活動報告にて題名変更についてのアンケートを取っているのでよろしくお願いします。
閉会式はなんの滞りもなく進んでいった。
そして例年にはない最後のイベント。
女王陛下が勲章を下賜するというビッグイベントが始まる。
『それでは二組の代表者は前へお願いします。盛大な拍手を』
拍手が上がる。
各クラスの担当講師達から羨望のため息が漏れる。
が、次第に拍手は疎らになっていき、ざわざわと会場が沸き立ち始める。
会場がざわつく理由。それは、生徒達を掻き分け前に立った人物の中に担任講師のグレンの姿はなく、立っていたのはアルベルト、リィエル、リアムの三人だったからだ。
リアムはともかく見慣れない二人の男女の姿に会場がざわつく。
「アルベルト……? リィエル……?」
アリシアは目を瞬かせながら二人の姿を見つめる。
「……来たか」
戸惑うアリシアをよそに、セリカはぽつりとそんなことを呟いている。
傍らに立つゼーロスも、何が何だかわからないと言った表情だ。
「リアム…なぜアルベルトとリィエルの二人がここに…?」
アリシアがリアムに問いかけると
「しだいにわかりますよ陛下」
アルベルトがぼそりと呪文を唱えるとアルベルトとリィエルの姿が歪みグレンとルミアへと変わっていく。
「なぜ!? ルミア殿がここに!」
来賓や大勢の生徒達は一体何が起きたのか、さっぱり読めずに遠巻きにその様子を眺めながら困惑しざわめいている。
「簡単なことさ【セルフ・イリュージョン】で入れ替わったんだ」
グレンが種明かしをし、セリカに合図を送る。
その合図を受けセリカが断絶結界を作り出す。
兵士達が結界を叩きながら叫んでいるがその声は結界内には届かない。
音も遮蔽する断絶結界だ。
「ルミア、お前の母さん。今から助けてやる」
「はい」
グレンがルミアへと小さく呟きそれにルミアが答える。
グレンはアリシアの方へと向き直る。
「さてと、女王陛下その首のネックレス……とても綺麗ですね?」
アリシアはグレンの言葉に一瞬驚きの表情を見せるが、すぐにグレンに向かって微笑み答える。
「ありがとうグレン。私の一番のお気に入りです」
「でも少し派手じゃないっすか? 外した方がいいんじゃないっすか?」
グレンが一歩、また一歩と女王陛下の元へと歩み始める。
「貴様何を───ッ!」
ゼーロスは剣を構え剣先をグレンへと向けている。
「駄目ですよ? 私はこれ外したくないですから」
ビンゴ。
条件起動式の呪殺具で確定だ。
グレンはその瞬間確信した。
「では陛下。そのネックレス俺が外して差し上げますね」
「させるか──ッ!」
グレンが駆け出し右手を動かした。
動作を始めたのを察知したゼーロスがグレンへと即座に斬り掛かるがその剣はグレンへとは届かない。
「───!? 貴様!?」
リアムの双剣がゼーロスの剣を受け止めていた。
「邪魔しないで貰えますかね!」
ゼーロスは驚きを隠せなかった。
ただの学生が自分の速度に付いてきたこと。また、押されているとはいえ自分の剣を受け止めている事実にゼーロスは驚いていた。ゼーロスはこの時点でリアムがただの学生ではないことを悟る。となれば名を聞くのは当然のことで
「………名はなんという」
「リアムだ」
「……! そうか、貴公が……」
「……?」
リアムはゼーロスが言った言葉の意味を聞こうとするが既にゼーロスに話す気は無いということは、その表情からも、その剣からも分かった。
リアムも何とか持ち堪えようとするが、やはりゼーロスの方が実力は上。
リアムが押し切られそうになった瞬間。
ある物がゼーロスの視界に映りゼーロスが突如剣を落とした。
ネックレスが投げ捨てられていたのだ。
「陛下───ッ!!」
ゼーロスが目を見開きアリシアの方へとすぐさま振り返る。
「安心しろ。呪殺具は発動しない」
グレンの右手には愚者のアルカナが握られていた。
「何故───愚者のアルカナ? 貴公、まさか──!?」
「そのまさかですよ」
ゼーロスの剣を拾いゼーロスへとその剣を渡しながらリアムがゼーロスの問に応じた。
グレンは少し離れたところで体を伸ばしている。
アリシアはルミアの元へと駆け寄りルミアを抱き締めていた。
「エルミアナ…私はあなたを傷つけて…」
「お母さん…」
抱き合う親子、二人の目元には涙があった。
ゼーロスがリアムへと話しかける。
「貴公のその剣。見事だった。流石……いや、やめておこう」
「流石? それは一体どういう…」
リアムがゼーロスに聞こうとするもゼーロスは既にリアムの前から去っており衛士達への連絡を始めていた。
「一件落着って言いたいとこなんだけどなあ…リアム!」
グレンがリアムを呼ぶとリアムは既に魔術を起動している。
「分かってますよ。二人の加勢に行ってきます」
そう言い残すとリアムは風のようにその場から消え去っていった。
「【疾風脚】まで使えんのかよ…ホント優秀だな…おい」
【疾風脚】はただでさえ燃費の悪い【ラピッド・ストリーム】を連続起動する魔術で小回りが効かず難易度が高い魔術だ。当然グレンには使えない。
グレンの元へルミアがやって来た。
「先生…」
「母さんとはもういいのか?」
「後でたくさん話をすることにしたので。それより…」
ルミアがリアムの事を心配してるのは明白だった。
ルミアの頭の上にグレンが優しく掌を置いた。
「大丈夫だ。あいつなら…」
二人はリアムが駆け出して行った方を見つめていた。
※※※
同時刻。
魔術学院より離れた南地区にて、人気のない路地裏をひっそりと人影が歩を進めていた。
それは女王陛下付きの侍女長、兼秘書。エレノア=シャーレットの姿がそこにはあった。
「まさか失敗に終わるとは……それにしても《月》のリアム。なるほど魔術学院の生徒でしたか…これは計算外でしたわ」
エレノアが歩みを止める。
その瞬間、エレノアの目の前が爆発した。
「これは手荒い歓迎ですわね」
エレノアの前にアルベルトが現れる。
「これはこれはアルベルト様…」
エレノアが両手でスカートの裾を軽く持ち上げ、お辞儀をする。
しかしアルベルトはエレノアを鋭く睨んだまま続ける。
「我々のもう一つの任務は女王陛下側近の内定調査…まさか貴女だったとはな。天の知恵研究会の外道魔術師エレノア=シャーレット」
エレノアは正体が割れたというのに不敵な薄ら寒い笑みを浮かべていた。
その姿は不気味。そのものだった。
いつの間にかエレノア背後に付けていたリィエルが剣を構える。
「さて、どうしますか? 私はここは逃げの一手を打たせて貰いたいのですが」
リィエルが激風を纏い、弾丸のように突進する。
「逃がさない、斬る!」
アルベルトも指を構えて呪文を唱え始める。
「殺すなよリィエル。捕らえて組織の情報を吐かせる」
エレノアは動じず、舞うような身振り手振りと共に呪文を唱え始める。
「でしたら…少しお手合わせ願いましょうか?」
※※※
フェジテの街中。
屋根の上を突風が吹き抜ける。
その突風の正体はリアムだった。
リアムはスピードを全く落とさず屋根を蹴り駆け抜ける。
「敵は兄貴の目があったにもかかわらずここまでのことを仕掛けた。只者じゃねえ…」
リアムは遠見の魔術で確認したアルベルト、リィエルが戦っている場所に向かい屋根上を駆け抜ける。
※※※
リアムが疾風の如く駆け抜ける地点より離れた南地区の路地裏は戦場と化していた。
そこには複数の死体が屍の山を築き上げていた。
「《おいでませ》──《嗚呼・おいでませ》──《おいでませ》──!!」
酔いしれたように歌われるエレノアの詠唱。
周囲に響き渡ると虚空に門が開かれ、瘴気が溢れ出る。
門より無数の死者たちが凄まじい勢いで現れい出る。
女性の死体が肉壁を作り出し迫る。
それをアルベルトの魔術が次々に撃ち抜き風穴を開ける。
そこにリィエルが地面を蹴り飛び込む。
「いいいいいやぁあああああああ──!!」
「──ッ!? 《光の障壁よ》──!」
エレノアがすぐに呪文を詠唱し、光の壁を作り出す。
リィエルはその壁を剣で叩く。
リィエルの凄まじい力を前に光の壁はあっという間にひびが入り砕け散った。
「冗談きついですわね───」
リィエルの剣はエレノアを切り裂いた。
紅の血潮が宙を舞う。
背後から襲い掛かる死体の攻撃をリィエルは距離を取って回避した。
目標を見失って佇む死体をアルベルトの魔術が次々に撃ち抜き死体はその場に倒れ伏していく。
「アルベルト。あいつまだ───」
リィエルは倒れたエレノアの方へ剣を向けたまま警戒を続ける。
その剣を握る手は少し震えていた。
「三度───奴を俺達はこれで三度確実に殺した。だが───」
アルベルトが淡々と語るとエレノアは再び立ち上がった。
先程リィエルによってつけられた傷が徐々に消え治っていく。
「この超回復力、この不死性…こいつは脅威だ。ここで仕留めるぞ。リィエル」
「ん」
アルベルトが魔術を起動し雷が宙を駆け抜ける。その後すぐリィエルが地を蹴り距離を詰める。
エレノアに向かって一直線に伸びる【ライトニング・ピアス】は突如現れた肉壁によよって防がれる。
すかさずリィエルが死体を飛び越えエレノアへと切り掛るが再び死体による肉壁に防がれる。
力任せに振り降ろされたリィエルの大剣その肉壁ごとエレノアの右腕を切り落とす。
「やってくれますわね…」
地面から出てきた無数の死体の腕がリィエルの足を掴もうとするがリィエルはいち早く反応し元の場所へと飛んで腕を躱す。
エレノアが再び次から次へと死体をよび出すと次々にリィエルとアルベルトへと死体が迫り来る。
だが顔色一つ変えずアルベルトが【ブレイズ・バースト】を時間差起動する。
燃え上がる炎が死体を焼き尽くす。
その時吹雪がその場に吹き荒れる。
燃える炎が凍り砕け散っていく。
その場の気温が一気に下がる。
「ちっ…新手か」
エレノアの傍に一人の少女が佇んでいた。
「エレノアお姉さま、加勢に参りましたわ♪ さあ《戦車》と《星》さん♪ 私が愛でて差し上げますわ♪」
「あらグレイシア。 助かったわ。 ふふふ、これならあなた方お二人を仕留めることができますわね」
不敵に笑うエレノアとグレイシアの二人。
だが二人は突如顔色を変えその場を離れる。
二本の剣状の雷が二人がもといた場所に突き刺さっていた。
「はぁあああああああああ───ッ!!」
屋根上より突如現れたリアムが体を回転させながらエレノアへと斬り掛かる。
「───させませんわ」
グレイシアが吹雪を巻き起こすと吹雪の壁がリアムの前に立ち塞がった。
「───ッ!」
リアムが攻撃を止め、アルベルトとリィエルの元へと下がる。
「ん。リアム」
「来たか」
「《冬の女王グレイシア》───何故ここに?」
リアムがエレノアの横に立つグレイシアを目据えて言う。
「さぁ何故でしょう♪ お久しぶりです《月》さん♪ 少しお話しませんか♪」
「お断りだね」
「まあまあこれは《月》のリアム様。お会いできて嬉しゅうございますわ」
エレノアはリアムを見据えて不敵に笑う。
アルベルトが左手を構える。
「どうする。こちらは三人だ。今なら逃げれるぞ?」
エレノアとグレイシアの周りを吹雪が吹き荒れ二人を包み込む。
「そうですわね。ここは引かせていただきますわ」
「また会いましょう? 《月》さん♪」
吹雪が止み終えると二人の姿はその場から跡形も無く消えていた。
アルベルトは構えた左手を引いた。
リィエルも剣を下ろす。
「後のことは俺がやる。リアム、戻ってやれ。お前の事を待っている奴らがいるだろう? 」
「兄貴………ありがとう」
リアムは【疾風却】を起動しその場から去って行った。
路地裏にはアルベルトとリィエルの二人が残った。
「アルベルトどうするの?」
「特務分室に戻る。今後のことを決めるぞ」
「ん。分かった」
二人もその場から姿を消した。
次回は打ち上げの様子です。お楽しみに!