貞操観念逆転ガールズ   作:不思議ちゃん

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翠は外にいる時、日傘を常にさしてます
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新たな扉を開きそう

 案内された場所は老舗の和菓子屋だった。

 ほほう、美味そうなお菓子が並んでいる。

 

「ここがあたしのお家。こっちや」

 

 和菓子特有の甘い香りがたまらない。

 手を引かれて店の奥へと連れていかれ、和室へと案内される。

 

「お菓子持ってくるから、ここで待っててね!」

 

 座布団に俺を座らせた周子ちゃんはそう言い、出て行ってしまった。

 ……知らないとこに一人きりは少し心細いんだが。

 長年引きこもってたから、余計にそう感じるのは気のせいでないはず。

 

「おかーさんは付いてこなくていいの!」

「周子に饅頭を買ってくれたお礼をしないと」

 

 五分ほどで戻ってきた声が聞こえてくるが、どうやら周子ちゃんの母親も一緒らしい。

 

「おにーさん、お待たせ」

「いい男ね。……少しだけ時間あるかしら? 奥の部屋でお話ししましょ?」

 

 母親ってよりは姉といったほうが納得できるぐらい美人な女の人がいるなと思ったら、いきなり誘われた。

 そのまま流されるのもありかなと思っていたけど、周子ちゃんが追い返したようだ。

 

「おにーさんはあたしと一緒がいいんだもんね?」

 

 持ってきたお菓子をテーブルに置き、流れるように対面する形で俺の膝に乗ってくる。

 

「八ッ橋、食べさせてあげるね。はい、あーん」

「あーん……んむんむ」

 

 おお、母さんが前にお土産と言って買ってきてくれたものより美味しい。

 そう考えてるのが伝わったのか、周子ちゃんもいい笑顔を浮かべている。

 

「ね、美味しいでしょ?」

「これはお土産に買って帰らないとね」

「えへへ、ありがと」

 

 

 

 

 

 こうして今の状況があるのだが、真面目に連絡を入れとかないとな。

 また新しい八ッ橋をはむはむしながらスマホを取り出すと、画面に出た通知の量がおかしなことになっていた。

 電話がちっひーと奈緒からそれぞれ五十件以上来ている。

 

「……もしも──」

『おいっ! どこにいる!?』

「あ、あー……知り合いの家?」

『何故疑問形なんだ! 迎えに行くから動くな! 場所を言え!』

「老舗の和菓子屋」

「おにーさん、まだ帰っちゃヤダよ」

 

 スマホを奪われ、テーブルの上に置かれる。

 奈緒がまた電話をかけたのか、スマホの画面が着信を知らせるが、自分を見て欲しいのか両手で顔を抑えられて視線を固定される。

 

「あたしがまだ小さいから、きっとおにーさんの入らないと思うけど、大きくなったら大丈夫だから!」

「それ、逆効果のセリフだから」

 

 逆転していない世界だと男はイチコロになってるんだが、残念なことに男性の性欲は薄い。

 

「でもでも、おにーさんのお嫁さんになりたい!」

「そう思ってくれたなら嬉しいな。でも、もしかしたらもっと素敵な人が周子ちゃんの前に現れるかもしれないよ? 大きくなってもまだ思ってくれていたなら、また伝えてね」

 

 逆転してるといっても、きっと小学生の頃はまだ純粋だと思う。

 だから周子ちゃんの抱いている感情もきっと、勘違いだ。

 抑えられていた手を優しく外し、デコに唇が触れるだけのキスをする。

 

「おにーさんはそろそろ友達が迎えにくるから帰っちゃうけど、またどこかで会えるよ」

 

 降りてもらい、帰る準備を始めても周子ちゃんは俯いたままなのだが、大丈夫だろうか。

 多少心配ではあるが、これ以上時間を潰すと二人に殺されそうだ。

 部屋を出る前に『またね』と声をかけ、店の方へと戻って行く。

 

「や、お二人さん。迷わず来れた?」

「アホか! 危機感がなさすぎるにも程があるわ!」

「次に同じことやらかしましたら、縄くくりつけます」

「お、おう。気をつけるよう善処するよ」

「善処すると言って反省したことありますか?」

 

 俺が思っている以上に二人から大切に思われていたらしく、思わず笑ってしまう。

 そこをつつかれてまた怒られたのだが、それを聞き流し、周子ちゃんから食べさせて貰った八ッ橋と、他にもいくつか買っていく。

 

「おにーさん!」

「お、周子ちゃん。どしたん?」

 

 買うものも買ったし、時間も時間なので旅館に戻るかと話し。

 店を出ようとしたところで呼び止められたので振り返ると、周子ちゃんがいた。

 話しやすいように少し屈めば、トテトテと可愛らしく近寄って来てくれる。

 

「あ、あのね……」

「うん」

 

 顔を赤くしてもじもじする姿が可愛らしく、ほっこりしてしまう。

 

「っ! 翠くん、離れてください!」

「間に合わな──」

 

 ちっひーと奈緒がさっきの電話や合流した時以上に慌てた声を出してるなと思ったら。

 

「──んっ」

 

 唇に柔らかいものが触れたかと思えば、何かヌルッとしたものが口の中に入ってきた。

 周子ちゃんの顔が近く見えるから、恐らくはディープなキスをされているんだろう。

 

「わっ、わわっ!」

「くそっ、遅かったか」

「翠くん、大丈夫ですか?」

 

 と思ったら、ちっひーと奈緒に引き剥がされた。

 奈緒が周子ちゃんを抑えており、ちっひーが俺の口をハンカチで拭いてくる。

 

「んんっ、ちょ、大丈夫だから」

「大人しくしてください」

「大丈夫だって。そんな気にしてないから」

 

 そこまでする理由が分からないし、鬱陶しいので手首を掴んでやめさせる。

 

「奈緒も大丈夫だから離してあげて」

「いや、だがな……」

「まったく……」

 

 奈緒から周子ちゃんを回収し、抱きしめる。

 

「二人とも反応しすぎ。小学生のキスなんてそんな気にしなくても」

「なんで翠はそんなに落ち着いているんだ……」

「…………周子?」

 

 騒ぎを聞いてか店の奥から周子ママが現れる。そして現状を確認し、どうなっているのかと首をかしげていた。

 ちっひーが説明していくにつれて周子ママの顔がどんどん白くなっていき、説明が終わるやすぐ俺に向き直って頭を下げる。

 

「うちの周子がすみません!」

「大丈夫ですよ。気にしてないですし」

「…………?」

 

 何故だろう。

 気にしてないと言ったのに顔を上げた周子ママは不思議そうな表情をしていた。

 

「あたしはおにーさんのお嫁さんになるん!」

「それはもう少し大きくなってからじゃなかった?」

「おにーさんが一番だもん!」

 

 キラキラ、というよりはどこか色っぽい目で見上げられ。このままではいけない扉を開いてしまいそうである。

 

「取り敢えず、俺はそんな気にしてないので。あまり周子ちゃんを怒らないであげてください。周子ちゃん、またね。……ほら、ちっひーと奈緒、帰るよ」

 

 このままだと誰も動き出しそうになかったので、強引に場を流すことにした。

 周子ちゃんだけは『またね』と手を振ってくれる。

 店を出て少ししてからちっひーと奈緒が慌てて追いかけてきた。

 きっと、夕食の時あたりに問い詰められるのかな。




ここまで書いて、周子じゃなく奏のが良かったのでは?と思い始めたけど気にしなーい

九石翠
たまに逆転してることを忘れる

塩見周子
後々、翠にからかわれることに
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