笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

前回からまた1人、お気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!!ありがとうございます!!皆様のおかげで失踪しないで頑張れてます、これからもよろしくお願いします!!

そして久しぶりに隔週じゃないですよ!頑張りましたよ!!
というかそろそろ締めにかからないと永遠に終わらなさそうなので話進めないといけないんですよ。だって3月でこの作品連載開始から3年目に突入しますからね。よくもそんなに書けたな私。

今回は少し時間をすっ飛ばして10月です。そして主役は…サブタイトルで察せますか?漢字2文字は彼のモノ!!


というわけで、どうぞご覧ください。




恋心

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて秋だよ。

 

 

毎年恒例のハロウィンイベント真っ最中だよ。今年も僕が協賛…というかむしろメインのアートディレクターだよ。湯川君が作った貼って剥がせる謎フィルムをメインストリート全体に貼りつけて、あれもこれもハロウィンペイントでいっぱいにしてやった。流石に5時間くらいかかったよ。

 

 

まあ十分早いけどね。

 

 

「そして疲れたからおんぶしてにこちゃん」

「嫌よ」

「厳しい」

 

 

あわよくばにこちゃんとくっつける作戦は失敗した。悲しい。疲れたのは本当だけどね。

 

 

「ところで創一郎は一体何してるの」

「去年のせいでハロウィンがトラウマになったらしいわよ」

「何でだろうね」

「あんたのせいでしょ」

「ふげっ」

 

 

で、今年もライブに招かれたらしい音ノ木坂のスクールアイドル達のために舞台設営をしていた創一郎は、死角になるところで縮こまっていた。縮こまっててもでかいけど。

 

 

僕がプリキュアやらせたせいだね。ごめんて。

 

 

「元気出して創一郎」

「一体誰のせいだと思ってんだ」

「痛いよ。顔掴んで持ち上げるなんて世紀末男じゃん」

「世紀末で結構だから俺は今日は静かに生きるぞ」

「わかったよ。そんなにキュアブラックの方が良かったんなら言ってくれr痛い痛い嘘嘘冗談痛い痛い潰れるひしゃげる崩れ落ちる」

 

 

去年キュアホワイトやらせたから今度はキュアブラックやってもらおうと思ったらものすごいパワーで顔を握られた。頭蓋骨曲がりそう。

 

 

「あっ創ちゃん見つけた!」

「もう、どこ行ってたのよ?会場の整理してくれないとお客さん入れないわよ?」

「うっ…すまん…」

「落ち込み方が半端じゃない」

「いい加減メンタル鍛えなさいよ」

「それと少しでいいから僕の心配して」

「自業自得じゃない」

「仰る通りです」

 

 

そして相変わらずメンタルが豆腐だ。生徒会やってるんじゃなかったっけ。大丈夫なのそのメンタルで。

 

 

創一郎はそのまま真姫ちゃんと凛ちゃんに連れ去られた。ちなみに花陽ちゃんはファンに囲まれて「誰か助けてぇー」って喚いてる。ちょっと待っててー。

 

 

そして離れたところでは穂乃果ちゃん達が着替えるために仮設の更衣室に向かっているのが見える。

 

 

「…そういえば最近気になってたんだけど、ちょっと前から穂乃果ちゃんひまわりのネックレスつけてるよね。あれどうしたのかな」

「え、聞いてないの?誕生日に桜にもらったらしいわよ」

「何それ詳しく」

「穂乃果に聞きなさいよ」

「ごもっともだね」

 

 

なんとなく聞いてみたらすごいネタが降ってきた。桜いじりが愉しくなる。

 

 

後で穂乃果ちゃんに聞いておこう。

 

 

「ライブ見ていきたいとこだけど、僕は僕でお仕事あるから見れないな」

「後で録画見せてもらいなさい。希が撮るって言ってたし」

「にこちゃんは撮らないの?」

「私はあんたについていくに決まってんでしょ」

「好き」

「ふんっ」

「あふん」

 

 

つい好きが溢れちゃった。

 

 

そんなわけで一旦ライブ会場周辺を離れ、大通りの一角へ移動。にこちゃんと2人で。デートじゃんこれ。ハロウィンデートだ。仮装してこればよかった。

 

 

「と思ってたところに丁度よく仮装製造機が」

「…誰が仮装製造機だ」

「この前やばい数の服作ってたじゃん」

「あれはことり用だ。売らん」

「別に欲しいって言ったわけじゃないんだよ」

 

 

移動中に偶然ゆっきーがいた。それと車椅子を押すまっきーと、フルメタル湯川君(多分)。何でフルメタルなの。

 

 

「そこのSFに出てきそうなのは誰なのよ」

「何を言っている矢澤嬢。こんなものを作れるのは湯川氏しかいないだろう」

「そうだとは思ったけど顔も見えないから不安じゃないの」

『顔も見えないから不安なのか?』

「実際中身空っぽな可能性あるからね」

「しかもめちゃくちゃサイバーな声になってるし。わかんないわよ」

『今日はどんな格好をしてもいい日だと聞いた』

「まあ全裸とかじゃなければだいたい許されるのは間違い無いね」

「直接目を合わせることを避けられると同時に、多数のカメラと環境測定機器からの情報氾濫による精神安定化も兼ねている。更には外骨格による運動能力向上も担い、腰部バーニアと背部格納ウィングの展開により飛行形態への迅速な変形も可能だ」

「ガンダムじゃん」

『ガンダムではない』

 

 

相変わらずのてんこもりマシンだ。とりあえず飛べることだけわかった。まっきーが当たり前みたいに解説してくるのはよくわからない。

 

 

「でもその格好だと花陽ちゃんが認識してくれないんじゃない」

『花陽が認識してくれないことはない。花陽はこの外骨格を見慣れている』

「何でさ」

「室内で何度も試着しているそうだ。小泉嬢も同席することがあるらしい」

「花陽も大変ね」

 

 

もう何もツッコむまい。

 

 

「とりあえずゆっきーなんか仮装作って」

「30万な」

「ぼったくり極まる」

「とか言いながら素直に財布出すんじゃないわよ!そんな大金払ってまで仮装欲しいのあんた?!」

「だってにこちゃんに露出過多なドスケベコスプレしてほしいんぎゃっ」

「こんな人が多いところでそんな格好するわけないでしょ!!」

「つまり2人きりならやぶさかではな痛い痛い痛い折れる腕折れる」

 

 

にこちゃんから言外のお許しが出たから意地でも作ってもらおう。30万なら安い。50万でも安い。にこちゃんがコスプレしてくれるなら。でも腕一本はちょっと高いから腕もってくのはやめてにこちゃん。

 

 

ただし鼻血出して僕が即死する可能性は大いにあるので数十万かけてもにこちゃんを見れるのはきっと一瞬。儚いね。

 

 

「ふむ…仮装か。なるほど、こういった行事も共に参加すれば仲も深まるか。よし瑞貴、猫の仮装を作れ」

「…何で命令形なんだよ」

「しかも猫て。まっきー猫好きなの」

「いや、真姫に着せる。気まぐれ、ツンデレ、人見知り。まさに猫だろう?」

「ちょっと待って突っ込みどころが満載なんだけど」

「いつのまに真姫ちゃんを名前で呼ぶようになったのよ」

「まっきーからツンデレなんて言葉が出てくるとは思わなかったんだけど」

「…しかも猫の格好させる気か」

 

 

今の一瞬で急に情報過多になったんだけど。僕湯川君とは違うからそんなの処理できない。いつの間にそんな面白い話が始まってたのさ。もしかしてまっきーがお母さんの手術終えてからやたら上機嫌だったのはお母さんのせいじゃなくて真姫ちゃんのせいか。

 

 

「…付き合ってるわけじゃないわよね?」

「勿論だ。物事には段階というものがある。しっかり順を追って落としていくさ」

「全部の段階をすっ飛ばす奴が何を今更」

「っていうかあんた人を好きになったりするのね。女の子に興味なさそうなのに」

「当然だ。私も人間である以上恋もするし、人間の雄である以上人並みの性欲はある」

「オブラートのカケラもない言い方」

「私とて生命体の一員だ」

「それは婉曲が遠すぎて伝わらない」

 

 

相変わらず加減が分かってないし、性欲とかストレートに言うのやめようね。

 

 

「…こいつが上機嫌なせいで以前よりやかましくなった。何とかしてくれ」

「なんとかって言われてもね」

「恋の力さ」

「どうしようもの凄く腹立つ」

 

 

こいつが恋の力とか言ってるとなんか腹立つね。人間離れしてるくせに人間らしさ醸し出してるからかな。

 

 

まっきーに向かってわちゃわちゃしてると、黙っていた湯川君が口を開いた。

 

 

『…恋の力?』

「ん、力という単語に反応してしまったか。力学的な力のことではない。精神的支柱という意味だ」

『精神的支柱…』

「そう。真っ当な人たる我々にとって、精神は重要な役割を果たす。医学においても心療内科や精神科が存在するくらいだからな。それを強く保つための一柱が愛だ」

「メンタルおばけがなんか言ってる」

「私の精神が疲弊しないわけではないんだぞ?」

「なんか説得力無いなぁ」

「コイツ落ち込まないからな」

 

 

まっきーが落ち込むとか想像もつかないしね。僕らが死んでも平気な顔してそう。

 

 

あと僕らは真っ当な人ではないよ。残念だけど。

 

 

「茜、もうすぐ時間よ」

「そうだ僕お仕事あるんだった」

「…俺たちに話しかけている場合か」

「まあ大丈夫だよ多分」

「不安しかないな」

 

 

忘れるところだった。ていうかにこちゃんがいなかったら忘れてた。にこちゃん大好き。え?知ってた?照れる。

 

 

ライブが見れないのは残念だけど、まあまだ機会はあるからね。次を楽しみにしていよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブは大盛況だった。

 

 

いやーこれだけ人がいると希ちゃんとはぐれそうになるから手を繋がなきゃいけないな!!いい加減慣れたぞ!!どんとこい!!

 

 

「いやでも腕を組むのは距離が近すぎるとお兄さん思うんだよなー」

「嫌なん…?」

「そういう不安そうな表情はずるいよマイハニー」

 

 

でも腕組むのはまだ早いって。天童さんの背筋が微妙にコールドなの。おわかり?

 

 

まあ何言っても離してくれないのは明白なんだけどさ。そのおかげで色々慣れてきたのは間違いないけど。

 

 

「はーまったく、この後音ノ木坂の子たちと合流して仮装大会するんだから。あんまりくっついてると白い目で見られちゃうぞ」

「今更やない?」

「そんな今更って言うほど人前でくっついてないだろ」

「いや天童さんが白い目で見られるのが」

「そっちかぁー」

 

 

否定できないわー。泣ける。泣いていい?

 

 

目から汗をかきながら音ノ木坂の子たちと合流。既に着替え終わっているようだ。仮装に。吸血鬼かねこれは。露出少なめで残念だ。

 

 

「希ちゃん!」

「久しぶりー!」

「ふふ、みんな元気にしてた?」

「元気すぎて困るくらいだ」

「よう君達俺には挨拶は無いのかね俺には」

「あ、お久しぶりっす」

「雑ぅ〜!!」

 

 

相変わらず俺の扱いが底辺だ。泣いていい?もう泣いてたわ。

 

 

「絵里ちゃんは一緒じゃないんだ?」

「うん。ライブは一緒に見てたんやけど、ちょっと用事があるから先行っててって」

「ふーん?」

 

 

まあ大地のところ行ったんだろうな。あいつの収録現場はなかなかレアだし。ついこの間誕生日祝ってもらったはずだし、絵里ちゃんの大地への好感度も爆上がりしてるだろうし。はよくっつけ。

 

 

「あっ、そうだ!希ちゃんの分も仮装用意してあるよ!」

「ありがと!うちも着替えてくるね!」

「いってらっしゃー」

「天童さん、覗いちゃやーよ?」

「人聞きの悪い。覗くなんてせせこましいことはしないぞ俺は。堂々と正面から侵入する」

「それやったらあなたの頭蓋が潰れると思ってください」

「じょーーーだんだって冗談っ!!でもそこまでされる謂れはなくない?!俺ら恋人同士なんだから!!もしかしたら裸を見慣れた関係かもしれn痛っ!!何か飛んできた!!」

「天童さんが変なこと言うから希がヘアゴムで狙撃したのよ」

「器用だなあの子。好き」

「それはそれとして頭蓋は潰れますので」

「歪みねぇなお前!」

 

 

そんな覗きなんてしねえよ。いや覗いてみたい気もしなくもないけど。しなくもなくなくなくなくないけど。どっちだ。

 

 

と、希ちゃんの着替えを待っている時だ。

 

 

「ほう、既に仮装済みだったか。残念だ」

「…よく似合ってるぞ、ことり」

「えへっ」

「おおーっと糖度最大値を誇るカップルのご登場だなぁ?!」

「凍土…?」

「君なんか違う言葉想像してない?」

『糖度?雪村は甘いのか?」

「そこの見た目ファンタジーは誰かと思ったら湯川君かよ。待ってこのメンツ一番俺の負担が多いやーつ」

 

 

追加の人員到着だ。でも湯川君がいるのは予定外。てかその装甲はなんなの。仮装?アイアンマンか何かの仮装?いやもっとスリムだしFFの竜騎士みたいかな?顔見えないけど。

 

 

いやもしかしたら中身は空で、本体はいつもの地下に引きこもってるのかもしれない。

 

 

まあどっちにしろ日本語の説明が追いつかない未来しか見えないぞ!

 

 

「あっお兄さま!」

「お疲れ様です、奏。いいライブでしたよ」

「えへへっありがとうございます!」

「皆様もお疲れ様でした。こちら差し入れです」

「わぁっ!ありがとうございます、松下さん!」

「よかった…ツッコミ要員が増えた…しかも語学のスペシャリストだ…神じゃん…」

「勝手にツッコミ要員にしないでくれますか」

「辛辣ぅ〜」

 

 

ツッコミ要員が増えたと思ったのに拒否られた。これはショックで東尋坊に身投げしちゃうわ。身投げしちゃうぞ松下クン??いいのかい??

 

 

「ご勝手にどうぞ」

「何も言ってないのに」

 

 

心読まれた。いやん。

 

 

「お待たせー。どう?」

「好きっっっっ!!!!」

「希ちゃん似合ってる!」

「かわいいー!」

「うふっありがとう」

「…そこで倒れている天童さんはほっといていいのか」

「ええよ」

「そんなひどい」

 

 

着替え終わって出てきた希ちゃんはみんなと同じく吸血鬼だったが、他の子たちより露出多めだ。なんてことだ。可愛いが極まって死んでしまうぜ。俺が。短い人生だったナー。

 

 

『なあ松下、天童』

「ん、どうかしましたか湯川君」

「珍しいな。君が話しかけてくるのは」

『恋の力とはなんだ』

「こっ?!」

「恋の力…?藤牧が何か言ったのか?つか明は何をうろたえてんだ」

「いえうろたえてなどいませんよ」

 

 

走馬灯見てたら湯川君に変なことを聞かれた。ついでに明と海未ちゃんのリアクションで色々察した。キューピッドたる俺ちゃんに感謝しろお前ら。

 

 

『藤牧が精神的支柱だと言っていた。俺にはわからない』

「わからなくはないだろうよ」

『わからなくはないのか?』

「どうでしょう。僕は言明を避けましょうか、僕が教えることではありません」

『僕が教えることではないのか』

「自分で考えろってことさ。得意だろ?」

 

 

まあ、湯川君なら考えればわかるだろう。たぶん。ちょっと思考が高度すぎて俺には理解できないことも多いけど。

 

 

それに、どっちかというと見て覚えるというのも大切だと思うしな。

 

 

心は科学でなんとかなるものでもないんだから。

 

 

「真姫、この仮装着てみないか」

「嫌よ、もう仮装してるんだし。だいたいなんで猫なのよ?」

「猫っぽいだろう?」

「誰がよ?」

「君が」

 

 

あっちで拒否られている天才は参考にならんかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋心というものがある。

 

 

らしい。

 

 

最近そんな話をよく聞く。

 

 

俺にはわからない。

 

 

現象として捉えられるものではない。

 

 

観測できるものではない。

 

 

ならば、それの存在はどうやって確かめればいいのだろう。

 

 

「照真くん?大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫だ」

 

 

ハロウィンイベントが終わって数日経った。聞いた話だけでは恋心が何者なのかはわからないままだ。情報が足りない。推論もままならない。観測不可能な現象は厄介だ。

 

 

だから、ラボに来ている花陽に聞いてみることにした。

 

 

「花陽」

「なぁに?」

「恋とはなんだ?」

「ほえっ?!こ、恋?!」

 

 

花陽に聞いたら変な声を出された。

 

 

「こ、恋なんて、私は…ちょっとまだよくわからないというか…なんというか…」

「?」

「な、何で急にそんなことを?」

「恋をする人が多くなった」

「そ、そうかなぁ…うーん、でも茜くんとにこちちゃん、天童さんと希ちゃん、雪村さんとことりちゃん…確かに多くなったかも…」

 

 

花陽の顔が赤い。興奮の影響だろうか。

 

 

「花陽は恋していないのか?」

「うぅぇええ?!わ、私?!」

「私」

「だ、だからよくわからないってば!」

「わからない?」

「うん!」

「わからないか…」

 

 

花陽からは情報を得られなかった。どこからでも情報を得られるわけではないのか。

 

 

マイクロサイズのドローン「蝿の王(ベルゼブブ)」で周囲一帯からサンプルを取ってみようか。

 

 

「あ、あの…」

「ん?」

「聞いた話なんだけどね?」

「聞いた話なんだけど、どうした」

「恋って…好きな人とずっと一緒にいたいって、いつも隣で笑顔を見たいって、楽しいことがあったらすぐに伝えたいって、そう思える人がいることって言ってたよ」

「ふむ…」

 

 

ずっと一緒にいたいって、いつも隣で笑顔を見たいって、楽しいことがあったらすぐに伝えたいって思うこと、か。

 

 

そう思える人がいるか。

 

 

もちろんいる。

 

 

花陽だ。

 

 

しかし、花陽への想いは恋なのか。

 

 

わからない。

 

 

「…照真くん。多分ね?恋って、考えてわかることじゃないと思うの」

「考えてわかることじゃない…?」

 

 

花陽は何を言っているのか。考えてわからないことはどうやっても理解できないはずだ。

 

 

「みんなはきっと、照真くんなら何でもわかると思ってるけど…きっとそうじゃないの。照真くんでもわからないことがある。すごい機械が作れても、わからないことはわからない。だって照真くんも人間だもん」

「…わからないことはわからない」

「うん。だから、感じるしかないと思うの。今恋してる人たちも、きっと恋についてずっと考えてたわけじゃない」

「…」

「でも、考えないでいるのって難しいよね。だから、これって恋かなって思ったことを覚えておいて、たくさん集まったら整理してみようよ。その時は私も一緒に考えるから」

 

 

花陽は俺の手を握って、目を真っ直ぐに見つめてそう言った。

 

 

理論で考えてもわからない。だから状況証拠を集めようということか。

 

 

それなら既に沢山あるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11年前、小学校に入る前のあの日。

 

 

「こんにちは。近所に引っ越してきた湯川光助と言うものです、これからよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。ほら、花陽も挨拶して?」

「………ぁう」

「ごめんなさい…うちの子、人見知りで」

「いえいえ構いませんよ。人見知りならうちの子の方が千倍強いので」

「………」

 

 

父親が東京の大学教授になる都合で、東京に引っ越した時。父親である湯川光助は俺と母親である湯川麗華を連れて挨拶して回っていた。

 

 

俺はもちろん他人と会うことなどロクにできず、父親の後ろで終始黙っていた。

 

 

そんな俺を見て何かを思ったのだろうか。

 

 

「………ぁ、あのっ」

「……………?」

「こっ、こいずみはなよです!よ、よろしくおねがいします…」

「…………」

 

 

互いの両親が話し込んでいる間に、棒立ちしている俺に花陽が話しかけてきた。言葉に詰まりながら、一生懸命に声を出して。

 

 

「……………こいずみはなよ」

「えっ」

「こいずみはなよ、よろしくおねがいします」

「……う、うん!よろしくおねがいします!」

 

 

すごい笑顔で返事をくれた。

 

 

初めてだった。

 

 

家族以外の人間がまともに話してくれるのは。

 

 

少しだけ嬉しかった。

 

 

小学校に行くまでは外に出なかったが、学区が同じだったため花陽と同じ小学校に通うことになった。小学校でも俺に話しかけてくる人はいなかったし、花陽も友人と話していることが多かった。それでもたまに俺のことを気にかけてくれていた。

 

 

サヴァンの影響で、俺はまともな意思疎通が難しい。先生にも匙を投げられた。授業にまともに参加することすら難しかったが、テストの成績は良かったから何も言われなかった。

 

 

花陽以外に友人なんていなかった。

 

 

それでも、両親が笑顔で送り出すから学校に行っていたのだ。

 

 

両親はともに学者であり、父親は東京の新居に地下室を作って実験するくらいの科学者で。母親はいつでもどこでも論文を読み漁る科学者だった。ちゃんとサヴァン症候群の知識を持っていて、俺が不自由しないように世話してくれていた。学校行かせたのも、俺の社交能力を確かめて将来設計の糧にするためだと言っていた。

 

 

人に馴染めるならそれでよく。

 

 

馴染めないなら別の手で誰かのためになれるように。

 

 

そう考えて俺を育ててくれた良識ある人たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

「臨時ニュースです。先程、成田発アムステルダム行きの旅客機が墜落したとの情報が入りました。機体はアルプス山脈中腹で大破し…」

 

 

 

 

 

 

 

8年前。

 

 

両親は学会に行ったまま帰ってこなかった。

 

 

死んだということだけ後で聞いた。

 

 

そのまま俺は外に出なくなった。父親が遺した地下室を改造して、そこにずっといた。

 

 

もう外に出る意味もないのだ。

 

 

ここにいれば俺の興味は全部達成できるのだから。

 

 

「照真くん!!」

「…………花陽か」

「花陽か、じゃないよ!大丈夫?!もう1週間も学校来てないよ?!」

「もう1週間も学校来てないのか」

「そうだよ!ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと寝てる?!」

「ちゃんとご飯食べてる。ちゃんと寝てる」

「うそ!前見た時より痩せてるし、目のクマもすごいもん!待ってて!!」

 

 

それでも花陽は会いに来た。時には友人と遊ぶ約束も断って会いに来た。俺のことなど気にしなくていいのに。

 

 

「お待たせ!白いお米だよ!」

「白いお米」

「そう!美味しいし元気になるから食べて!」

「美味しいし元気になるから食べる」

 

 

やたら白米を推してくるのはよくわからなかったが。

 

 

それからずっと、数日毎に花陽は会いに来てくれた。ご飯を食べろと迫ってきた。ちゃんと寝ろといって寝かしつけられた。研究成果を見てすごいと言ってくれた。自力で飯を食って風呂に入ったと伝えたら褒めてくれた。

 

 

いつも側にいてくれた。

 

 

俺が独りにならないように。

 

 

俺が孤独のまま死んでしまわないように。

 

 

俺が寂しくないように。

 

 

いつも笑顔で。

 

 

たまに泣いて。

 

 

最近は外に出られるようにしてくれた。他人との会話もうまくできるようになった。

 

 

花陽がいなければ、きっとこんなに長く生きていられなかったし。ずっと1人のまま死んでいた。

 

 

だから。俺は花陽を支えたい。ずっと支えてくれた花陽を、支える側になりたい。

 

 

ずっと笑顔でいてほしい。

 

 

ずっと幸せでいてほしい。

 

 

ずっと側にいてほしい。

 

 

ああ、状況証拠から仮説を導くとしたら。

 

 

俺は間違いなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花陽」

「うん?」

 

 

俺の手を握ったままの花陽に声をかける。

 

 

「状況証拠ならたくさんあった」

「へ?」

「今までのことは全部覚えている。花陽が初めて話しかけてくれたあの日から、今までの全てを覚えている。忘れはしない。例え俺がサヴァンでなくなったもしても。花陽にずっと側にいてほしい。ずっと笑顔でいてほしい。俺と一緒に生きてほしい」

「えっえっ」

「これがきっと、俺の恋の証明だ」

「ぅええええっちょっちょっとまって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花陽。俺は、君が好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっ、ほぅぁああ…あの、えっと…」

 

 

花陽は真っ赤になってもそもそ言っている。どうしたのだろう。

 

 

しかし恋心を学んだ後にも問題はあった。

 

 

「花陽」

「はっはいぃ!」

「…どうしたらいい?」

「………………へ?」

「恋を知った。それはいい。知ったあとはどうするんだ?俺は何をしたらいい?」

「…………………………ふふっ」

「どうした」

 

 

何故か笑われてしまった。不本意だ。

 

 

「ううん、照真くんはやっぱり照真くんだなって」

「…?」

「でも、少しだけ待ってて欲しいの。私も考えなきゃいけないこと、やらなきゃいけないことがあるから」

「わかった、待つ」

 

 

花陽が待てと言うなら待とう。その間に俺も情報収集をしなければならない。

 

 

恋した人々がどう行動するのか。幸い周りに恋する人はたくさんいるし、不自由はしないだろう。

 

 

マイクロドローン「蝿の王(ベルゼブブ)」を飛ばすか、それとも空間観測ナノマシン「視線(アイサイト)」をバラまくか。どうしたものかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

びっくりしました。

 

 

まさか照真くんに告白されるなんて思ってなかったから。

 

 

でも、どうしよう。

 

 

私は照真くんのことをどう思ってるんだろう。

 

 

初めて会った時、私以上に人見知りで、だから私がしっかりしなきゃって思って勇気を出して挨拶した時から。あの日からずっと、当たり前のように照真くんは一緒にいてくれた。

 

 

ご両親が亡くなって学校に来なくなった時は、不安でしかたなくて、つい照真くんのお家に飛び込んじゃって。

 

 

いつも睡眠不足で、ご飯も食べなくて、ずっと地下室に引きこもってる照真くんをほっとけなくて。

 

 

照真くんは人に会うのが苦手だから、凛ちゃんにも内緒にして。

 

 

そうしてまでずっと見守ってきた照真のことを…私は好き、なのかな。

 

 

さっきも言った通り、まだ私にはわからない。茜くんとにこちゃんの関係はちょっと難しいし、希ちゃんと天童さんのことはよくわからない。ことりちゃんと雪村さんほど照真くんとはべったりじゃないと思う。

 

 

あと、誰も言わないけど凛ちゃんと創ちゃんもたぶん両想いだよね。でも2人みたいにそわそわした気持ちにはならない。

 

 

照真くんにはずっと元気でいてほしいし、ずっと側にいてほしい。でもこれは恋なのかな…。

 

 

それに、私は今はスクールアイドルだから。

 

 

ことりちゃんのことがあってから、恋愛禁止ってわけじゃなくなったけど…私はやっぱり、大好きなアイドルのルールを破りたくない。

 

 

…照真くんは、待っててって言ったら、きっとずっと待ってくれる。本当にずっと。

 

 

だからって、答えを先延ばしにしていていいのかな。

 

 

ううん、だめだよね。ちゃんと答えなきゃいけない。照真くんの告白に。

 

 

…でも、本当にわからないの。誰に相談したらいいんだろう。

 

 

小さい頃からずっと一緒だった人への想いを相談できる人は…。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は湯川君回でした。他の皆様がだいたい重苦しい経歴を持ってるのでライトなお話にしようと思いました。思っただけでした。またご両親死んでるー!!
それに、この2人は全カップルの中で最も関係性にドキドキニヤニヤ感が無いんです。とても落ち着いてしまっています。
なので劇的な展開は無理だと思って、結果出来上がったお話は「後半に続く」。前書きで「締めにかからないと」とか言ってたくせに私はー!!!笑
そんな感じなので次のお話にご期待ください。
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