宿毛泊地提督の航海日誌 2018年冬イベ編   作:謎のks

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 皆様、いよいよ第一期の最終作戦の最後の戦いをお届けします、ナレーターです。先ずはおさらいがてらあらすじを…。
 戦艦水鬼との決戦の最中、乱入してきた「深海鶴棲姫」、艦娘たちは彼女という脅威に立ち向かうため再び決戦の海域へ。
 瑞鶴を旗艦とした「小沢機動連合艦隊」は、鶴棲姫を再び捉えるが、彼女の戦法「長航空爆撃」に苦戦する、しかしそこに現れたのは「精強海外連合艦隊」、彼女たちは瑞鶴たちと協力し鶴棲姫打倒を目指す。
 瑞鶴は鶴棲姫の航空隊がいる「高度一万メートル」の上空へ飛ぶ、ここに捷一号作戦の最後の戦いが始まる…。

 さて、ここからどういう展開に…ん? 何……え、言っちゃうの? 秘密が良くない? …それとなくって…あ、んん! えー支援艦隊すっ飛ばして海外艦隊来ちゃいましたね? ということは夜戦はどうなるんでしょうね~? …はい、分かる人には何となく分かっていただけたかと?

 さて、これが泣いても笑っても「最後」の戦いです! 行ってみましょう!

 …どうぞ!




宿毛泊地提督の航海日誌 2018年冬イベ編 E-7 後編

 今、最終決戦の幕は上がった。

 

 空中、海上での激突…魂と魂、思いと思いのぶつかり合いは、言葉では表せない感情の奥底を震わせる何かがあるだろう。だが敢えて、どんなに軽い言葉になろうと表すとしたら…「世は正に、群雄割拠」。

 翔鶴たちと欧米艦隊が航空殲滅を図る中、武蔵も負けじと砲撃を乱れ撃ち、敵を薙ぎ払う。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 まるでボウリングのピンのように軽やかに宙を舞う敵群、海上には水柱がこれでもかと撃ち立てられ、戦場は混沌を極めていた。

 

『■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!』

 

 敵もさることながら、攻撃を掻い潜り爆砲を放つ…標的は「速吸」

 

「きゃあああ!?」

「速吸! …おのれえええ!!」

 

 速吸は中破、武蔵は激昂し敵を粉々に撃ち貫いた。

 

「速吸! 大事ないか!?」

「武蔵さん、すみません…こんな時に、速吸は役立たずです」

「そんなことはないぞ! 皆が十二分に戦えるのは、お前の補給のお陰だ!」

「でも…大事な戦いなのに、流星も撃ち落とされちゃって…」

「言っただろ? 補給は大事だ! それにお前は戦えずとも、我らがいる…どうか笑顔を絶やさずに、我々を見守ってほしい!!」

「武蔵さん…!」

 

 武蔵は速吸を守るべく仁王立ちとなり、圧倒的な威圧感を放つと目を見開く。

 

「来るがいい…貴様らの相手は私だ。私はここだ!!」

『■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!?』

 

 本能の恐怖に囚われる深海群、武蔵は少しずつ海面を滑り間合いを詰めていく…。

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

 

 - 改装大和型二番艦「武蔵」、栗田艦隊旗艦。

 

 

 かつて最強と謳われた大戦艦は、時代の流れに逆らえずその艦体を海中に没した。しかし、今度の武蔵はその流れにさえ打ち克とうとしていた。

 彼女は仲間を守る為、今度こそ己の未来を掴み取る為…強大な力を持って、思慮深き武人は絶望を打ち砕く。

 

「この武蔵を…舐めるなあああああ!!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 …第二艦隊は、迫り来る深海艦載機から防空射撃、更に今まさに間合いを詰める深海群を相手取っていた。

 

「うおああああ!!」

 

 初月の対空防御砲撃、深海艦載機は蠅のように叩かれひらひらと撃ち落とされていく。

 

『■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!』

「!? しまった!」

 

 死角を突かれ無情な砲撃が初月を襲う…が。

 

「うりゃあああ!」

 

 阿武隈は予期していたように、初月と深海駆逐艦の間に入り初月を庇いながらその場を離れる…深海駆逐はお構いなしに砲撃の照準を合わせる。

 

「北上さん!」

「あいよー!」

 

 阿武隈の合図に、北上は海中に忍ばせた甲標的より魚雷を射出。深海駆逐はそのまま撃破された。

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーー……ッ!』

 

「ふぅ、大丈夫?」

「ああ、すまない…ありがとう」

「ふいぃ、何とかなったね? 阿武隈ってこういう時は頼りになるよね〜?」

「エッ!? どういう意味ですかぁ?!」

「いやいや、普段から仲良くさせて貰ってる立場からしたら、戦闘の阿武隈はガラリと雰囲気変わるからさ? いいねぇ? アタシはこのとおりだからさぁ」

「…アタシ的には、北上さんは……そのままが…いぃ……デス」

「??? 何ごにょごにょ言ってるの? ちっちゃくて全然聞こえない」

「もう! なんでもないですっ! 北上さんの馬鹿! ///」

「おえぇ? 何でさ??」

「…二人とも、惚気ている場合ではない、見ろ」

「はっつづきちゃん!? 何言って…!」

 

 初月の言葉通り、いつの間にか目の前に「敵の増援駆逐隊」が差し迫っていた…!

 

「…そう、仕方ないよね? 二人とも、いける?」

「…うん、ここは本気でやっときますかね?」

「頼もしいな? …僕も本気でいく、瑞鶴の為にも…今度こそ守り抜く!」

「よぉし…行こう!」

 

 

 - 長良型軽巡、第一水雷戦隊旗艦「阿武隈」。

 

 

 取り囲まれた孤島からの救出劇という奇跡を成し遂げ、その後も主作戦に参加する…しかしその最期は、あまりにも呆気ないものだった。

 今回の作戦も、彼女にとって因縁深いもの…戦いの果てに、彼女は自分だけの答えを見つけ出せるのか? 今、才気溢れる計略者は絶望すら欺く。

 

「一水戦の旗艦の経験は…伊達じゃないんだから!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 同じく第二艦隊、瑞鳳、足柄、時雨も目の前に迫る深海群を相手取る。

 

「瑞鳳の艦攻隊! お願い!」

 

 瑞鳳は艦載機からの雷撃を敵にお見舞い、敵群を無惨に轟沈せしめる。しかし、頭上には敵第一艦隊より発艦せし艦載機…このまま行けば直撃は免れない。

 

「瑞鳳さん!」

 

 時雨の対空射撃、敵艦載機は跡形もなく爆破。流石に泊地中の駆逐艦において最高練度を誇る彼女、寸分違わぬ狙いと無駄の無い動きで迅速に脅威を対処した。

 

「時雨ちゃん、ありがとう!」

「はい! それよりも気をつけて、未だ来ると思うから!」

「分かった! …時雨ちゃん!?」

 

 瑞鳳の指差す先に、雷撃を発射しようとする敵駆逐艦が。

 

『■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!』

「させないわよぉ!!」

 

足柄の強力な砲撃により、駆逐艦は一発で海の底に沈む。

 

『■■■■■■■■■■■■■ーーー……ッ!?』

「足柄さん!」

「大丈夫、時雨ちゃん? …全く、貴女って強いのかボーっとしてるのか、時々分からないわね?」

「うぅ…善処します」

「もう、違うわよ? …泊地で昔からの付き合いだとね? 今の明るくなった貴女になって…良かった、って思ってるから」

 

 足柄と時雨は、宿毛泊地がまた小規模だった頃からの仲。それ故に、顔合わせも付き合いも長く、色々な事柄を話し合える仲。

 

「そうかな? 僕はよく分からないけど、きっと満潮が頑張ってくれたお陰だよ?」

「ふふ! そうね? …本当に良かった」

「…あの二人とも? 前を見てくれると嬉しいんだけど…?」

 

 おずおずと瑞鳳は促す、すると目の前には「増援ヌ級群」が…。

 

『ブルアァーーーッハァーッハアァーーー!!! ココガ貴様ラノ棺桶ヨォ!!!』

 

「げっ、ヌ級!」

「…仕方ないね? 僕も本気で行く。足柄さん、瑞鳳さん、援護をお願いします!」

「し、時雨ちゃんの本気!? …ヌ級たち終わったね?」

「合掌しましょう? …合掌」

「…行くよ、ここは譲れない!」

 

 

 - 白露型駆逐艦、佐世保の「時雨」。

 

 

 様々な戦場を渡り歩き、その名を馳せていった…しかし、そんな彼女でさえ絶望の前に仲間を失い、自身も水底に沈んでしまった…。

 しかし、彼女は過去を乗り越え再び立ち上がる…絶望の闇を、幸運の光で照らす為に。

 

「必ず生きて帰る…必ずだっ!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 第一艦隊、空母部隊は敵群と熾烈な制空争いを繰り広げた。それでも欧米艦隊の力添えにより、徐々にこちらに形勢が傾いてきたようだ。

 

「Attack!」

「そこっ!」

 

 サラトガと翔鶴の艦載機の同時発艦、そして一斉射撃。更にイントレピッド率いる航空隊の助力により敵艦載機は次々と落ちていった。

 

「…」

 

 加賀は隣で極戦を繰り広げる瑞鶴を一瞥する。瑞鶴は目前の敵に睨みを利かせている…遥か上空の戦いは、本人たちしか計り知れない。

 加賀はもう一度瑞鶴の顔を覗き込む。その顔はいつもと変わらない「生意気な」笑みを浮かべる。

 

「…(ニッ) 負けたら承知せんで?」

 

 優しく微笑み、師は教え子の戦いを見守った…。

 

 

 

 

・・・・・

 

『ヒャハハハハ!!』

「っうおおおおお!!」

 

 二つの航空編隊は、高度一万メートルの雲の中…互いに実力をぶつけ合い火花を散らしていた。

 火を噴く機銃、華やかに天を舞う紅く燃える弾丸、その花びらを掻い潜りながらそれぞれの航空隊は相手との距離を測っていた。撃っては避け放っては逃げを繰り返す、コンマ秒の世界に「油断」は以ての外、それは「敗北」の二文字を表す。

 

『アハハハハハハ! タアアアノシイイナアア”ア”!!』

「…っち!」

 

 鶴棲姫はそんな状況をまるで愉しんでいた、対する瑞鶴はやはりただでさえ高等な技術を要するアウトレンジ戦法、高度を維持しながら叩き込まれる全方位射撃に対処しなければならない。苦痛に歪まないワケはない。

 

「(…でも、掴んだ。コイツは凄いってことの具体的な内容が)」

 

 鶴棲姫はこの高度一万メートルの世界から爆撃を放っていた、しかし問題はある。

 ここから爆弾を落としても、風の方向、角度、それらから来る狙いの微妙なズレ…諸々の「不可能議題」が噴出する。しかし彼女の狙いは一切の狂いはない、つまり彼女は。

 

「地上から私たちの様子を写して、それで調整してたんだ…!」

 

 艦娘と艦載機の眼には地上、上空の両方の映像(肉眼で見た光景)が映る、鶴棲姫はそれを利用し地上の自身が見ている光景を、深海艦載機の爆弾を落とす際の「微調整」に使っていた。深海の姫に艦娘と同じ能力があるかは疑問だが、徳田の言葉から姫と艦娘に何らかの繋がりがあることは明白、これだけの芸当はそうとしか思えなかった。

 更に驚くべきは、それらは最高度から爆弾を落とし、地上までに到達する時間差(タイムラグ)を踏まえている、ということ…これにより自身の必要とする瞬間に、寸分狂いのない攻撃を仕掛けることが出来る。

 風を読み、角度を正確に調整、そしてそこから「いつ落とせばいつ着弾するか」を手に取るように把握している。

 

「涼しい顔して、どんだけ高等技術使ってんの、アイツ…!」

 

 まさか艦娘の能力をこんな形で利用するとは…瑞鶴の脳裏には「脱帽」の文字が過った。

 

「…でも言った筈、もうアンタの好きにはさせないって!」

『………』

 

 海上では、二人の鶴が睨み合っていた…瑞鶴は彼女の顔を見れば見るほど哀しそうに映った。

 …程なくして、鶴棲姫が口を開き尋ねる。

 

『ドウシテ…?』

「…何?」

『ドウシテ分カラナイノ…? アンタモアタシナラ解ルハズヨ?! ニンゲンタチハ戦イヲ繰リ返ス…! ソレデモアノ人ハ、大好キナ祖国ヲ守リタカッタダケナンダ! 命ヲ賭ケテ守リタイト願ッタダケナンダ!!』

「………」

『ソレナノニアノ人ハ…! 囮部隊ナンテ! 悪イノハアノ人ヲ蔑ロニシタ奴ラナノニ! アノ人ノ力ヲ認メナカッタ奴ラノ為ニ、ドウシテソンナ事サセラレナキャナラナイ?!』

「…そうね? 非道い話だと思う」

『ナラ! 何デアノ人ノ無念ヲ晴ラソウト思ワナイ!?』

「無念? どういう意味?」

 

 鶴棲姫は怒りを滾らせ、獣の貌となり尚一層恨み節を強める。

 

『全力ヲ出セナカッタ…アノ人ハ世界ヲ変エラレタ! ソレヲ奪ッタノハ、踏ン反リ返ッタダケノ無能ナ上層部、連合国、ソシテ…戦争ヲ促シタニンゲンタチダ!』

「!? ちょっと、それは」

『私ハ復讐スルンダ! 先ズハ日本、ソノ次ハ世界ヲ! アノ人ノ力デ、世界ヲ滅ボシテヤル! アノ人ハ正シカッタッテ、奴ラニ、奴ラノ子孫共ニ教エテヤル!!』

「…ああもう! 聞く耳持たないって言うんだったら!」

 

 瑞鶴は航空編隊を鶴棲姫の深海艦載機群に差し向け、一気に距離を詰めていく。

 

「うおりやぁあああああ!!」

『ッハ! 馬鹿ダネ! ソンナ攻撃ッ!!』

 

 瑞鶴航空隊より機銃が火を噴く、弾幕を避けながら鶴棲姫の艦載機はカウンターアタックを仕掛ける。

 

『ヒャハ! 前ニ出過ギタネエ?! コレデ終ワリ』

「…どうかな?」

『!?』

「そうだね、あと…3、2、1 -」

『…オ、オ前マサ』

 

 言うや早いや、鶴棲姫の頭上から鉄を叩きつける音が響いた。周囲は爆炎に包まれ…鶴棲姫は「中破」に追い込まれ、膝をついた。

 

『…ガハァ…ッ!』

「ふぅ…すっごく難しいけど、決まるとなかなかスカッとするわね?」

 

 瑞鶴は機銃掃射の際、編隊の後方で長航空爆撃を敢行。風の流れを読み、海上の敵と空の位置を正確に把握、タイミングも完璧。不意を突いた一撃は音もなく相手に致命傷を与えた。

 

「さて、頭は冷えたかしら? 自分がこんな事されたら嫌な気分になるでしょ? もうやめよ? アンタとは真っ向からぶつかりたいから」

『…コレデ勝ッタツモリ? ッハ! 冗談ジャナァイ!! …イイヨ、トコトンヤッテヤロウジャナイ? 絶ッッ対ニ返サナイカラ!』

 

 流石の姫クラスか、ボロボロになりながらもその舌は悪言をばら撒くのを止めない。立ち上がり不敵に嗤う鶴棲姫の深海艦載機群は瑞鶴の航空隊と共に、艦娘たちの前に姿を現した。

 

「! あれは!」

「…あんな高いことから落としよったがか、そら見えんわ。」

 

 翔鶴たちは驚きを隠せない様子で二隊の航空隊を見つめる。

 

 そして…二翼の鶴は睨み合い、艦載機は旋回する…決着はこの一瞬で着く。

 

「………」

『………』

 

 辺りは静まり、艦娘も、深海群でさえ彼女たちの戦いの行く末を見守る。

 

「……ッ!」

 

 瑞鶴は伏せた目を力強く見開く、刹那、光と闇は急速に接近し、ぶつかり合う…!

 

「『うおおおおおオオオオオオっッ!!!!!」』

 

 撃ち尽くさんと舞い散る(はな)、舞い踊る艦載機(はね)、深海より出でる(つる)、暁より世を守る(つる)

 今、世界の命運を掛けた戦いが、この一戦に凝縮されていた。

 

「………!?」

 

 が、瑞鶴の脳裏には、まるで走馬灯のようにある映像が流れた。

 

 

 

「- これだ、これしかない……だが…っ!」

「…他にどのような方法があった?」

「ああ…俺が、俺があの時……っ!」

「…誰も未来を奪われなかっただろうか」

 

 

 

 その映像の中には、瑞鶴の知るある人物が。

 

「小沢さん…!? どうして…?」

 

 自分の意図しない回想、しかし彼女には心当たりがあった…目の前の「彼女」だ。自分は彼女と深い繋がりがある、戦いの中で自分は彼女の「心」を覗き見ているのだ。そう確信する瑞鶴…しかし、それだけではなかった。

 

「…なんて、哀しそうなの。あの人も…アイツも」

 

 苦渋の決断、道理無き弁解、後悔…そして懺悔。

 

 瑞鶴にはそれら全てが「哀しみ」に包まれていることに気づいた。自分は感じてはいない感情…否、心の奥底、深層心理にはそれがあったかも知れない…そう考える瑞鶴に、耳元で囁く声。

 

 

 

『- 小沢サン…翔鶴姉…ドコ…? イ、ヤ…! 一人ハ…寂シイヨ…ッ!』

 

 

『海ノ底ハネ…冷タクテ……一人ハ……ッ! サミシイイ”イ”ィ”ィ”ィ”!!!

 

 

 

「…ッ! うああああああああ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 

 瑞鶴の航空隊は、敵艦載機群に猛進し、その機体に風穴を開けた。ハチの巣にされた敵艦載機は、力なく海上へ落ちていく…。

 

「! やった! やりました加賀さん! 瑞鶴が!」

「…ああ、ようやったわ、ひよっこが。(ニッ)」

『…ッ! ソンナ…馬鹿ナ!?』

 

 どちらにも隙は無かった、しかし…瑞鶴に「心の推進力」が掛かり、それは拮抗した力を押し出すには充分過ぎた。

 

『…ッ! クッソガアアア!!』

「…ここまでね」

 

 瑞鶴は日が傾く水平線を見やる、もうすぐ「夜」が来る。

 

「…皆、頑張って」

 

 その言葉と同時に、戦いは暗闇の中の決着へシフトしていった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ― 我、夜戦ニ突入ス!

 

 

 

 

 静寂に包まれる海、波の音は変わらない安らぎを与える。敵深海群はほぼ壊滅し、後は旗艦である鶴棲姫を打倒すれば、全てに決着が着く。

 しかし、第二艦隊は緊迫した面持ちで眼前の敵を見つめた、鶴棲姫は項垂れるように力無く体を前に倒し、まるで「好きにしてくれ」と言わんばかりに、先ほどの激情に駆られた姿とは一変していた。

 しかし阿武隈は訝しむ、普通に考えればあそこまでの敵意があるなら最後まで抗って然り、ここまで様相が変わると逆に「手を出すな」と誰かから言われている気さえしてくる。艦隊は沈黙し時は止まったように感じた。しかし…?

 

「…来ないなら、こっちから行かせてもらうわぁー!」

「!? だ、駄目! 足柄さんまっ」

 

 見かねた足柄の先制攻撃、爆砲は見事敵に命中した……と思えたが。

 

『…ック!』

 

 深海障壁を展開して防御する鶴棲姫、邪悪な笑みは変わらず艦娘たちを海底に引きずり込もうと睨んだ。

 

「!?」

『ヒャハハ! …馬鹿ダネ? アタシノ艦載機ハ…マダアルンダヨオオオ!!!』

 

 その言葉に呼応して、海中から姿を見せる鶴棲姫の深海艤装。小さい鮫のような魔物は、口から鶴棲姫の深海艦載機を吐き出した。

 

「し、しまった! ごめんなさぁ〜い!?」

「…っ!」

『…マタダ、マダ終ワラナイ、終ワラセナイ、終ワラセテタマルカ! 沈ムノハオ前タチダアアアア!!!』

 

 矢継ぎ早に憎しみを乗せた言葉を吐き出し、鶴棲姫は飴玉型艦載機を艦娘たちに差し向けた……だが。

 

 

 - ………ゥウ! ズドオオォォンッ!!

 

 

『!? 何?!』

 

 突如、鶴棲姫の四方に爆音と水柱が建てられた。

 

「え? アレ瑞鶴ちゃんが?」

「どうでしょう…夜戦攻撃は光が無いから、特殊な装備じゃないと無理だし、友軍かな…? ちょっと違う…?」

「…もう! 一体全体どうなってるのよぉ〜!!」

 

 阿武隈と足柄が一変する状況を話し合うが、その答えは水柱が収まった「隙間」から窺えた。

 

「……!? えっ?! あれって…!」

 

 

『………』

 

 

 その容姿は、幾重にも渡り宿毛泊地と激闘を繰り広げた「姫」。

 漆黒のゴシック服は変わらず、不機嫌そうに佇む姿も変わらない…強いて言うなら、片目に眼帯をつけていることが前回との変化点か? 彼女は…。

 

「"離島棲姫"…!?」

 

 何と離島棲姫が、友軍艦隊よろしく第二艦隊に助力したのだ。鶴棲姫は忌々しげに離島に殺意を向ける。

 

『雑魚ガ…アタシノ邪魔ヲスルナッ!』

『黙リナサイ…艦娘ニモ深海群ニモナレナイ成リ損ナイガ』

『ナニィ…ッ!?』

「…あっ、そっか! 報告にあった謎の爆発って、もしかして!」

『ソコノヘリウム女子、否定ハシナイケド下衆ノ勘繰リハ止メナサイ?』

「へ、ヘリウム女子!? 誰のこと!!?」

「阿武隈しかいないじゃん?」

「僕もそう思う(初月)」

「み、皆よそうよ? 本人だって傷ついているんだから…(時雨)」

「阿武隈ちゃん、大丈夫! 私はヘリウム声でも気にしないわぁー!」

「んもぅ! 皆後で聞いたげるから今は止めてぇ!?」

「あはは…;(瑞鳳)」

 

 離島は「またやってる。」と半ば呆れ顔で艦隊の様子を見ていた…その隙を突いて鶴棲姫が自身の艦載機を飛ばそうとする…が。

 

『ソコ、無駄ナ足掻キハシナイ』

 

 離島は容赦なく航空爆撃という鉄槌を落とす。闇夜に紛れて上空から放たれた爆弾は、長航空爆撃に匹敵する隠密性を備えていた。

 

『グアアァァ!? …ッ! 離島棲姫! 何故アタシノ邪魔ヲスル! アンタモニンゲンタチガ憎インジャナイノ!?』

『…ソウネ? デモ語弊ガアルワ。私ハニンゲンジャナク、ニンゲンガ起コス争イト、ソンナニンゲンニ組ミスル姫ガ憎イノ。ツマリ、貴女ミタイナ半端モノヲ許ス気ハ毛頭ナイ…ネ?』

『……ッ!!』

「…それ貴女が言える台詞?」

『黙ッテ。…マァ、ソウネ? モウ一ツ、彼女タチノ目指ス世界ハ総督ノ理想デモアル。私ハ彼ノ邪魔ヲスルナラ容赦シナイ…コレナラドウ?』

「…ん! そういう事なら!」

 

 離島は皮肉を込めた笑いを満足げに浮かべると、宙に自身の深海艦載機を放った。

 

『…ドウシテ…ドウシテッ! 何デ誰モ解ラナイノ!? アノ人ハッ!!』

『ソノ人ノ理想ハ、本当ニ彼ノモノナノ?』

『…何!?』

『イイエ? 問答ハ不要ネ? …ハァッ!』

 

 離島は鶴棲姫の四方八方に航空爆撃、たちまち目の前は水のヴェールに包まれる。

 

『…グッ! コンナ…コオオオンンナモノオオオオオオ!!!』

『貴女ハ「過去ノ残滓」…コノ海域ニコビリツイタ惨劇ノ影、人ヘノ「思イ」ガ重ナッタ特異概念ヨ。要スルニ…コレハ貴女ノ迷イガ生ンダモノ、ダッタラ…「貴女」自身ノ手デ、決着ヲツケナサイ』

 

 離島の後ろから飛来するのは艦載機、それは「艦娘」のものだった…。

 

「- そう、だったら…やってやろうじゃない!」

 

 瑞鶴航空隊、夜戦に関わらずも星空の闇の中、その姿を現した。

 

『…! ア、アア……ッアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 泣き叫ぶ鶴棲姫、その顔には無念と憎悪が滾っていた。

 

「…バイバイ」

 

 瑞鶴は取り囲むように建てられた「まるで目印」のような水柱の中心…自身の半身に向かって最後(とどめ)の一撃を落とした…。

 

 

 

 …その爆発音は、いつも聞く音よりも哀しく感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ア”ガアアアアアアア!!!!!』

 

 硝煙と爆炎の熱気が漂う海上、その上に炎の壁を突き破って、鶴棲姫が最後の反撃に転じて駆ける。

 

『アタシハアアア…絶対ニニニアアキラメルモンカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 

 ― ピシッ!

 

 

『…ッガ!?』

 

 鶴棲姫の体に走る亀裂…既に「限界」を迎えた証。

 

 崩れゆく己の肉体と自我…鶴棲姫に最早憎悪もなく、ただ「無念」に思う。

 

『…コレダケヤッテモ……トドカ……ナ…イノッ…?』

 

 

 

 

 

 

 ― 小沢サン…ッ!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

『…コレデ、借リハ返シタワ』

 

 それだけ言うと、離島は闇夜にその体を消していった…。

 

 瑞鶴は…沈黙と哀しみの眼差しで「彼女」の生き様を目に焼き付けていた。

 

「…やっと、終わったね」

 

 重く開いた瑞鶴の口から出た小さな呟き、これを以て「捷号決戦」は”決着”…艦娘たちの因縁の戦いは、終わりを告げた。暁の水平線には、確かに「勝利」の文字が刻まれたのだ。

 

 

― Following the epilogue ―

 

 




もう少しで五月ですね…? 間に合いますかね? (ナレーター)
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