緒に宿題をしませんか?』

 

 ピアノが届いた翌日。

 千川からこのようなメールが届いた。

 残念ながら俺は外に出ることができない。

 なので家に誘ってもいいか母さんに聞けば二つ返事で許可が取れた。

 断られると思っていたが……まあいい。

 

 住所を送ると歩いて来れる距離に千川の家もあるらしく、三十分も経たないうちにインターホンが鳴る。

 

 母さんの雰囲気がいつもと違うように感じたが、千川を部屋へと案内する。

 わざわざ持ってきてくれたらしい手土産は家政婦さんに渡しておいた。

 宿題をするため、邪魔しないようにと伝えて家政婦さんから飲み物を受け取り、部屋にこもる。

 

 すでに宿題を終えたことを伝えると驚いた様子はなく、そんな事だろうと思っていたらしかった。

 分からないところがあったらしく、それを教えて欲しいのだとか。

 

 小学校に通ってた時は図書室にこもっており。友達どころかほとんど人と話してこなかったため、こんな夏休みの過ごし方は少し新鮮だ。

 

 分からないところの解き方を全部教えるのではなくアドバイスにとどめ、その横で俺は曲を書いていた。

 確証はないが、前世で有名な曲が今世にないため、それを思いつける限り書きだしている。

 それを弾くための腕前はまだないが、そのうち弾けるようになるだろう。

 

 宿題が終わっても千川は家に遊びにきていた。

 母さんや家政婦さんたちも何か言ってくることはなく。

 千川は家に来た本を読んだり、自習していて分からないところを俺に聞いてくる。

 …………?

 

「千川って、遊ばないの?」

「そんな事をしている暇はないです」

 

 余裕が全くないように見えるのは気のせいで無いのだろう。

 …………はぁ。

 

「今からそんな事してたら、そのうちダメになるよ。今日は勉強中止にして息抜きをしよう」

「……息抜きって、何をするの?」

「何って……二度寝したり、昼寝したり、ゴロゴロしたり」

「寝てばかりですね」

「そんな一日があってもいいって事だよ。ずっとはダメだけど、たまにはそうやって休まないと」

 

 勉強も大事だが、それ以上に価値のあるものなんて他にいくらでもある。

 このままだと千川がダメになってしまう気がしたので教材を遠ざけ、クッションを押し付ける。

 

「……なら、お話も息抜きになる?」

「なるなる。めっちゃなる」

「それならお話しましょう」

「話ってそうやって始めるものでもないけどね。……いいよ。なんでも聞いてくれて」

 

 冷えた麦茶を一口飲んで喉を潤す。

 果たして千川は何が聞きたいのだろうか。

 

「……その、直接聞くのはどうかと思うのだけれど」

「構わないよ」

「なら……九石くんは女子と二人きりになって、襲われるかもと思ったことはない?」

 

 女子と二人きりになって……襲われる?

 俺が、女子に?

 

「そういったことを私がしたいというわけではないの。ただ、そう思ったことはないのかなって。他の男子と違って九石くんはいつもと変わらないから」

「んー、よく分かんないけど、たぶん無いんじゃない? 千川はこうして話してる時も普通だから」

「…………? 何か違うの?」

「千川以外の女子は話すとき、なんだか獲物を狙うような目をしてる気がしてさ。それとそんなにスキンシップしてこないじゃん?」

 

 スキンシップが悪いとは言わないが、健全な男子の性欲を舐めてもらっては困る。

 今のところ、手を出してはいけないとアラームが鳴っているからなんとかなっているが。

 

「九石くんは皆の好意に気付いてないの?」

「好意……なの?」

「顔立ちが整っていて勉強ができる背の高い男をほっとくわけないじゃない」

「そんなもんか」

 

 背が高いと言われたが、この世界では男性だけ、前の世界より平均身長が10センチほど低い。そして女性の平均身長は高くなっている。

 小学生の時に身体測定で知ったのだが。

 なのでほとんどの女性が男性より背が高くなるため、比較対象に女性は含まれないらしく。

 男性の中でのみ比較(・・・・・・・・・)し、背が高い。ということらしい。

 だから千川はすこし低い部類に入る。

 

 それってやっぱり、好意ってよりはアクセサリー感覚で手に入れたい事なんだと思う。

 だから狙われているような気分になるのか。

 

 だが、それを除いても俺と千川に何か齟齬があるような気がする。

 会話の流れってよりは、もっと根本的な意識のあり方。

 それが何なのかは分からないが、結構重要なことのように思える。

 

「話すのも楽しいのね。もうこんな時間」

「また遊びにくればいいさ」

「うん」

 

 夏休みの間、千川は週四で家へと通うようになる。

 碧の宿題も見てくれるし、友達が家に遊びくるだけで夏休みがこれほど楽しくなるとは思ってもみなかった。




九石翠
何でか知らないけど、まだ貞操観念逆転していることに気づいてない
若干、天然がちらほら
ピアノの腕が上達中

九石碧
お菓子作りの腕が上達中

九石母
翠のことを反抗期かと不安に

千川ちひろ
勉強しかしてこなかった真面目ちゃんなので異性に敏感じゃない
今後、翠のせいで……

その他女子
一夫多妻のため、嫉妬はあるが蹴落としたりイジメはない
一歩抜きん出たちっひーを羨ましく思っている
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