笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

真姫ちゃん誕生日おめでとう!!今回も特別話書けなくてごめんね!!ほんとに申し訳ないから死にそう!!

今回は最終章、いきなり本題から入っていきます。前章から実に2年もたった後のお話になります。水橋君と穂乃果ちゃん、ちゃんと幸せになれるのでしょうか!!


というわけで、どうぞご覧ください。




誰も知らない真実へ

 

 

 

 

「それでね桜さん!!」

「お前はほんとに永遠に話題が尽きないな…」

「えへへ」

「褒めてねーからな?」

 

 

とある秋の日。

 

 

今日も俺は穂むらで作曲作業をしていた。2年前…そう、もう2年も前の話になるんだが、穂乃果を好きだと自覚したあの日から、それはもう何も変わらず今日まで過ごしてきた。

 

 

μ'sのメンバーだったやつらは今や全員大学生。しかも穂乃果以外のやつらはみんな揃って彼氏持ちになっていた。穂乃果は何も言わないが、何かしら思うところもあるだろう。

 

 

穂乃果は大学でも人気者らしいし(南と園田からの情報)、色々不安なものは不安だ。

 

 

穂乃果は幸せになってほしいし、してやりたい。

 

 

だが、同時に俺も幸せになるのは、許されないと思う。

 

 

「ねぇ、桜さん聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。2%くらい」

「少ない!!」

「おお、少ないとわかったのか。偉いぞ」

「もうっ馬鹿にして!!穂乃果だって今は大学生なんだよ?!」

「音大の推薦枠でな。勉強頑張ったわけじゃないだろ?」

「…………………はい」

「なら胸を張るな」

 

 

絢瀬、東條、矢澤の3人は仲良く同じ大学に行っているが、穂乃果達はそうではない。皆目指す場所が違えば行き先も変わってくるものだ。園田は矢澤達と同じ大学の文学部へ。南はファッション系の学部を持つ芸術大学へ。そして穂乃果は、スクールアイドルを卒業した後もまだ歌いたいと言って音大への進学を決めた。

 

 

ちなみに、西木野は当然のように国立大学の医学部に。小泉は管理栄養士になるべく私立大学に。星空と滞嶺は一緒にスポーツ系の大学へ行ったそうだ。こうなると国立大に行った矢澤がやたら異端な感じがするな…あいつ頭悪かったはずなんだが。茜のおかげなんだろうか。すげーな茜。

 

 

「つーか喋ってばっかいないで勉強しろ勉強。もしくは練習」

「うぅ…勉強はしたくない…」

「学生の風上にもおけねーこと言いやがって。それならピアノの練習でもするか?」

「もう十分したじゃん!!去年も評価は「優」だったんだよ?!桜さんのスパルタのせいで!!」

「悪いことみたいに言うな」

 

 

音大生はだいたい何かしらの楽器演奏の授業を取らされることが多い。穂乃果も同じだったんだが、当然こいつに楽器演奏経験があるわけなく。入学早々に俺に泣きついてきたからとりあえずピアノを教えてやった。一通り弾き方を叩き込んであとは感性でなんとかしろ、と言っておいたら最高評価を取ってきた。まあこいつ音楽センスは良いからな。

 

 

「俺は基礎を教えただけだろ」

「基礎…あれが基礎…!!」

「震えんな」

「あんなのピアノ初心者がやることじゃないよ!!ショパンのエチュード全部弾けるようになっちゃったよ!!」

「なんだお前、エチュードって練習曲のことだぞ。弾けなくてどうする」

「あれは練習するのに使う曲じゃなかったよ絶対!!」

「どんな曲でも練習に使おうと思えば使えるさ」

「それは桜さんだからだよ!」

 

 

そんなわけない。気の持ちようだそんなもん。

 

 

「バカなことを言ってないで勉強はしておけよ。前期も試験前にひぃひぃ言ってたじゃねーか」

「まだ後期はじまったばかりだもーん」

「あっそ。後期の声楽はミサやってんだっけ?」

「うん!聖歌隊みたいでかっこいいよね!!」

「ヴィクトリアのGloria歌ってみろ。ソプラノでいいから」

「えっまだ覚えてないんだけど?!」

「この前聴かせただろ。覚えろよ」

「一回で覚えられないよ!!」

 

 

文句ばっかり言いやがってこいつ。

 

 

「…っと、そろそろ天童さんと打ち合わせだ。行かねーと」

「えーっ」

「えーっじゃねーよ。ギリギリまで居てやったんだから感謝しろ」

「えっ…ギリギリまで…私の側に…」

「………………何わけわかんねーこと言ってんだバーカ。じゃーな」

 

 

昼過ぎからライブの打ち合わせに行かなければならないから、いい加減出発するとしよう。なんか穂乃果が顔を赤くして勘のいいことを言いやがったがはぐらかしておく。そろそろ気付かれてもおかしくない。

 

 

…本当は気づいてんじゃねーだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?また何の進展もないままなわけだ?」

「マジで腹立つんでその顔ひっぺがしていいっすか」

「待ってー待ってー今顔の皮を剥がれたら希ちゃんがショックで立ち直れなくなる」

「今じゃなくてもそうなるでしょう」

「わかっててやると言うのかね君は!!アーッやめなさい顔を掴むなぁ!!」

「元気だねぇ」

「茜は見てないで助けてぇ?!」

「やですよ。巻き込み事故なんて笑えないじゃないですか」

「くっそー!俺のために命捧げるヤツとかおらんのか!!」

「東條がいるじゃないっすか」

「馬鹿野郎!!希ちゃんの命は俺が守る!!」

 

 

で、打ち合わせを終えたらすぐこれだ。

 

 

俺が穂乃果を気にし始めたことは天童さんには即バレた。あと松下さん。あの人心読めるとか言ってたからまぁそこは不思議じゃないが。

 

 

でも知り合いの天才達は誰も驚かなかった。むしろ「あぁ、やっとか」って感じのリアクションしやがった。湯川以外。なんなんだお前ら。

 

 

「でも本当に何も進まないよね君ら」

「やかましい10年くらい何も進まなかった奴が」

「ぐうの音も出ない」

「じゃあ半年くらいで一気に距離を詰めた俺様には発言権あるよな!!」

「ないです」

「何でぇ?!」

 

 

天童さんはただただうざい。相変わらず四六時中変なテンションだ。酒でも飲んでんのかこの人。

 

 

「でも、よくもまぁお互い何も動かないでいられるね」

「お前が言うか」

「僕とにこちゃんは好き好きオーラ全開だったし」

「今でもだろ」

「照れる」

「腹立つな…」

「そう腹を立てるもんじゃないぜ?ほらカルシウムとりなカルシウム」

「間に合ってますんで牛乳押し付けんのやめてくれます?つか何で紙パックの牛乳なんか持ってんですか」

「こうなるのが予測できてたから…」

「予測できてたんなら避けてくださいよ」

「バッカお前、こんな面白い話避けて通るなんて愉悦部の名が廃るわ」

「廃れ」

「バッサリ!!」

 

 

ほんと人をネタにするの好きだなこいつら。天童さんに関しては自らネタに走ってる感じはあるが。

 

 

「ともかく。俺と穂乃果のことはいちいち気にしないでください。勝手になんとかするんで」

「なんとかなってないじゃん」

「やかましい」

「痛い痛い痛いでもにこちゃんのより痛くない」

「矢澤…容赦無さすぎじゃないか…?」

 

 

茜が何か言ってたから顔を掴んでやった。結構な力で掴んでるんだが矢澤より優しいだと。矢澤の握力どうなってんだ。

 

 

「ま、桜がそう言うなら手を出さないでおいてやるさ。影から見守っていてやるよ」

「見んな」

「ひぃいっ!!今お前本気で目潰ししようとしたでしょお?!危ないよ!!俺ちゃん自慢の反射神経がなかったら目がお陀仏だったよ!!」

「ちっ」

「舌打ちすな!」

「あっにこちゃんからメール来た」

「茜も茜でフリーダムだなおい!」

 

 

相変わらず天童さんはテンション高いな。

 

 

まあいい。相手していると永遠に時間が足りないし、用も済んだんだから帰るか。

 

 

そう思って席を立った時だ。

 

 

「…………あ」

「どうしたよ桜クン」

「ヘッドホン、穂むらに忘れた」

「なんだなんだ桜クン、打ち合わせ直前まで穂乃果ちゃんの顔を見に行ってたのかね?おいおい見せつけてくれるじゃねーかおいおいおいおい」

「それじゃあ俺は帰る」

「無視…だと…?」

 

 

さっきも言ったが。

 

 

相手していると永遠に時間が足りない。

 

 

日も沈んでいるし、さっさと行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、尾行すんぞ茜」

「どうしたんです」

「バカヤロウ桜を尾行するんだよ!!面白いだろ?!」

「なるほど。じゃあ僕も行きます」

「ん?にこちゃんはいいのか?」

「さっき、今日は絵里ちゃんと希ちゃんと一緒にご飯食べてくるってメール来たので」

「なるほど…ってそれ俺も今日は孤独飯ってことじゃん。へこむわ」

 

 

そしてこちら愉悦部。

 

 

なんだか面白そうだから桜を尾行することに決定。仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

結果論だけど、

 

 

 

 

 

 

 

尾行しておいて本当によかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店じまいのお手伝い中。

 

 

「あれっ、これ桜さんの…」

「どうしたの、穂乃果?」

「桜さん、ヘッドホン置いてっちゃった」

「あら。取りに戻ってくるかしら?入り口の鍵、開けておいた方がいいかも」

「わかった。閉めないでおくね」

 

 

桜さんのヘッドホンが椅子の上に置きっぱなしだった。私が変なこと言ったから気が逸れちゃったのかな?

 

 

まぁ、桜さんにもう一回会えると思うといいことかも。

 

 

「今日はお父さんもいないし、雪穂も遅くなるって言うし…片付けが大変ね」

「お父さんがいないと重いものが…よいしょっ」

 

 

今日はお父さんが珍しくいない。和菓子グランプリ?みたいなのに呼ばれて大阪に行ってるんだ。なんかすごいよね!

 

 

雪穂はライブの練習。アイドル研究部、すっごく部員が増えたから大変なんだって!なんだか嬉しくなっちゃう。

 

 

そんなことを思いながら、厨房の掃除をしている時だった。

 

 

「あっ、すみません、今日はもう閉店で…」

 

 

お店の方からお母さんの声がした。鍵閉めてなかったからお客さんが来ちゃったみたい。

 

 

お母さんが対応してるからいいやーって思ってたけど…なんだかささやき声みたいな、小さな声しか聞こえてこない。電気も消えてる。どうしたんだろう?

 

 

「お母さーん、どうし

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果っ!来ないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

厨房から顔を出した時に、見えた。

 

 

フードとマスクで顔を隠した、2人の人。

 

 

その片方が、お母さんの首にナイフを当てている…!!

 

 

「…っ」

「おっと待ちな!警察なんか呼ぶんじゃねぇぞ?」

「痛っ」

 

 

すぐに引き返そうとしたけど、相手の方が早かった。手を掴まれて強引に引き倒されて、私の首にもナイフが当てられる。

 

 

「ん?おい、こいつあれだぞ、μ'sのリーダーだ!」

「まじ?へへっいい店を襲っちまったな。()()()()()()()()()()()()()()

「いいねぇ、そっちのおばさんもまだまだイケそうだしなぁ!」

 

 

フードの人はナイフを持つ手とは逆の手でもう一本ナイフを取り出して、私の服を一気に引き裂いた。下着が露わになったけど、首元のナイフのせいで下手に動けない。

 

 

「へへへ、久しぶりだからよお…楽しませてくれよなぁ!!」

 

 

やだ、やだ、来ないで、触らないで。

 

 

恐怖で声も出なくて、震えることしかできない。

 

 

誰か、誰か、桜さん、お願い、助けて…

 

 

 

 

 

 

 

がしゃっという音がした。

 

 

空きっぱなしの入り口、その外に…桜さんが、いた。

 

 

パソコンが入った鞄を落とした音みたい。

 

 

 

 

 

 

 

「っ、桜さ

「てめ、そこを動くなよ!!動いたらこいつらがどうなるか、わかってるよなぁ?!」

 

 

フードの人が、桜さんに首元に当てたナイフを見せつける。

 

 

…けど、今は、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

桜さんの様子が、おかしい。

 

 

暗くて見えづらいけど、フードの人の言葉にまるで反応していない。そもそも、鞄を落とした時から全く動いていないような。

 

 

何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に、桜さんの目が険しくなった。

 

 

桜さんは突然右手をコートの中に突っ込んで、一気に振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぎゃあああああああああああ?!?!?!」

「な、なにぃ?!」

 

 

私にナイフを当てている方のフードの人が、不意にナイフから手を離してのけぞった。落としたナイフが脇腹をかすって血が出たけど、今はそれどころじゃない。

 

 

フードの人の…目に、()()()()()()()()()…?!

 

 

「ぐぎゃあっ?!」

 

 

もう1人の方からも声がして、はっとしてそちらを見てみると、いつのまにか近づいていた桜さんがもう1人のフードの人の目にハサミを突き刺しているところだった。

 

 

「ひぃ…っ、さ、桜さん?!」

「あがっ、ひぃ!や、やめっ

 

 

それだけじゃない。2人の目にメスやハサミを突き刺した後は、コートの中からナイフやカッターを取り出して腕や足を切り裂いていく。

 

 

「さ、桜さん!何してるの?!」

 

 

桜さんに声をかけても、桜さんは答えない。やっぱりどこか虚ろで、私の声が聞こえてないみたい。

 

 

「あ、ああ、やめ、やめてくれぇ…し、死ぬ、殺される…」

「……………………………死……………殺し…………っ」

 

 

桜さんは恐ろしい言葉にだけ反応して動きを止めた。その目は、視力を失って這いずるフードの人たちじゃなくて、私たちには見えない何かを見ている。

 

 

「…………殺、殺し…………そう、そうだ、殺さなければ。殺さなければ、殺さなければ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!!」

 

 

桜さんが、次にコートの内側から取り出したのは、鈍く光る…鉈と、小さいノコギリ。

 

 

何でそんなもの持って…って思ったけど、両手に持ったそれを容赦なく振りかぶる桜さんを見て、咄嗟に体が動いた。

 

 

「だめぇっ!!」

 

 

桜さんに正面から突進して止める。桜さんの手から離れた鉈が腕に当たって激痛が走ったけど、そんなことは気にしてられない。

 

 

「やめてっ、もう大丈夫だから!それ以上はだめ、やめて、桜さん!!」

「………さ、くら………………?」

 

 

自分の名前に反応したのか、桜さんがついに私を見た。

 

 

そして………涙を流して、

 

 

「あ、あああ…そんな、違う、俺は…そんな、そんなつもりじゃ…………」

「え、桜さん…?桜さん、どうしたの?!しっかりして!!」

 

 

突然、桜さんは膝から崩れ落ちた。何とか受け止めたけど、気を失ってるみたい。

 

 

「お、おいおい何だこれは?!一体今の一瞬で何がどうなって…!茜、とりあえず電気つけろ!!」

「了解です」

「あ、茜くん、天童さん!桜さんが、桜さんが…!!」

「わかったわかった落ち着け!いやまったくわからんが!!つか君怪我してるじゃねぇか、手当て手当て!すんませんそこにいるのお母さんですよね?!穂乃果ちゃん頼みます!」

「天童さん、この不審者なんです?」

「知るかほっとけ!!怖いくらい的確に腱をぶった斬られてるからロクに動けねーよどうせ…ってうわっなんじゃこの顔!!ホラー映画か?!目から血ッ!!」

「桜さんは、桜さんは大丈夫なんですか?!」

「穂乃果ちょっと大人しくしなさい…!」

「とりあえず救急車呼びました。桜は外傷は無さそうですけど」

「多分大丈夫だ!病院には連れてくけどな!!」

「そんなっ、桜さん、桜さん!!」

「わーかったわかったってば!!藤牧君呼ぶから!!彼がいればだいたいなんとかなるから!!」

 

 

何故か天童さんと茜くんが来て、色々手配とかしてくれた。すぐに救急車が来て、桜さんも連れていかれた。私も怪我していたから桜さんが乗った救急車に同乗して、一緒に病院に向かった。

 

 

ずっと桜さんの手を握りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…桜、精神的なショックで」

「そんなに精神不安定だったなんてな…病院に通ってるのは知ってたが、まさか精神科に定期的にお世話になってるとは」

 

 

翌朝、僕と天童さんも西木野総合病院に行ってして桜の容態を聞いた。穂乃果ちゃんも一緒に。今真姫ちゃんのお父さんが説明してくれてるけど、精神的なショックで意識を失ってるらしい。

 

 

そもそも桜はずっとここの精神科に通ってたんだって。知らなかった。

 

 

「…私も、知らなかった…」

「まあ穂乃果ちゃんが桜と会う場所って限られてるしね」

「こら茜、追い討ちかけんな。今穂乃果ちゃんは知らなかったことに対して傷ついておられる」

「そう言われましても」

 

 

知らないものは仕方ないよねって話なんだけど。

 

 

「身体機能には問題はない。本日中には目を覚ますだろう」

「…何でまっきーは説明する側に立ってんの」

「私は医者だぞ?本来はこちら側だ」

 

 

ちなみにまっきーもいるよ。そういえば天童さんが呼ぶって言ってたね。診察する側で呼んだんだね。

 

 

「同時に運び込まれた強盗未遂犯の処置も完了した。視力だけはどうしようもなかったな、完全に網膜まで貫かれていた」

「まあいいんじゃない。犯罪者だし」

「そういうわけにもいかないな。患者は患者だ、救える限りを尽くす。まぁ、本気を出せば視力も戻せるんだが…そこは贖罪も兼ねて背負っていただこう」

「足動かないとか手が動かないとかに比べてキツくない?」

「罪に相当する罰が必要だろう?」

 

 

相変わらず治療に命かけてるけど、意外とまっきーも怒ってるのかなこれ。

 

 

「私、桜さんのこと何も知らなかった…」

「そう落ち込むなよ。意外と他人のことなんて、意外と知らないものさ」

「でもっ」

「そう興奮しないの。傷に響くよ」

 

 

穂乃果ちゃんも色々あって不安定になってるのかな。なってそう。

 

 

「しかし…俺でもわからなかったことだぞ?どんな細工をして隠してたんだか」

「そこは不思議なところだな。天童氏ですら見抜けたかった事情だったわけだろう?」

「まああんまり未来予測しなくなったとはいえ、こんなことになるとは全く思わなかったな…」

「思ってなかったんですか」

「思ってなかったわ!!」

「知ってて尾行したのかと」

「こらこら茜くんよ、尾行してたことを言うんじゃない」

 

 

確かに天童さんの目をかい潜るってなかなかのことだよね。まっきーとか湯川君のことは読めないって言ってたけど、桜とは付き合いも長いしそんなことないはずだ。

 

 

一体何なんだろうね。

 

 

「そもそも何が原因の精神疾患なのだろうな。先生、ちょっとカルテを失礼」

「人のカルテを勝手にみるんじゃないよ」

「何度も言っているだろう。私は本来こちら側の人間だ」

 

 

真姫ちゃんのお父さんからカルテを受け取るまっきー。君担当医とかじゃないでしょうに。個人情報だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………っ?!これは?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まっきーがものすごく珍しく驚いた顔をしてカルテを見ている。っていうかまっきーが驚いた顔初めてみたんだけど。

 

 

どうしたの。

 

 

「ま、まさか…?!先生、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「おいおい、一体どうしたんだ。何が書いてるんだ?」

 

 

手も声も震わせたまっきーが、天童さんを無視して真姫ちゃんのお父さんにこう尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、彼は…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

僕も、天童さんも、穂乃果ちゃんさえも。

 

 

何言ってるのか理解できなかった。

 

 

何それ。

 

 

一体どういうこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃーん!見て見て、四葉のクローバー見つけたよ!」

「おっ、すごいな。今日はいいことあるかもな」

「えへへ」

 

 

遠い、昔の夢を見た。

 

 

妹と一緒に、河川敷の草むらで遊んでいる時の夢。

 

 

懐かしい、しかしずっと見続けていた夢のひとつ。

 

 

「たくさん見つけたから、お兄ちゃんにも分けてあげるね!」

「いいのか?」

「うん!お兄ちゃん大好きだから」

「ははっ、ありがとう。俺も今日はいいことあるかも」

 

 

もう二度と来ない、暖かい日々の記憶だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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誰も知らない、過去の記憶だ。

 

 

 





最後まで読んでいただきありがとうございます。

さて、色んな伏線をばらまいた水橋君、その真実がついに明らかになります。次回は水橋君の過去話となります。
実は今まで後書きで「桜くん」とはほとんど書かなかったのはこのためです。本名が桜じゃないので、名字で呼んでいました。
水橋君の過去、何があったのでしょう?
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