貞操観念逆転ガールズ   作:不思議ちゃん

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昨夜、日間ランキングに載ってました!
ありがとうございます!


どストレート

「翠。ちょっと話があるんだけど」

 

 母さんにそう言われてテーブルに向かい合う形でイスに座れば、どストレートに誰とやったのか聞かれた。

 なんで分かったのか聞けば、なんとなくだとか。

 

「朝に先輩。家に帰ってから楓と」

 

 女の人の勘はたいした根拠もないのに問い詰めてくるから面倒だ。

 なので素直にゲロったのだが、ショックが強過ぎたのかテーブルに突っ伏してしまった。

 

「ちひろさんと奈緒さんは?」

「今後の成り行きかな?」

「側から見たら、すでに兄さんの嫁みたいなものだもんね」

 

 俺の弟をやっているだけあって、嫁が何人いようが驚かないらしい。

 ってか、ちっひーと奈緒は側から見たらそうなるのか。

 気楽に付き合ってきたから、そんな意識はしてこなかった。

 ……まあ、今回の件で意識というか、少し気になってきたりするのだが。

 

「兄さんの先輩さんはどんな人なの?」

「んー……からかうと面白い反応してくれるオモチャ?」

「あはは。兄さんらしいや」

 

 碧も俺に影響されて、そのうち嫁さん五人くらい連れてきそう。

 

「佐藤心って言うんだけど、バンドに加えようかなって。キーボードか、もう一人ギターとして」

「あの動画、ものすごく話題になってるよ? グループ名も書かれてないから、勝手に『覆面』って呼ばれてるけど」

「あー、名前考えるの面倒だったからなぁ……」

 

 碧の手作りクッキーを食べながら、今からでも名前考えるか。というのを考える。

 もう『覆面』で定着したならそれでも構わないんだが、他の面々プラス心にも聞いておこう。

 

「翠、お母さんは認めませんからね」

「何を認めないのか分からないけど、嫁さん候補なら少なくとも後二人いるから」

「きゅぅ……」

 

 母さんの暴走に付き合うほど暇じゃない。

 『あと、二人……』『少なくとも……』と呟きながら、再びテーブルに突っ伏している。

 

「碧は何かいい名前思いつかん?」

「んー……兄さんたち、素顔は今後も隠す感じ?」

「おう」

「なら『幽霊』とか、仮面を何かかっこいい感じで表したりとか?」

 

 『幽霊』は、素顔が分からないので本当に実在するのか。みたいな意味を持たせたい感じか。

 かっこいい感じだと……ロシア語かなぁ。

 

「маскировать……かな?」

「ますけら、ばーち?」

「仮面をロシア語にしてみただけ」

「結構いいんじゃない?」

 

 碧の反応もいいので、結局は相談することなく決定した。

 明日は休みだし、全員の顔合わせするか。

 

 今日学校で明日休みなら、今日も休みにしてくれたらいいのに。

 

 

 

 

 

「これが佐藤心な。一つ上の二年生」

「これって言うな☆」

 

 朝から全員を呼び出し、リビングで顔合わせしている。

 

 心と楓が来た時に母さんが騒がしかったので、『母さん、うるさい』と感情を込めずに言ったら部屋の隅でいじけ始めた。

 前の世界だと、娘が父親に向けて言う『一緒に洗うのやめて』と一緒だろうか?

 

 碧も母さんのそばにお菓子を置くだけで何も言わずにいるし。

 うるさいと思っていたのは一緒ということか。

 

「さて顔合わせ済んだし、本題に入るか」

「ちょ☆ 私に自己紹介して欲しいゾ☆」

「俺の本題のが重要だ」

「酷い☆」

 

 話一つするだけなのに進まない。

 三人を見習って欲しい。大人しくしてるではないか。

 ……楓も、慣れてきたんだな。

 

「心。お前、キーボードとギターどっちがいい?」

「ど、どっち?」

「いいから答えろ」

「き、キーボード……?」

「おし。俺らのバンドにキーボードが加わるぞ。やったね!」

 

 まだよく状況を理解していない心。

 その慌てている心を見て優しい目を向けている三人。なんだか歓迎しているようだし、今後も大丈夫だろう。

 

「バンドの名前だけど、『маскировать』に決まったから。異論は認めん」

「『маскировать』……ロシア語だな」

「日本語だと『仮面』ですね。素顔を出さない私たちにはいい名前だと思います」

「ますけら、ばーち?」

「心、黙って話聞いてろ」

「辛辣☆」

 

 その流れは昨日、碧がやったんだよ。

 

「あと、心。俺らのバンドのこと、秘密だから」

「え? なんで?」

「じゃなきゃ姿隠してる意味ねーだろ」

「佐藤先輩。これが私たちのバンドです」

 

 見てもらった方が早いだろうと、ちっひーがノートパソコンで俺らの動画を見せる。

 

「え、これ……え?」

「説明、怠い。後よろしく。これがキーボードの譜面ね」

 

 面倒なことは全部三人に丸投げし。

 俺はまた作曲だ。

 ……作ってないのに作曲でいいのだろうか?

 

 

 

 しばらくして防音部屋にやってきた四人はだいぶ打ち解けたように見える。

 自己紹介も終えたのか、互いに下の名前で呼びあってるし。

 

「あ、そういえば」

 

 キーボードの準備を四人でしているとき。

 ふと思い出したように楓が口を開く。

 

「私と心さんは翠くんとやりましたけど、ちひろさんと奈緒さんはいつやります?」

 

 んんんんん。

 どストレートすぎるでしょ。




「ロシア語」のバンド名。「ロシア語」
綴り違ったらすみません…

九石翠
たまに、俺がついていけない……

千川ちひろ 日草奈緒
──ふぁっ!?

佐藤心
な、ななななななあっ!?

高垣楓
みんな一緒だと、楽しいです

九石碧
最近、凝った和食にハマってる

九石蒼
反抗期、辛い……

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