俺は貴女を守る剣となる(リメイク版投稿中)   作:凪里

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今回にて過去編終了です!
リアムが大天使ルミア様の護衛になった理由です
今回新キャラ登場します


初任務と新たな任務

「ぐわぁあああああああああ!!!」

 

 フェジテの街の路地裏───

 外道魔術師がまた一人、一人の男の手によって地獄へと堕とされた。

 その男は帝国宮廷魔導士団特務分室執行官ナンバー18《月》のリアム。

 男の右手には剣が握られており、その剣先は血で汚れていた。

 

「これで7人目、北側の敵は全て葬ったか」

 

 リアムは通信用の魔導器を取り出した。

 

「とりあえず先輩方に報告を……ん…?」

 

 リアムは魔導器を起動し、《隠者》のバーナード、《法皇》のクリストフと連絡を取ろうとするも通信が繋がらない。

 この状況で考えられる原因は一つしかない。

 

「通信妨害の結界……嵌められたか」

 

 二人はそれぞれ敵が多かった西南側と東南側の敵の制圧に向かっている。

 敵の少なかった北側を新人のリアムが対応することになったのだが裏目と出たようだ。

 二人が異変に気がついてもこちらに来るまでには時間がかかる。

 

「……!」

 

 リアムが黒魔【ライトニング・ピアス】を後方の屋根上に向かって放つ。

 いつの間にかそこに立っていた何者かはその攻撃を軽くかわし、路地裏へ飛び降りた。

 

「ほぅ、対応が早いな」

 

「お前……天の知恵研究会だな。それも末端とは違う……」

「何者だ?」

 

 リアムと対峙するその男。

 その男の雰囲気は今までリアムが相手をしてきた敵とは全く違っていた。

 そう彼はホンモノなのだ。

 男から放たれるのは本物の殺気。

 今までの組織の末端とは比べ物にならない。

 剣を交わさずともその力量の高さは明らかだった。

 

「どうせのちのち分かる事だ。名乗ってやろう《月》───」

「私は天の知恵研究会第一団《門》が一人《魔剣》のエリヤ。帝国宮廷魔導士にやり手の新人が入ったと聞いて様子を見に来たのだが…」

 

 エリヤがリアムの姿を改めて見る。

 

「こんな子どもとは…な」

 

「───!」

 

 リアムの剣をさらに強く握る。

 

「そう怒るな。なかなかのやり手には違いないらしい。さて、少し手合わ───」

 

 刹那。リアムが【ライトニング・ピアス】を二反響唱する。

 エリヤは軽く上半身を動かし高速の雷撃を悠々と避ける。

 

「やれやれ。話の途中なんだが……な!」

 

 エリヤが右手に即座に剣を召喚させ詰め寄っていたリアムの剣による攻撃を軽く受け止める。

 リアムは既にもう一本の剣を錬成しており両手に剣が握られてる。

 リアムとエリヤの剣撃の応酬が続く。

 リアムが隙を見て【ライトニング・ピアス】や【ブレイズ・バースト】と言った魔術を時間差起動するもエリヤは冷静に対抗呪文で対応する。

 リアムが体を捻りエリヤの斬撃を回避するとそのまま背後に即座に回り込んで斬り掛かる。

 リアムの双剣から繰り出される銀光二閃。

 しかしエリヤは、一撃目はふらり、と。身体を最小限揺らすだけで躱し、二撃目を手にした剣で防ぐ。

 そして再び繰り広げられるリアムの剣撃の応酬。

 まさに嵐のようなリアムの斬撃───。

 しかしその剣全てをエリヤは防ぎ切る。

 

「ちぃっ…」

 

 たった一瞬。たった一瞬の隙をエリヤは決して見逃さない。

 エリヤはリアムの懐に素早く入り込むと【フィジカル・ブースト】により強化された左足でリアムを蹴り上げる。

 

「ぐ──……」

 

 リアムの身体が上空へと蹴り飛ばされる。

 

「《雷槍よ》」

 

 エリヤが【ライトニング・ピアス】を連続詠唱する。

 電撃の力線が上空のリアムを襲う。

 リアムは【フォース・シールド】を二反響唱しその攻撃をギリギリで防ぎ切る。

 

「はぁああああああああああ───!!!!」

 

 リアムは壁を蹴ると体を回転させその回転力を力と変えエリヤへと斬り掛かる。

 リアムの渾身の一撃がエリヤを襲う。

 

「ふん……」

 

 だが、その一撃もエリヤには通用しなかった。

 リアムの剣がエリヤを捉える前にエリヤの剣によって防がれていた。

 しかしリアムにとってそれは想定内───

 

「……!」

 

 鈍い音が響き渡る。

 

 リアムの【フィジカル・ブースト】によって強化された左足での蹴りがエリヤの右脇腹を捉えていた。

 リアムが蹴り飛ばすかと思いきやエリヤの体は鉛のように重く動かなかった。

 

「【グラビティ・コントロール】か……!」

 

 リアムに対してエリヤが剣を振り下ろす。

 但しその剣はリアムではなく虚空を斬り裂いた。

 リアムは瞬時に距離を取り回避していた。

 その時。ぴしり、とリアムの剣に亀裂が走り剣が折れる。

 

(こいつの剣は俺の剣よりも力、速さ、技。全てにおいて上だ…先輩達が来るまでもつか…?)

 

 リアムとこの男の実力差は歴然だった。帝国宮廷魔導士団に入ったばかりのリアムの相手としてはこの男、エリヤは強過ぎた。

 戦場での経験も今回が初であるリアムに対して、エリヤは幾つもの修羅場をくぐり抜けてきた暗殺者だ。

 そのエリヤから放たれる殺気は今まで相手にした敵より鋭く冷たかった。

 魔術師の世界において大物食いなど幾つも存在しており珍しい事ではない。

 しかしそもそもそれを許すような隙はこの男にはないし、勝ちを一瞬でも期待することができない。それほどまでの実力差がこの男とリアムにはあった。

 リアムは既に折れたその両手の剣を捨てる。

 

「期待の新人がどのようなものかと期待してみれば…この程度の剣とはな…イルシアの方が上……いや今は《戦車》と言うべきか」

 

 敵の口から出た要素だにしないそのコードネームにリアムが驚く。

 聞き間違いか───いやこの男は確かに《戦車》と言った。

 《戦車》、つまり特務分室の同僚だ。

 何故ここでそのコードネームが出てきたのかは分からない。

 もっとも特務分室に入ったばかりのリアムは《戦車》が誰なのかは知らないのだが。

 

「《戦車》……特務分室だな。その人と関係があるのか…?」

 

「それをお前に答える義理はない。今度はこちらから行くぞ」

 

 言葉通り男は一気に攻め落とすらしい。男はもう一本剣を召喚させた。

 

「ちっ…《万象に問う・我が腕に・剛毅なる刃を》───!」

 

 リアムは双剣を高速錬成し即座に構える。

 と、同時に迫っていたエリヤの高速の剣撃を防ぐ。

 目にも留まらぬ高速の斬撃───

 

 リアムにはそれを防ぐことしか出来なかった。

 正確には防げてはいない。

 防ぎきれない斬撃が徐々にリアムの体を切り刻む。

 その攻撃を最小限に抑えることしか出来ず次々とリアムの体には傷が増えていく。

 

 リアムは気づいていた。この男がまだ本気を出していないことに。

 その感覚は義理の兄であるアルベルトと稽古をする時と同じ───底知れぬものをこの男からリアムは感じていた。

 

(今の俺では百回やってもこいつには一度も勝てない……とにかく今は時間を稼ぐ…!)

 

 ふとリアムが左手に握っていた剣をエリヤに向かって投げつける。

 エリヤもその攻撃は軽々しくかわすが…

 

「《爆散せよ》」

 

 その剣がリアムの詠唱により爆発する。

 その隙にリアムは距離を取ると同時に呪文を即座に詠唱する。

 

「《吠えよ炎獅子》──《吠えよ》、《吠えよ》!」

 

 黒魔【ブレイズ・バースト】が連続起動され、超高熱の火球が三連続で飛んでいく。

 しかし───

 爆炎は次々と真っ二つに斬られエリヤはリアムとの距離を詰める。

 

 そしてリアムとの剣の応酬が再び始まる。

 防ぎきれないエリヤの斬撃を前にリアムの動きは徐々に鈍くなる。

 そして生まれた隙を敵が逃すことは無い。

 リアムの双剣は弾き飛ばされそのまま左足で蹴り飛ばされる。

 リアムは即座に【ゲイル・ブロウ】を唱え勢いを抑えると壁に向かって左腕を突きつけ新たな剣を錬成し壁を蹴る。

 

「はぁあああああああああ───ッ!!」

 

 体を回転させ再び回転斬りをエリヤに繰り出すもその攻撃は先程よりキレがなかった。

 その攻撃はエリヤに難なくかわされそのまま蹴り飛ばされた。

 だがこの攻撃をかわされるのはリアムの予測通り。

 本命は───

 

 エリヤへと死角から雷の力線が襲った。

 C級軍用魔術【ホーミング・ピアス】──【ライトニング・ピアス】の改変呪文で、威力、速度は劣るが【ライトニング・ピアス】と異なり敵を追尾する。

 だが【ホーミング・ピアス】がエリヤを捉えることはなく、時間差起動された【フォース・シールド】によって雷の力線は途切れた。

 

「甘いぞ」

 

 エリヤはすぐさまリアムとの距離を詰めて再び蹴り飛ばす。

 リアムは壁に激突した。

 全身に激痛が走る。意識が飛びそうになるがなんとか堪え正気を保った。

 その時リアムが持つ宝石型の魔導器が光る。

 どうやらバーナードとクリストフの二人は近くまで来ているようだ。

 しかし間に合わない。

 

(レベルが違い過ぎる───もたなかったか…)

 

 エリヤが止めを刺そうとリアムに斬り掛かった瞬間───

 一筋の雷がエリヤの心臓を捉えんと飛翔する。

 その攻撃に瞬時に気づいたエリヤは回避するが回避しきれず雷は右手を捉えた。

 

「……ほぅ」

 

 雷閃が飛んできた方角の二千キロメトラ先には時計台が立っていた。

 このような芸当ができるのは一人しかいない。

 

「《星》か…」

 

 しかしエリヤはすぐに持ち直し止めを刺さんとリアムへと斬り掛かったその刹那───

 

「───《高速結界展開・翠玉法陣》ッ!」

 

 魔力線が地面に走り、五芒星法陣を描くとそれに沿って緑光の障壁がそびえ立つと、エリヤの剣撃を真っ向から受け止めた。

 

 次にエリヤへと三発の銃弾が撃ち込まえエリヤはその場から距離を取った。

 

「《星》に加え《法皇》に《隠者》───分が悪いな…」

 

 リアムの所へとバーナードとクリストフが降り立つ。

 

「無事かい?リアム君」

 

「やれやれリア坊と通信が取れないと思うたらこうなっておったか…それにしてもまさか《魔剣》とはのう…」

 

 クリストフが宝石を構えエリヤを見据えて言う。

 

「どうしますか?まだやりますか?《魔剣》エリヤ───こちらは三人。それに加えてアルベルトさんの援護もありますが」

 

「分かった…ここは大人しく引くとしよう」

「《月》───。次に会う時は手加減はしない」

 

 エリヤはそう言うと姿を消した。

 

「やはり冷静じゃのう…それにしてもリア坊。よく死なずに耐えきれたのう!」

 

「いや、あいつは本気を出していませんでしたし…」

 

 リアムが残念そうに答える。

 そうあの男が本気ならばとっくにリアムの命などなかったのだ。

 リアムが生きているのはあの男の気まぐれのようなものだ。

 

「それでも《魔剣》相手にこれだけもったのはなかなかだと思うがのう」

 

「やつが本気だったらわしでも勝てんかったと思うぞい」

 

 実際に剣を交えたリアムには分かった。

 奴にはまだ何かがある。

 底知れない何かが───

 

「それにしてもアル坊の奴め、弟が心配で来ておったか」

 

「アルベルトさんの射撃能力の高さにはほんと脱帽ですね」

 

 リアムは落胆していた。

 自分が手傷一つ負わせられ無かった相手に兄は2千キロメトラ先から一撃で手傷を負わせた。

 兄との実力差を改めてリアムは実感していた。

 兄と同じ職場へとスカウトされ舞い上がった。

 兄に少し近づけたかと思ったがそんなものは慢心だった。

 自分はまだまだ兄に遠く及ばない、

 

「とにかくこれで任務終了ですね」

 

「そうじゃのう。ほーれいつまでも落ち込んでないで帰るぞリア坊」

 

「……はい」

 

 三人はその場を後にした。

 こうしてリアムの初任務は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後リアムは帝都にいた。

 何やら女王陛下直々に話があると言う事を室長のイヴに今朝告げられたのだ。

 

「女王陛下が俺なんかに何の用だ…?」

 

 リアムには全く検討がつかない。

 大方特務分室絡みの何かなのだろうが、リアムは入ったばかりの新人である。

 普通なら他の者が呼ばれる筈だ。

 

「女王陛下、特務分室リアム=ロディウスをお連れいたしました」

 

 女王陛下の部屋の前でリアムの左隣の兵士が高らかと宣言する。

 

「分かりました。ご案内してください」

 

 部屋の中から声が返ってくる。

 その声はリアムも聞いたことがある、女王陛下の声だった。

 今度はリアムの右隣の兵士が前に出てその扉を開く。

 

「失礼します」

 

 部屋の中には女王陛下が居た。

 リアムをここまで案内した二人の兵士がその場を去る。

 部屋にはリアムと女王陛下の二人だけとなった。

 

「貴方がリアム=ロディウスさんですか。お若いのに帝国宮廷魔導士団特務分室だとか。優秀なのですね」

 

「勿体ないお言葉です」

 

「貴方に折り入ってお願いがあるのですが」

 

「私に…ですか。私に出来ることであればなんなりと」

 

「……娘の護衛を貴方にお願いしたいのです」

 

「御息女の護衛……レニリア王女の護衛を私が…?」

 

「いえ、レニリアではありません」

 

「……え?」

 

 女王陛下、アリシア七世には一人の娘がいる。

 娘の護衛と言われたのでリアムはてっきりレニリアの事かと思ったのだが違うらしい。

 だが、それはおかしい。

 女王陛下には娘は一人しかいない。

 もう一人娘はいたのだが数年前流行病にかかり病死したはずなのだ。

 

「エルミアナです。エルミアナの護衛を貴方に任せたいのです」

 

 アリシアの口から出た名前はその流行病で亡くなったエルミアナ王女だった。

 

「どういう……事ですか…?」

 

 リアムは驚きを隠せなさった。

 エルミアナ王女は既に死んでいる。

 既に死んでいるのだから護衛は出来ない。

 

 だがアリシアはそんなリアムの疑問とは全く関係ない事を言い出した。

 

「リアムさん。貴方はアルザーノ帝国魔術学院の生徒だそうですね」

 

「え……? あ、はい。そうですが…」

 

 次にアリシアから出た言葉はリアムが予想だにしないものだった。

 

「アルザーノ帝国魔術学院にエルミアナが居ます。彼女は生きてます」

 

 アリシアから告げられた衝撃の事実に困惑するリアム。

 アリシアの顔を伺うがどうやら本当のことのようだ。

 

「……本当なんですね」

 

「はい。エルミアナには異能力があります。それが知られれば王家の威信に影響を与えかねませんでした」

 

「……それで表向きでは流行病で死んだことにして、今は名前を変えて生きている……ということですか」

 

「……その通りです。彼女の異能力は少々特別です。また彼女の立場のこともあり天の知恵研究から度々狙われている…との噂を聞きました」

 

 その言葉でリアムは納得した。何故、アリシアが自分の事を呼んだのかを。

 

「自分にエルミアナ王女の護衛を任せたいと?」

 

「……今更私があの娘にどうこうしていい立場ではないのは分かってます…私があの娘にした事は決して許されることではない…けれど…! あの娘には自由に好きなように生きていてほしいのです…どうか! どうか、あの娘を…護ってはくれませんか?」

 

「……分かりました」

 

「……! ありがとう…ございます…!」

 

「それで王女の今の名前は…?」

 

「───ルミア=ティンジェル。それがエルミアナの今の名前です」

 

「え……?」

 

 リアムには一瞬アリシアが何を言ったかが分からなかった。

 ルミアが、死んだ筈の王女?

 とても信じ難い事であったが考えてみればルミアとアリシアは似てなくもない。流石に驚いたがリアムは決心した。

 

「エルミアナ王女、ルミアは俺が必ず命に変えても守ります。俺がルミアの剣となります」

 

「ありがとう…どうかあの娘をよろしくお願いします。リアム」

 

 こうしてリアムは存在を抹消された元王女、ルミアの護衛を任されることになった。




次回から遠征学修編に入ります!
リメイク前に追いつくまであと少し!
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