宿毛泊地提督の航海日誌 2018年冬イベ編   作:謎のks

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 すっかり陽気が差し込む季節となりました、もう春ですねえ? しかし…所々冬の様相が残っていたりで、まだまだストーブは手放せませんね? (作者はインフルになってたし…)

 さて、ではあらすじターイム。

 栗田艦隊のレイテ突入を援護すべく、瑞鶴率いる小沢艦隊は敵深海主力機動部隊を、北方の「エンガノ岬」まで誘導し、そこで機動部隊同士のガチンコ対決をすることになる。
 随伴艦の「瑞鳳」の決死の鼓舞もあり、小沢艦隊は、全力を出した「くうさん」率いる敵機動部隊を下した。
 しかしくうさんは、瑞鶴の余りもの大人しさに違和感があるようだ。瑞鶴は否定こそしなかったが「彼の代わりにここに居る」と断言し、艦隊を全員無事で勝利することが第一であると述べた…その言葉で、決戦は一応の終結を迎える。

 …だがその裏で、何モノかが蠢いていることを瑞鶴たちは知る由もなかった…。

 …ってちょっと、これどうなんです? まさかこの子が…え? 余計なこと言うな? えぇ気になるところですが、謎の抑止力により言葉が制限されてしまったワタクシなのであった、まる

 それでは本編へ行きましょう、遂にレイテ防衛戦が本格始動します…果たして上手くいくのか? …どうぞ!



宿毛泊地提督の航海日誌 2018年冬イベ編 E-4

〇捷号決戦! 邀撃、レイテ沖海戦(後篇)

 

 NEXT「サマール沖 その先へ──(サマール沖/レイテ湾)」

 

 小沢艦隊による敵機動部隊北方誘引は成功、レイテ湾に第一遊撃部隊の突入が可能となった!

 全艦、レイテに突撃せよ!

 

 

 

 

・・・・・

 

 遂に、レイテ沖海戦。その一連の流れの終着に辿り着く。

 栗田艦隊は、レイテに上陸せんとする深海群に鉄槌を下すべく、サマール沖より進軍、レイテ島沖を目指す。

 …だが、そこまでの指揮を執るのは、栗田艦隊現旗艦「榛名」…であってはならない。

 

「………」

 

 サマール島の海岸、二人の艦娘が見つめ合う…一人は榛名、もう一人は…

 

「武蔵さん…!」

 

 そう、地獄の連続演習をひたすら繰り返し、練度(レベル)を限界まで上げようやく「改二改装」に漕ぎつけた武蔵…その逞しく清廉な顔つきから、どれほどの急激な修練を高速で積み上げて来たか、もはや想像は出来ない。しかし彼女からは「必ず勝つ」という意志の強さが、体中からひしひしと感じられた。

 

「…戦艦武蔵、この通り改二改装を経て栗田艦隊に馳せ参じた。どうか…私を艦隊に加えてもらえないだろうか?」

 

 その恰好は、黒基調の軍服(大和型の制服)に、羽織、そしてチャームポイントの「眼鏡」もしっかり装備している。正に「威風堂々」としたその姿、立ち振る舞いは、栗田艦隊旗艦に相応しかった。

 

「…栗田艦隊旗艦、榛名は、現時点で旗艦の座を武蔵さんにお譲りします」

「! …いいのか?」

「提督は貴女にこそ栗田艦隊を率いてほしいとおっしゃっています。だから…お願いします、武蔵さん!」

 

 武蔵は少し考える素振りをし…一言。

 

「…委細承知、これよりこの武蔵が、栗田艦隊旗艦を務めさせて頂く」

 

 こうして、武蔵を旗艦に据え、栗田艦隊は万全の体制でレイテ侵攻に備えるのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

○栗田艦隊(連合艦隊)

 

〇第一

武蔵(旗艦)

長門

榛名

金剛

祥鳳

龍驤

 

 

〇第二

矢矧

野分

摩耶

羽黒

雪風

木曾

 

 

 

 

 レイテ沖までの道のりは、水上打撃連合艦隊で赴く。つまり「航空戦力がほぼ皆無」の状態で戦線を潜り抜けなければならない。しかし「基地航空隊」による援護もあり、彼女たちは航空戦(空襲防護戦)と敵機動部隊との交戦を難なく退け、やっと…レイテ沖一歩手前までたどり着いた。

 

「…ふむ」

 

 武蔵たちの前にはレイテ沖が目と鼻の先にまで見える、だが…

 

「私には解る…ここはあの」

 

 謎の反転、と言われる栗田艦隊唯一の汚点。

 何故ここまで来て反転したのか、武蔵には「彼」の考えは、あの情報が交錯した時何があったのか、それは分からない…が。

 

「…っふ!」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、彼女は反転を選ばなかった。彼女は…彼女たちは史実の先を観る為にここに居る。

 

「武蔵さん! 敵水上打撃連合群を発見! …!? これは、第一に戦艦六隻!!?」

 

 …例え、その先が地獄を駆けることになっても。

 

「構わん! このまま進むぞ!! …頼んだぞ! 基地航空隊!!」

 

 武蔵が空を仰ぐ、その視線の先に「基地航空隊」が…!

 

「征くぞ! 我らの勝利は…目の前だッ!!」

 

「おおおぉーーーッ!!!」

 

 武蔵の勇ましい姿、声…全てが彼女たちの士気を上げる。果たして、この先に待ち受けるモノは…?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 敵艦隊、接敵…

 

 クラス「姫」出現…

 

 

  護衛空母

 

 護 衛 棲 水 姫

 

『来ヤガッタカ…! 馬鹿ナヤツラダ! …イクラ撃ッタッテネェ?! 無駄ナンダヨ☆ キャハハッ!』

 

 地獄の航空防衛戦、更に水上打撃戦を抜けた栗田艦隊。彼女たちが捉えたのは、今まさに上陸しようとしている敵輸送護衛艦隊…その旗艦「護衛棲水姫」だった。

 

「武蔵見参! …この「戦」、武蔵に任せて貰おうか!!」

 

 遂に相対した両者、レイテ島を巡る一大決戦は、区切りを迎えようとしていた…。

 

『キャハハッ! 行クノ? 私ヲ倒シテ、ソノ先ニ進ムノ?! …早ク戻ッタラァ? 戻リタインデショ? イインダヨオォ??!』

 

 棲水姫の執拗な煽り、小生意気な少女と言った容姿がその憎たらしさを倍増させる。だが…

 

「無論、お前たちは捨て置けん。我々が戻るのは…お前たちを倒してからだ…!」

 

 武蔵の放つ圧倒的な気迫、それは練度から来るものではない、艦種が戦艦だからでもない…。

 彼女のこの戦いに懸ける思いが、威圧感となって表れているのだ…!

 

『ッピ!? ナ、ナンダヨ…臆病艦隊ノ癖シテエラソーニ! …オ前ラナンテ私ガ削ッテヤル!』

「やって見せろ! だが…今の我らがそう簡単に退くと思うな! …行くぞ!! ここからが正念場だ…!」

「おぉーーーッ!!」

 

 いよいよ、激突する両軍。果たしてここから、どうなっていくのか…?

 

 

 

 

・・・・・

 

 - 敵艦発見、攻撃開始!

 

 基地航空隊の支援爆撃! 轟音と共に、空間が赤く華やかに染まっていく…!

 

「どんどん行けぇ!!」

 

 武蔵の号令、祥鳳と龍驤の制空部隊が上がる。対する棲水姫も深海艦載機を飛ばすが、基地航空隊の爆撃により大した数を飛ばせなかった…。

 

『…ッ! コノォ〜〜〜!!?』

 

 制空優勢、この文字が意味することは…

 

「…っふ!」

「………」

「行きマース!」

「榛名も…全力で参ります!!」

 

 水上打撃連合艦隊。それを象徴する戦艦四隻による全力砲撃が可能、という事実…。

 

『!? …フ、フン! ソンナエバッタッテ! 怖クナンテナイヨーッダ!』

 

 虚勢を張りながらも、棲水姫は砲撃戦に備える…!

 

 

 - 砲撃フェイズ

 

 

『削ッテアゲルヨォ〜! 少シズツネェ…!!』

 

 護衛棲水姫の艦載機爆撃。制空を掻い潜り、確りとターゲットを捉える。

 

「…ぬっ!」

 

 武蔵の頭上より、無慈悲な一撃。それは、彼女が「大破」になってしまったことを表していた…!

 

「武蔵さんっ!?」

 

 榛名の叫びが掻き消される程の爆音、硝煙が晴れる時には、彼女のあられもない姿が見えた。

 

「っく!」

『…ハ、ハハ! ナ、ナンダヨ…旗艦ナンテコンナモンカヨ! ダラシナイナア!!』

「…………ふ」

『?』

 

「ふはははは! はははははははははははははは!!!」

 

『ピェ!?』

 

 狂った笑いを見せる武蔵、あまりの迫力に思わず臆する棲水姫。

 

「ああ…この痛みは! あの時を思い出す!! …だが、私はもう…沈まんぞっ!!!」

 

 武蔵の今の状態からの全力砲撃、それは、火力は落ちるが群がる雑兵を蹴散らすには十分過ぎた。

 

『ミ"ャアアアアアアアア!!?』

 

 棲水姫、並びに周囲の随伴艦、そして護衛対象だった補給艦など…その一切悉くを、武蔵は焼き払った。

 

「ははは! 痛快だ!! 主砲、一斉射だ! 薙ぎ払ええーーーッ!!!」

 

 楽しそうに全主砲を撃ちまくる彼女に圧倒される長門、金剛、そして榛名。

 

「流石は武蔵…これは、最強の戦艦は彼女のモノだな?」

「うぅ〜〜! ワタシも撃ちまくりたいデース!」

「す、凄い…はっ! か、彼女を援護しなくては! お二人とも! 私たちも行きましょう!」

 

 榛名たちも加わり、敵艦隊に着実なダメージを与えていく…しかしながら、肝心の棲水姫に致命傷を与えられない。

 

「…っふ、大丈夫だ…! 後は任せたぞ! 矢矧よ!」

「了解、この矢矧に任せて下さい、武蔵さん!」

 

 第二艦隊では、雷撃と夜戦の準備が執り行われる。その後ろでは…

 

「…(満潮、涼月さん)」

 

 二つの愛らしい人形を見つめる若武者が…。

 

「野分! 雷撃用意、急いで!」

「っ! は、はいっ!!」

 

 必ず生きて帰る…あの時の約束を、反芻する野分だった…。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 - 我、夜戦ニ突入ス!

 

 

 反転する昼夜、辺りは暗く静かになる、並みの音は激闘を予感させた…。

 

『! …フッフッフ!』

 

 だが…あろうことか、敵第二艦隊は未だ健在。つまりこのまま行けば、棲水姫を仕留め損なってしまう、ということ…!

 

「! しまった…!」

『キャハハッ! ヤッパ大シタコトナイナァ! アノママ戻ッタ方ガマダ恥ズカシクナカッタノニ!!』

「! くっそ…」

 

 またあの地獄の道中を掻い潜らなければならないとなったら、艦隊の士気にも関わる…何とかならないか、矢矧が思案していた…その時。

 

 

 - Wait!

 

 

 凛とした高らかな声が響き、同時に砲撃の雨が敵第二艦隊に降り注いだ…!

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!?』

『ン"ニャニィ!?』

「えっ?! …あ、あれは…!」

 

 一行の目の前には、暗がりでも解る煌びやかな衣装を身に纏った、金髪の艦隊があった…!

 

「European Combined Grand Fleet(欧州合同艦隊),旗艦Warspite。戦場海域に到着! これよりfriend fleet(友軍艦隊)を援護します! 全艦…突撃ッ!」

 

「えっ!? ウォースパイトさん?! 何で…」

「…いいえ野分、彼女は「私たちの」ウォースパイトさんじゃないわ」

「え? …ん?」

 

 野分が訳が解らずにいると、向こうのウォースパイトより通信が入る。

 

『- Hello! 宿毛泊地の皆さん! 私たちはイギリス、並びに欧州連合より派遣された艦隊です!』

「えっ!? 嘘! …ということは!」

「そうね? 野分。吹雪が言っていた、運営の「期待していいこと」ってこの事だったのよ…!」

 

 彼女たちの脳裏に「徳田」の顔が過ぎる。彼は、離れていても宿毛泊地と共にあった…!

 

『私たちは、貴女たちに助けられました! あれから私たちの国も平和になり、本当に感謝しています。Thank you! …今度は、私たちが貴女たちを助ける番よ! これからの海域では、私たちの他にも他国艦隊が貴女たちを援護します!』

「す、凄い…! これなら!」

 

 強力な助っ人が来てくれた。野分が希望を胸に抱く中、欧州艦隊の支援砲撃が始まる。

 ウォースパイト、リシュリューの砲撃。アークロイヤルの航空爆撃。そして…

 

「そこねぇ〜! 逃がさないからぁ〜〜!!」

 

 見たことのない金髪の少女…彼女も欧州艦隊の一隻(ひとり)、つまりイギリスの駆逐艦のようだ。

 

「…おお」

 

 思わず溜め息が出る。まるで演劇を観るように鮮やかに、彼女たちは敵第二艦隊を見事撃破した。

 

『ックショー! ナンナンダヨォ…ズルイヨコンナノォ…!』

 

 棲水姫の正当な抗議も却下され、夜戦は彼女たちの番に…

 

「- 待ちなさい!」

 

 声の方に振り向く、そこに居たのは…

 

「! 西村艦隊…!」

 

 時雨、満潮たち西村艦隊…今度は栗田艦隊を助ける為に夜のレイテ湾に到着した。

 

「助けに来たわよ! 野分!」

「満潮!」

「…矢矧さん、西村艦隊、満身創痍ながらも栗田艦隊を援護するべく参上しました!」

 

 見ると、確かに全員ボロボロになっていた…だが、その眼から闘志は消えていない。

 

「…っふふ! ありがとう…皆には、感謝しても仕切れない!」

「んふ〜! 頑張ったものねぇ〜? エラいでしょぉ〜?」

 

 山雲が言うと、通信を開いていた武蔵が褒める。

 

「ああ! 偉いぞ…この武蔵が褒めてやる!」

 

 西村艦隊は、棲水姫に向き直ると、支援砲撃を開始する…!

 

「ってえぇーーーッ!!」

 

 山城の号令。爆砲撃の連続射出、第一艦隊、棲水姫と随伴艦に降り注ぐ。

 

『■■■■■■■■■■■ーーーッ!!?』

 

 棲水姫を残して、第一艦隊も壊滅…流れは完全にこちらに有る、後は決めるだけ…!

 

「行くわよ、野分!」

「うん、一緒に行こう!!」

 

 満潮と野分、二人の駆逐艦から放たれた「決定的な一撃」は、確実に棲水姫を捉えて、その四肢を貫いた!

 

『ギニャアアアアアアアアアアアアアア!!!!?』

 

 …こうして、様々な因果が重なりレイテ沖海戦は一先ずの終幕を下ろした…!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 ― シズムカ…マタ、コノカイテイニ

 

 モウ…モウイヤナンダヨ……ッ! クラクテ…サミシクテ…ツメタクテ……!

 

 …! コノ…テハ……? …イイノ? イッショニイッテモ…

 

 ………………あたた、カい…あたたかい…よ…!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「終わったか…だが」

 

 武蔵はそよ風に揺られながら、空を仰ぐ。

 

「紅い空…まだ終わりではない」

 

 この地に安寧が訪れる日まで、彼女たちは戦い続けるだろう…そしてそれは更なる激戦を予感させる。

 

「…さて」

 

 ここから先、どのように変わっていくのか…そう心で呟きながら、彼女は次の戦いへ赴く…

 

 もう二度と、倒れ伏しはしないと誓いながら…。

 




〇おまけ


※ここから先は「memories alive」のネタバレがあります。





…前回、親父の施しにより提督の力は再封印されたが…?



― 提督執務室

秘書艦吹雪の元に、ドアのノック音と共に来訪者が…

「ガチャ) ただいまぁ」
「……♪」
「あ、司令官! ミウちゃんも、お帰りなさい!」

帰還した提督とミウ、吹雪は進捗を尋ねるが…?

「…これ」

提督は上着を脱ぐと、上半身裸になる。

「きゃっ!? ///」
「何よ「きゃ↑」って? オレのヤツなんて恥ずかしくもないぞ?」
「茶化さないで! あと羞恥心ぐらい持ってください?!」
「オレとお前の仲やろうに…? ほれ、とにかくこれ」

背中を指す提督、そこには刺青のような模様が浮き出ていた…。

「…これは?」
「何か「封印」が成功したみたいなんや。これで…アイツの声も聞こえんなったわ」
「え?! …確かに雰囲気は前と同じに…?」
「そうか? よう分からんけど良かったわ。これでアイツらぁに余計なことする事は無い、というとこか」
「そうですね………?あれ、司令官? お父上は何処に居らっしゃるのですか?」

提督とミウは顔を見合わせる。どこか困った様子だった。

「いやぁ…それがまたフラっと何処かに?」
「え、よろしいのですか?」
「ん~まぁ、イカンことはないやろ? でもまた皆を怖がらせてないか心配で…?」
「そうですか…では私から注意喚起を皆に伝えておきます」
「おう頼むわ。「不審者に要注意」ってな?」
「……(;゚Д゚)」
「司令官、仮にもお父上なんですから…ミウちゃんも困ってるでしょう?」
「ハハハ、抜かしおる」

こうして、行方を眩ませた親父を探す提督たち…彼はどこへ行ってしまったのか…?





・・・・・

一方、新港に佇む瑞鶴…帰投した彼女は、次の戦いに思いを馳せた。

「……(次はいよいよレイテ…武蔵さんたちなら大丈夫だろうけど…問題は次。果たしてどんなヤツが出てくるか…)」

…その時、不意に後ろから気配を感じる。

「…ほぉ、ヤケに神経尖らせた姉ちゃんだな?」
「ん? …!? …えっと、どちら様…?」

まるでヤのつく風貌の男に、一瞬面くらう瑞鶴。男…提督の親父は構わず話を続ける。

「こんなとこで黄昏て、そういう事するのは男の特権だと決まってんだがな?」
「…別に、貴方には関係ないでしょう?」
「クク! 違いねえ…どうだい? 俺に相談してみねえか? 他人でも話せば、少しはすっきりするだろう?」

訝しむ瑞鶴だったが、お言葉に甘えて胸の内を話すことにした…それは何より、目の前の男が彼女が親愛する「彼」に似ていたから。

「…この戦い、私たちにとってはとても大事なの」
「艦娘ってヤツか? 嬢ちゃんもそうなんだな?」
「うん…私はこの海を守りたい。何より…あの人が後悔したことを繰り返したくない…だから」
「……ふぅん。だが、それは本当に「嬢ちゃんの望み」かい?」
「…え?」

親父は瑞鶴の顔を指して、笑った。

「アンタの顔は正直だな? 辛いって顔に書いてあるぜ?」
「…うん、そうだね。本当はね、私…あの人が考えたことが間違いじゃないって証明したいの」
「………」
「あの戦いのとき、あの人は自分の力を存分に発揮できなかった…もし、もしだよ? あの人が早く海軍のトップになって、戦況を打開する策を思いついたら…あの戦いの勝敗は、変わっていたのかもしれない」
「…そこまで入れ込んでやがるのか」
「えへへ…だから、それを証明したいっていうのは、あるかな? …でも、私にそこまでの頭は無いからさ? あの人が掲示した戦法を使うしか思いつかなくて…でも、それはとても危険な技で…迂闊に使う訳にも、いかなくってさ…」
「そうかい…なら、アンタはもっと周りに甘えるべきだ」
「っえ?」

瑞鶴が驚いていると、親父は風に吹かれながら、掠れた声で諭すように言う。

「親を見て子は育つ、というが…そこまで慕われるたぁ、俺はソイツが羨ましい…親もまた子の成長を見るのが嬉しいんだ…だから、それでソイツに応えたいと思うんなら、その戦法とやらをやるべきだと思うね?」
「…駄目。やっぱり危険すぎる、私は…皆を巻き込みたくない」
「いいや、それはアンタが自分に自信が無い、ってのを理由に周りを信用しない所為だ」
「! 貴方…」
「周りを見ろ、アンタの足を引っ張ったヤツが一人でもいたか? 寧ろ「いつものアンタじゃない」って周りに言われなかったか?」
「!? どうして…」
「やっぱりな…。無理しすぎなんだよ、アンタは。一人で抱え込んで、悩んで、逆に心配させて…そんなんで平和を守るだ? 何事も「一人で出来ることなんて無い」んだよ。それこそ海の平和を、なんて言えば周りの協力は不可欠だ」

…ぐうの音も出ない、反論の余地が無いとはこのことか、と瑞鶴は身に染みて思い知らされた。

「アンタはアイツとどこか似ている。アンタの取り柄は「元気」だ、そうだろう? なら…鉄砲玉みてぇに跳ね回った方が、周りの奴の為になるんじゃねえか?」
「………」

目から鱗が落ちた。

彼女の迷いを…男は唯の一言で切り伏せた。それは人間の強い意志の顕れであった。

「…貴方、もしかして提督さんの?」
「ああ、まあな? 不肖の息子だが、お前らの役には立ってくれているか?」
「…ううん、あの人にはいつも助けられてる。…そっか、解ったよ、貴方の言葉は提督さんに似てるんだ」
「そうかい? …そりゃ何とも気恥ずかしいもんだな?」

親父は苦笑いしながら、まんざらでもない様子だった。

「…うん、そう。そうだよね? …分かった、次の戦いでは「いつも通りに」戦ってみせるよ!」
「そりゃあ良い心意気だ。…まあ頑張んな? 俺はこんな事しか言えねえが」
「ううん! すっごく元気出た! …ホントにありがとう、提督のおとうさん!」
「…っへ! どういたしまして。ついでに俺はお兄さんと呼んでくれたら」

…そういう男の視界から、既に瑞鶴は遠ざかっていた。

あれが「いつもの彼女」か。と満足げに遠ざかる影を見送る親父。

「…あのクソガキも、立派になったモンだ」

親父は顔を出した月の照らす影を纏いながら、静かに戦いの行方を見守るのであった…。
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