「俺そんな話、聞いてない……」
「僕も聞いたのさっきだから」
というわけなので母さんに詳しい話を聞いたのだが、なんだかあまり話したくないように見えた。
何故、苗字が違うのかといえば『九石』は旧姓なのだとか。
家がどうのとか、そこらへんの話も話そうとしていたが、興味ないので断った。
そういえば一度も里帰りなんかしたことなかったな。
話を戻すと、一ノ瀬志希ちゃんは母さんの妹の娘さんだそうで。
しばらく預かって欲しいと頼まれたそうだ。
「まあ、従姉妹が来るらしいけど気にしなくていいよ」
「僕と家政婦さんたちで相手するから、皆さんはバンドの練習頑張ってください」
「それでいいのか?」
「いいんじゃない? まあ、頑張るのは心だけだから三人は構って貰ってもいいけど」
「扱いが酷い☆」
来るのは明日だそうで。
と言っても小学三年生だ。
何かが起きるわけでもあるまい。
うん。嗅覚が鋭かったような気がするけど、何も起こらないさ。
俺は今、件の志希ちゃんにキスをされている。
首に腕を回され、逃げられないようにされて。
朝、俺と碧を妹に合わせたくないのか。
母さん一人で志希ちゃんを受け取った。
そしてリビングで自己紹介をしたまではよかったが、母さんは仕事に行った後が問題だった。
「不思議な香りがする」
そう言って志希ちゃんはずっと俺にひっついている。
ここまではまだ良かった。
問題はちっひーたち四人が家に来てからだ。
ソファーに座っていた俺の横でベッタリな志希ちゃんのお陰で動けない俺の代わりに碧が出迎えてくれたのだが。
四人がリビングに入って来た時、志希ちゃんが匂いを嗅ぐ様子を見せたと思ったら対面する形で俺の膝の上に乗り。
首に腕を回されてキスをされた。
ただのキスでなく、いつぞやの周子ちゃんみたく舌までニュルリと入ってきた。
積極的に俺の舌とからめるような動きをさせている。
「最近の小学生は手が早いな☆」
心には後でお尻たたきのお仕置きが必要だ。
それはそうと、志希ちゃんをやんわり離そうとしても無理だった。
いつまでされるんだろうと、半ば諦めていたら志希ちゃんが離れた。
楓が助けてくれたようで、お礼をしようと思ったんだが。
「──んむっ!?」
流れるような動きで今度は楓がキスをして来る。
志希ちゃんとのキスで半ば酸欠気味だった俺は考えるのを諦めた。
もう、なるようになれ……。
あの後にちっひー、奈緒、心とキスが続いた。
なんだ……嫉妬ないのかと思ったがあるのか……。
ただ、もう少し俺に被害がない形がいいな……。
「
「んー、まだなんじゃない?」
「なら、志希と一番最初に婚約しよ!」
「んー、無理なんじゃない?」
取り敢えず皆の足並みを揃えるため、追加で作った曲の譜面は配っておらず。
心の練習に付き合ってるのだが。
俺の側にはずっと志希ちゃんがくっついている。
呼び捨てにされているけど、特に不快というわけでもないからそのまま呼ばせている。
このまま話していると練習の邪魔になるだろうから志希ちゃんを抱え、リビングのソファーへと移動する。
「志希、翠に興味津々なの! だから二人きりでいいことしよ!」
また俺と向き合う形で膝に座った志希ちゃんはそんなことを口にする。
「まだ小学生には早いかなー」
「志希はもう海外の大学卒業してるんだから!」
「んー、ギフテッドかな? 志希ちゃんは賢いんだね」
「だからもう子どもじゃないの!」
んー、なかなか面白い育ち方をしてるというか。
ゲームの志希ちゃんはこんなに早かったかな?
学力としては十分だと思うが……大事なことが欠けているような。
あまり俺が言えたことではないが。
「そうだな……志希ちゃんが十八歳になっても同じ気持ちなら、またプロポーズしてよ」
「あと十年も待つの無理!」
「そんなに長く俺のこと好きでいるの、無理?」
「むむむ、翠はずるい言い方をする」
そうでもしないと口で勝てないから。
「志希ちゃんはたぶんこの先も俺の事が好きでいる気がするけど、もう少し周りに目を向けてみない?」
「向けたけど、つまらなかったよ?」
「んー、そっかー」
何か他に興味を向けられるようなもの……。
「一緒にバンドでもしてみる?」
「バンド?」
「これがやってる事なんだけど」
一度、退いてもらってノートパソコンを持ってくる。
そんで載せている動画投稿サイトをひらき、志希ちゃんに見せてあげる。
「お、また再生数が伸びてる」
「これ知ってる。翠がやってるの?」
「正確には俺たちだけどね。もう一人、ギターを増やそうかなと思ってたんだけど、やってみる? 始めたら途中で投げ出すの、許さないけど」
「んー……」
悩んでるようだけど、少しは興味を持ってくれたのかな。
毎回、キャラごと書くの……諦めます