笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼
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ご覧いただきありがとうございます。

曜ちゃん誕生日おめでとう!そして明日は真姫ちゃん誕生日おめでとう!たまたまながら間の日に投稿になりました。真姫ちゃん誕生日特別編とか書きたいですが、それは彼女のお相手が見つかってからにします。来年ですね!来年まで書いてるかな!!自己満なので多分書いてます。

というわけで、どうぞご覧ください。




曰く、みんな違ってみんないい

 

 

 

カラオケを後にして、次にやってきたのはゲーセンだ。よくあるダンスゲームで勝負するらしい。僕はやらないぞ、カラオケどころじゃなく死ねる。

 

 

「次はダンス!今度は歌の時みたいに甘くないわよ!!」

「にこちゃん、そういうセリフはフラグになるから避けた方がいいよ」

「ファンタジーじゃないんだから、そんなフラグなんてないわよ」

 

 

いや、僕が言いたいのはカラオケみたいな結果になった時に恥ずかしいよって話なんだけど。まあいいか。

 

 

それよりも。

 

 

「みんなクレーンゲームやってるけど」

「やった!ぬいぐるみ取れた!」

「穂乃果ちゃんすごい!」

「あぅ、落ちちゃった…」

「かよちん、凛に任せて!」

「だから緊張感持てって言ってんでしょ!」

 

 

にこちゃんがおこである。そりゃそうだ。あと園田さんと西木野さんどこ行った。

 

 

「凛は運動は得意だけどダンスは苦手だからなぁ…」

「これ、どうやるんだろう…」

「そりゃあ踊るんでしょ」

 

 

星空さんと小泉さんは結構自信無さそうだ。とは言ってもどちらも普通に踊れてると思うけど、やればわかるんだからわざわざ言わない。

 

 

「経験ゼロの素人が挑んでまともな点数が出るわけないわ。くくく、カラオケの時は焦ったけどこれなら…!」

「にこちゃんにこちゃん声に出てる。あといつの間にこんなゲームやってたの」

「たまに茜が先に帰っちゃう時に…」

 

 

わざわざ少ないお小遣いを消費してこれやってたのかい。努力の一環なのかもしれないけど。

 

 

「別に一緒に来てもよかったのに」

「だって茜は一緒にできないじゃない。流石に申し訳ないわ」

「今更そんなことに気を使うかい。そこらへんで格ゲーとかやってるから気にしなくていいのに」

「何よ、見ててくれないの?」

「僕の行き場が無いぞ」

 

 

にこちゃん観察日記が捗るだけじゃないか。

 

 

そんなことを話していたら。

 

 

「すごーい!」

「な、何?!」

「どうかしたのかな」

 

 

ダンスゲームの方から歓声が聞こえた。星空さんがプレイしていたようで、なかなか高得点だったらしい。そうだとは思ったけど。

 

 

「何かできちゃったにゃ」

「やるじゃん」

「波浜先輩が褒めてくれた…?!」

「そりゃ褒める時は褒めるよ。あとにこちゃん目が怖い」

 

 

星空さんを褒めたらにこちゃんが殺意を向けてきた。なぜだ。

 

 

「一体何の騒ぎよ?」

「何かあったのですか?」

 

 

騒ぎに乗じて西木野さんと園田さんがひょっこり出てきた。

 

 

「どこ行ってたの君たち」

「お手洗いよ」

「そりゃ失礼。なかなか来ない場所だろうから迷子になったものかと」

「そっそんなわけないじゃないですか!」

「そ、そうよ!私たちがゲームセンターで迷うなんて…!」

「わかったわかった」

 

 

適当に言ったらまさかの図星だったようで、2人ともわたわたし始めた。うん、なんかごめん。悪気はなかったんだ。

 

 

その後もにこちゃん含めみんなでダンスゲームをやった。カラオケ同様みんな高得点で困った。しかもカラオケで点が低めの子に限ってダンスで点が高い。困った。しまった二回も困ったって言っちゃった。

 

 

 

 

 

 

「歌と踊りで決着がつかなかった以上、最後はオーラで決めるわ!」

「オーラ」

「…オーラ?」

 

 

ゲーセンを後にして更に移動した先は、秋葉原の路上。そしてみんなの手にはたくさんのチラシ。無論僕が作った。作らされた。にこちゃんに。

 

 

でもなんで僕も持ってんだ。

 

 

「アイドルとして一番必要と言っても過言ではないものよ!歌も下手、ダンスもイマイチ、でも何故か人を惹きつけるアイドルがいる!…それはすなわちオーラ!人を惹きつけてやまない何かを持っているのよ!!」

「わかります!なぜか放っておけないんです!」

「それオーラじゃなくてカリスマじゃない?」

「茜うるさい」

「ひどい」

 

 

ツッコミ入れたら一蹴された。訴訟も辞さない。

 

 

「…で、それをはかるためのこのチラシなわけだ」

「そう。オーラがあれば黙っていても人が寄ってくるもの。1時間で一番チラシを配ることができた者が、一番オーラがあるってことよ」

「今回はちょっと強引なような…」

「全部強引だったと思うけど」

「でも、面白そうだからやろうよ!」

 

 

面白そうって。まあμ'sの宣伝にもなるからいいんだけど、僕がチラシ持ってるのは何故なんだ。補充係か。

 

 

「茜は手本ね」

「そっちか」

「茜のチラシ配りはすごいから」

「うれしくない…」

 

 

そんなにすごいことしたことないし、なんか嬉しくない。ごめんねにこちゃん。

 

 

そんなわけで始まったチラシ配り。園田さんあたりが非常に困っているが、ちょっとお手伝いできない。

 

 

「ちょっとそこ行くおにーさん、スクールアイドルの耳より情報ですよ」

 

 

適当に道行く人に声をかける。捕まれば僥倖、捕まらないのがデフォルト。でも今回はすぐヒットした。3人組のお兄さん方がこっちに注目してくれた。秋葉というフィールドがいいんだろう。

 

 

「最近できたスクールアイドルのチラシですよー。初ライブ配信から僅か一週間で5万再生突破、期待の新人ですよ」

「μ's…?聞いたことないな」

「それなら1度聞いてみるべきですよ。チラシにQRコードありますんで是非。初ライブは照明監修をSound of Scarletが請け負った超豪華版ですし。ああそこのお嬢さんもどうです1枚」

 

 

大通りでチラシを配るには、まずは視界に入ってもらわなければならない。そして人の視線が向きやすい場所といえば?

 

 

僕の答えは、「人だかり」。

 

 

人が一箇所に集まっていれば、野次馬本能でちょっと寄ってくる。そこにチラシを渡していけばいい。

 

 

だから、まず行うべきは人だかりを作ることだ。できるだけ多くの人を、僕の周囲に留まらせることで、「そこにある何か」に道行く人々の意識を誘導できる。

 

 

「お嬢さんお嬢さん、チラシどうですか。ああそっちのお父さんも。お兄さんはどうですか」

 

 

知らぬ間に、僕の周りは結構な人だかりができていた。後は勝手に人が集まるから片っ端からチラシを渡していけば終わる。

 

 

「…あら、なくなっちゃった。チラシ欲しい方がいらっしゃったら、あっちでご本人たちが配ってるのでどうぞー」

 

 

というかものの数十分で無くなった。

 

 

「「「「「「はやっ?!」」」」」」

「呆れるわよねぇ…」

「どうだいにこちゃん褒めろ」

「あーすごいわねー」

「なんでそんな塩対応なの」

 

 

にこちゃんに褒めてもらおうと思ったら軽くあしらわれた。酷くないか。君の言うオーラが溢れる働きをしたじゃないか。違うの?

 

 

その後も引き続き各々がチラシ配りを続けた。僕は疲れたので日陰でくつろいでいた。数十分チラシ配りしただけでこのザマである。つらい。

 

 

園田さん以外なら誰が最速でもおかしくなかったけど、結果として一番早くチラシを完売したのは南さんだった。なんか手慣れてた気がする。おかしいな、この子たちチラシ配りの経験なんてあったのか?いやあったら園田さんもうちょいマシな対応できるよなあ。

 

 

「おかしい…、時代が変わったの?!」

「現実は非情である」

「慰めなさいよ!!」

「さっき褒めてくれなかったしなぁ」

 

 

にこちゃんが嘆いていたけど、塩対応の仕返しをしておいた。これでプラマイゼロ。

 

 

 

 

 

 

結局、誰かが特に秀でているなんてことはなかった。

 

 

高坂さんは、歌は綺麗で伸びやかであり、ダンスも動きは悪くないが、どちらも我流が過ぎる。セルフアレンジはソロ曲作る時にね。ビラまきは結構はける。元気だし、威勢がいいもんね。

 

 

園田さんは、歌は特筆するところもなく普通に上手いが、ダンスが特に上手い。なんでも日本舞踊の宗家だとか。踊りの類はお手の物ってところかな。その分ビラまきは残念。ほんとに残念。

 

 

南さんは、歌は音程の支えが足りていなくて特に語尾がブレる。単純な声質で言えば結構ファンが付きそうな声ではあるけど。ダンスは動きが柔らかくていい感じ。ビラまきが最速。

 

 

小泉さんは、歌うと結構いい声が出て、音の調子もいい。幼い頃からアイドル目指してたらしいし、にこちゃんみたいに自然と上手くなったのだろう。ダンスはちょっと硬いが悪くない。ビラまきも案外普通。

 

 

星空さんは、これがまた意外と歌が上手い。いつものにゃーにゃーボイスとは全然違う声が出る。ダンスも硬いところはあるものの点数は上位であり、ビラまきは成果はそこそこだが頑張っていた。来年もスクールアイドル続けるようであれば、おそらくこの子がリーダーだろう。でも総合で見たらみんなと大差ない。

 

 

西木野さんは、唯一カラオケで97点を叩き出した。とにかく音程の安定感が凄まじい。ピアノ奏者とはいえ、なかなかこうはいかないだろう。その分ダンスは動きが遅れ気味で、ビラまきも芳しくなかった。ツンデレだし、結構人見知りだしね。

 

 

にこちゃんは…結果として見ればほとんど平均ど真ん中だった。他のメンバーが長所短所が結構強く出るのに対して、にこちゃんは軒並み平均を叩き出す。ある意味隙のない出来であり、にこちゃんが目指したものでもあるのだろう。その分他を圧倒することは叶わなかったが。

 

 

「まあそんなところかなあ」

 

 

と、星空さんの有望性意外は包み隠さず伝えた。とにかく点数をつけたらほぼ同点だ。逆にすごい。仲良いね。

 

 

「ぐぬぬ…納得いかないわ…」

「そう言われてもね」

 

 

にこちゃんは悔しそうだけど、他のメンバーの練習時間を加味すると相当な実力だと思う。

 

 

「…で、結局どうすんの。これじゃ誰がリーダーかって一概には言えないよ」

 

 

というわけで、実は今回のメインテーマはリーダー決めだ。こんなに僅差では決めるに決められない(来年の展望はできたが)。ぶっちゃけ遊んで宣伝してきただけだ。

 

 

「ふぁー、結局みんな同じだ」

「見事にバランス取れちゃってる」

「にこ先輩もさすがです!みんなより全然練習してないのに同じ点数なんて!」

「あ、当たり前でしょ…」

「にこちゃん声が震えてるよ」

「ふんっ」

「あぼん」

 

 

星空さんに褒められて、しかし思惑通りにいかなかった故に素直に喜べないにこちゃんにツッコミ入れたら裏拳が飛んできた。痛い。

 

 

「でもどうするの?茜も言ってたけど、これじゃ決められないわよ」

「で、でも、やっぱりリーダーは上級生の方が…」

「仕方ないわねー!」

「にこちゃん立ち直り早いね」

 

 

小泉さんの視線に意気揚々と答えるにこちゃん。ついにスルースキルを打ち破ったか。

 

 

「凛もそう思うにゃ」

「私はそもそもやる気無いし」

「…あんたたちブレないわね」

「まったくだ」

 

 

やはりスルーされた。にこちゃんかわいそう。

 

 

 

 

 

「じゃあ、いいんじゃないかな。なくても」

 

 

 

 

 

え。

 

 

「「「「「「「ええ?!」」」」」」」

 

 

みんなして絶句してしまった。初めてみんなと一緒に声出した気がする。

 

 

「なくても?!」

「うん、リーダーなしでも全然平気だと思うよ。みんなそれで練習してきて、歌も歌ってきたんだし」

「しかし…!」

「そうよ、リーダーなしのグループなんて聞いたことないわよ!」

 

 

次々と噴出する異論。そうだ、流石にリーダーなし、なんていう訳にはいかない。何かの折に前面に立つ人物が必ず必要だ。

 

 

さらに。

 

 

「それだと、次の曲のセンターはどうする気だい」

 

 

センターも今回のリーダー決めの主題だったはずだ。結局センターが決まらないことには、次の曲は作れないしPVも撮れない。μ'sの活動が足踏みしてしまうわけだ。

 

 

しかし。

 

 

「それなんですけど…私、考えてみたんです。皆で歌うのはどうかなって」

「…み、みんなぁ?」

 

 

どういうこと?

 

 

「家でアイドルの動画を見て思ったんです。何か、みんなで順番で歌えたら素敵だなって。そんな曲作れないかなって!」

「な、何という…」

 

 

ものすごい斜め上の発想だ。セオリーも何もない奇策。よく思いついたね。ってかちゃんと考えてたんだね。何にも考えてないと思ってたごめん。

 

 

「順番に?」

「そう!無理かな?」

 

 

奇想天外な奇策なんだけど、

 

 

「まあ、歌は作れなくもないですが…」

「そういう歌、なくはないわね」

「ダンスはそういうの無理ですか?」

 

 

園田さんと西木野さんは乗り気なようだ。そして高坂さんの目は僕に向く。ちなみに、僕がマネージャーを始めてからは、大方の振り付けを考えるのは僕の役になっている。そういう舞台上の動きとか考えるのは慣れてるしね。

 

 

まあそれはともかく。

 

 

大変にはなるだろう。各個人にソロがあるようなものだし、各々の実力がモロに出る。おまけに一人一人を目立たせるために全員の配慮と動きの精密さが要求される。はっきり言って難度がヤバい。

 

 

でも。

 

 

「…君らならできるんじゃないかな」

 

 

そう、思ってしまった。

 

 

「じゃあ、それがいいよ!みんなが歌って、みんながセンター!」

 

 

そう言う高坂さんはとても楽しそうで、あれだけリーダーに拘ってたにこちゃんすら反論しなかった。

 

 

「仕方ないわね。ただし私のパートはかっこよくしなさいよ、茜」

「はいはい」

「よおし、そうと決まったら早速練習しよう!」

 

 

にこちゃんもむしろ楽しそうだった。でも、きっと僕も笑ってるんだろう。

 

 

次々と屋上へ向かうμ'sのメンバーを見送りつつ、一人部室で飲み物を用意しながら考える。

 

 

『またアホくさいことしてんなあ…。穂乃果にやらせておけばいいだろうに』

『ダメよ、穂乃果はリーダーに向いてないって昨日わかったの』

『向いてないって…ああ、そうか…それがわかってねーからこんな事態になってんのか…』

 

 

カラオケでの桜の言葉が脳内で蘇る。何でかわからないけど、彼にはわかっていたのだろう。

 

 

リーダー無しなんてとんでもない。

 

 

「やっぱりリーダーやるのは、高坂さんが一番ってことなのか…」

 

 

あの子が最もリーダーだったんだ。

 

 

練習指揮もできないし、練習計画も立てられないし、歌詞も作れないし、衣装も作れないし、曲も作れないし、振り付けもだいたい人任せ。

 

 

でも、真っ直ぐ好きなことに向かって邁進できるという点では、にこちゃんすら凌ぐほどの情熱の持ち主なのだ。

 

 

好きなことのためなら、そもそも自分が先導する必要だってない。みんなで歌えるなら、別の誰かがリーダーで構わない。にこちゃんはアイドルへの憧憬が先行しすぎてしまって独走してしまっていたけど、高坂さんは「みんなで」やるのが前提だからそれもない。

 

 

うん。

 

 

やっぱりμ'sのリーダーは、高坂さんだな。

 

 

とか思っていたら、廊下からダダダダっと駆ける音がして、部室の扉がバンッと開いてにこちゃんが現れた。どうしたの。

 

 

「茜遅い!」

「振り付け考えてたんだよ」

 

 

ただ煽りに来ただけらしい。僕も準備した飲み物を持…とうとしたらにこちゃんに横取りされた。しょぼん。しかしどうせそんなに一気に持てないので結末は同じだったかもしれない。

 

 

「そんなすぐ振り付け思いつかないでしょ」

「いや、もう思いついたよ。PVの構成も」

「はやっ!」

 

 

考え事してはいたけど、本当に振り付けやPVも考えてたよ?

 

 

せっかく高坂さんがリーダーだと再認識したんだし、振り付けは差別なく作るにしてもPVは高坂さんの希望に沿うようにしたかったのだ。確かμ'sが発足した理由は音ノ木坂の廃校阻止だったはずだ。

 

 

なら、この学校をアピールできる構成にするのがいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか、桜さん!新曲の感想は!」

「下手だな」

「えー!!」

 

 

新曲、「これからのSomeday」のPVが公開されて数日後。

 

 

いつも通り薄手のコートとTシャツジーパン姿の水橋は、「穂むら」で穂乃果の話し相手をしていた。穂むらには座敷スペースがあり、買ってすぐ和菓子を頂けるようになっている。常連である水橋は時折ここで作曲を進めさせてもらっており、そうすると穂乃果が机の対面に寄ってくるのだ。

 

 

「あんなに練習したのに…カラオケもみんな90点以上だったのにぃ…」

「…ん?カラオケって100点以外出るのか?」

「えっ」

 

 

沈黙。

 

 

「…もしかして桜さん、100点以外取ったことないってことですか?」

「ああ。てっきり機嫌取り用の演出だと思っていた」

 

 

なるほど、と穂乃果は内心理解した。波浜先輩とにこ先輩がカラオケであったときに嫌そうな顔をしていたのは、彼が化け物じみた才能を持っているからだと。

 

 

そりゃ98点取ってもうれしくない。

 

 

「そんな人からしたらそりゃ下手ですよぅ…」

「泣くなよ鬱陶しい」

 

 

よよよ、と机に伏す穂乃果を水橋は一蹴。感情豊かな穂乃果に振り回されないレベルで水橋は冷静だった。

 

 

「っていうか、結局リーダーになったらしいじゃねえか」

「そう!そうなんですよ!」

「立ち直りはえーなオイ」

 

 

水橋が話題を切り替えると、穂乃果はすぐさま起き上がって机をバンバン叩いて叫んだ。水橋も思わずツッコミを入れてしまう。

 

 

「別にリーダーいなくてもやっていけるのになぁ…」

「そういうわけにもいかねーだろ。マスコットでもなんでも、結局は誰かを最前線に立てておかないと不便が多い」

「でもなんで私なのかなあ」

「…知らなくてもいいだろ」

「えー、気になりますー」

 

 

結局満場一致で穂乃果がリーダーとなったというのに、何故か納得いっていない様子の穂乃果。水橋からすれば当然の結果なわけだが、やはりというかなんというか、彼女自身は自覚がないようだ。自覚がない方がいいかもしれないが。

 

 

「まあ、リーダーがどうのこうのよりも、次のこと考えな。活動はまだ続くんだろ。新しい曲作るなりPV撮るなりライブするなりしないと人気は落ちていくぞ」

「うぅ…それは確かに…」

 

 

リーダー向きでない、と言われる理由としてこういう計画力の無さが少なからずある。結局は頭使うのが苦手な子なのだ。

 

 

アドバイスするつもりはさらさらないが、内心今後のμ'sの成長に期待する水橋としてはこのままでは困る…そう思っていると、ジーパンの左のポケットに突っ込んであるスマホに着信があった。

 

 

画面に出た名前は、「天童一位」。

 

 

水橋、波浜とともに働くA-phy(えいさい)の仲間だ。

 

 

穂乃果はほっといて電話に出る。穂乃果も不満全開の顔ではあるが黙った。

 

 

「…何の用ですか」

『第一声が「何の用ですか」は傷つくな?!』

「用が無いなら切りますけど」

『だあああああ!待てい待てい!!用件も聞かずに切るんじゃねえ!!』

 

 

はあ、と盛大にため息をつく水橋。正直このテンションは苦手だ。

 

 

『12月に大阪でやる舞台の脚本書いてんだけどな。BGMに丁度いいのが見当たらなくてよ。ちょっくら作ってくれねーか?』

「報酬は?」

『30万でどうだ。それと制作協力に名前載せるネームバリューと、サウンドトラックの印税の7割渡しちゃるわ』

「40万なら受ける」

『ぐっ…しゃあないか、他にアテもありはしないしな。よっしゃ、40万で手を打ったろやないかい』

「まいどあり。じゃあ脚本とBGMのイメージを文字に起こして送ってくれ。作っておく」

『おお!サンキュー!やっぱ持つべきものは友だな!任したぜ!!』

 

 

依頼を承諾すると大喜びで一方的に電話を切ってきた。無駄に高いテンションとか、とにかく本当に何なんだ。

 

 

「…なんなんだ」

「うー、目の前で電話だなんて!」

「悪いかよ」

「私が暇!」

「知るかよ」

 

 

電話の後は別の面倒が目の前にある。人生は多難だ。そもそも水橋は曲作りをしに来たのに、穂乃果の相手とか電話のせいで全然はかどらない。

 

 

「桜さんいつもパソコンいじっててつまんない」

「仕事してんだよ。むしろ邪魔すんな黙ってろ」

「あ!もしかしてそれ曲を作ってるんですか?」

「あーそうだ。そうだから黙ってろ」

「私桜さんの曲聴きたい!!」

「黙ってろっつってんだろ」

 

 

穂むらに仕事を持ち込み始めてから結構経つのだが、穂乃果は今まで何やってるかわかってなかったらしい。実際、画面を見たところでよくわからない上に本人は絶対に口を割らないため知らなくても仕方がない。

 

 

「きーきーたーいー」

「ネットで探せ」

「その手があった!!」

「思いついてすらいなかったのかよ」

 

 

ノートパソコンの画面からは視線を動かさず、しかし盛大にため息をついて辟易する水橋。その後も閉店ギリギリまで仕事を邪魔され続けるのだった。

 

 

それでもこの店で作業するのをやめない理由は、水橋にはまだわからない。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

穂むらの座敷スペースは勝手に作りました。聖地巡礼してないので実物はわかりません…巡礼したい…。

メンバーそれぞれの評価は独断と偏見で書きました。異論は認めます。しかしどう足掻いてもみんな可愛いです。異論は認めません。

そしてすごくどうでもいいですが、8,000文字ぴったりでした。



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