今回長めですがよろしくお願いします!
「なっ…!? お前…宮廷魔導士団だったのか…!? しかも特務分室だと!?」
グレンは驚きの顔でリアムを見つめている
帝国宮廷魔道士団特務分室───
帝国宮廷魔導士団の中でも魔術がらみの案件を専門に対処する部署で、かつてグレンが軍所属だった時所属していた。よってグレンにとってリアムはかつての同僚となるはずなのだが、リアムが特務分室に所属するようになったのはグレンが特務分室を辞め、アルザーノ帝国魔術学院の非常勤講師になるまでの一年間の間である為、互いの事はまったく知らなかった。
「えっ…特務分室…? なに…それ?」
「話は後だ。今はこいつをぶっ飛ばす」
システィーナが疑問を問いかけるがリアムは気にせず左手にも剣を錬成し戦闘態勢に入る。
グレンも真剣な顔に戻りレイクを見据えている。
「なるほど…帝国宮廷魔導士団か…さらには特務分室の所属とはな。そんな奴が学生の中に紛れ込んでいたとは誤算だった」
レイクの表情は既に冷静さを取り戻しており戦闘態勢に入っている。突如レイクが右手を軽く動かすと五本の剣が三人を襲う。
システィーナとグレンの前に素早く割って入ったリアムが三本の剣を両手の剣で受け止め防ぐ。
残りの二本はリアムを避けグレンとシスティーナに襲い掛かる。
二本の剣はまるで意思を持ったように三本の剣とは違った動きを見せていた。
「ちっ…こっちは手動式か」
グレンがシスティーナの黒魔【ウェポン・エンチャント】で強化された拳でその剣を受け止める。
「私はこれまでの経験から三本の自動剣と二本の手動剣の組み合わせが最も強い、そう結論付けた」
「余所見してる場合かよ。《その剣に光あれ》」
リアムが【ウェポン・エンチャント】を詠唱し、両手の双剣を強化すると、三本の剣を弾き飛ばした。
「《雷槍よ》」
リアムは剣を弾き飛ばすと同時にすかさず【ライトニング・ピアス】を
並の魔術師ならこの素早い【ライトニング・ピアス】の二反響唱を防ぎきれずに倒せる、
しかしレイクは数々の修羅場をくぐり抜けた魔術師でありその攻撃に対する反応は早かった。
「《光の障壁よ》」
レイクは冷や汗一つかくことなく冷静に
雷撃と障壁がぶつかり合いやがて障壁が破れると煙があがる。
煙に紛れてリアムがレイクとの距離を一気に詰め寄っていた。
リアムの剣撃がレイクを襲う。
だが、レイクもすかさず二本の手動剣でリアムの剣撃を受け止める。
「《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに──……」
グレンが隙を見て【ブレイズ・バースト】を唱えようとするがグレンは三節詠唱までしか出来ない。
三節詠唱ならば簡単にレイクは片手間でも対処できる。
「遅い」
リアムによって弾き飛ばされていた自動式の三本の剣がグレンへと襲い掛かる。
「ちっ…!」
グレンは魔術の詠唱を止め、その剣を避ける。
慌てて避けたことによりその着地時にグレンは足をくじいた。
「くそっ…!」
怯んだグレンに三本の剣が襲い掛かる。
なんとか急所は避けたが三本の剣はグレンの右肩、右腕、左足を切り刻んでいた。
再びグレンに三本の剣が襲い掛かる。
「《大いなる風よ》……!」
グレンの元に駆けつけたシスティーナが【ゲイル・ブロウ】を唱えグレンを襲う剣を吹き飛ばした。
「グレン先生…ッ!」
足を抑えるグレンにシスティーナが駆け寄る。
「悪ぃ白猫…助かった…」
その間もリアムとレイクの剣撃の応酬は続いていた。
その場には金属と金属がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。
そんな中レイクが隙を見て【ライトニング・ピアス】を唱える。
リアムを撃ち抜かんとする一筋の光───
「ちっ…《霧散せよ》」
その光はリアムへと辿り着く前に対抗呪文によって消えた。
対抗呪文を唱えることによって隙が生まれた。
その隙を見逃さずレイクの剣撃の精度があがりリアムの剣がレイクの剣によって弾かれる。
「その程度か…? 宮廷魔導士…!」
「甘く見んなよ」
弾かれたリアムの剣は弧を描きレイクの元へと向かっている。
「《爆散せよ》」
リアムの一節の詠唱で剣が爆発する。
レイクは距離を取りその爆発から間一髪逃れる。
その爆発によりレイクの剣二本は破壊される。
「ちっ…起爆式だったか」
既にリアムはレイクの元へ駆け出している。
「後ろががら空きだぞ!」
背後から三本の剣がリアムを襲うがリアムはそれを気にも止めない。
「《力よ無に帰せ》───ッ!」
システィーナの【ディスペル・フォース】によってレイクの剣はただの剣となりその場に静かな音を立て落ちた。
「!? 何───ッ!」
「システィーナ、助かる!」
リアムが礼を述べると詠唱を開始する。
「《気高き金色の雷神よ・我が剣となりて・───……」
「……ッ!《光の障壁よ》」
レイクがリアムに対し対抗呪文で対抗する。魔力障壁がレイクの前に現れる。
リアムは飛び上がり詠唱を続ける。
「《雷の如く駆け抜けよ》───ッ!」
リアムが唱えた魔術はB級軍用魔術の【ライトニング・ソード】───。自由に形状変化させることが出来る剣状の雷を生み出す魔術である。
精製された剣はバチバチと音を立てながらリアムの右手に収まっている。
「うおおおおおおらぁああああ───ッ!」
雷の剣をリアムが大きく振りかぶり魔力障壁を真正面から叩く。
そのあまりの威力に魔力障壁にひびが入る。
勢いがあったこともあり魔力障壁に入ったひびは瞬時に大きくなっていく。
「《目覚めよ刃───!?」
レイクは剣に再び魔力を送るが起動しない。
「チェックメイトだ」
グレンの右手には愚者のアルカナが握られていた。
「!?」
やがてリアムの【ライトニング・ソード】が魔力障壁を叩き割る。
レイクは回避しようとするがリアムの方が速く既にレイクの懐に飛び込んでいた。
リアムの剣状の雷がレイクの急所を貫通する。
緋色が壁に床に静かな音をたて飛び散る。
「……見事だ」
レイクは崩れるように倒れ息を引き取った。
それと同時にグレンも倒れる。
「ちっ…ここまでか…」
「先生──ッ!」
リアムとテロリストの男レイクの様子を見ていたシスティーナが慌ててグレンを振り返る。
マナ欠乏症のまま無理をしたからかグレンの顔色は悪かった。
グレンを心配するシスティーナにリアムが声をかける。
「システィーナ、グレン先生を安全な所に運んでくれ。暫く安静にすれば大丈夫だ」
「ちょ…あんたも相当…!?」
リアムも相当戦っていたはずだ。マナ欠乏症に陥ってもおかしくないほどマナを消費している筈───そうシスティーナがリアムを心配するもリアムの顔には未だ余裕があった。
「魔力容量には結構自身があるからな………お前程ではないが」
システィーナにはリアムが小声で発した後半部分は聞き取れてはいないだろう。
「ルミアを助けに行く。先生は任せた」
リアムはそう言い残しこの場を去ろうとしたその時───
リアムにグレンが話しかけた。
「おい、リアム。助けに行くって言ってもな…ルミアが、それに黒幕がどこにいんのか…分かるのか?」
「分かります。それに黒幕の正体も掴んでますし」
「なにっ…!?」
目を丸くする二人にリアムは黒幕の名を告げる。
その名前にグレンとシスティーナが驚く。システィーナはグレン以上に驚いていた。
「そんな、ヒューイ先生が!?」
ヒューイ=ルイセン───
グレンの前任講師であった男であり授業もわかりやすいと好評であった。
一身上の都合で退職とされていたが…
「あいつは天の知恵研究会から送り込まれていたスパイだ」
「そんな…」
動揺が隠せないシスティーナ。
それもそのはず、システィーナにとってヒューイは最も頼れる講師だったからだ。
「でも何で分かったんだ?」
グレンがリアムに疑問を問いかける。
「魔力発信の付呪をしてましたからね。すぐに場所わかりましたよ」
リアムは一目見た時からヒューイの怪しさを感じ取り念のために魔力発信の付呪をしていたのだ。
「予防線の一つに引っかかった。それだけです」
リアムは十五歳ながら並外れた観察眼に加え魔術、剣術ともにずば抜けたセンスを誇る。
帝国宮廷魔導士団に選ばれても何の不思議もなかった。
「リアム…!」
システィーナがリアムの名前を呼んだ。
その真剣な声にリアムが振り向く。
「ルミアを…助けて…」
リアムはすぐに向き直り歩き出すと
「任せろ」
その一言だけを残してリアムはルミアの元へと走り出していた。
※※※
学園内に聳え立つ白亜の塔───
帝都と学院を繋ぐ転送法陣がある転送塔それがここである。
転送塔の近くは崩れたゴーレムで埋め尽くされている。
その内部、長く続く螺旋階段を登った先、最上階の大広間、そこにルミアはいた。
しかしそこにはルミアだけでなくもう一人の青年がいた。
今回の事件の黒幕であり、学院内にいた裏切り者───ヒューイ=ルイセンがそこにいた。
転送法陣の上で魔術により拘束されていたルミアがヒューイに叫んだ。
「ヒューイ先生! 貴方はこんなことをする人じゃなかった…! 私を転送して、自分の魂ごと学院を爆破させるなんて───……!」
ヒューイは静かにルミアの悲痛な叫びを聞いていた。
やがてヒューイが口を開いた。
「僕はもとより、王族、もしくは政府要人の身内。そのような方がこの学院に入学された時───」
「そいつを自爆テロで殺害するため、そんな僅かなないかもしれない事の為だけにこの学院に在籍していた。様は人間爆弾ってとこか?」
ヒューイに割って入り声を発した人物がいた。
入り口にもたれかかっているその男を見た二人は驚きを隠せない。
「……まさか貴方でしたか…」
「そんな…リアム君!?」
しかしリアムの姿は二人が知っているリアムとは違っていた。
丈長の黒いコートを羽織り、両手に握られるのは錬成された二対の双剣。
鋭い目つきでヒューイの事を見据えていた。
「その黒いコート…なるほど。帝国宮廷魔導士でしたか…」
「ご名答。俺はそこのルミアを護衛する任務を女王直々に受けてる」
そのリアムの言葉にルミアが驚いていた。
あの日私に冷たい目を向けたあの人が私の為に護衛をつけていた───ルミアはその事実に驚きを隠せなかった。
「事実だよ。お前の母さんはお前の事を愛してるよ」
そんなルミアの心情を察してかリアムがルミアに声をかけた。
そしてリアムは法陣に向かって歩き出す。
リアムは法陣をじっと見つめ口を開く。
「……なるほど。白魔儀【サクリファイス】か」
「はい」
穏やかにヒューイは微笑んだ。
「確かに死ぬつもりらしいな」
「僕の腕前ではルミアさんの転送するための転送法陣の改変は間に合い間に合いませんでした、まさか貴方のような伏兵がいたとは…」
「しかし白魔儀【サクリファイス】この魔術だけの起動はできる。あと十分もすれば起動します。解呪に取り掛かったとしても間に合うとはとても思えません」
ルミアがヒューイの言葉を聞きリアムに懇願するように叫んだ。
「そんな…逃げて…!リアム君…貴方だけでも…!」
だがリアムはルミアの願いを聞き入れようとはせず法陣の解呪へと取り掛かる。
その解呪の手際はとても速い。
「貴方だけなら学院の地下に逃げ込めば助かる余地はある…ですが…迷いはないようですね」
「そんな…どうして!」
「おいおい…俺の任務はルミアの護衛。護衛対象を死なせて自分だけ助かるとか完全にアウトだろ」
リアムの解呪の手際はヒューイの想像以上に速い。これならばあるいは───そう考えていたヒューイは自分自身に驚いた。
(僕は彼が【サクリファイス】を解呪することを望んでいるのか…?生徒の無事を僕はどこかで願っていた? 長く…ここに居過ぎましたかね…)
「逃げたって誰も責めないよ…!だから逃げて…私のことなんて…ど───」
「どうでもいいわけなんてないだろ」
ルミアは自分が言おうとした言葉をリアムに言われて言葉が出ない。
「自分のことなんてどうでもいい。死んだって構わないって思ってる。自分が死んでも誰かが助かる方がいいって思ってる。そうだろ?」
ルミアが考えていた事を次々と当てるリアムにルミアは驚きの表情だ。
「俺も昔はそう思ってたよ…自分なんて死んだって構わないってな。だけど…!」
昔の自分の姿がリアムの頭の中を過ぎる───
法陣はリアムの黒魔儀【イレイズ】によって既に二層目も解呪されていた。
「自分がどうでもいいって思っていても周りの人はそう思ってなんかねえ…! 俺は自分の事を大切にしてくれる人、愛してくれる人に出会って変わることができた…!お前にもそんな人達がいるだろ!」
「システィーナやグレン先生、クラスのみんな、それに…」
そこまで言ってリアムは口を噤んだ。
「まあとにかく…大切に思ってくれる人の為にも生きろよ…!」
「…!」
「誰かの為に死ぬことだって立派だけどな、その為に自分はどうなっても構わない。死んでもいいってのは違う! もっと自分を愛せよ! もっと自分の為に生きろよ! ルミア!!」
「!!」
「みんなともっと一緒にいたい。もっと色んなことをしてみたい。そう思うだろ? ルミア」
【イレイズ】により第四層も解呪成功───しかし最終層を残し残りは一分。
白魔儀【サクリファイス】が起動を開始しようとしていた。
「くそ……ルミア…!」
名前を呼ばれたルミアはリアムの方を静かに見据える。
「お前気持ちに変化…あったか…?」
ルミアは自分の事を家族と言ってくれるシスティーナ、そして荒れていた自分を優しく包み込んでくれたシスティーナの両親、ルミアの為に護衛をつけてくれていた自分の本当の母親、自分の事を優しく受け入れてくれたクラスのみんな、昔、命を救ってくれたグレン、そして今まさに命を張って助けに来てくれたリアムのことを思い、そして───
リアムの言葉を聞きルミアは涙を流して叫んだ。
「私は…生きたい…! 自分の為に…まだまだ生きたい…! もっとみんなと一緒に居たいよ……!!」
「そうか…なら間に合わせるしかねーよなあ!」
リアムの解呪のスピードがこれまでよりも格段に上がる。
それでも解呪が間に合うかは五分五分───
法陣の輝きが寄りましてくる。その中でもリアムは解呪を続ける。
そして文字を書き終えたと同時に叫ぶ。
「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》───!!」
大きな輝きを放っていた法陣は輝きを消し静寂に包まれ、やがて法陣は───消えた。
「リアム君…!」
するとルミアがリアム目掛けて飛び込んでくる。
「ちょっ…」
そんな二人の様子を見ながらヒューイは呟く。
「私の負け…ですか。でも……良かった…」
リアムがヒューイの元へと近づく。
「あんたはさ。そっち側は向いてないんだよ。本当にそっち側の人間だったら何年いようが今のアンタみたいにホッとした表情にはならないよ」
「……リアム君」
「あんたの生徒達と接する姿は紛れもなく教師だったよ。生徒のことを心から愛していたし…あんたのことを詳しく知るわけではないから偉そうにこう言うのもなんだけどさ。教師になった方が良かったと思うよ」
ルミアもヒューイの元へと歩を進める。
「ヒューイ先生……また戻ってきてください!」
ヒューイはルミアのことを申し訳なさそうに見ると
「ルミア君……私は貴女に……」
ルミアはヒューイを真っ直ぐ見据えて…
「私達……待ってますから!」
その言葉を聞きヒューイは涙を流しその場に崩れ落ちた。
こうしてアルザーノ帝国魔術学院自爆テロ未遂事件は幕を閉じたのであった。
コメントくれると嬉しいです!
次回も今日中に更新出来たらなと思います。