目が覚めたら昼を少し過ぎており、周りにはちっひーたちが寝転がっている。
布団や部屋が綺麗だからあれは夢だったのか。なんて思ったりはしない。
部屋の間取りが違うため、掃除をするために移動させられたのだろう。……手間賃はちっひーたちに出してもらおう。
前の世界だと男一人でハーレムなんて人によっては軽蔑なんだろうが、この世界だとどう思われるのだろうか。
勝手な推測だとちっひーたちが羨ましいとか、俺が男として勝ってるとか?
でも性欲が薄いってのは話に聞いただけだし、もしかしたら俺と同じように数こなせる人がいるかもしれない。なんなら転生者だっている可能性がゼロじゃない。
……これは考えても答えが出ないし、もしそういった人と会ったらその時に考えよう。
「…………お腹すいたな」
思えば夜通し搾り取られ、さらには朝飯も食べずに追加である。
でも、幸せそうに寝ているみんなを見てたらまあいっかと思えてくるから不思議だ。
近くで寝ていたちっひーの髪を撫でながら、そんなことを思う。
あれからすぐに全員起きたのでお昼を食べるために外へ向かう。
もちろん、出る前に旅館の人へ謝罪するのを忘れない。
……その時に熱い目でじっと見られた気がするが、ナニを期待していたんだろうか。
変装なのだが、俺はもちろんのこと、ちっひーたちにもしてもらう。
俺だけでなくみんなのファンクラブもできているし、顔も広く知れ渡っている。
ゆっくりするためにきているのだから、バレるリスクは極力無くしていきたい。
昼を食べ終えた頃にはおやつの時間がそこまできていた。
長い時間激しく運動もしたからみんなもガッツリ食べていたし、お腹もいっぱいだろうからデザートは少し時間を置いてからと思っていたが、俺も含めて全員が一品ずつ頼んでいる。
甘いものが別腹なのは男も女も関係ないのだ。
「俺はある程度見てきたし、みんなが行きたいところでいいよ」
ゆっくりするついでにどこを見て回るか地図を広げて話し合うことにした。
俺一人だと適当にブラブラ歩いてくだけなのだが、チヒペディアとナオペディアがいるのでナビは任せて安心である。
流石と言うべきか、俺から場所を聞くなり調べていたらしく。
隠れた名店であったり、穴場だったり。
杏ちゃんとブラブラしていた時にたまたま見つけたやつもあったが、二人の情報収集は凄まじいな。
そのうち、脱走してもすぐに見つけられそうな気がする。
旅館には出る前にちっひーが伝えていたらしく、夜も外でご飯を食べ、夜景を楽しんだりと日付が変わる時間まで出歩いていた。
そのまま三日ほど楽しみ、家へと帰ったのだが。
家について玄関のドアを開けるなり、母さんが涙や鼻水を垂らしながら俺の腰へと抱きついてきた。
顔を俺へと押し付けながら話しているため聞き取りにくかったが、『翠ちゃん、とても心配したんだから』と言っているようだ。
リビングから顔をのぞかせている碧が少し疲れているように見えるから、この母さんを宥めるのにそうとう労力を割いたのだろう。
頭を撫でてあやしながら、いい加減子離れしてくれてもと思うが……なかなか生まれない男だもんな。
前の世界で娘を嫁に出す父さんたちがこんな感じなんだろう。
……そしたら男沢山つれて家に帰ってきてるようなもんなのか。
俺、母さんに相当なストレスあげてる?
そのあと二時間ほど引っ付かれ、一週間一緒に寝ることでようやく許しをもらえた。