笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回からさらにお2人!お気に入りをしていただきました!!ありがとうございます!!ほんとにもう…こんなに色んな人に見ていただけるとは思っていませんでした…!これからも頑張ります!超頑張ります!!
さて、前回松下さんのお話が一旦終わって、今度は…タイトルでわかるでしょうか?誰かさんメインのお話でございます!!
というわけで、どうぞご覧ください。
「そうしてひとまず明はなんとかなった。あとは恋愛クソ雑魚准教授と恋愛クソ雑魚スクールアイドルがどう動くかだな」
「恋愛クソ雑魚て…天童さんも恋愛弱者やん」
「希ちゃんのおっしゃる通りでございますマジすんません調子乗りました」
自宅にて、希ちゃんを呼んで事の顛末を話した。おいおい別に自宅に連れ込む口実とちゃうぞ?ちゃんと理由があって呼んだんだぞ?まあ本題以外のことをするかどうかは希ちゃん次第だがな?希ちゃん次第だがなぁ?!
すんません心の中でも調子乗りました。
「まあ、とにかく明が人を信じられるまでいってくれたら万々歳ってところだ。流石にそこまで面倒は見ないけど」
「そうやね、そっとしといてあげよっか」
「ほっとくと最悪くっつかない可能性も無くはないんだがな…」
「大丈夫やない?海未ちゃん男性との交友はすごく狭いから」
「そういう問題か?」
「そういう問題なの」
本当は周りの人間各々の未来まで見れないこともないんだが、俺にも限界というものがある。明と違って長らく鍛えてきた俺はちゃんと限界を知っているのさ。まあまだ限界値は上げられるんだがな。俺は未来ある男なのさ。そう信じてる。
まあとにかく、なんとかシナリオ通りの結末を迎えてくれたらしい明と海未ちゃんの今後はあんまり関わらないことにする。よほど深刻な事態じゃない限りな。
「…で、うちを呼んだ理由って?」
「ああ…どうしても君に協力してもらわなければならなくてな」
「嫌なことじゃなければ頑張るよ」
「ヤバい超いい子鼻血出る」
「なんで鼻血…?」
だから、今回希ちゃんを呼んだのは明や海未ちゃんは関係ない。
「…大地のことさ」
「とりあえず鼻血拭いてください」
もう一人、救わなきゃならない友人がいる。
鼻血はね、ほんとに出てるとは思わなかった。冗談のつもりだったんだがな。希ちゃんが可愛いすぎるのが悪いんや。俺は悪くねぇ!!
「むむむむむむむむむむ」
「何で奏は海未を睨んでるんだ」
「松下さんの家で何かあったのかな?」
「そもそも松下さんはどうなったのよ」
「何も聞いてないにゃー」
ある日の練習のこと。
何故か奏の機嫌がよろしくない。
先日海未が松下さんの様子を見に行ったことは知っているんだが、何がどうなったのかさっぱりわからん。結局松下さんは無事なのか無事じゃないのか。
ちなみに海未は穂乃果とことりの陰に隠れている。
「う、海未ちゃん…何したの…?」
「海未さん!!」
「誤解ですッ!!!」
「いやマジで何が起きたんだ」
何もわからん。
「海未さんがお兄さまをたぶらかし
「てません!!!」
「ええ?!」
「う、海未ちゃんが?!」
「だから誤解だと言っているでしょう?!」
「…??」
「創ちゃんがフリーズしてるにゃ」
「本当にどういうことなのよ」
「わからないね…」
なんかもう理解が追いつかん。茜なんとかしろ。いや茜居ねぇんだったな…。
「私はただ松下さんを励ましただけです!」
「励まされただけでお兄さまはあんなえっちな顔しません!!」
「んなっなんですかえ、ええええぇっ…そんな顔はしてませんでしたよ!!」
「どんな顔だよ」
よし。
理解するのをやめよう。
「オーケー、よくわかったから練習始めるぞ」
「わかってませんよね!わかってませうあああああああ?!?!」
「投げたわね」
「投げたにゃ」
「投げたね…って奏ちゃん大丈夫ー?!」
というわけでとりあえず奏を投げた。うーん清々しい。さっさと練習を始めよう。
「しかし、この9人での練習も慣れてきたな」
「ひ、人を投げておいて全くの平常運転ですって…?!」
「創ちゃんはそういう人にゃ」
「よく凛も投げられてますから」
「凛さんよく無事ですね…」
「慣れたにゃ」
「慣れるようなことですか…?」
「早よ準備しろ」
「にゃあああああああ!!」
「ほら」
「猫のような身のこなし…!!」
まあ投げても平気そうなやつしか投げないからな。
「とりあえず、練習に私情で海未に噛みつくようならまた投げるぞ」
「ひえっ」
「脅さないの」
「脅し方が普通じゃない…」
「私投げられてみたい!」
「やめておきなさい亜里沙」
亜里沙はせめてマットか何かあるところで投げてやろう。いや好き好んで投げてるわけじゃねぇんだがな?
「よーっしオッケー!バッチリだ!!おしまい!!帰れ!!」
「せめて次の練習の連絡くらいしなよ」
舞台の稽古はいつも突然終わる。天童がみんなの予定や体調を加味して一番良いタイミングで勝手に終わらせるせいだ。先に終わる時間決めてくれてもいいのに。
あと「終わり!!」だけでおしまいじゃみんな困るよ。
「仕方ねーな、一回しか言わねーぞ!次の練習は来週水曜の15時から!!いいか?来週水曜の15時からだぞ!!」
「天童さん2回言ってまーす」
「うるせえ!男に二言はねーんだよ!!」
「二言だらけじゃないか」
正しいことを一つも言ってない。
「次回の練習場所は台本87ページ目冒頭から。覚えてこいよー台本見せねーぞー見んなよー」
「はーい」
「はい!」
「ほらー穂積さんぐらい元気だしてみんな。みんな大好き天童さんは元気な子が好きなのだよ」
「余計元気無くします」
「おっと遠回しに俺が嫌いということかね小島さん」
天童、人の行動が読めるはずなのに毎回自分をネタにするのは何でだろう。
「わかったよもう!俺はトイレで泣いてくるからみんな早よ帰れー!!」
「はーい」
「もうちょっと罪悪感生まれてくれませんかね」
「もうみんな帰り始めてるよ」
あと延々と喋っていられるのは一種の才能だと思う。いや普通に彼は色々優秀なんだったなぁ…。
「そろそろみんな俺の偉大さに気づかないかなぁ…」
「そうなるように操作すればいいのに」
「それは反則くさいじゃーん?」
「それを言ったら天童は存在が反則だけど…」
「おっ何だ急に褒めて照れるじゃん」
「いや褒めてない」
「そっかぁ」
そうやって自分の評価が異常に上がるようにはしないあたりは良識ある方なのかな。
「まあいいか、帰ろ。大地は…あーそうか、ついてくるんだったな」
「うん。だから早く帰ろう」
「急かすな急かすな。我は忙しいのじゃ」
「何者さ」
とにかく、今日は天童の家に用があるから早めに帰りたい。シナリオ通りの動きではあっても、不安なものは不安なんだ。早く行こう。
「そういえば、最近悪人狩りしてないらしいけどどうしたの?」
「ん?ああ、希ちゃんが嫌がるからな。そもそも犯罪が起きないように、どうにかやってるところさ」
「ふうん?松下君は何も言わないの?」
「まあ、不満はあったようだからなんとかした」
「あれ、松下君は行動読めないって言ってなかった?」
「ちょっと状況が特殊だったからたまたまな。あれは運がよかったんだよ」
帰り道、天童にはシナリオ通りの質問をしてみた。全部シナリオ通りの会話で逆にすごい。天童よく覚えてるな、僕はそういうの得意な才能だから全部覚えてるけど。
「さて着いた。それじゃあさっそく新しいシナリオを…あったあった。はいよ、とりあえず1週間分」
「ん、ありがとう。えーっと」
「まあだいたいいつも通りだ。週末に出かける予定があるくらいだな」
「出かける予定?最近多いね」
「たまにはいいだろ?」
「東條さんとお出かけする口実に使ってない?」
「ちゃっ…ちゃうわい!!ほ、ほら、だって週末の予定は希ちゃんはいない…いやいるわ…いるなぁ…」
「……………………」
「はいそんな顔しないー。お兄さん傷ついちゃうよ」
何か最近いいように使われてないかな僕。
「…まあ、悪いようにはしないさ」
「そう?」
「そう。さ、また明日も稽古あるんだからさっさと帰ってシナリオを覚えるがいい!!はい解散」
「ちょっ
追い出された。
何か怪しいな…。怪しいけどシナリオを無視するわけにはいかないし、新しいシナリオはもうこのまま帰ることになっている。帰らないわけにはいかないか。
うん、大丈夫だ。
天童のシナリオを信じれば、ちゃんと上手くいく。
そのまままっすぐ家に帰ると、リビングの明かりはまだついていた。
「ただいま」
明かりはついているけど、返事は返ってこなかった。
いつものことだ。
おそらく一般家庭よりは遥かに広いリビングには、テレビでドラマを険しい表情で見る父さん…御影辰馬がいた。
きっと母さん、御影沙苗はもう寝ている。
「…今日はどうだった」
父さんはいつも通り、挨拶もなく聞いてきた。
「…今日も、いつも通り」
「そうか、ならいい」
顔も向けずにそれだけ言って、その後何も言わなかった。時折ノートに何か書いているが、おそらくいつものようにいろんな俳優のダメ出しを書き連ねているんだろう。
「…何をしている。早く寝ろ、時間を無駄にするな」
「…はい」
少し立ち止まっただけで叱責が飛んできた。何を言っても反撃されるのはわかっているから、大人しく部屋に戻る。
いつものことだ。昔から父さんはこんな感じだから。
何も感じることはない。
…父さんも、昔は俳優だったそうだ。何か理由があって辞めてしまったけど。
昔からとても演技に厳しい人だったらしく、演技自体は非常にレベルが高かったけど、結構人間関係の軋轢も多かったそうだ。
俳優を辞めて、母さんと結婚して、僕が生まれて。
生まれてきた僕は、誰よりも俳優に向いた…「演じる才能」を持っていた。だから当然のように幼い頃から演者の道を歩まされてきた。世間から「天才少年だ」って注目されるのに時間はかからなかった。
父さんはいつも「完璧に演じることができて当然だ」と言っていた。だからどれだけ僕が完璧に演じてみせても褒められることはなかったし、逆に少しでもアレンジを入れると拳が飛んできた。
幼くても、悟るのに時間はかからなかった。
父さんにも、世間にも、
だから僕は、もう何も考えなくなった。僕の意見なんて許されなかったから。必要なかったから。父さんが望んだ道を、天童が用意した道筋を、歩むだけでいい。
僕の人生に僕の意見はいらない。
いつからか、僕は「僕以外の誰にでもなれる何者か」でしかなくなった。
もう自分で考える方法も忘れてしまった。
だから、今日も父さんが望むように、すぐに風呂に入って寝てしまおう。
着替えを用意しようと思ってタンスに近づいた時、机の上でつきっぱなしになっていたPCの画面が目に入った。
バレエの動画だった。
今度の舞台のためにバレエの動画を探していたら、天童に「せっかくμ'sと仲良くなったんだから絵里ちゃんの動画でも見てろ!ほらURL送ってやるから!!」と半ば強制的に見せられた動画だ。
まだ10歳前後らしい絢瀬さんのバレエは、全然完璧じゃなくて、緊張していて、何か強い自分の決意があって…どこか、自由だった。
天童は自由じゃない。自分で未来を見続けなきゃいけなくなってしまっているから。松下君も自由じゃない。彼もきっと才能に未来を決められてしまったから。波浜君も自由じゃない。才能や過去の出来事に、これからの道筋を決められてしまったから。
でも、絢瀬さんやμ'sのみんなは、自由だった。
天才と呼べるような才能があるわけでもなく、しかしこんなに自由で、たくさんの未来がある。
彼女たちに会った時からずっと思っていた。
羨ましいって。
僕も、いっそ、こんな才能が無ければ。
彼女たちのように生きられたのかなって。
…でも、もう戻れない。
僕はもう、他人が決めたレールの上しか歩けない。
自分で考えられなくなってしまったから。
諦めてしまったから。
だから、今日も、明日も、その先も。
僕は誰かが望む何者かとして生きていこう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回からは今まで出番少なめだった御影さんです。松下さんとは若干近い感じの流れですが、さて、どうなるのでしょうか。どうなるんですか天童さん!!