笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回から3人もの方にお気に入りしていただきました!!ありがとうございます!!まだ終わるなと…そういう訴えなのでしょうか!頑張ります!!笑
さて今回は…もちろん前回の続きです。バッキバキに折れた水橋君と皆様(と私)の心を取り戻すお話です!!
というわけで、どうぞご覧ください。
桜…いや暦?めんどくさいから桜でいいや。とにかく桜の過去の事件のことは真姫ちゃんのお父さんが話してくれた。結構詳しく話を聞いてたらしい。
ちゃんとその話を覚えてるあたり賢いね。さすがお医者さん。
「そんな…そんなことが…」
「流石に酷じゃねぇか?!なんつー毒親だっつーの!虐待の挙句近親相姦とはな!!くそっ俺がその場にいたらあらゆる手段で抹殺してやったのに…!」
「天童さん落ち着いて」
「その通りだ天童氏。過去を嘆いても何も変わらない。私たちが今できることを考えるべきだ」
「あーちくしょうわかってらぁ!!くっそ…俺の生い立ちなんて生温い話だったな!!」
「それはベクトルが全然違うんでなんとも言えないですけど」
穂乃果ちゃんは見るからに絶望って感じの顔だし、天童さんはブチ切れてた。珍しいね天童さんがキレるの。希ちゃんがナンパされるときくらいしかキレないからね天童さん。
「…私、会いに行ってくる」
「やめときな」
「っ、なんで?!」
「今の不安定な状態を、多分桜は見られたくないと思うよ。だから今君が会いに行っても逆効果だよ。しかも今の君は桜が全力で隠してた過去を聞いちゃってるんだし。やめといた方がいいよ」
穂乃果ちゃんが決心したような顔で立ち上がったけど、腕を引いて引き留めた。心が壊れてる時はそっとしておかなきゃいけない。僕がメンタルブレイクした時はにこちゃんが来てくれたけど、それはメンタルブレイクしてからだいぶ時間が経った後だったし。
自分に折り合いをつける時間が必要だよ。
「…………うん、そうだよね」
「わかってくれたなら
「でも、ごめん!私やっぱり桜さんを一人にしておけない!!」
「えっ」
わかってくれたかと思ったらわかってくれてなかった。なんでやねん。いや穂乃果ちゃんってそういう子だったわ。ちなみに引き留めてた手は力づくで振り解かれた。悲しみ。
「えええ…もう、そんなん追いかけるしかないじゃん…」
「………いや、茜。俺たちはちょっとやることがある」
「何ですか」
「とりあえず至急、湯川君と明を呼ぶ。
「違和感なんてありました?」
「…藤牧君、君も手伝ってくれ。時間が無い。桜が穂乃果ちゃんと会って、話をして、少し心が安定するタイミングができるはずだ。それまでに間に合わせたい」
「聞いてます?」
「もちろん協力するとも。他でも無い、貴方の頼みなら」
「聞いてなくない?」
追いかけようと思ったら今度は僕が天童さんには掴まれた。僕は力づくじゃ振り解けません。ぴえん。
あと僕をスルーするのやめて。μ'sにいた頃以来だよ。嘘だわ今でも元μ'sメンバーにはスルーされがちだったわ。泣ける。
っていうか、桜の不幸なお話しかなかったと思うけど、なんか変なところあったかな。
窓の外を見ていた。
今日も変わらず随分と日が昇ってからの起床だった。朝日は見たくないから全然いいんだが。
目が覚めたら病室にいたから、気を失っている間に運ばれたんだろう。…あまりよく覚えていないけど。
こんなことがあったからか、久しぶりに鮮明にあの日の夢を見た。夢なら記憶に残らないでほしいものだけどな、バッチリ見た夢を覚えている。
俺は穂乃果を守れたのか、守れなかったのか…あの日のように手にかけてしまったのか。どうなったのかは全くわからない。知る勇気もない。
結局人殺しは人殺しなんだと再認識するだけだ。
そんなつもりはなかったのに、なんて言い訳は失われた命の前では意味がないんだから。
ほとんど虚無みたいな心持ちで窓の外を見ていたら、突然結構な勢いで扉が開く音が聞こえた。チラッと見てみると、息を切らした穂乃果がそこにいた。
…右腕に包帯を巻いている。
まあ、きっと俺がやったのだろう。
本当に、嫌になる。
「…はぁ、はぁ…」
「…病院で走んなよ」
「桜さん…桜さん、で、いいよね…?」
一瞬答えに困った。
そういう聞き方をするということは、ああ、つまり、そうか。
「…違う」
「…………」
「聞いたんだろ、西木野先生から。俺は水橋暦だ、桜じゃない」
変な諦めがあった。わざわざ取り繕うこともなく、事実だけを伝える。
まあ、そうだよな。どれだけ必死に隠しても、秘密なんて隠し通せるものじゃない。今まで天才野郎たちの例を散々見てきただろ、そんなの。
わかってたけど、隠したかったよ。
穂乃果には、知らないままでいて欲しかった。
「俺の容態を聞いた時か何かに聞いたんだろ。何があったか、とかも聞いたのか?」
「…………っ」
「聞いたんだな。いいさ、別に。聞こうが聞かまいが、俺が人殺しなのは変わらない」
「そんなっ」
「そうなんだよ。…もう帰りな、穂乃果。俺みたいなのにこれ以上関わるもんじゃない」
穂乃果のためというより、俺のための提案だ。これ以上は、俺が辛い。穂乃果がそばにいると、幸せになれそうな気がしてしまう。
希望なんて捨てさせてくれ。
もういいんだ。桜を殺してしまったあの日から、もう俺の人生はダメなんだ。
「さあ、早く帰りな。やること沢山あるだろ。大学の講義の勉強とかさ」
「…やだ」
「………」
「今は、桜さんの側にいたい」
「だから俺は桜じゃ
「私にとっては桜さんだから。…だから、桜さんって呼ばせて」
穂乃果は病室にある面会用の椅子に腰掛けて、俺の袖をぎゅっと握った。
…そうまでされると帰らせにくいだろ、バカ。
キレたり怒鳴ったりする元気もないんだよ。
俺が辛くなるだけだというのに。
「…はぁ。別にそこに居るのは止めねーけど、何のつもりなんだ。何かここにいる理由でもあるのかよ」
「わかんない」
「はぁ?」
「今は…桜さんの側にいなきゃいけないと思ったの。桜さんが、どこか遠くに行っちゃう気がして」
「………」
「わかんかいよ、どうしたらいいかなんて。でも、桜さんの側にいなきゃって、一人にしちゃいけないって、それだけ思ったの」
まあ、正直な話、図星だった。
退院したらすぐにでも遠く離れたどこかに引っ越そうかと思っていた。ここ東京でもなく、生まれ育った名古屋でもなく…和歌山とかなら静かに暮らせるだろうか。そんなことを考えていた。
まったく穂乃果の第六感は洒落にならない。
「…俺に刺されても文句言うなよ」
「桜さんは私を刺したりしないもん」
「わかんねーだろ。その右腕はなんなんだよ。俺がやったんじゃないのか」
「違うよ。私が桜さんを止めようとしたときに私が怪我したの」
「じゃあ俺のせいだろ」
「違うよ」
「違わねーだろ」
「違うもん!」
急に穂乃果の声がでかくなった。俯いた穂乃果の顔から、ベッドのシーツに雫が落ちた。
「違うもん、桜さんは私を、私とお母さんを助けてくれたんだもん!!私は右腕と、あとお腹をちょっと怪我したけど、お母さんは無傷だった。悪い人たちも怪我させただけで殺したりはしてなかったもん!!桜さんは、桜さんは命の恩人なんだよ。昔に何があったって、それは変わらないの!!」
「バカ落ち着け、ここ病院だぞ」
泣いて声を震わせながら、でも詰まったりせず全部言い切った。
…今回は誰も殺さなかったのか。
一応、練習した甲斐があったのかもしれないな。
「…でもな、次はどうかわからねーぞ。気が付いたら微塵切りかもしれない。お前じゃなくて、園田とか南とかが俺にバラバラにされるかもしれない。それでも俺の側にいるってか?」
「ならないよ」
「あ?」
「そんなことには、ならない。私がずっと桜さんを見守るから」
「……………ずっと?」
「ずっと」
泣き顔で真っ直ぐ俺を見つめる穂乃果は大真面目にそう言っていた。いや、ずっとってお前。どういうつもりで言ってんだ。
いやそんなことより。
「…それはやめておけよ。俺は、愛する…妹まで、殺したんだぞ」
「それは
「事故だったって?そうかもな、あれは事故だったのかもしれない。でも、あの時、確かに俺は、この手で…っ!!」
「桜さんっ!!」
あの日の光景が頭に浮かびそうになった瞬間、穂乃果が抱きついてきた。
何故だか不思議と落ち着く…いや、不思議ではないのか。悲しいことがあったとき、辛いことがあったとき、よく穂乃果には今と同じようにハグしていたわけだしな。
逆にハグされれば落ち着くものなのかもしれない。まあ、ちょっとパワーが強すぎる気がするが。
…だが、甘えてハグしっぱなしというわけにもいかない。一旦穂乃果の肩を掴んで引き離す。
「すまん、ありがとう。だが、現実は変わらない…俺の罪は、消えないよ」
「桜、さん…」
そう、どれだけ慰められても、過去は変わらない。やってしまったことは取り返しがつかない。
桜を殺してしまったことだけは、変わらないんだ。
「だから
「いや、そうとも限らない」
急に開きっぱなしの扉の外から声が聞こえた。外にいるのは天童さん、茜、藤牧、湯川、松下さん。…今話しかけてきたのは藤牧だろうが、何でこいつめちゃくちゃヘロヘロになってんだ?
いや、そんなことよりだ。
「…どういうことだよ。つかお前らも話聞いたのか」
「ああ、すまないな。…私は、医者側なのでね、カルテを見たときに、君の本名が、桜ではないことに、気がついてしまったのさ」
「…何でお前そんなに消耗してんだ」
「それを今から説明しよう」
何なんだよ。穂乃果も何が何だかわからないみてーな顔しやがって。
「さあ、説明を…天童氏、頼んだ」
「俺が説明すんのかーい。まあいいか…桜、端的に言うと過去の事件の記録を丸ごと見せてもらった」
「…どうやったんすか」
「はっはっはっそのための湯川君よ。警視庁のデータを丸ごと拝借してもらったのさ」
「警視庁のデータを丸ごと拝借してもらった。データの抜き取りならさほど難しくもない」
「…………いや、それハッキングじゃねーんですか」
「バッカお前、俺が今更犯罪に躊躇するとでも?」
「躊躇して欲しいんですけど」
何でこの人は堂々と犯罪を犯せるんだ。
「で、抜き取ったデータを明に読んでもらって、検死の内容を藤牧君に確認してもらったのさ」
「ええ、文章を読むことなら随一ですから。…そうしたら、天童君の言う通り、不自然な部分があったんです」
「…不自然な部分?」
松下さんは文章や言葉からその真意を抜き取れる、心理と語学の天才だ。あと嘘をつく人じゃない。
天童さんの言葉なら怪しいが、松下さんが言うことは割と信じていいはずだ。
「ええ、すべての報告書に目を通しましたし、隠し事がないかも確認したうえでお伝えします。
「…どういうことっすか」
「妹殺しの部分には全く触れられていないということですよ」
「こら明、どストレートに妹殺しとか言うんじゃない」
「言うべきだと思ったので言っているのですよ」
別に起訴内容なんてどうだっていいんだが。事実は変わらないわけだしな。
「で、検死の内容についてもあまり妹さんの内容には触れられていなかったそうです」
「…判別がつかなかったんだろ。俺自身も、頭と目くらいしかわからなかったんだから」
「ええ、そうかもしれません。ですが実際どんな状況だったのかわからないのも事実です」
まあ、検死の内容に状況証拠の記載とか無いだろうしな。
「で?それが何なんです。まさか過去に行って見てきたとか言いませんよね?」
「ふふっ」
「?」
「
「…は?」
「
「……………………………な、何??」
「今疲れているのはその弊害だ、身体への負荷が非常に高い。茜は行って帰ってこれないレベルだ」
「その情報いらなくない?」
何言ってんだこいつ?
「な、は?いや、何を言って…」
「事実だから仕方がないだろう?」
「なんっ…いや、それが事実なら、過去に行って桜を救えたんじゃないのかよ…」
「それはできない。人の命に関わることは変えられない。一部例外を除き、一度決まった運命は変えられない」
全然まったく信じられないことを言い始めた。過去に遡って?そんなことができるのか?
いや湯川ならやりかねないが…。
「…まあいい。仮にそれが本当だったとして、何のためにわざわざ過去まで行ったんだ」
「色々理由はあるが、主に確実な確認のためだな」
「何の確認だよ」
「死体のだよ。当然だろう?」
「…バラバラにしたって話を聞いた上で、わざわざあの死体を見に行ったのかよ。狂ってんのか?」
「もちろんだとも。私は自身が異端であることを重々承知している」
「…………」
認めんなよ。つっこみにくいだろ。
「で?何か収穫はあったのかよ」
「あったさ。天童氏の予測が当たっていたな」
「具体的に何なんだよ」
「死体を確認したところ、確かに二人分の死体があった。私でなければ見分けられないほどだったがな。骨格の違いなんかもヒントにはなったが、もっと決定的な違いがあった」
「だから何なんだよ」
勿体つけるなよ。
「一番決定的だったのは肉の切断面と目だ。僅かながら切断面の出血量が少ない肉片が約半数見られ、4つのうち2つの目に鬱血の痕跡が見られた」
「…つまり何だよ」
「わからないか?ならば結論を言おうか」
わからないから聞いてるんだ。
「
「………………なっ、」
何を言ってるんだ?
「まあつまり、妹ちゃんを殺したのはお前じゃなかったってことさ」
「…だから何なんだ。桜を助けられなかったことに変わりはないだろ。むしろ間に合ってなかったわけだろ」
「自ら手をかけるより遥かにいいと思うのだがな。それにもう一つ偶然発見したのだが、
「………はっ、し、死体…?うちに?な、何で…」
「自宅の庭に埋められていたよ。首の骨の損傷具合からしておそらく絞殺。まあ…父親がやったのだろうな」
待ってくれ。理解が追いつかない。
つまり、母さんも桜も、あのクソ野郎に殺されたってことか…?
「そうなると、水橋氏。君の行動のストーリーが変わってくる」
頭が追いつかないまま、藤牧はどんどん次の言葉を放ってくる。
「君は母と妹を殺した父に見事復讐を果たした。そう考えると、多少は気が楽になるんじゃないか」
言っていることを理解するのに随分と時間がかかった。
俺は、桜を殺してない。
俺が殺したんじゃなかった…?
「まあ父親を殺したことに変わりないんだが…ま、いいだろ。クソを殺すのはノーカンで」
「天童さん時々サイコパスですよね」
「バカヤロウ常にサイコパスだわ。…あれ?それでいいのか?」
「いや知りませんけど」
クソ親父は母さんまで殺していた。桜も殺していた。
…仇討ちできたってことで、いいのだろうか。
「まあとりあえず、過去の精算はもう十分だろ。あとは自分に折り合いをつけれるかどうか…ってわけで俺らは退散すんぞー。あとは穂乃果ちゃんにお任せだ」
「僕ついてきた意味ありました?」
「マスコットって必要だろ?」
「後ろから刺されても文句言わないでくださいね」
「怖えよ!!」
天才たちは俺と穂乃果を残してぞろぞろ帰っていってしまった。
病室には茫然としている俺と穂乃果だけが残された。
「…えっと、どういうこと?」
「…………どうもしない。ただ俺が殺した人数が減っただけだ、人を殺したことは変わらない」
そうだ、誤魔化されてはいけない。
確かに桜は殺していなかったかもしれない。母さんの仇を討ったかもしれない。それでも、いかにクソ野郎だったとしても、あいつは人だった。人を殺したことに変わりはない。
犯罪者なんだ。
人並みの幸せを願っちゃいけない。
「桜さん」
「なんだよ」
「今、桜さん幸せになっちゃいけないって考えてるでしょ」
「………何でわかるんだよ」
「そういう顔してた」
エスパーかお前は。
「桜さん、幸せになっちゃダメなんてことは、ないんだよ。間違えたって、失敗したって、やり直していいんだから。私もたくさん失敗して、また立ち上がってきたから今の私がいるんだよ」
「…お前と俺は間違いの規模が違うだろ」
「でも間違えたことだけは変わらない。そうだよね?だったら、それを直すためのパワーが違うだけ」
それがどれだけ大きな差なのかわかっているのか。
手を握って訴えてくる穂乃果からは、絶対大丈夫だという自信しか感じられない。
「それに…」
「なんだ」
「…わ、私は、桜さんがいてくれないと、幸せになんてなれないよ」
穂乃果は顔を赤くして、目を逸らしながらそんなことを言った。
…………それ今言うことか?
「…おい穂乃
「だから!」
今度は赤い顔のまま真っ直ぐこっちを見てきた。
「だから…桜さん、また立ち上がって」
「無理だよ」
「無理じゃないよ。私と桜さんが一緒なら、何度だって立ち上がれる。私が辛い時は桜さんが抱きしめてくれた。それだけで私はまた頑張ろって思えた。だから、今度は私の番」
そう言って、穂乃果は俺に抱きついた。さっきみたいに力強い感じではなくて、もっと優しい抱きしめ方だ。
俺が穂乃果にやっていたのと同じ感じ。
今度はさっきよりも遥かに安らげる、不思議な力があった。
「大丈夫だよ」
耳元で囁き声が聞こえた。
「桜さんは沢山私を助けてくれた。すごく優しい良い人だから。私は知ってるから」
優しい声が、塞ぎ込んでいた心の奥底まで届いた気がした。
少し迷ったが、俺も穂乃果の背に手を回すことにした。お互い抱き合う形になる。穂乃果が今そばにいる、側にいてくれる。それだけで満ち足りるような気がした。
「ゆっくりでいいよ。焦らなくていいよ。だけどまた一緒に歩きたいから、もう一回立ち上がろうよ」
ああ、桜。
不甲斐ない兄ちゃんでごめんな。
助けられなくてごめんな。
勝手に名前を使った上に、こんなに情けない姿を見せてごめんな。
だけど、もう心配しないでくれ。
「桜さん…ファイトだよ」
俺も、あの日の呪いから、やっと解放されそうだよ。
きっともう、顔を上げて前を向いて歩けるよ。
「ああ…ああ、穂乃果が居てくれるなら…俺も、頑張るよ…」
だから、安心して眠ってくれ、桜。
『うん、おやすみ、お兄ちゃん!』
そんな声が聞こえた気がした。
そうだ、桜。兄ちゃん、好きな人ができたんだ。
きっと桜も仲良くなれると思うよ。
数日後。
「よし。これで
「…改名って意外とあっさりできるものなんすね」
「そんなことないぜ?本当は一年分くらいの『こっちが本名だと証明する資料』をコツコツ集めなきゃならないんだ。郵便の宛名とかな。お前はそれが10年分くらいあったから楽だっただけだ」
本名の水橋暦って名前を改めて使い始めようかと思ったら、天童さんが「もう面倒だから本名を桜にしちまえ!!」っつって諸々届出をして本当に改名してしまった。まあ…今更暦って呼ばれても返事できそうにないし、いいか。
「これで桜さんって呼び続けられるね!」
「別に暦さんでも桜さんでも構わねーんだがな」
「私にとっては桜さんは桜さんだもん!」
「あぁ〜目の前の痴話喧嘩のせいで砂糖になるぅ〜」
「どうぞ」
「もうちょい温情をくれてもいいのではないかね」
穂乃果も事あるごとについてきた。大学の講義がなければ毎回ついてくる。犬かよ。昔っから犬っぽいなこいつ。
天童さんは東條に会いに行くっつってさっさと退散してしまった。まったく自分のことを棚に上げて人を砂糖呼ばわりしやがって。
「ねぇ、桜さん。ちょっと音ノ木坂に寄って行こうよ」
「別にいいが、なんでだ?」
「なんとなく!」
「あっ、おい」
返事しながら走って先に行ってしまう穂乃果。本当に元気だな。
仕方ないから俺も走って追いかけ、追いついたのは音ノ木坂の前に着いた時だった。要するに追いつけなかった。本当に足速いなこいつ。
平日の夕方だからか、あちこちに部活動をしている生徒たちが見える。屋上にも沢山の生徒がいるのが見えた。
「わぁっ頑張ってるね!」
「ああ。人数も随分増えたもんだな」
「雪穂が大半だーって言ってたよ」
「そりゃあんだけ人数がいれば大変だろうよ。しかも3年生は雪穂と亜里沙と奏の3人しかいないわけだろ?」
「そうだよねぇ。私たちの時より大変そう」
「スクールアイドルのレベルも人数も上がってきているしな。今年のラブライブ参加グループ数は5,000組くらいらしいし」
無論、屋上で練習しているのはスクールアイドルの面々だ。アイドル研究部だっけな。部員に囲まれる雪穂が辛うじて見える。
「…いろんなことがあったね」
「そうだな」
「初めて桜さんに会った時には、こんな風になるなんて全然思ってなかった」
「そりゃそうだろう」
「スクールアイドルをやろうって思わなかったら、多分こうして桜さんの隣にいなかったし、桜さんと今ほど仲良くなれなかったかもしれないし」
「…そうかもな。何をするにしても行き当たりばったりだが、不思議とそれがうまくいく。それが穂乃果だ」
「それ褒めてる?」
「褒めてるさ」
もう穂乃果が卒業して随分経った校舎を見る。今の穂乃果を育てた場所だ。
「穂乃果」
「ん?」
「待たせて悪かったな」
「え?何が?」
だから、この校舎の前で約束しよう。穂乃果を幸せにすると。
「穂乃果。俺はお前が好きだ。一緒に幸せになろう」
「…!!うん、私も好き!!桜さんが大好き!!!」
「うおっ?!」
一瞬呆けた穂乃果が、すぐにとびきりの笑顔になって飛びついてきて、その勢いのままキスしてきた。本当に勢いでなんでもしてくるなこいつ。
顔を離した穂乃果は満面の笑みを俺に向けたあと、また抱きついてきた。
ほんとに可愛くて…太陽みたいなやつだな。
だから好きなんだが。
桜、見ててくれ。
兄ちゃん、お前の分まで幸せになるからな。
余談だが。
「ただいまー」
「あっ、雪穂おかえり!」
「ん、お疲れさん」
「…うわぁ」
「…なんだよ人の顔を見るなりげんなりしやがって。失礼なやつだな」
「いや…学校の前で堂々とキスしてた二人が何事もなかったかのように一緒にいるから…」
「んなっ」
「えっ、ゆ、雪穂見てたの?!」
「私だけじゃなくてみんな見てましたー」
「ええええっ?!ちょっちょっとやだっ!何で見てるの!!」
「おまっ、お前ら練習してたんじゃ…?!」
「丁度休憩に入ったところだったの。あーまったくわざわざ学校前でイチャイチャするなんて。桜さんが入院してからすぐこんなだもんなー」
「そ、それは…まあ…」
「いいよいいよーやっとくっついたかーって感じだし」
「やっとって何?!」
バッチリ見られていたらしい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
やっと正式に桜君と呼べます…。いやぁよかったです!!桜君もなんだかちょっと穏やかになった(気がする)し!!
そして相変わらずクレイジーテクノロジーを操る湯川君…。もう彼一人でいいんじゃないかな(白目)
とにかくこれで全カップルが成立しました!!長かった…3年以上かかった…笑
まだまだ最終章もちょっとだけ続きますので、少しだけお付き合いください。
全然関係ないですが、桜ちゃんのセリフは予定に無かったのに降ってきました。