後半はいつもとは違う一人称での茶番回?です。
アルザーノ帝国魔術学院を襲った前代未聞の自爆テロ未遂事件。
かつて女王陛下の懐刀として暗躍した伝説の魔術師殺し、存在を密かに抹消された廃棄王女、さらには学園内に紛れ込んでいた凄腕の天才魔術師が事件と関わっていた───そのような噂が囁かれた。
しかし人は飽きる生き物だ。その噂も話題に上げるものは徐々に減り、一ヶ月後には誰の話題にも上がらなくなっていた。
そしてアルザーノ帝国魔術学院には以前と何ら変わらない日常が戻ってきたのである。
「しっかしまあ…ルミアが三年前病死したはずの、あのエルミアナ王女で、女王陛下直々に護衛の命をリアムが受けていたとはなあ…」
晴れて非常勤講師から正式に講師となったグレンが一ヶ月前に起こった事件を振り返っていた。
あの事件の後、グレンとシスティーナの二人は、事件解決の功労者として帝国政府上層部に密かに呼び出され、ルミアの素性を聞かされた。
リアムの任務の事を知っているのはその任務を出した女王陛下自らとリアムが所属する帝国宮廷魔導士団の特務分室だけだ。
二人は後にリアムからその事を聞かさていたのだ。
ルミアが王女であろうが、リアムが帝国宮廷魔導士団の一員であったとしても何一つシスティーナの二人への態度が変わることはなかった。
「まあまあ。無事解決したんだからいいじゃないっすか」
「てかさ。お前どうやって俺のこと知ったの? 特務分室時代の情報とか全部消されてんじゃね?」
「ああそれだったら───」
───数日前。特務分室にて
「俺学生だぞ!? 何で平日にこんなに書類書かなきゃ行けないんだよ!? 寝不足で死ぬわ!! 任務で長期間一人抜けてる分を何故!? 何故俺に回すぅ!?」
リアムは愚痴を言いながら書類の山を片付けていた。
「リア坊大変じゃのう」
その様子をバーナードは呑気に新聞を読みながら見ていた。
「いやちょっとは手伝ってくださいよ!?」
そこに帝国軍の特務分室の一人クリストフがやって来る。
「リアム君。僕暇だから手伝うよ?」
クリストフがリアムの傍に聳え立つ山から書類を幾つか取る。
「ありがとうございます! クリストフ先輩は神ですねホント」
「いやいやそこまででは…それにしても本当にリアム君は頑張ってるよ。学生なのにグレン先輩の穴を埋めるどころかそれ以上だね」
「ん? グレン先輩…?」
リアムがその名前を聞き書類を書く手を止める。その様子を不審に思ったクリストフがリアムに話しかける。
「どうしたの…?」
「グレンって人のこと詳しく聞かせて貰っていいですか!!!」
「て訳ですよ」
リアムがその時のことを思い出しながらグレンに話す。
「なるほどねえ…クリストフに隠者のおっさんとか懐かしいな…てかクリストフに書類押し付けたまま辞めたな俺…他にも貸し作りまくったままだわ…」
「何してんすか…」
二人がそんな話をしていると聞きなれた声が聞こえてくる。
「あっ、先生!」
「やっと見つけた…!」
廊下の向こうから見慣れた二人の女子生徒がグレンを見つけ駆け寄ってきていた。
システィーナの表情を見るとなにやら怒っているようだ。
恐らくグレンが先の授業で錬金術について教えた時に授業の後半に犯罪スレスレ…いやれっきとした犯罪である金モドキを売りつけ小銭を稼ぐ話をしたからであろう。
「やれやれ…」
グレンは頭を右手で掻きながらシスティーナの説教を受けに二人の話を聞きに向かった。
案の定システィーナの説教が始まる。
ルミアは隣で苦笑いしている。
ルミアがリアムに話しかける。
「グレン先生となに話してたの? リアム君…?」
「まあいろいろね…」
「ふーん。そうなんだ」
突然ルミアが何かを思い出した様な顔になったと思うとリアムに話しかける。
「あっそうだ。リアム君!教えてほしいところがあるんだけど…」
「ん…? どこだ…?」
リアムとルミアはそのまま図書室の勉強しに向かっていった。
グレンへのシスティーナの説教はいつの間にか終わっており静かに二人は仲良く談笑しながら歩いて行った二人のことを見ていた。
「ねえ…先生…」
「ああ…お前も思ったか。白猫…」
いつもは意見など全くに合わず喧嘩ばかりしている二人だがどうやらこの時ばかりは意見が合ったらしい。
「「あの二人…怪しい…!」」
この日図書室で勉強する二人の姿と共にその二人を監視するように見ている講師と生徒の姿が目撃された。
(あの二人…わかりやすいんだよなあ…)
「んー…」
リアムはため息をつくしかなかった。
その間もルミアは教科書と睨めっこしている。
※※※
俺の名前はカッシュ。アルザーノ帝国魔術学院の生徒だ。
最近俺のクラス二年二組に一つの噂がある───
そう。ルミア=ティンジェルとリアム=ロディウスの交際疑惑だ。
この二人共に容姿端麗である。入学から一年が経ってもリアムに話しかけられるとキャーキャー騒ぐ女子がいるし、ルミアへ告白した後振られて落ち込んでいる男子生徒の姿は未だに見かける。
もともとこの二人は仲は良い方だ。しかし最近は特に仲が良い。
授業中グレンとシスティーナが言い争っている時も二人は一緒に何か話しているし放課後度々二人で図書室で勉強している姿が目撃されている。
今俺はカイそしてウェンディと共に図書室に張り込んでいる。
金曜日には必ず二人はここで勉強する。このことは既に事前調査により判明している。
そして今日は───金曜日だ。
「ウェンディ。あの二人…どう思う?」
カイがウェンディに質問を投げかけた。
初めは俺とカイの二人の予定だったがこの話を嗅ぎつけたウェンディも参加すると言ってきたのだ。
ウェンディはクラス一のゴシップ好きだ。この話に食いつくのは納得だ。
「怪しいですわ。プンプンに匂いますわ…!」
ウェンディがカイの質問に答えた時である。ターゲットの二人が図書室にやって来た。
俺たち三人は汗を流す。
「今日はあの錬金術について───」
「ああ…あれはだな───」
チッ…リア充め…
実は俺たち以外にも二人の様子を見ている者がいる。
グレン先生とシスティーナだ。
二人は本棚の影からこっそり二人を見ている。
うん。バレバレだ。あれに気づかないわけがない。
てかリアムの位置から丸見えだし…!
二時間後───
ターゲットの二人が帰るようだ。
当然俺たち三人もあとを追う。
グレン先生とシスティーナは───
システィーナは本を熱心に読んでいる。
恐らく『メルガリウスの天空城』についての本だろう。彼女は典型的なメルガリアンだ。グレン先生はというと寝ている。
やれやれ何をしに来たんだか…
「カッシュ急げ…見失う…!」
「あぁ…!」
二人はカフェに入っていった。
二人が座った席から少し離れた席に俺達は座った。
二人とも笑顔で楽しそうに話している。
チッ…リア充め…
俺が何が憎いかって? そんなものは決まってる。イケメンは敵だ。さらにそのイケメンが俺たちのアイドル───あの天使の様なルミアちゃんと付き合うなど…!
テンプレ展開過ぎて許せん…!
因みに二人に直接聞いたりも既にしている。
俺がリアムにそれを聞いた時は…
「え?俺がルミアと付き合ってるって?」
「ああ…違うのか…?」
リアムは小さく笑うと、どーだろねと言い残し去って言った。
これがイケメンの余裕と言うやつなのか…!
ウェンディがルミアに聞いた時は…
「え…!? わ、私が…り、リアム君とつ、つ、付き合ってる…!?」
「違いますの…?」
「ち、違うよッ! …付き合ってない…! 付き合ってないよ…ッ!」
顔を真っ赤にして教室を去って行ったらしい。
いやもう明らかでしょ!?それ答えでしょ!?
ガタッ
席を立つ音が聞こえて俺が二人の方を見ると席を立ち会計を済ませようとしていた。
「追いかけるぞ…!」
自分たちも会計を済ませると慌ててカフェを飛び出す。
しかし二人の姿はない。
「どこに行きましたの…!?」
「見失ったか…!?」
そこに一人の少年が歩いてきた。
少年が俺の制服を引っ張る。
「どうしたんだ…?迷子か…?」
「親御さんを探しに行きましょうか」
「ねーねー」
俺の制服をさらに強く引っ張る。
「安心しろ。お前の親御さんなら俺達が今から見つけてやるからな」
「お前らなにしてんの───?」
「「「……え?」」」
少年の口調が一転したと思うと少年の姿が歪み少年はリアムへと変わった。
自分の姿を変える魔術【セルフ・イリュージョン】だ。
「「「あ」」」
「《雷精の紫電よ》」
リアムが右手を前に出すと【ショック・ボルト】を唱える。
「「「ごめんなさーーーーい!!!」」」
今日もフェジテの街は平穏だ。
「はっ…! 俺は何を…ッ!」
その頃図書室で一人の講師が目を覚ました。
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ちなみにあと二話ほど投稿できますが今日中にした方がいいですかね?