ただのキスでは終わらず、舌まで入れられた。
興奮して漏れる吐息に女の子のいい香り、胸の感触もろもろでナニが反応するのも仕方がないと思います。
……ああ、逆転してる世界だから、いまのことがほぼまんま、心にも当てはまるのか。
ってことは心は濡れ──。
密着しているため、硬いものは当然心も分かっているわけで。
キスをやめて一度離れた心は俺の下半身に目を向けたあと、初めて見せた時以上に蕩けた表情をしていた。
心は俺の右手を取ったと思えば、胸に導き。
「私、こんなにドキドキして──ぁっ」
手のひらに柔らかな感触が伝わってくる。
我慢できず指に力を入れたら、確かな弾力と柔らかさが。
感度が高くて反応してるらしく、両手で右手をさらに押し付け、縋るような目を向けてくる。
だから俺は──。
…………ああ、やっちまった。
教室へ戻る途中だが、軽く落ち込んでいる。
あんな所で初めては嫌だと思っていたのに。
へばった心をあそこに置いていったが、もう知らん。
それにしても、いつもより向けられる目線の質がなんか違うような……。
さっきの心と同じように熱のこもった感じがする。
…………さっさと教室に戻るか。
「たっだいまー」
「おかえり。長かった──翠くん?」
「…………うん?」
教室に戻ると楓が笑顔で迎えてくれたのだが、優しい笑顔から冷たい笑顔に変わった気がする。
あと、教室がなんか騒がしくなって皆が俺を見ているような……。
「翠、ちょっとこっちこい」
友達との会話をやめたちっひーと奈緒がこっちにやってきたかと思えば、顔を真っ赤にしながらも俺の手を引っ張って人の少なそうな場所へと移動する。
もちろん、楓も後をついてきている。
心と会っている例の場所じゃないことにどこか安心しつつも、なぜこんなところに連れてこられたのか。
「……不躾な質問ですけど」
「どんとこい」
「翠くん、……その、ォ、……しましたか?」
「ごめん、なんて?」
「で、ですからっ!」
よく聞こえなかったから聞き返したのだが、まるで俺が悪いみたいに言われた。
そのままちっひーは顔を真っ赤にしてゴニョゴニョと言い始めたので奈緒から聞き出せば、一人ではげんだのかと聞かれた。
「……ああ、(一人じゃないけど)はげんだよ」
「だからか……」
「なるほどね……」
奈緒と楓はなにやら納得しているが、俺にはさっぱりである。
「その、な? 匂いがするんだよ」
「え、臭いの?」
「物理的なってよりは、フェロモンみたいな感じ? 臭い云々じゃなくて、魅了されるような感じ」
「いままで性徴期に入り、重い日でも狭い部屋の密室じゃなければ過ごせていたのはソレが無かったからだ」
つまりは致してしまったから、俺にさらに敏感になると……?
そういえばこれまでずっと、一人で処理したりすらしてこなかったな……主に講義やらのせいで。最近だと作曲もか。
「つまり、俺はどうしたら?」
「さらに女の人から狙われるの。気をつけてね。……ちひろさんと奈緒さんもそのうち狼になっちゃうと思うから」
気づけばちっひーがいなくなっていた。
処理をしに行ったのかな?
「取り敢えず、いままで以上に気をつけてくれ。特に性徴期に入ってるはずの二年生と三年生には」
もう、遅いと思います。
その二年生に襲われたので。
「ちひろさんと奈緒さんは性徴期に入ってるから、用事がない限り私が翠くんの側にいると思うよ」
「面倒かけるが、すまんの」
「好きで側にいるから、気にしないで」
放課後を迎え、家に帰ったのだが。
ちっひーと奈緒は無理だと帰っていってしまい、練習をするわけでもなく俺の部屋へ楓を通したのだが。
「んむっ」
その楓に俺はベッドへ押し倒され、キスをされていた。
「ふふっ、ごめんなさい」
口では謝っているが、これからまだまだやりますよと表情が語っていた。
「──私が狼になっちゃいましたね」
描写ないけど、翠と心のことを見ている人物が……
九石翠
遂にやらかしてしまった……
千川ちひろ 日草奈緒
真面目が邪魔して色々と先越される
高垣楓
ちひろさん、奈緒さん、ごめんなさい
佐藤心
人生ほぼ勝ち組