俺は貴女を守る剣となる(リメイク版投稿中)   作:凪里

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改めまして

「…遅い! 凄くいい授業をするから、少しだけ。ほんっの少しだけ見直したらすぐこうなんだから!」

 

 システィーナは苛立っていた。

 それもそのはず、授業の開始時間を二十五分も過ぎているというのに担当講師のグレンは姿を見せない。

 

「でも、珍しいよね?グレン先生、最近は遅刻せずに頑張ってたのに」

 

 隣に座るルミアも首を傾げている。

 

「あいつ今日が休校日だって勘違いしてるんじゃねーか?」

 

「流石のグレン先生でもそんなことは……ない、よね?」

 

 リアムの発言をグレンの事を誰よりも信頼しているルミアでさえ、流石に否定はできない。

 最近態度は良くなったとはいえ、つい数日前までの授業態度を考えると遅刻はありえる話だ。

 

「!?」

 

 突然ルミアの隣の席に座るリアムが何かに気が付き驚いたような表情になる。

 それを不審に思い二人が声をかける。

 

「リアム君? どうしたの?」

 

「ん? あ、いや…………お腹が痛いなあ…なんて」

 

 リアムがお腹を抑え苦しそうな表情を見せる。

 だが表情は固くその様子はどこか違和感しかなかった。

 

「? 朝から食べ過ぎなんじゃないの…?」

 

「大丈夫?」

 

「あ…あぁ…ちょっとトイレ行ってくるわー!」

 

 リアムが立ち上がると教室を飛び出していこうとする。

 

「先生がいつ来るか分からないから早く帰って来なさいよー!?」

 

 システィーナがリアムに声をかけるとリアムは分かったと手を挙げる仕草で答えそのまま教室を出ていった。

 

「まったく困ったやつだわ…」

 

「まぁまぁ。誰だって体調を崩す時はあるし」

 

 ルミアがリアムのことをフォローする。

 

「体調管理は大切な事よ! それにしてもグレン先生は何してるのかしら! 先生が来たらとにかく一言言ってやるわ!」

 

「あはは…システィ落ち着いて」

 

 ルミアがシスティーナを宥めていると…教室の扉が乱暴に開けられた。

 大遅刻で焦って走ってきたグレンかと思い生徒達が扉の方へ注目するが教室に入ってきたのはグレンではなかった。

 

「邪魔するよー」

 

 突然現れたのは謎の二人の男だった。黒い服を纏い危険人物だと見て明らかに分かった。

 

「ちょっと貴方達、何者なんですか?」

 

 システィーナが男に食ってかかると男が指を突き出す。

 

「《ズドン》」

 

 男が小さく呟くとシスティーナの顔の真横を光の線が走る。

 システィーナが後ろを振り向くと小さな穴があきその穴からは外の景色が見える。

 システィーナは汗が止まらなくなった。

 

「……え?」

 

 男が放った呪文は黒魔【ライトニング・ピアス】。軍用の攻性呪文である。さらに男は短く切り詰めた一節詠唱で放ったのだ。

 この男の技巧の高さが分からないものなどこの教室において一人もいない。

 

「おい、システィーナ!さがれ!」

 

「ちょっと黙ってくんない?」

 

 システィーナに声を掛けるカッシュ。すると男は【ライトニング・ピアス】を三連続機動した。

 壁に外まで続く小さな穴がいくつも空いていた。

 この男には決して勝てない、例え全員で束になってかかったとしても───クラスの全員がその事を認識した。

 生徒達は恐怖のあまり誰も動けなくなった。システィーナも恐怖のあまりその場に座り込んだ。

 

「お、いい子じゃん。それで俺たちさ、一人女の子探しているんだけど───」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「学校にテロ仕掛けるとか…恐らくアイツらだな。ほんと狂ってんな」

 

 廊下を走っている一人の少年がいた。

 

 リアムである。

 リアムは不審人物が学院の中に入ってきたのを感知するとトイレに行くと嘘をつき教室から出て身を隠していた。

 そして教室を遠見の魔術で確認し、学院に入ってきた男達が天の知恵研究会と仮定する。

 

「狙いはルミアか…」

 

 リアムは遠見の魔術を二反響唱してダークコートの男がルミアをチンピラ風の男がシスティーナを攫ったことを確認した。

 

「さらに学院内にあと一人…それとあと黒幕が一人か」

 

(黒幕はさっき魔力発信の符呪で確認したが…あの位置…ルミアを転送するつもりか)

 

 黒幕が分かっても相手は四人、さらにそのうちの一人ルミアを攫った男は特に手練だ。一人では頭数がどうしても足りない。

 リアムがどうしようかと悩んでいると学院内を見ていた遠見の魔術が一人の男を捉えた。

 

「……!」

 

 グレンであった。

 確認するとグレンはシスティーナが連れ去られた部屋へと向かっている形となっている。

 

(システィーナは先生に任せるしかないか…)

 

 リアムはグレンに、システィーナを任せルミアを取り戻すことを決めた。

 ()()の事を考えるとそれが一番正しい選択だろう。

 リアムはそう考えていた。

 

(女王陛下直々に受けた任務だ。失敗するわけにはいかない)

 

 

 

 

「誰だ…!」

 

 走るリアムの耳に一人の男の声が聞こえてくる。

 

(見つかったか…!)

 

 リアムの前に一人の男が現れリアムの姿を確認すると男はリアムに対して問いかけた。リアムは足を止めた。

 

「ただの学生ですよ?」

 

 リアムが適当に流す。

 

「ガキが…どうやって抜け出した!」

 

「さーね?」

 

「後悔すんなよ?……クソガキ!」

 

 男は左手を振りかぶると呪文を唱える。

 

「《炎獅子よ》」

 

 男が唱えた魔術は黒魔【ブレイズ・バースト】。収束熱エネルギーの球体を放ち、着弾地点を爆炎と爆圧で薙ぎ払う強力な軍用呪文だ。

 魔術はリアムへと一直線に飛来しリアムは爆炎に飲み込まえた──そう思われたが

 

「なっ…」

 

 そこにリアムの姿は無かった。

 

「遅い」

 

 リアム男の背後に既に回っていた。

 男は瞬時に避けようとするが避けきれない。

 

「《雷槍よ》」

 

 男の肩を【ライトニング・ピアス】が貫く。

 男が肩を抑え距離をとった隙にリアムは錬金術で手早く剣を創り出す。

 

「軍用魔術…!? それに錬金術での高速錬成!? 貴様、ただの学生ではないな…!?」

 

「さーね?」

 

 剣を構えたリアムが地面を蹴り男に一気に詰め寄る。

 リアムが男に斬りかかったその時。

 リアムと男の間の空間が揺らぎ出すと

 無数のボーン・ゴーレムが現れリアムの攻撃を阻んだ。

 

「ちっ…あのコート野郎か」

 

 召喚【コール・ファミリア】。本来は、小動物のような小さな使い魔を呼ぶ召喚魔術だが、この術者は、ボーン・ゴーレムを、使い魔として、更には遠隔で連続召喚するという離れ技を行っている。

 

 ボーン・ゴーレムがリアムに襲い掛かる。

 リアムは次々とゴーレムを斬り倒すがゴーレムの数は数十体に及びさらには魔術師一人も相手にしなければならない。

 

「《雷槍よ》」

 

 男の【ライトニング・ピアス】がゴーレムの間をすり抜けリアムへと迫る。

 するとリアムはボーン・ゴーレムの頭を掴むとその上に逆立ちするようにして攻撃を避ける。

 そして空中から魔術を唱える。

 

「《炎獅子よ》」

 

 爆炎が男を襲うがその爆炎はボーン・ゴーレムが盾となり防ぐ。

 その隙に男が回避するがその回避した先をさらに爆炎が襲う。

 

「なっ…《光の障壁よ》」

 

 男は咄嗟に対抗呪文を唱えて、魔力障壁で爆炎を防いだ。しかしここで隙が生まれる。

 

「終わりだ」

 

 その隙を見逃すリアムではなかった。

 後ろに回り込んでいたリアムが剣で男を斬り裂いた。

 男は倒れ込んだ。勝負ありだ。

 リアムが指をパチンと鳴らすとゴーレム達を炎が襲った。

 

「この俺が学生ごときに……お前二反響唱(ダブル・キャスト)までこなすとは…何者だ…?」

 

 リアムは男に寄って答えた。

 

「俺か?俺は─────」

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

「《我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・──……」

 

「……え? 嘘……? その呪文は……」

 

 システィーナを助け出したグレンはシスティーナと共に無数のボーン・ゴーレムと対峙していた。

 システィーナの【ストーム・ウォール】により進行速度が落とされたゴーレムに対してグレンが両手を突き出し呪文を唱えていた。

 

「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かなる虚無の果てに》───ッ!」

 

「ええい!ぶっ飛べ、有象無象!黒魔改【イクスティンクション・レイ】───ッ!」

 

 グレンが放った高等呪文はゴーレムの群れに加え天井、壁までも消滅させていた。

 だがグレンもその場に倒れた。

 

「先生ッ!?」

 

 システィーナがすぐに駆け寄る。

 グレンの顔色は酷くマナ欠乏症に陥っていた。駆け寄ってきたシスティーナにグレンが応える。

 

「おい、白猫。俺に構ってる場合じゃねえ…今すぐここを離れ…」

 

 グレンは言いかけるが聞こえてきた足音に苦い顔をした。

 

「ちっ…離れる暇なんて与えてくんねーよなあ。くそ」

 

 二人の前に姿を表したのはダークコートの男レイクだった。

 その背後には五本の剣が浮いている。

 

「貴様はここで仕留める」

 

「あー、もう浮いてる剣ってだけで嫌な予感がす…」

 

 刹那。グレンとシスティーナの間を一筋の光が駆け抜けた。

 光はレイクに向かって一直線。

 レイクに当たる直前に二本の剣がレイクの前でクロスする形でその光を防いだ。

 

「……貴様か」

 

 レイクが苦い顔をした。

 レイクはグレン以上に一人の男を警戒していた。

 あの教室からどういう訳か抜け出し、自分が差し向けたボーン・ゴーレムと魔術師一人をもってしても及ばなかった───

 

「今のは…【ライトニング・ピアス】!?」

「新手か…っ!」

 

 システィーナとグレンが驚き振り返るとそこには予想だにしない人物が立っていた。

 整った顔立ちに鮮やかな青の短髪───

 

「リアム!? 何であなたが!?」

 

  その場に居たのはリアムだ。その右手には一振りの剣が握られている。

 

「もう少しやれます…よね?《愚者》のグレンさん?」

 

 グレンが驚いた顔でリアムの事を見る。

 《愚者》というワードにレイクも驚いた顔でこちらはグレンのことを見ていた。

 システィーナは何のことかさっぱり分からないという顔をしている。

 

「おまっ…何でそれを…!? ……何者だ」

 

 グレンが警戒の表情をリアムへと向ける。

 システィーナは何故リアムがここに居るのか、何故グレンがリアムを警戒しているのか全く理解ができなかった。

 

「そう警戒しないで下さい…()()

 

 リアムはそう言うと丈長の黒いローブを制服の上から羽織った。

 それは帝国宮廷魔導士の礼服───

 

「改めまして俺は帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー18《月》───」

 

「リアム=ロディウス。以後お見知り置きを!」

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