俺は貴女を守る剣となる(リメイク版投稿中)   作:凪里

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サイネリア島へ

 照りつける太陽と澄み渡る青空の下二組の生徒を乗せた船は遠征先の白金魔導研究所があるサイネリア島を目指し航海を続けていた。

 生徒達の殆どは海を見たことがなく初めて見る雄大な海に心を踊らせていた。

 そんな和気あいあいとした雰囲気の中───

 

「うぇええええ………気持ち悪ぃ…」

 

 グレンは一人船の手摺にもたれ掛かっていた。グレンは船酔いで顔色がすこぶる悪い。

 

「まさか先生がここまで船が弱かったなんて…」

 

 システィーナとリィエルがそんなグレンに付き添っている。

 システィーナがグレンの背中をさする。

 

「はぁ…なんで私がこんな事を」

 

「悪ぃ…白猫」

 

 そんなグレンの様子を見ながらリィエルは首を傾げていた。

 

「グレンはなんで顔色が悪いの? 毒を盛られたの?」

 

「毒じゃないわ」

 

「じゃあ何で? この船が悪いの?」

 

「まあ…そうね」

 

 システィーナのその言葉を聞いてリィエルがすぐに大剣を取り出す。

 

「分かった」

 

「え!? な、何やってるのよ!? リィエル!?」

 

 システィーナが慌ててリィエルを止めようとする。

 

「? この船のせいでグレンは顔色が悪いんでしょ? ならこの船を斬る」

 

「待ってリィエル!? ちょ、ちょっとぉおおお!! 誰かリィエルを止めてぇえええええ!!!」

 

 慌てて駆けつけたカッシュ達男子生徒が五人掛かりでリィエルを取り押さたので大事に至らずに済んだ。

 

「こういう時に限って…何であいつも……」

 

 このようなリィエルが何かしでかす時はいつもリアムがリィエルを抑えるのだが今日ばかりは違っていた。

 システィーナはため息を吐きながら船の後方を見つめていた。

 

 

 

「おぇえええええ!」

 

「だ、大丈夫…? リアム君…?」

 

 リアムに付き添うルミアが優しくリアムの背中擦りながら話しかける。

 

「あ、あぁ…これでも酔い止め飲んだから…少しは…まし…うぇええ…」

 

 リアムはグレン以上に船に弱い。

 何度か任務の時に船に乗ったことはあるがその都度ダウンしている。

 これでもアルベルトから貰った帝国一強いと言われる酔い止めを飲んだ為マシになってる。

 初めて船に乗った時はそれはそれは酷かった。

 

「リンゴ食べる? さっき船員の方に貰ったの。船酔いに効くらしいよ?」

 

 ルミアの手元には数切れのリンゴが乗った皿があった。

 

「も、貰うわ…」

 

「はい。あーん」

 

 ルミアがリアムにリンゴを食べさせてあげる。そんな二人の様子を男子生徒達が黙って見ているはずもなく

 

 ルミアに優しく介護されるリアムの姿を男子生徒達は憎き敵を見る目で見ていた。

 

「くそ…リアムの奴、羨ましい!」

 

「あれもう付き合ってんだろ…」

 

「それにしてもグレン先生は…」

 

 男子生徒達が少し離れたところにいるグレンとシスティーナを見る。

 

「あの説教女神に世話されても嬉しくないな」

 

「「「うんうん」」」

 

「ちょっと? 聞こえてるわよ?」

 

「「「げっ!?」」」

 

 システィーナから向けられる殺気を感じ男子生徒達は我先にとその場から逃げ去ろうとする。

 その時、カッシュ達に取り押さえられていたリィエルが一瞬の隙に逃れる。

 

「しまっ…!? リィエルがッ!?」

 

「と、取り押さえろ! 取り押さえなければここで俺達の遠征学修は終わりだ!!」

 

「船が真っ二つになるぞ!?」

 

 船の上はたちまち大惨事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後一行を乗せた船はやがてサイネリア島へと辿り着き、生徒達は既にそれぞれホテルの一室で旅の疲れ、主に船旅の疲れを癒している。

 男女のホテルはそれぞれ別棟となっており、3人から4人が1グループとなりグループそれぞれに一部屋が与えられている。

 リアムはセシルとギイブルと同じ部屋になっていた。

 

「ギイブル、これからの予定は特にないよな?」

 

 リアムが同室のギイブルへと話しかける。

 ギイブルは面倒臭いという顔をするが問いかけに答える。

 

「……そうだ。食事と風呂が終わったら後は寝るだけだよ」

 

「じゃあ、ちょっと就寝時間前に出掛けるわ」

 

 その言葉にギイブルとセシルが驚く。

 

「君は就寝時間の意味を分かっているのかい?」

 

「そんな時間にどこ行くの?」

 

「まぁ、ちょっとな」

 

 そう言い、リアムが時計をちらりと見ると食事の時間が迫っていた。

 

「そろそろ晩飯だな。行くか」

 

 リアムに疑問を抱きながらも部屋を後にするリアムにギイブルとセシルも付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 食事に風呂が終わり、すっかり静まり返った夜、就寝時間。

 

 カッシュ達、男子生徒の何人かが茂みの中に集まっていた。

 

「みんな作戦の把握は大丈夫だな?」

 

 カッシュが静かに声を出すとそこに集まる男子生徒が頷く。

 

「先生に見つかった時はびっくりしたけど…」

 

 そこには男子生徒のみならずあろう事か教師であるグレンの姿もあったのだ。

 

「お前ら、俺を置いて行くなど許すものか! 大丈夫だ、バレて減給となったとしてもゼロにはならねえ!」

 

「先生、やっぱアンタは最高だよ!!」

 

「フッ…当然の事さ。よし、行くぞ! お前ら!!」

 

「「おう!」」

 

 グレンの掛け声で男子生徒が一致団結した時だった。

 

「部屋に戻れよ……お前ら」

 

 後方からの声に驚き生徒達が振り返るとそこには真顔のリアムがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ! ここまで来てリアムだなんて!」

 

「『楽園』はもうすぐそこだって言うのに…!?」

 

 カッシュがリアムの説得を試みる。

 

「おい…リアム…俺たち、親友…だろ…? ここを…通してくれよっ!!」

 

「悪いなカッシュ…ここを通すわけには行かない」

 

 リアムの腕には剣が握られておりその剣をグレン達へと向ける。思わず生徒の何人かが後退りをする。当然リアムの剣は鉄製などではなく木製である。

 

「下がれっ! お前らっ! こいつはお前らが敵う相手じゃない!」

 

 リアムの目は本気であった。グレンたちを本気で倒しに来ている。正面から戦えばグレンでさえ敵わないリアムとカッシュ達を戦わせるのは危険だ。

 しかし生徒達の意思は揺らがない。

 

「先生! 俺達も戦う! 確かに俺達じゃリアムに勝てない! でも…!」

 

「俺達は先生の盾にでも何にでもなる!」

 

「だから俺達を使ってくれ!!」

 

「……」

 

 生徒達の魂の叫びにグレンはしばらく考え込み…やがて

 

「……わかった。行くぞ、お前ら! 『楽園』はもうすぐそこだっ!!」

 

「「うぉおおおおおお!!」」

 

「悪いのは完全にお前らなんだけどな」

 

 リアムが左手を構えるとすぐに呪文を詠唱する。

 

「《痺れろ》」

 

「「うわぁああああああ!!」」

 

 リアムのたった一言で放たれる【ショックボルト】を前に何人かの生徒が倒れた。

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 そんな男子生徒+αの『楽園』を巡る戦いをテラスからシスティーナ達は呆れた顔で見ていた。

 

「ほんとバカね。男子って」

 

「あはは…」

 

「リアムに見張らせておいて良かったわ。ホント」

 

 システィーナは、こうなる事をあらかじめ予想しリアムに周囲を見張らせていた。

 リィエルはそんな男子生徒達の戦いをじっと見つめていた。

 

「リィエル? どうしたの?」

 

 ルミアがリィエルへと声をかける。

 

「ん、楽しそう。私も戦いたい」

 

 その言葉にルミアとシスティーナの顔は一気に青ざめ二人は慌てる。

 

「り、リィエルはここにいてね!? お願いだから!! ね!?」

 

「貴女が行ったら洒落にならないわ!?」

 

「? 分かった。二人が言うならここに居る」

 

 その言葉に二人がほっとする。そこにウェンディが三人を遊びに誘いに来たので三人は部屋の中へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 リアムは攻めきれずにいた。初めこそは突っ込んでくる生徒が何人かいたので突っ込んできた生徒は全員【ショックボルト】で気絶させた。余裕かと思っていたが、グレンの存在によりリアムは苦戦を強いられることになった。これでも元帝国軍。豊富な実戦経験からかグレンの指揮は優れていた。グレンがいなかったらとっくに決着はついていただろう。そう思うとリアムはため息を吐かずにはいられなかった。

 

「はぁ…めんどくせぇ…」

 

  グレン達は単独行動は決してせず、まず一人が【ショックボルト】で攻撃。その攻撃をリアムが躱し反撃するともう一人が対抗呪文でそれを防ぐ。それをタイミングをズラして四方から行ってくる。リアムの剣の間合いには決して入らない。そういった時いつもなら剣を投擲、爆破し状況を打開するのだが、当然そんなことをする訳にもいかない。

 

「というか教師だろアンタ! こいつら止める立場だろ!?」

 

 教師であるグレンは本来なら止める立場であり、リアムの味方をするべきなのだ。しかし、グレンは本気でリアムを潰しに来ていた。

 

「ふはははは! なんとでも言ぇえええ!!」

 

 グレンはノリノリでリアムに攻撃してくる。何より一番厄介なのがグレンだ。指揮官であるグレンをリアムは先に潰そうとするがグレンは上手く周りの木などの障害物を利用しリアムの魔術の射線に入ってこない。グレンには三節詠唱しか出来ないという弱点があるがそれは他の生徒たちが上手く補い、ここぞというタイミングで魔術を放ってくる。

 

「「《雷精の紫電よ》──!!」」

 

「《障壁よ》──!!」

 

 左右から飛来する雷を障壁で防ぐ。ここでリアムに大きな隙が出来た。そこでカッシュが【ショックボルト】を詠唱する。

 

「《貰ったぁああ》──!!」

 

 カッシュはいつの間にか【ショックボルト】の即興改変をこなしていた。リアムと共に特訓していたのだが、まだ完成はしていなかった。しかしこの戦いの中でカッシュは確実に成長し、即興改変をものにしていた。

 

「──ッ!?」

 

 流石のリアムもこれには一瞬驚く。

 完全に隙を突き対抗呪文は間に合わない。皆は決まったと確信する。しかし…

 カッシュの攻撃をリアムはバク宙で躱す。リアムは魔術競技祭の時のリィエルの動きを参考にした。

 

「マジかっ!?」

 

 驚くカッシュ達を尻目に空中でリアムが人差し指を突き出し、すかさず魔術を放つ。もう手段を選んではいられない。

 

「《雷槍よ》──!!」

 

 リアムが軍用魔術の【ライトニング・ピアス】を詠唱する。その向かう先は勿論───

 

「ちょっ!? 軍用魔術は反そ──!?」

 

 大幅に威力は抑えられているが速度は同じ【ライトニング・ピアス】がグレンに向かう。グレンはその攻撃を躱す事が出来ず直撃、その場に倒れた。グレンは気絶していた。

 

「「「せんせぇええええ──ッ!!!」」」

 

 指揮官を失い大きく体制が崩れた《楽園》を目指す男子生徒達はその後次々とリアムに倒されていくのであった。

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