笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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お久しぶりです。ご覧いただきありがとうございます。

前回から2人の方がお気に入りしてくださりました!!ありがとうございます!!のんびりおまけ書いていきます!!

本当にのんびり書いてます。まあ本編終わってますし、多少はね?

今回は本編終了後のお話です。わざわざ過去に行く装置を作ったのもちゃんと意味があるんです!わかってる人もいそうですけど!!


というわけで、どうぞご覧ください。




おまけ話集
(延長戦):過去の自分たちへ


121:

 

 

 

 

 

「過去に行ってこいだって?」

 

 

ある日、俺と穂乃果は極めて珍しく湯川に呼び出されていた。正確には呼び出してきたのは天童さんだが。

 

 

そして湯川の家に行ったら開口一番に過去に行ってこいとか言うわけだ。

 

 

なんなんだ。

 

 

「何で私たちが…?」

「痕跡があったからな」

「は?」

「オーケーオーケー、俺が翻訳するからなー待ってろよー。なあほんと俺の立ち位置不憫だと思わんかね??俺を挟まないと会話もままならないって通訳か俺は??」

「何でもいいんで早く詳細教えてください」

「無慈悲〜」

 

 

湯川は話の過程を全部すっ飛ばすから何もわからない。必然的に天童さんのお世話になる。

 

 

「まず前提の話なんだけどな。この『過去へ飛ぶ装置』はただワープさせるだけの代物じゃないのさ。次元ってあるだろ?縦・横・高さの三つで三次元。一般的にはここに時間軸を加えて四次元だ。まあ並べる軸は何だって構わないんだが今回は関係ないので割愛」

 

 

天童さんはホワイトボードに「縦」「横」「高さ」「時間」と下から順に縦に並べて書いていく。さらに下から1、2…と番号を振っていく。

 

 

「俺らが住んでいる世界は三次元だ。時間の流れもあるから四次元空間だって理論もあるが、まあ今は『自由に行き来できる軸』のみ数えるものとしよう」

「えっと…?」

「上下左右前後には好きに動けるけど、時間は先にしか進めないし進み方を変えれないってことさ」

「なるほど。それで?」

「だからまずは時間も行き来できる次元に行かなきゃならない。それを可能にするのがこの装置の一つ目の仕事だ」

「一つ目?」

 

 

細かいことはわからんが、イメージだけはなんとなくわかった。

 

 

「そ。四次元空間に行ったって簡単に過去に行けるわけじゃないからな。時間軸をマイナス方向に進もうとすると壁みたいなものに阻まれるそうだ。だからそいつをなんとかしないと過去にはいけない」

「具体的にどうするんすか」

「ぶっ壊すのさ」

「は?」

「いやいや嘘じゃない。時間軸上の壁を無理矢理突破して過去に向かう、それがこの装置なんだよ」

 

 

思ったより力技じゃねーか。

 

 

「そして、当然だが壊したものは戻らない。俺らには認識できないが、壊れた跡が残るのさ。それがさっきの湯川君の言葉。痕跡があった、ってこと」

「ほえ〜」

「…穂乃果、わかったのか?」

「わかんない!」

「だろうな」

「こんなに必死に説明したのによぉ!!」

 

 

この手の難しい話は穂乃果にはわからねーよ。

 

 

「…まあとにかくだ。今は随分改良されてるが、時間平面を突破する時に体に負荷がかかるらしい。前に藤牧君がへろへろだったのはそのせいだな」

「…そういやそんなことありましたね」

 

 

確かに、いつぞやの藤牧は過去に行った後に疲れ果てていた。十数年分の壁をぶち抜いてきたと言われれば納得できなくもない。

 

 

いや納得できるわけない。わからん。

 

 

「俺はこいつを時間平面破壊装置(Time Plane Destroyed device)と名付けた」

「物騒すぎるだろ」

 

 

なんでそんな仰々しい名前つけてんだよ。どうせ天童さんが変な知識をぶっ込んだせいだろうな。

 

 

「とにかく、何かの理由で君らが過去に飛んだことは明白なわけだ。だから行ってくれないと困る。過去の歴史が変わっちゃうからな」

「まあとりあえず納得したことにしときます」

「凄まじい妥協オーラだぜ」

「で、何で俺はスタンドマイクまで持って来させられたんすか」

「必要らしいぞ」

「何でですか」

「知らねーよ!!俺が何でも知ってると思うなバーカバーカ!!」

「…………(イラッ)」

「おっと桜君、短気は損気だぜ。ほらキュケオーンをお食べ」

「なんすかそのおかゆ」

「キュケオーンっつってんだろ」

 

 

どっからおかゆなんか出してきたんだよ。

 

 

「あとは本人とわからない格好しなきゃな。とりあえず穂乃果ちゃんはサイドテール解いてもらって…んー、ニット帽でも被っていただくか」

「おーっ、なんだか新鮮!ねぇねぇ桜くんどう?似合う?」

「似合う似合う」

「むー、真面目に答えてよー!」

「真面目に言ってんだよ。お前は何着たって可愛いわ」

「えっ………そ、そう?えへへ」

「おいコラいちゃいちゃするんじゃねぇ。俺は希ちゃんといちゃいちゃするの我慢してここに来てんだぞ」

「知らねーっすよそんなん」

「桜は上着脱げこんにゃろう。代わりに…パーカーでも着ておけ。あとキャップ被れ」

「何でわざわざパーカーなんか…」

「うわっお前未だにコートの内側に刃物常備してんのかよ」

「護身用っす」

「物騒すぎるだろ」

 

 

いいじゃねーか刃物持ってたって。いやダメなのか?

 

 

「よしよし。あとは自分たちに気づかれないように頑張るだけだな」

「自分たちにってどういうことっすか」

「なーに、簡単な話だ。君達は今から過去の自分に会ってくるんだよ」

「「え??」」

「今から君達には過去に飛んでもらう。そんで過去の自分に会って…」

「ま、まってください。そんな簡単に過去の自分に会っちまっていいんすか?」

 

 

簡単に言ってくれるが、軽率に過去の自分に会うのはまずいんじゃないだろうか。なんか、よく知らないがタイムパラドックスとかあるんだろ。過去に起きなかったはずのことを起こしてしまったらどうなるかわかったもんじゃない。

 

 

だって、未来の自分に会った記憶なんてないんだ。

 

 

「安心せい。()()()()()()()()()()()()()()()()

「は??」

 

 

会ってないっつってんだろ。

 

 

「正確には『会ったけど、会ったことに気づいてない』って感じか?まさか未来の自分が今の自分と同じ姿形をしているとでも思ってんのか」

「い、いや…まあ…そうか…」

「そうなの。だからオッケー、オールオッケーさ。気付かれなければ問題ナシ!既に起きたことなんだから、何がどうなっても過去をなぞるように出来てんのさ!!」

「…そういうもんなのか?」

「らしいぞ?」

 

 

まあ、確かに変装していたらわからないかもしれない。実際、刃物を隠したコートを着ていなかったら自分だとは思わない気がする。根の深いトラウマだしな。

 

 

「さあさあわかったら準備する!そこのマシンに入れば後は湯川君が何とかしてくれる!帰りも一定時間で自動帰還するらしいから!さあ行ってこい!!」

「わわわっ?!」

 

 

めんどくさくなったらしい天童さんが俺と穂乃果をよくわからない装置に押し込む。湯川はヤバい速さで機械を操作していた。

 

 

「量子変換・逆変換システム正常。転移システム正常。タイムリーププログラム起動。リターンシステム正常。次元破壊機構起動。エネルギー損失補正」

「あ、そうそう。過去には2回行ってもらうからな」

「「今それ言う?!」」

「じゃ、いってらー。頼んだぜ湯川君」

「頼んだぜ湯川君。時間平面破壊装置オールグリーン。システム起動」

「いやちょっ

 

 

急に2回も行ってこいと言われ、その瞬間に過去に送られた。視界が歪み、一瞬の浮遊感の後に墜落する感覚、しかもゴムを無理矢理打ち抜いていくような妙な圧迫感がある。

 

視界がぐるぐる回って何がどうなっているのかさっぱりわからないが、穂乃果の手を離していないことだけはわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ」

「あう」

 

 

突然足が地面についた。軽い立ちくらみのような目眩を感じ、しかしふらついた穂乃果を確実に抱きとめる。結構しんどいな。

 

 

で、ここはどこだ。湯川の家ではないな。

 

 

「あっ、ここ…」

「…ああ、この街並み…ニューヨークか」

 

 

見覚えはあった。割とアメリカにはよく来るしな。間違いなく、ニューヨークの夜だ。数年前の、って言われてもピンとこないが。

 

 

つか場所までワープしてんじゃねーかチート野郎め。

 

 

「なんだか見慣れちゃったな…」

「まあ俺のライブに何度もついてきてるからな」

「もう迷子にならないよ!」

 

穂乃果も来たことがある。μ'sが海外ライブをやった時な最初だろうが、その後も俺が海外に行く時にわざわざついてきたりしているから穂乃果も海外に慣れたようだ。

 

 

…過去の自分に会ってこい、ってことはまず間違いなくμ'sのライブの時だろうな。

 

 

「さて、俺たちを探さねーとな。…自分を探すってわけわかんねーけど」

「ねえねえ桜くん」

「なんだよ」

「…ちょっと歌ってみていい?」

「……………何言ってんだお前」

 

 

探せよ。

 

 

「一曲だけだから!」

「いや過去の俺たち探さなきゃならねーだろ」

「ううん、大丈夫」

「は?」

「私、覚えてるから。歌ってたら、きっと会える」

 

 

まあ、覚えてるなら文句言わないが。いや穂乃果の記憶とかそんなにあてにならない気もするが。

 

 

「一曲だけだぞ」

「ありがとう!」

 

 

そう伝えて、持っていたスタンドマイクを渡す。早速使うことになるとはな。

 

 

せっかくだから聴衆に紛れて聴いておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せっかくアメリカに来たんだから、英語で歌ってみたかったんだ!

 

 

それに、着いた場所も私は覚えてる。間違った電車に乗っちゃって迷子になった時に、女性シンガーさんが歌っていた場所。今その場所には女性シンガーさんはいなくて、私の姿はあの時の女性シンガーさんによく似ている…気がする。

 

 

だから、きっと。

 

 

あの日会った女性シンガーさんは、未来の私だったんだ。

 

 

あの時、どんな歌を歌っていたかは忘れちゃったけど…きっと大丈夫。過去の私が聴いてくれれば。

 

 

歌ってるうちに気持ちよくなってきて、気ままに歌っていたら人がそれなりに集まってきちゃった。チラッと桜くんを見てみたら、少し離れたところで聴衆みたいな顔して聴いていた。

 

 

そして歌い終わった時。まばらな拍手の中で、1人だけすごく手を叩いている人がいた。

 

 

間違いない、私だ。

 

 

隣に桜くんもいる。うわーっ若い!!そりゃ高校生の頃だもんね!!

 

 

とりあえず話しかけなきゃ。何を話したかは忘れちゃったけど…大人っぽい人だった記憶があるから、大人っぽい話し方しなきゃ。

 

 

「見てくれてありがとう。あなたたち、もしかして日本人?」

「そっ、そうです!…って日本語?!」

「日本人ですか。まあ珍しくもないか」

「珍しくないの?!」

「日本に来る留学生みたいなもんだろ。そんなにレアなもんじゃない」

「ふふっ。最近はそうかもね」

 

 

うんうん、バレてないみたい。よかった。

 

 

…それにしても。こんなに仲が良さそうなのに、この頃は付き合ってなかったんだもんね。桜くんのトラウマとかのせいもあるだろうけど。

 

 

ちょっとからかってみたくなっちゃう。自分なのに。

 

 

「君たち、高校生くらいかな?夜遅くにこんなところでどうしたの?夜遊び?」

「ちっ違いますよ?!」

「なんてこと言うんですあんた」

「でもカップルで夜の街をうろついてたらそう思っちゃわない?」

「かっかかかかかカップル?!」

「ではないですからね」

「あらそうなの?それはごめんなさいね」

「でっ、でも桜さん、側から見たらカッ

「見えねーよ」

「まだ全部言ってないのに!!」

「言わんでもわかるわ」

「以心伝心ってやつかしら」

「違います」

 

 

うわぁ。

 

 

絶対これ、私、この頃から桜くんのこと好きだったなぁ。桜くんと付き合い始めた時にみんなが「やっとか」みたいな顔してた理由がわかっちゃった。

 

 

横目に桜くんを見てみると、離れたところでちょっと顔を赤くしていた。

 

 

「まあいっか。実際どうしたの?迷子?」

「このアホが迷子になったんで連れて帰ってるところです」

「アホじゃないもん!」

「うるせーアホ」

「なるほど。どこに行くの?」

「ホテルに。方角はわかってるので問題ないです。具体的な道までは流石にわかりませんが」

「ふうん、ちなみにどんなホテルなの?」

「えっと、大きな駅のある、大きなホテルです!」

「雑すぎだろ」

「あっ、大きなシャンデリアもありました!」

「情報量無さすぎるだろ」

 

 

目的地は知ってるけど、知らない体で聞いておく。私も桜くんとアメリカに何度も来たから、この辺りで迷うこともなくなっちゃった。

 

 

「なるほど、じゃああそこね」

「わかるんすか」

「もちろん!結構この辺りのこと詳しくなったんだから!」

「そっすか」

「桜さんそんなそっけない返事しちゃダメだよ!」

「お母さんかお前は」

「おかっ」

「ふふふ、青春ね」

「なんか言いました?」

「いえなーんにもー?」

 

 

照れて顔を赤くしてる昔の私。あーもう、高校生の恋愛って感じ!でもずっと気付いてなかったんだよね…私。なんだか勿体ないなぁ。

 

 

「じゃ、道案内してあげるから、一緒に行きましょうか!」

「いや別に

「ありがとうございます!!」

「…はぁ、すんません。お願いします」

 

 

まあ、何はともあれ帰らないと海未ちゃんに怒られちゃうから帰ろう。帰っても怒られるんだけどね…あはは…。

 

 

「ってそういえばマイク忘れてた!」

「しまっておきましたが」

「おお!ありがとう!…ちゃんと仕舞えてる?」

「俺の…あー、いや。見たことあるやつだったんで」

 

 

桜くんに借りたマイクを片付け忘れてたら、昔の桜くんが片付けてくれてた。そりゃ自分のマイクだから片付け方も知ってるよね。

 

 

「あーそっか…そりゃそうだよねぇ」

「ん?何がっすか」

「あーいや何でもない!さあ行こうか!」

 

 

危ない危ない、ボロが出ちゃうところだった。うー、私こういう隠し事するの苦手なのに!

 

 

「お姉さんはこっちでずっと歌ってるんですか?」

 

 

昔の私が質問してきた。えー、どうしよう。何て答えよう?普段は日本にいるって言ったら、じゃあ何で今アメリカにいるのーって話になっちゃいそうだし…昔は日本にいたよ!ってことにしちゃおう!

 

 

「まあね。これでも昔は仲間と一緒に歌ってたのよ?日本で。」

「そうなんですか?」

「うん。でも色々あってね、結局グループは終わりになって」

 

 

あ、このあたりの話は少し覚えてる。

 

 

μ'sをどうするか、それを決めるきっかけの一つでもあるお話だったから。

 

 

「当時はどうしたらいいかわからなかったし、次のステップに進めるいい機会かなーとか思ったりもしたわね」

「…」

「ん、どうしたの?」

「それで…それで、どうなったんですか?」

 

だから、私も同じように伝えよう。

 

 

 

 

 

 

 

「簡単だったよ」

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

「とっても簡単だった」

「…答えになってませんよ」

「そう?じゃあこう言おうかな。今まで自分たちが何故歌ってきたのか。どうありたくて、何が好きだったのか。それを考えたら、答えはとても簡単だったよ」

「そんな回答で理解できるやつじゃないんですよね」

「ふふっ。それでいいの」

「は?」

「わからなくていいの」

「はあ」

「すぐにわかるから」

「…そうですか」

 

 

直接は言わないけど、遠回しに、ちゃんと伝わるように。

 

 

頑張って、昔の私。

 

 

そう思って歩いていたら、前から「穂乃果ッ!!!!」っていう海未ちゃんの声が聞こえた。びっくりした!やっぱり海未ちゃんの怒った声は怖いね…。

 

 

その声を聞いて、昔の私は走っていっちゃった。不安だったもんね。覚えてるよ、私も。

 

 

「…お礼くらい言っていけよ」

「いいのよ。それよりも、ちゃんと見ててあげてね」

「何で俺が」

「じゃ、私はあっちで彼が待ってるから」

「おいこら」

 

 

桜くんにも、ちゃんと私を見ていてって伝えておいた。桜くんも早く恋心に気づいてくれるといいな。

 

 

「迷わず送り届けられたみたいだな」

「うん!…はぁ、疲れたぁ!別人の演技した気分!」

「わざわざ声も変えてよく頑張ったなお前」

「えへへ、褒めて褒めて!」

 

 

少し離れたところにいた桜くんに近づいて、抱き着こうと思った瞬間。一瞬体が浮いて、下に落ちていくような感じがした。

 

 

さっきと同じ、時間を移動する時のやつだ。

 

 

もうっ、もう少し待ってくれてもよかったのに!抱きつけなかった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは?」

「わっ、雨降ってる!!」

「穂むらの近くの道か」

 

 

前触れもなく、突然また時間跳躍させられた先は見慣れた光景だった。しかし微妙に違う。まだ現代に戻ったわけじゃないんだろうな。

 

 

とりあえず雨を避けるために近くの屋根の下に入る。

 

 

「…つーか、前触れ無しで飛ばすのはやめてくれねーかな」

「ほんとだよ!!せっかく抱き着こうと思ってたのに!!」

「やめんか」

 

 

わざわざ抱き着こうとするなよ。

 

 

穂乃果のことはおいといて…穂むらから離れていく方向に、誰かが歩いているのが見える。

 

 

それは、

 

 

(あっ…桜くん、あれ)

(わかってる。俺たちだ)

 

 

紛れもなく俺と穂乃果だ。

 

 

ああ、なんかそんな記憶がある。

 

 

μ'sをどうするか悩んでいる穂乃果と一緒に外を歩いていたら、穂乃果と逸れて、見知らぬ男性に声をかけられた、そんな記憶が。

 

 

「穂乃果、覚えてるか?」

「うん。私、桜くんと一緒に歩いてたら突然出てきた女性シンガーさんに手を引かれて…」

「よし。じゃあその通りに。俺も俺でやらなきゃいけないことがあるからな」

「わかった!行ってくる!」

 

 

珍しく物分かりのいい穂乃果が、こっそり過去の俺たちに忍び寄って、横から不意に過去の穂乃果の腕を掴んで引っ張って連れ去った。側から見るとやべー瞬間みたいだな。

 

 

ま、それはそれとして。俺は俺で過去の自分に話をつけなきゃな。

 

 

「…まぁ、お前が周りのやつらを置いていくのはよくあることだし………あ?穂乃果、どこ行った??」

 

 

我ながら何で気付かないんだって感じだな。

 

 

「はぁ…仕方ない、探しに

「心配するな。すぐ戻ってくる」

「は?」

 

 

後ろから声をかけると、警戒心丸出しの返事が来た。まあ…気持ちはわかるんだが、愛想のカケラもねーな、昔の俺。

 

 

「…誰だ?」

「初対面で誰だって…まあ仕方ないか。あー、諸事情で詳しくは答えられないんだが…そうだな、アメリカで嫁が世話になったって言えば伝わるか?」

「…あの人が言っていた旦那さんか」

「その通り」

「何で日本にいるんだ?」

「用事があってな」

「…信用ならないな」

「だろうな」

 

 

自分にこんなに警戒されるとは思わなかった。いや、警戒するか。穂乃果が居なくなったわけだしな。何でこの頃は穂乃果が好きだと気づかなかったのか。

 

 

「今、ほ…

 

 

穂乃果が、って言おうとして思いとどまった。やべ、過去の穂乃果のことも今の穂乃果のことも「穂乃果」と呼ぶわけには行かないんだった。というかどっちも穂乃果だ。

 

 

「いや、うちの嫁が…あー、君の連れと話をしているところだろう。待っていれば勝手に来る」

「何か歯切れ悪いなあんた」

「…こうしてみると敬語って大事なんだな」

「何だって?」

「いや、何でも。とにかく待っていればいい」

「そう言われてハイそうですかっつって待ってると思うか?」

「まあそうだよな」

 

 

こうして対峙すると口悪いな俺。…戻ったら敬語勉強しておこう。

 

 

「穂乃果はどこにいる?」

「すぐに来るつってんのに…」

「だから信用できるかって言ってんだろ!」

「はぁ…まあわかりやすくていいけどさ」

「何なんだよあんたは一体!」

「俺が何者かはどうだっていいんだがな」

 

 

過去の俺は、俺に背を向けて歩き出した。どう見ても穂乃果が心配で探しにいくつもりだ。

 

 

「それだけ大切に思っているのに、いつまで誤魔化すつもりだ?」

 

 

過去の俺が足を止めた。本当に、いつまで気付かないつもりなんだか。

 

 

早く気づけば、受け入れれば。それだけ過去の苦しみから解放されるのが早いのにな。

 

 

「心配だろう、不安だろう、焦るだろう、気になるだろう。彼女が不幸な目に遭ったら我慢できないだろう。いつまで誤魔化しているつもりなんだ」

「な、何を…」

「まあ言ったところで変わらないだろうが、一応言っておくぞ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

自分だからこそ言っておいてやる。ずっと逃げたって行き着く先は袋小路なんだ。立ち向かう勇気がなければ、先にも後にも進めない。

 

 

「おっ…お前は何を知って…ぐっ!!」

 

 

不意に強風が吹いた。過去の俺が持っていた傘が吹っ飛ぶが、それよりも早く色々伝えなければいけない。

 

 

何故って、もう体が引っ張られている感覚があるからだ。このタイミングでまた無理やり時間旅行をさせようとしてきている。

 

 

「知っているさ、全部。だから言わせてもらう。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

冗談じゃない。この辺りはちゃんと何を言われたか覚えてるんだから、伝えないまま帰るわけにはいかない。頼むからもうちょい待て。

 

 

 

「穂乃果のことだけじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

自分がしたことから目を逸らさずに、穂乃果と、仲間と向き合えば、長く永く苦しむこともなかったんだと。

 

 

「…逃げなくてもよかったんだ。仲間がいるんだから。愛する人がいるんだから。一緒に背負ってくれる仲間がいるんだから…」

 

 

過去の俺が、少しでも早く気付いてくれるように。

 

 

いや、今俺が言ったからあの日気づけたのかもしれないな。

 

 

「まっ………待て、待ってくれ。なんっ、何であんたはそんなことを…!!」

 

 

そこまでが限界だった。

 

 

過去の俺が、過去の穂乃果に呼ばれて振り返った瞬間。思いっきり後ろから引っ張られる感覚がして、そのまま俺は過去の時間から去った。

 

 

まったく。自分を諭した見知らぬ誰かが、まさか自分自身だったなんてな。

 

 

通りで俺のことを知ったような言い方だったわけだ。

 

 

世の中何があるかわからねーもんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!」

「おっと」

「おぅっもう帰ってきたのか?早いな」

「もう帰ってきた。帰還時刻を出発時刻の10秒後に設定してあるからな」

「インターバルやたら短いなおい」

「長い時間存在しない時間軸を作ってしまうと存在証明が出来なくなる」

「存在証明って何だよ」

「その結果存在をロストすることになる。帰って来れなくなる」

「俺の言ってること反復しねぇなーって思ったが、さては俺の話聞いてないな?」

 

 

変な圧迫感と目眩を乗り越えると、湯川の研究室に戻っていた。隣には穂乃果もいる。

 

 

「あれ?戻ってきたの?」

「みたいだな。おい湯川、もう少し時間移動する時に前兆みたいなの出せないのかよ。急にワープさせられてビビったぞ」

「急にワープさせられてビビったのか?現状では過去の人々に認識されていない瞬間にしか転移ができないんだ。時間遡行を行う人物が存在する時間軸をこちらで設定しなければ、存在証明が失われてしまう」

「全然わからん」

「なんかどこぞのレイシフトみたいなシステムだなオイ。まるでカルデアに来たみたいだぜ、テンション上がるな〜」

 

 

だめだ、やっぱり湯川の話は全く理解できない。

 

 

「しかしわざわざ監視しなくても時間遡行ができるようにすれば危険も減るな。存在証明を自動演算するプログラム…いや、存在の楔を時間軸上に固定化するのが早いか」

「よし、俺たちには理解できん話だな!それよりどうだったよ、過去の自分たちは」

「まあ昔の自分でしたよ」

「姿形を聞いてるんじゃなくてだな」

「…ちゃんと届いたと思います。だって、届いたから今の私たちがいるんですから」

「そうそう、そういう返事が聞きたかったわけよ。よかったじゃないか、わざわざ常識の埒外にある技術を使って過去に行った甲斐があってさ」

 

 

まあ、無駄ではなかった…どころか、とても重要な出来事だっただろう。

 

 

俺も、穂乃果も、あの日会った未来の自分が今を示してくれたのだから。

 

 

「まあ…そういう意味なら、意味はありましたよ」

「おっ桜が珍しく素直」

「死にます?」

「ちょっと沸点低すぎんよ〜。待て待て剪定バサミは人に向ける得物にしては歪すぎやしないかね」

 

 

想像したこともなかった、過去の幻影を振り切った人生。誰かを愛し、愛される人生。そんな人生への布石の一つだった。

 

 

その意味を考えれば、意味のないことだったとは死んでも言えないだろう。

 

 

「まあとにかく、今日の用事は終わりだぜ。過去に行った際に身体に負担もかかってるだろうしな、さっさと帰って休むといい」

「はい!」

「ありがとうございます」

 

 

未だにブツブツ言っている湯川は天童さんに任せて、湯川の家を後にする。

 

 

「穂乃果」

「なあに?」

「…ちょっと喫茶店でも寄っていくか」

「うん!でも、桜くんが誘ってくれるなんて珍しいね」

「まぁ…なんつーか、わざわざ過去にまで行って繋いだ今なわけだし、穂乃果といる時間をもう少し大切にしておきたいなと思って」

「…そ、そうなんだ。私も同じこと思ってた」

「真似すんなよ」

「真似じゃないもん!」

 

 

冗談を言って笑い合う、こんな日々も大切にしていかないとな。

 

 

散々苦しんだんだし、そのくらいの権利はあってもいいだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そういえばお前マイクどこやったんだ」

「…………あっ!!昔の私に渡したままだった!!」

「お前…まあいい。それなら後で取りに行く」

「え?また過去に行くの?」

「過去のお前が持ってったんなら、今もお前が持ってるはずだろ」

「あっそっか!そういえばマイク部屋に置いてある!!」

「まあ、過去に置き忘れたとかじゃなくてよかったよ…」

 

 

何かしらトラブルが起こるのはご愛嬌、と言ったところか。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

このお話を書きたくて過去に飛べる装置を作っていただいたのです。だってせっかく未来の自分っぽいのが出てきたのに、過去に行く方法が無かったらおかしいじゃないですかー!!

という感じでいつも通り欲望マシマシでおまけ話は書いていきます。こんなお話が読んでみたい!というリクエストがあればいつでも受け付けていますからねー!!

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