俺は貴女を守る剣となる(リメイク版投稿中)   作:凪里

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一族の戦い

 一族と天の知恵研究会の戦いは熾烈を極めていた。倒しても倒しても増え続ける敵戦力を前にニアスとアレンの二人も抑えきれず村への侵入を許す。

 

「クソッ! なんだこの数!?」

 

「アレン! 雑魚は無視だ! 村のみんなで倒せる。俺達の相手は第一団(ポータルス・オーダー)《門》以上の奴だ」

 

 アレンとニアスの技量ならば第一団《門》相手だと1体1なら基本瞬殺できる。だが、複数人相手だとそれなりに手間がかかる。

 

「《──■■■》」

 

「「!!」」

 

 突如、人間のものとは思えない声が聞こえる。二人はその場からすぐさま離れる。すると元いた場所に爆炎が巻き起こる。その勢いは【ブレイズ・バースト】とは比べ物にならないものだった。

 

 アレンが槍を構え呟く。

 

「──竜言語魔術(ドラグイッシュ)。フォーエンハイム家のモンか」

 

「如何にも」

 

 アレンは深呼吸をする。

 

「……本気でやらなきゃいけねえみたいだな……ニアス。ここは俺が引き受ける」

 

「死ぬなよ」

 

「誰に言ってる?」

 

 ニアスは村の方へと走り去っていく。ニアスが去ったのを確認するとアレンは目を閉じ詠唱する。それは魔法遺産(アーティファクト)の力を最大まで発揮する為の詠唱だった。

 

 対してフォーエンハイムの男は再び竜言語魔術を唱え始める。

 

「《──■■■》」

 

 再び爆炎がアレンの元へと迫る。

 

「──《誓う・我が力は汝の為に・我汝の剣となる》」

 

 巨大な爆炎がアレンごと飲み込もうと迫り直撃する瞬間アレンは目を開くと手に持つ槍でその爆炎を一刀両断する。

 

「──ほぅ」

 

「我が魔法遺産、『迅雷の神槍』──。その真の力、見るがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結界。哀れね」

 

 シャルロットの周囲には何重もの結界が張られていた。よって術者を倒さなければその場から逃げることは出来ない。

 

「シャルロット=フリードだな?」

 

 シャルロットは三人の魔術師に囲まれていた。その全員が第一団《門》クラスだった。

 

「懐かしい名ね。私はもうフリード姓じゃないんだけど」

 

「かの名高き第六階梯も活躍したのは既に10年以上前」

 

「舐められたものね。たったこれだけで私を相手しようなんて」

 

 シャルロットは呆れるようにため息を吐く。

 

「そんな訳あるまい」

 

 男が合図すると魔術によって透明化していた魔術師達が姿を現す。その数は実に20以上。20人以上の魔術師に突然囲まれたというのにシャルロットの表情には焦りは微塵も感じられない。

 

「はぁ……だから……たったこれだけで私を相手するの?」

 

 男達が一斉に魔術を詠唱する。

 爆炎が吹雪が雷撃がシャルロットを襲う。

 

「───《吠えよ炎獅子》」

 

 シャルロットが唱えたのは【ブレイズ・バースト】だった。魔術師の一人が声を上げる。

 

「ただの【ブレイズ・バースト】で何しようってんだ?」

 

「……ただの【ブレイズ・バースト】? バカにしないでほしわね」

 

 シャルロットが魔術を唱えるとシャルロットの周囲、三方向で爆炎が駆け抜ける。その爆炎によって全ての魔術は防がれそして多くの敵を焼いた。【ブレイズ・バースト】の規模がただの魔術師とは違っていた。魔術師達は驚愕する。

 

「──三重唱(トリプル・キャスト)だと!?」

 

「それに今のは【インフェルノ・フレア】と何ら変わんねーぞ!? 本当に【ブレイズ・バースト】か!?」

 

 魔術師達はシャルロットに恐れをなしてその場から逃げようとする。だが、結界によってその場から逃げることは叶わなかった。

 

「馬鹿ね、結界なんて。自分たちの首を絞めるだけなのに……さっさと《死んでくれる》? この外道」

 

 シャルロットの改変した魔術によってシャルロットの周囲が爆発する。爆発によって起こった煙が晴れる頃にその場に立っていたのはシャルロットだけだった。

 

「……雑魚ばっかりね」

 

 そこに無数の剣が飛来するが、シャルロットは軽く躱してみせる。地面に刺さった剣が突如輝くと爆発する。その爆発も読んでいたシャルロットは魔術によってそれを防ぐ。

 

「《万物を凌駕する雷神よ・その腕に宿りし迅雷以て・蹂躙せよ》」

 

 その魔術はB級軍用魔術の【プラズマ・カノン】であった。B級軍用魔術は何節かけてでも、とにかく詠唱することができれば超一流の魔導士とされ一般的には七節以上で詠唱される。それをたったの三節で詠唱することは相当な実力であることを示していた。

 

 極太の稲妻がシャルロット目掛けて駆け抜ける。B級軍用魔術は基本的に防ぐことは出来ない。防ごうとしても唱えると同じように手間がかかるのだ。よって唱えられれば逃げるのが鉄則だ。

 

「《我に守護あれ》」

 

 だが、たった一節の改変した魔術でその攻撃をシャルロットは防いでみせたのだった。

 

第二団(アデプタス・オーダー)《地位》クラスのようだけど相手が悪かったわね。───《金色の雷神よ》」

 

 シャルロットは【プラズマ・カノン】をたった一節で詠唱すると第二団《地位》の男を葬り去った。

 

 シャルロットは周囲全ての敵を倒した事を確認するとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニアスは第二団《地位》の魔術師と戦っていた。

 

「どうした!? その程度か!?」

 

 男は次々と魔術を詠唱する。その全てをニアスは魔法遺産の力によって飛ばしていた。

 

「《吠えよ》《吠えよ》《吠えよ》《吠えよ》!!」

 

 男は【ブレイズ・バースト】を四連続で詠唱する。ニアスはその魔術を相手の元へと飛ばす。相手はその場から距離を取って躱す。

 

「───《雷槍よ》!!」

 

 その隙を狙ってニアスが【ライトニング・ピアス】を唱える。その攻撃は敵の肩を貫いたように見えた。しかし

 

「その程度か…?」

 

 その男の耐久力はずば抜けていた。ニアスはこれまで【ライトニング・ピアス】、【ブレイズ・バースト】といった魔術を唱え幾度となく攻撃はその男に直撃した。だが、男は無傷のままであった。

 

「さあさあ!! まだまだ行くぞ!!!」

 

 男が再び魔術の高速詠唱を開始する。再びニアスはそれを魔法遺産で飛ばす。だが今回は今までとは違っていた。相手はニアスが飛ばした魔術を躱そうとその場を離れる。と、そこに穴が開いていた。

 

「なにっ!?」

 

「──俺の魔術で倒せないなら他のやつので倒せばいい」

 

 男はその穴に吸い込まれ姿を消した。

 

「───!?」

 

(こいつ…絶対にヤバい!?)

 

 ニアスが敵が穴に消えたのを確認した時だったニアスはこれまでの敵とは明らかに違う気配を感じ取った。ニアスはその場からすぐさま離れようとするが遅かった。

 

「──《神炎の業火よ》」

 

 B級軍用魔術【インフェルノ・フレア】──。たった一節で詠唱されたその魔術により灼熱の業火がその場を駆け抜けた。

 

「この程度か…」

 

 男はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「《──■■■》!!」

 

 フォーエンハイムの男の竜言語魔術がアレンを襲う。だが、アレンと男の前に突如穴が現れる。

 

「なにっ!?」

 

 その穴からはニアスが飛ばした男が現れ竜言語魔術による爆炎が男を襲った。

 

「ぐぉおおおおおおおおおお!?」

 

「き、貴様らっ……!?」

 

 予想だにしない出来事に男は驚く。その隙が命取りだった。アレンが目の前から消えていることに男は気付くのが遅れた。

 

「……取った」

 

 通常の剣や銃弾では決して傷つかない男の竜の身体にアレンの槍が突き刺さっていた。

 天の知恵研究会の男二人は程なくして息絶えた。

 

「悪いな。こちとら手段を選んでられないんで」

 

 アレンは突如、槍を構え地面を蹴ると空中で槍を突き出す。その槍は一人の男に掴まれていた。

 

「あんた…何者だ?」

 

「第二団《地位》三帝の一人。───■■■」

 

「三帝だと…!?」

 

 天の知恵研究会第二団《地位》において、その中でも圧倒的な力を持つ三人が居た。彼らは三帝と呼ばれその力は第三団(ヘヴンス・オーダー)《天位》に匹敵するとも言われる。いわば姿を見せる第三団《天位》といったところだ。

 

 アレンは槍を動かそうとするがその槍はピクリとも動かなかった。

 

「三帝…あんまり舐めてかかると痛い目に合うぞ?」

 

 アレンがそう呟くと同時に迅雷の神槍は強烈な電撃を放った。

 

 堪らず男は槍から手を離す。アレンは槍を振り回し男の側面から槍を叩きつける。男は吹っ飛び地面に激突する。すぐさまアレンが詠唱を開始する。

 

「《万物を凌駕する雷神よ・敵を蹂躙せよ》──!!」

 

 魔法遺産の力によって二節で詠唱されたアレンの【プラズマ・カノン】が男へと襲い掛かる。

 

「《神炎の業火よ》」

 

 男も【インフェルノ・フレア】を一節で詠唱する。稲妻と業火が激突し、大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……セリカ。貴女の術。使わせて貰うわよ……」

 

 シャルロットは第二団《地位》の敵を複数相手にしていた。これまで戦闘をずっと続けておりシャルロットにも疲れが見えていた。

 

「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離せよ》」

 

「なにっ!? その呪文は!?」

 

「【イクスティンクション・レイ】だと──!?」

 

 だが、【イクスティンクション・レイ】は発動しなかった。

 

「はぁはぁ…」

 

「はっ! 流石のシャルロット=フリードも【イクスティンクション・レイ】は使えないようだな!」

 

 男がシャルロットへと斬り掛かり男の剣がシャルロットの目の前まで来た瞬間男が燃える。シャルロットが仕掛けていた魔術トラップが発動したのだ。シャルロットは続いて詠唱を開始する。

 

「《真紅の炎帝よ・劫火の軍旗掲げ・朱に蹂躙せよ》──!!」

 

「まさか…!? 二反響唱(ダブル・キャスト)だと…!?」

 

 シャルロットはB級軍用魔術【インフェルノ・フレア】を二反響唱という離れ業をやってのけ、周囲の敵を全滅させた。

 

「流石に…キツいわね。ここで第三団《天位》を相手にするのは」

 

 シャルロットは一点を見つめていた。その先にはフードをかぶった男が立っていた。男はシャルロットに静かに語りかける。

 

「万全の状態ならこの私でも討たれたであろう。……シャルロット=フリード。その命、ここで頂戴しよう」

 

 男が右手を構える。

 

「───《神炎の業火よ》」

 

 灼熱の業火が瀕死のシャルロットを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあああああああ!!!」

 

 アレンが槍で男に攻撃する。その速度は迅雷の如く、目にも留まらぬ速さであったが男はその攻撃を軽く躱すとアレンを蹴り飛ばす。地面に叩きつけられたアレンの体に、空から降ってきた光剣が複数突き刺さる。

 

「ぐぁあああああああ」

 

 アレンは完全に身動きが取れなくなりマナも切れかかっていた。

 

「……クソッ…」

 

 アレンは三帝の男の前に敗北を喫した。男がアレンの元へと歩み寄る。

 

「死なすには惜しい駒だ…その力、利用させて貰おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルロットは負けた。第三団《天位》の男はシャルロットの前に立っておりシャルロットはその場に倒れ込んでいる。シャルロットを殺そうと男は右手をシャルロットへと向ける。

 

「さらばだ。歴戦の強者よ」

 

 その瞬間シャルロットは右腕を構えた。男は瞬時に躱すが間に合わなかった。

 

「……そう簡単にやられる訳にはいかないわ」

 

 シャルロットは【イクスティンクション・レイ】を時間差起動(ディレイ・ブート)した。シャルロットの【イクスティンクション・レイ】によって男の左腕から先は消滅していた。

 

「……やってくれる。だが、終わりだ。──《雷槍よ》」

 

 男は【ライトニング・ピアス】を唱えその場を後にした。【ライトニング・ピアス】がシャルロットの心臓を穿つ。致命傷だった。シャルロットの命はもう1分と持たない。シャルロットが右腕を掲げて呟く。

 

「……あの子の力になってあげて」

 

 シャルロットは右腕を下ろした。

 

「……リアム。強く……生きて。貴方の事を私はずっと…愛してる」

 

 程なくしてシャルロットは息絶えた。

 

 数分後、カルロが村に到着した時、既に息のある人間は一人も居なかった。




前回、今回とオリキャラしか出てない問題。フォーエンハイム家の人はレイクとは別人です。次回から時間軸は戻ります。

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