俺は貴女を守る剣となる(リメイク版投稿中)   作:凪里

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今回から二部スタートです!
よろしくお願いします!


第2章 魔術競技祭編
来たる!魔術競技祭!


「『飛行競争』の種目に出たい人ー?」

 

 壇上に立ったシスティーナがクラス中に呼びかけるも反応はない。

 クラスメイトは皆、俯いたままである。

 

「…『変身』の種目に出たい人ー?」

 

 しかしクラスメイト達は無反応だ。

 今この教室では、来週の魔術競技祭のメンバー決めをしている。

 だが誰も反応しない。それもそのはず。

 魔術競技祭は近年、クラスの成績上位陣のみが出場するのがお約束となっている。

 さらに、今回は女王陛下が賓客として御尊来になる。

 クラスの皆が気が引けるのは当然のことだ。

 

 成績トップのリアムも参加しようとする意志はないようだ。

 思えば昨年の魔術競技祭もリアムは適当な言い訳を付けて参加していなかった。

 

(俺が競技に出てる間にルミアが襲われたらどうすんだよ…)

 

 リアムはアルザーノ帝国魔術学院の生徒だが、実はもう一つの顔がある。

 それは帝国宮廷魔導士団特務分室に所属している軍の魔術師という事だ。

 リアムは異能が見つかった為に三年前病死扱いとされ王家を追放されていたエルミアナ王女…ルミアの護衛を女王陛下直々に任せられている。

 このことを知るのは、学院でもごく僅かな者だけである。

 こうした理由もあり、リアムは魔術競技祭には参加しない。

 魔術競技祭は入院許可証が必要であるとはいえ、外部から多くの人間が訪れる。

 リアムが競技に出ている間に何かがあってからでは遅いのだ。

 

 ばぁんっ! と派手な音が教室に響き渡る。

 勢いよく教室前方の扉が開かれていた。

 クラス全員がそちらを見ると同時に全員の顔が一気に青ざめる。

 

「話は聞いたッ!」

「ここは俺に任せろ、このグレン=レーダス大先生様にな───ッ!」

 

 グレンが謎のポーズを決めてそこには立っていた。

 

(───うわ…ややこしいのが来た)

 

 クラス一同の心情が見事に一致する。

 グレンはシスティーナを押しのけるように教壇に立つと続けた。

 

「争いは何も生まない───そして何より───」

 

 クラスの者全員が()()グレンの次に発する言葉に注意を向ける。

 きらきらと輝くような、爽やかな笑みを満面にグレンが浮かべて───

 

「俺達は、優勝という一つの目標を目指して共に戦う仲間じゃないか」

 

(───キモイ)

 

 クラス一同の心情は再び一致するのであった。

 

 

 

 

 

「す、すげぇ…」

 

 グレンの手際は目を見張るものがあった。

 次から次へと競技ごとの参加メンバーを発表していく。

 そして発表が終わると生徒達はざわついていた。

 それもそうだ。今回の競技祭の参加メンバーに誰一人として選を漏れていなかったからだ。

 クラスの生徒全員が何かしらの競技に出場することになっている。

 

「ちょっ、俺は───」

 

 グレンに対しリアムが不満げな声を上げると、リアムの方にグレンが寄ってきた。

 

「なんだ? 不満か?」

 

「いや、俺は出場する気なんか…」

 

 するとグレンは大袈裟に手を頭に置き

 

「おいおい、成績トップのお前が出ないと勝てるもんも勝てないだろ…?それに…」

 

 グレンが小さくリアムに耳打ちをする。

 

「大丈夫だ。ルミアには俺が付いてる」

 

「…ッ!?」

 

 グレンがリアムを選出した競技は『呪文詠唱』である。

『呪文詠唱』───

 この種目は簡単に言ったら早口言葉だ。

【ゲイル・ブロウ】、【ショック・ボルト】、【ファイア・ショット】この3つの基本的な三属性の黒魔術をどれだけ早く詠唱し現れる的に当てることができるかという競技だ。詠唱速度は勿論なこと、的を狙う正確性も要求される。

 呪文の即興改変などいくらグレンの授業を受けたからといってほとんど生徒ができるものでは無い。

 それを簡単にこなせるリアムが負ける訳などない。

 また『呪文詠唱』の競技は、他の競技と比べて比較的早く終わる。グレンはそれも考慮してリアムを『呪文詠唱』に選んだのだ。

 リアムは悩んだ後、やがて出場を承諾した。

 

「カッシュを選んだ理由は───」

 

 グレンは他の生徒達からの質問を受け、選出理由などを丁寧に答えている。

 その間にリアムは黒板に書かれた生徒毎の出場競技を見てある事に気づく。

 選ばれていない生徒がいないのは勿論のこと使い回されている生徒も一人もいないのだ。

(確かにこれは理想的な布陣だ。俺やウェンディのとこは余裕で1位だろうし、システィーナとギイブルがいる決闘戦も大丈夫だろう。といっても…)

 ほかの競技を持ってしてもそれぞれの生徒が得意な分野の競技に当たるように割り振られている。

 確かにグレンが選んだのは理想的な布陣ではあるが、それは生徒を使い回さなかった場合においてだ。やはり成績優秀者を使いまわした方が得点はとれる。

 グレンは同じ生徒を複数の競技で使いまわして良いことに気づいてないようだった。

 優勝したクラスの担当講師に出る特別賞与が目的のグレンは本来、成績優秀者のシスティーナやリアム、ギイブル達を存分に使い回すに決まっているのだ。

 

「気づいてないなこりゃあ….」

 

 壇上ではシスティーナがグレンに満面の笑顔を見せている。

 

「なんか…噛み合ってない気がするなあ…」

 

 そんな二人の様子を、ルミアは苦笑いで眺めていた。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「《雷精の紫電よ》───ッ!」

 

 放課後。学院の中庭は二組の生徒達の練習場所となっていた。

【ショック・ボルト】や【レビテート・フライ】、【サイ・テレキネシス】など様々な呪文の詠唱が聞こえてくる。

 それぞれがそれぞれの競技に向けて練習に励んでいた。

 

 練習は不要であったが一応リアムも練習することにしたようだ。

 リアムは中庭の端の木に腰掛け掌を上に向けて詠唱する。

 

「《ズバー》」

 

 リアムの適当な呪文で【ショック・ボルト】の魔術が起動し、小さな電撃が木の枝に向かって走る。

 すると電撃は木の枝を捉え、小さな木の枝が落ちてきた。

 

「すごーい…! 今のって【ショック・ボルト】…?」

 

 リアムの前にルミアが立っていた。

 ルミアは目を丸くして落ちた小さな木の枝を見ている。

 

「まーねー。これくらい出来たら余裕だろうし…後は寝るとするかな…」

 

 リアムはそう告げると目を瞑り眠ろうとする。

 するとリアムの額に小さな痛みが走る。

 

「いてっ」

 

「駄目だよ。サボる暇なんてないよ…?リアム君。みんなの練習相手とか…やることは沢山あるんだよ?」

 

 どうやらルミアがリアムにデコピンをしたようだ。

 ルミアは頬を軽く膨らませるとリアムに手を差し伸べる。

 

「……はあ…仕方ないな」

 

 リアムはルミアの手を取り起き上がると皆が集まっている中庭の中央へと歩いて行った。

 

「いや、もう。付き合えよ…」

 

 カッシュはそんな二人の様子を見ながら小さく呟いていた。

 

 

 

 

 

 次の日の放課後。

 中庭は一組と二組の生徒達が言い争っていた。

 その言い争いの中心は事もあろうにそれを止める立場である担任講師であるグレンとハーレイだ。

 

「もし、貴様に本当にやる気があるのであれば、練習のために場所も公平に分けてやってもいいだろう。だが、貴様にはまったくやる気がないではないか! なにしろ、そのような成績下位者達……足手まとい共を使っているくらいなんだからな!」

 

「──ッ!?」

 

「勝つ気のないクラスが、使えない雑魚同士で群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ! わかったならとっとと失せろ!」

 

 そのハーレイの酷い言い草に、流石にキレたグレンが言い返そうとした時、二人の視界に突然、短い鮮やかな青の髪が映る。

 リアムがグレンと、ハーレイの間に割って入っていたのだ。

 リアムは拳を握りしめハーレイを軽く睨んでいる。

 どうやら先程のハーレイの言い草にグレン同様にリアムもキレたようだ。

 

「なんだ…貴様は─ッ! 邪魔を───」

 

 ハーレイがリアムに食ってかかるがリアムの瞳が一際鋭くなりハーレイは何も言えなくなった。

 

「り、リアム君…!」

 

 ルミアが心配そうにリアムのことを呼ぶ。

 グレンもリアムを止めようとする。

 

「お、おい。リアム何を…」

 

 ばんっ!

 突然中庭に大きな音が響いた。

 予想だにしない出来事にその場にいる誰もが凍りついたように一歩も動けず何も発せない。

 リアムがハーレイ目掛けて手袋を投げつけていたのだ。

 

「お、おい…! リアム…!」

 

「魔術決闘の申し込み…!?」

 

「ハーレイ先生相手に…無茶だ!!」

 

 ようやく状況を呑み込めた生徒達とグレンがリアムを止めにかかる。

 しかしリアムは一歩も動こうとはしない。

 

「き、貴様───…ッ!」

 

 ハーレイの怒りは頂点に達している。

 そんなハーレイに対しこれまで無言を貫いていたリアムが遂に言葉を発する。

 

「受けろよ…! お前みたいな教育者の風上にもおけねえクソ野郎…ぶっ飛ばしてやるよ」

 

「何だと…!?」

 

「足手まとい共…? 使えない雑魚…?ふざけんなよ? てめえ…それでも講師かよ…!うちのグレン先生はてめえみたいなクソ野郎とは違う…成績上位も下位も関係ない。全員平等に扱って魔術競技祭を勝とうとしてる…!グレン先生こそ本物の講師だろーよ…!」

 

「ぐ……」

 

 普段とはまったく違うリアムの様子にクラス一同驚きながらもリアムの言葉に感化され歓声を上げる。

 グレンもやれやれと肩を竦めている。

 

「リアム君…!」

 

 ルミアはそんなリアムを心配しながらも感謝の気持ちがその綺麗な瞳から見て取れる。

 恐らくクラスの皆が馬鹿にされたのを言い返してくれたことに感謝しているのであろう。グレンのクラス、ハーレイのクラスそれぞれの生徒が声を上げ中庭は騒然となった。

 

 そんな中でハーレイも自分の生徒達の前で引くにも引けず手袋を拾った。

 

「ふんっ…貴様のような生徒一人など返り討ちにしてくれるわ…!」

 

 ハーレイとて二十代半ばで早くも第五階梯に至った若き天才魔術師だ。

 そこら辺の魔術師とは格が違う。

 

「生徒相手に怪我をさせるのは問題だからな。ルールは【ショック・ボルト】を相手に当てた方の勝ち、使用可能なのは学生でも習う汎用魔術のみ。いいな…?」

 

「いいぜ。ハーレイ先生も忙しいでしょうから今ここで決着つけましょう」

 

「「「うぉおおおおおおおおお!!!」」」

 

「ハーレイ先生とリアムの決闘だああああ!」

 

「リアム…! 勝ってくれえええ!」

 

「ハーレイ先生! あんな奴返り討ちにしてやって下さい!!」

 

 こうして二人の魔術師による決闘それも、講師と生徒という前代未聞の決闘がまたしても学院の中庭にて行われることになった。

 

 

 

 

 

 

 10分後───

 中庭はたくさんの人で溢れかえっていた。

 リアムとハーレイの決闘の噂を聞きつけた多くの生徒達が駆けつけていたのだ。

 今も次々と生徒達が集まってきている。軽く100人は中庭に集まってきていた。

 グレンと二組の生徒、一組の生徒に加え多くの生徒達によってリアムとハーレイを取り囲まれた。

 

「では、私の合図によって始めることとする。異論はないな?」

 

 セリカ=アルフォネアが向かい合う二人の間に立ち言い放った。

 セリカ=アルフォネアは大陸屈指の魔術師だ。彼女以上に審判に適任な人物はこの学院において一人もいない。

 

「なぁ…なんで、いるんだよ…」

 

 グレンがセリカに問いかける。

 

「おいおい、グレンの教え子とあのハーレイが決闘するって言うんだ。こんな面白いイベント見逃す訳にはいかないだろう…!」

 

 セリカはこの状況を誰よりも楽しんでいるようだった。

 グレンはため息をつくしかない。

 騒がしかった中庭も決闘の始まりが近づくにつれ一人また一人も話すのをやめやがて多くの人で溢れかえっている中庭は沈黙に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

「では…………開始───ッ!」

 

 セリカが決闘の開始を宣言する。

 先手をとったのはハーレイだった。

 流石は第五階梯の魔術師。やはり反応は早く、セリカの宣言が終わると同時に素早く呪文を詠唱する。

 

「《(いかずち)よ》───ッ!」

 

「……!! は、早い…!!」

 

 ハーレイの短く切り詰められた詠唱によって放たれた【ショック・ボルト】は学生のものとは比べ物にならないスピードでリアム目掛けて走っていく。

 流石に威力は少し痺れる程度にはなっているが。

 そのあまりの詠唱の早さに生徒達が驚く。

 

 【ショック・ボルト】がリアムの元へとすぐさま届くと大きな砂煙が上がる。

 

「この程度で私に挑もうなど…笑わせてくれる」

 

 ハーレイは早くも勝利を確信した余裕の表情を浮かべる。

 

「《いけ》」

 

 中庭にいる誰もが決まったと思ったその時、二対の雷が巻き上がった煙の中よりハーレイを襲う。

 ハーレイは一瞬驚きの表情を見せるがすかさずその電撃に対応する。

 

「《炎壁よ》」

 

 炎の壁が現れ電撃を阻んだ。

【ファイア・ウォール】───放射状に炎の壁を展開する魔術だ。

 

ニ反響唱(ダブル・キャスト)だと…!」

 

 ニ反響唱は多大な技術が要求される高等技法だ。一度の呪文詠唱で二度同じ魔術を起動することができる。

 そんな高等技法を易易と披露したリアムにハーレイは舌を巻いた。

 

「1度の呪文詠唱で2度の魔術起動!? そんなこと可能なのか!?」

 

「そもそもあいつの詠唱、《いけ》って言っただけだったぞ!?」

 

「何者なんだ!?」

 

 これまで見たこともない高等技術に生徒達が驚く。

 

 ハーレイは素早く【ゲイル・ブロウ】を放ち煙を吹き飛ばすがリアムの姿はない。

 リアムは【グラビティ・コントロール】によって自身を一定時間軽くして大きくジャンプをしてハーレイの頭上へと飛び上がっていた。

 

「!?……上か!」

 

 一瞬リアムを見失ったことによって隙が生まれた。その隙にリアムが呪文を詠唱する。

 

「《轟け・紫電よ》」

 

 リアムは【ショック・ボルト】を改変し広範囲に渡る電撃に変えた。

 

「《大気の壁よ》」

 

【エア・スクリーン】によってハーレイは電撃を防いだ。

 しかし広範囲に渡る電撃に気を取られリアムのもう一つの攻撃にハーレイは気づいていなかった。

 

 突然激しい音が中庭に響いた。

【スタン・ボール】───激しい音と震動が発生する球を飛ばす学生用の攻性呪文で相手を気絶させ無力させたりするのが目的となる。

 

「広範囲の電撃は囮だと!?」

 

 決闘は完全にリアムのペースだった。

 すぐにハーレイの勝ちで終わると思っていたハーレイのクラスの生徒や野次馬たちはリアムのペースで決闘が進んでいることに驚きを隠せない。

 

 

 

「《終わりだ》───ッ!」

 

 【スタン・ボール】によって怯んだハーレイ目掛けてリアムは【ショック・ボルト】を唱える。

 リアムの放った電撃がハーレイに直撃するかと思われたがその電撃は打ち消された。

 ハーレイが【トライ・バニッシュ】を時間差起動(ディレイ・ブート)したのだ。

 

「残念だったな…!」

 

 ハーレイはすかさず【ショック・ボルト】を放つがリアムの姿は既になかった。

 

「なっ…」

 

 リアムは地面を蹴りハーレイへと背後から詰め寄っていた。

 リアムが呪文を詠唱しようとすると地面が光る。

 ハーレイが備えていた魔術トラップだったが…

 リアムはそれを見破っており素早くそのトラップを解除する。

 

 とんっ

 

 ハーレイが対応しようとした時には時にはもう遅い。

 ハーレイの頭にリアムが右指を突きつけていた。

 

 

 

「そこまで! 勝負あり!」

 セリカが決闘の決着を宣言した。

 

 

 

 

「この私が学生に負けた…だと…!?」

 

 ハーレイはその場にショックで倒れ込んでいた。

 

「ハーレイ先生の敗因は生徒に負けるはずがないという慢心。警戒を怠りすぎですよ?」

 

 リアムがハーレイへと話しかける。

 ハーレイは言い返すことができない。リアムの言う通りだからだ。

 

「くっ…覚えていろ! 魔術競技祭の本番では負けんからな!、! 集団競技になったら、まず貴様らにクラスから率先して潰すからな! 首を洗って待っていろ!」

 

 リアムとグレンはハーレイに言い放った。

 

「「おととい来やがれ」」

 

 二人は親指を下に向け、首をかっ切る仕草とともにメンチを切った。

 鼻を鳴らし、忌々しそうに肩を怒らせながらハーレイは去っていった。

 二組の生徒達は喜びの声を上げた。

 

 魔術競技祭はもうすぐそこに迫っている。

 

 




活動報告でアンケート?的なの取ってますので
良かったら見てください!
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