これ書いてくれって言われたんで更新です
「……はぁ」
机にカバンを置くと同時にため息が口から漏れ出る。
今日一日は災難な日だった。
朝、定期を忘れたことから始まり、つい先ほど帰ってくるまで。
引っ越したことを忘れて前の家まで行ったときには道端で膝から崩れ落ちそうですらあった。
親の都合もあったが、せっかく学校から近い距離に越してきたというのに、今までよりも時間がかかっていては意味がない。
制服から着替えるのも億劫になり、そのまま布団へと倒れこむ。
大学の受験が控えているため、こんなことをしている暇はないのだが。
これから先、どう生きていくのか未来の自分が想像できないでいる。
「このまま無意味に生きていくのかなぁ……」
男の人との出会いなんてほとんどないし、何か目標とかでもあれば別なのだろう。
けど、その目標も今はないでいる。
「…………ぁ」
「ん?」
微かに、声が聞こえてきた気がした。
普段なら気にも留めないが上体を起こして窓を見、そしてそれを見るや思わず身を隠していた。
「……え? え?」
見間違いかと思い、もう一度上体を起こす。
だけど顔を少し覗かせる程度しか窓から出さない。
そこから見えるのはお隣さんなのだが、ちょうど窓の位置が同じなのかカーテンが閉まっていなければ部屋の中がよく見える。
そしてそこでは──男女がまぐわっていた。
白い髪の綺麗な男が一人に対し、これまた美人な女性が二人。
耳を澄ませば声や音も微かに聞こえてくる。
少しでも音を立てれば消えるほど微かであるため、身じろぎ一つしないよう気を付け。
覗いているのもバレないようにしながら脳裏に焼き付けるようジッと見続ける。
今回はカーテンが開いていたが、次もそうだとは限らない。
今日一日の不運はこの幸運でチャラどころかお釣りまでくるほどだ。
──その日は一睡もすることが出来なかった。
翌日、一睡もできなかった体を引きずって登校し、授業もなんとか寝ないで過ごし。
ようやく迎えた昼休みでお弁当を食べて寝ようと思っていたのだが。
「あ、美優はもう見た?」
「見た……って何を?」
「美優、そういうのあんまり興味なさそうだもんね」
そういって友達が見せてくれたのはとあるバンドだった。
早く寝たかった私は少しだけ見て感想言って終わりの予定だったのだが。
気付けば友達からスマホを奪い取り、画面を食い入るように見ていた。
「まさか美優がそこまで興味出るとは。このグループ、顔隠していたんだけど、最近だったか、素顔出すようになってさ──」
隣で何か話しているけれど、その言葉は何も頭に入ってこない。
いま、頭の中を埋め尽くしているのは昨夜見た人物と今見ているバンドのメンバーが一致することについてだけだった。
その後あったライブのチケットは当たらなかったが、当然ライブ配信は見たし、円盤も買って繰り返し何度も見た。
けど彼の姿を見るたびにあの日のことを思い返し、寝るのが夜遅くなってしまう。
カーテンはあの日だけでなく、何度か開いたままされており、今では片手で足りないくらい覗き見ていた。
最近はどこか出かけているのか、彼の部屋に電気がつかない日が何日か続いていた。
手を伸ばせば届きそうな距離なのに触れることが出来ないもどかしさから、最近は何か運命的な事が起こって彼と結ばれる妄想ばかりしている。
当然、翌日は寝不足だ。
今、私は彼の部屋で覗き見ていたことを自身で体験していた。
活動報告にある通り、気分でやります