とりあえず今日、明日で過去編一気に行きます!
出会い
リアムは家に居た。
リアムは暇で暇で仕方がなかった。
土曜日で学校は休み。いつもなら特務分室の仕事があるのだがそちらも珍しく、非常に珍しい事に休み。
他の生徒達は魔術競技祭の疲れで寝ているだろうが、リアムはピンピンしている。
軍所属のリアムが学生の魔術競技祭で疲れるわけが無いし、ルミアやグレンと逃げてる時も相手が弱かったので楽だった。
ゼーロスと剣を交えたのは流石に疲れるがそれも一瞬。エレノア達との戦闘もすぐ終わったので全然疲れてない。
そもそも他の生徒とは体力が違う。
「何かないかねえ…」
リアムが何かやることがないか考えているとルミアの顔が思い浮かぶ。
ルミアは今回母親と話したことで過去の事を考え込むことはもう無いだろう。
ちなみにルミアの護衛任務は今日は一日ルミアも家でおり、フィーベル家にいれば安心安全なので必要ない。
「過去ねえ…」
これはリアムの過去、8年前の物語───
俺は捨てられた。
7歳になる頃だ。
異能者だったとか王族の派閥闘争とかそんな大それた話ではない。
ただ家が貧乏だっただけ。
俺の親は生活に困った末、俺を捨てた。
親の顔や名前、全てを覚えていない。
自分を捨てた親の事なんかどうでもよかったので覚えてなくても別に構わない。そもそもなにもかもがどうでもよかった。
このまま自分は誰の記憶にも残らないまま死んでいくのだと思っていた。
そんなある日、俺はあの人と出会ったんだ───
「お前、名前は?」
その日も俺は路地裏で一人パンを食べていた。
当然色あせた残飯だ。
ぼんやりとパンを食べていた俺は初めはその声に気づかなかった。
やがてその声が何度も繰り返されているうちに耳に届き見上げると一人の12歳くらいの男の人が立っていた。
「お前、名前は?」
どうやらこの人は名前を聞いているらしい。
親の顔や自分の故郷など全てを忘れていた俺だったが自分の名前だけは覚えていた。
「……リアム」
名前を聞くとその人は黙り込み急になにを思ったか俺が食べていた残飯をひったくり投げ捨てた。
「あっ…」
投げ捨てられた残飯を拾おうと手を伸ばす俺の手をその人は握り座り込んでいた俺をその人は立たせた。
「……もっと美味いもの食わせてやる。ついてこい」
その人は俺の手を掴んだままどこかへと俺を連れて行った。
やがて裏路地を抜けて街の表に出た。
飲食店などが建ち並んでいる。
ほとんどの時間を路地裏で過していた俺にとって街の風景はとても眩しく写った。
色んなものが光に満ちている。
どこからか香ばしい匂いなんかも匂ってくる。
路地裏の臭いとは大違いだった。
それはたったの数歩。路地裏を抜けただけで世界は180度変わった。
数分後、とある一つの家の前に着いた。
どうやらここがこの人の家のようだ。
「…ただいま」
自分はなされるがまま家の中へと招かれた。
すると家の奥から誰かがやってきた。
「おかえり、アルベルト───あら、その子は?」
この人の母親だろうか。とても優しそうな人だった。
そしてこの人はアルベルトという名前ということをその時初めて知った。
「……拾ってきた。何か食わせてやって」
数分後
案内された部屋で待っていると
「……飯、できた」
アルベルトに呼ばれた俺は食卓へと向かった。
食卓には俺が見たこともないような綺麗で美味しそうな料理が並んでいた。
「さあ、食べて?」
その人の母親は俺の前にあった皿に料理を取り分けてくれた。
俺はアルベルトの方を見た。
アルベルトは既にご飯を食べだしていた。
「いただき…ます」
取り分けられた炒め物を口にするとそれは今まで食べてきたものとは比べ物にならないくらい美味しかった。
「どう、美味しい?」
コクリ、と頷く。
良かったとアルベルトの母親は喜んでいた。
その日の夜家に帰ってきたアルベルトの父親らしき人と母親が話をして俺はこの家に住むことに決まった。
この日からこの二人は俺の両親となりアルベルトは兄になった。
アルベルト…いや兄や両親と暮らしていくうちに初めは縮こまっていた俺もだんだんと打ち解けていった。
そして兄や両親のことを知った。
両親は魔導省の官僚だということや兄は11歳ながら魔術学院に入学していて天才と騒がれていた。
そんな両親や兄に憧れた俺も魔術師になりたいと志した。
俺は学院の授業を終えた兄に魔術を教えてくれるよう頼んだ。
初めは兄は嫌がっていたがやがて…
「……仕方ないな」
兄は俺に魔術を教えてくれることになった。
兄は俺に様々な魔術を教えてくれた。
具体的に言えば【ショック・ボルト】や【ファイア・トーチ】などだ。
初めのうちは当然だが全然魔術を使えなかった。
それでも根気強く練習していくうちに…
「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」
リアムの左手から電撃が放たれる。
「やった! できた!!」
兄の教え方が上手いこともあって俺は少しだが魔術が使えるようになった。
兄が魔術学院から帰ってくると兄に魔術を教わり、兄が魔術学院に行ってる間は自分で家で魔術をひたすら練習した。
俺にとって魔術は掛け替えのないものになった。
俺の魔術の腕はみるみる上達していった。
その魔術の腕から地元では天才少年と噂され、俺達兄弟は天才兄弟として有名になった。
そして俺がアルベルトと兄弟になって四年───
兄は魔術学院を卒業した。
当然の如く主席で合格した兄を俺は誇らしく思ったし兄のようになりたいと改めて思った。
魔術学院の中でも天才として知れ渡っていた兄は帝国宮廷魔導士団へとスカウトされ兄は帝国宮廷魔導士になった。
そんな兄を両親はとても喜んでいた。
俺もそんな兄に憧れた。
兄は帝国宮廷魔導士団でもエースとして活躍しているようだった。
また兄には仲がいい同僚ができたみたいだ。兄は断固として仲がいいとは認めないが。
兄に負けじと俺も魔術の腕を磨いていった。
そして三年の月日が流れた。
「ここがアルザーノ帝国魔術学院か」
俺は今、アルザーノ帝国魔術学院の門の前に立っている。
「いままでいろんな事があったな」
思い返せば本当に色んなことがあった。
何も無かった俺に兄や両親は居場所を与えてくれた。
俺を愛してくれた。
もう自分のことをどうでもいいなんて思わない。
俺は人の記憶に残る魔術師になる。
決意を胸に俺はアルザーノ帝国魔術学院の門を潜った。
次回、アルザーノ帝国魔術学院へ!