碧に母さん、家政婦さんもおらず、完全に二人きりの状態。
横になっている俺の腰に楓が跨って乗っているので、どかさない限り逃げるのは無理だ。
しかも外に出る選択肢はない。
ここが俺の家であるため、逃げても逃げられないという。
今の体勢も衣服がなければ大切なところが直接触れている。
「こうなりたいと思ってた」
楓が上体を倒し、慎ましい胸が押し付けられる。
頰に手を添えられて軽くキスをされたかと思えば、首筋を下から上へなぞるように舐められ。
耳元で囁き、耳たぶを甘噛みされる。
「翠くんの子ども、欲しいです」
そこから先は記憶になかった。
いや、記憶に残ってるけど。
朝のアレで何かハードルが下がったのか、いつもなら断れるだろうけど無理だった。
一時間ほどで楓がへばった後。
換気や片付け、風呂にも入って証拠隠滅を頑張った。
「……私、今とても幸せです」
色々と終え、今は俺が楓を膝枕をしている。
なんて返したらいいのか分からなかったので、髪を撫でて誤魔化したのだが。
今の俺、文面だけで表すと相当なクズみたいだと、ふと思った。
だが待って欲しい。
この世界では子どもに対する手当てが厚く、可能ならば高校、大学在学中でも構わないという。
まあ、高校以降は男が学校に通わないため、ほとんど叶わないのだが。
男に縁のない女性は職に就いてから人工授精が殆どなのだとか。
俺と碧もそうであるらしいが、今更どうでもいい事だ。
男が減っているため、男を産むと手当てが更に貰える。
だから母さんは俺と碧を産んだため、働かなくても十分養えるほど貰ってる筈だが仕事をしている。
なんでも、『腐る』だとか。
「どうかしたの?」
「んー、何しようかなって」
考え事に集中しすぎて心配させてしまったようだ。
誤魔化すため口にしたが、今後何をしようか考えてるのも本当である。
「バンドにもう一人加えるのはどう?」
「誰かいい人おるん?」
「翠くんが会ってた、先輩はどう?」
「んー…………んんん?」
ナンデカエデガシッテルノ?
「翠くんと先輩がキスしてるところで教室に戻ったんだけど、匂いでやったんだなって分かったから。……だから押し倒したんだけど。ふふっ」
なんでも、俺と心がやっていなかったら押し倒さなかったらしく。
確実に受け入れてくれると確信があったからなのだとか。
……お、女の人って怖いっすね。
「ふと思ったんだけど、嫉妬したりしないの?」
「んー、少し思うけど、こうして一緒になれたからいいかなって」
「そんなもんなの?」
「友達と話してても、何番だって構わないって子が多いよ?」
そんなものなのか。
結婚できずに人工授精する人がいるぐらいだから、結婚できただけで勝ち組のようなものと一緒かな。
「ちひろさんと奈緒さんは真面目だから、翠くんから手を出さなきゃね」
「増えても気にしないもんなの?」
「みんな一緒の方が楽しいでしょ?」
当たり前、といった感じで微笑みながら答える楓を見て。
うだうだ考えているのがバカらしく思えてきた。
まだ知らないルールがありそうだが、取り敢えずはみんなで楽しめていたらいいかな。
九石翠
やっちまった……
高垣楓
ふふっ