笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回からお気に入り登録お一人!☆10評価もお一人いただきました!!ありがとうございます!!未だに読んでくださる方が増えて感激です…寿命伸びます…!!
今回はジョリポンさんからリクエスト頂いたお話をご用意しました。タイトルの通り、新世代たるμ'sの子供たちのお話です。子供たちがよくわからないって方はエピローグを参照いただけたらと思います。くーっリクエストいただけるって嬉しい!!
というわけで、どうぞご覧ください。
今回も1万字超えましたのでお時間のある時に…。
やあみなさん。矢澤紫苑だよ。
今日は夏休みだし、練習もないし、春陽さんの家に遊びにきたよ。
というか玲ちゃんに連行されたよ。僕漫画のネーム描くって言わなかったっけ。
「お邪魔しまーす!!」
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい!はるちゃんは
「ありがとうございます花陽さん!行くよ紫苑!!」
「痛い痛い引っ張らないで」
「後でおやつ持っていくねー!」
お出迎えは春陽さんのお母さんである花陽さんがしてくれた。春陽さんは地下室にいるらしい。春陽さんは彼のお父さんである照真さんが作った機械をいじるのが好きだから、会いに行くと大体地下室にいる。
民家に相応しくないエレベーターで地下まで降りると、どこもかしこも白色に染まったクリーンすぎて怖い地下室に到着した。
「春陽くーん!着いたよー!」
「は、早くない…?遊ぶ約束は10時からだったよね…?まだ9時だよ?」
「そうだっけ?」
「そうだって僕何十回か言ったんだけど」
「何で言ってくれなかったの紫苑ー!!」
「僕何十回か言ったんだけど」
玲ちゃんが早とちりするのは今に始まったことじゃないし、話聞かないのも今に始まったことじゃないからもう気にしないけどね。
「ちょ、ちょっと待っててね…機械の調整してるところだから…あんまり置いてあるものに触らないようにして待っててね」
「はーい」
「了解!」
春陽さんは奥に引っ込んでしまった。まあ予定より早く来たのはこっちだからね。
「これ何だろ?」
「今さっき置いてあるものに触らないようにって言われたよね」
「いいじゃん腕時計くらいー」
うにゃーっとか言いながら文句を言う玲ちゃん。猫かな?
「あれ?でもこの腕時計文字盤ついてないじゃん」
「デジタルなんじゃないの」
「このボタン押したらいいのかな?」
「やめなさいやめなさい。照真さんの発明品を下手にいじるとロクなことにならない」
腕時計のような何かを装着していじり倒す玲ちゃん。実際玲ちゃんは一回炊飯器みたいなのを爆発させたことがある。姫華ちゃんがいなければ即死だった。いや死にはしなかったと思うけど。
とりあえず危ないから没収しよう。
「ほら下手に触ると危ないから」
「やーだー!玲がまだ調べてるでしょ!」
「君のは調べてるんじゃなくて適当にいじってるんだよ」
「同じでしょ!!」
「微塵も合ってないよ」
離しなさいよ。
千切れないように気をつけつつぐいぐい引っ張ってた、その時だ。
カチッ
「ん?」
「え?」
玲ちゃん今何か押した?
『時間遡行システム起動。制限時間6時間。時間平面非破壊性次元跳躍機構「ネガシフト」を開始します』
「えっえっ何っ??何がどうしたの??」
「玲ちゃん今何か押したでしょ」
「れ、玲じゃないよ!紫苑じゃないの?!」
「僕の持ってたところにボタンは無いんだよね」
とりあえず爆発したら危ないからそれ外しなさい。
「…あ、あれ?」
「どうしたの」
「……………は、外れない…」
「嘘でしょ」
洒落にならない。
『遡行対象:2名。次元跳躍シーケンス開始。アンカー固定』
「どっ、どどどどどどどうしよう?!」
「どうもこうもないよっ!!」
僕も必死に玲ちゃんが装備した腕時計(のような何か)を引っ張るけど、なるほど、マジで外れない。
やばない?
そう思った瞬間。
床が消えた。
「お、おまたせ…って、あれ?」
お父さんが作った光粒子固定式可変壁の調整を終わらせて、玲ちゃんと紫苑君の所に戻ってきたけど、2人はいなかった。
また勝手にどこかに入ってるのかな…って思ったけど、周囲を見渡している時にもっとマズいことになってると気付いた。
「なっ…無い、試作の携帯型ネガシフト装置が無い!!まさか勝手に使っちゃったのぉ?!」
これは本当にマズい。何がマズいって、この装置は調整が済んでなくて、自動存在証明が甘いのだ。
要するに、元の時間軸に帰って来れなくなるかもしれない。
「な、なんとかしなきゃ…!パソコンとリンクはしてるはず、こっちから手動でなんとか存在証明を続けるしかない…!」
ちゃんと機械が動作していれば数分で帰って来るだろうけど、そこがしっかり動作しているかは確認できない。とりあえず6時間にセットしてあったはずだから、最悪6時間丸ごと帰って来ないかもしれない。
「ひいぃっやっぱり起動してる…!手を止めたら二人が帰って来れなくなる、責任重大すぎだよ!誰か助けてぇ!!」
この状態じゃあお父さんも呼びに行けないし、もう自分がなんとかするしかない。
ううう、こんなことになるなんて!!
「痛っ!」
「むぎゅ」
一瞬の浮遊感の後、どこかにたどり着いた。ついでに上から降ってきた玲ちゃんに潰された。死ぬ。
「いったぁ…。あれ、紫苑?どこ?!」
「下」
「あっごめん!よかった無事で…」
「今まさに無事じゃないよ」
結構痛かったよ。女の子に言うのもなんだけど、君身長高いから体重もそこそこ重いんだからね。
「とりあえずここは…」
「春陽くんの家の前かな?」
「なんだ、ワープしただけか」
「よかったぁ、変なこと起きなくて…」
「自分で言っておいてなんだけど、ワープは変なことだからね」
僕らがいるのは春陽さんの家の目の前だった。どうやら短距離ワープしただけらしい。びっくりした。まあワープした「だけ」って言うのも変だけどね。ワープするくらいなら普通みたいな言い方だし。感覚麻痺してる。
「はぁ、よかった…へくしっ」
「…よかったけど、なんか寒くない?」
「…紫苑もそう思った?今日こんな寒かったっけ…」
おかしいことといえば、なんか不自然に寒いことだ。冬ってほどじゃないけど、春先くらいの気温だから半袖だとちょっと寒い。真夏にこんな気温になることあるかな?
「曇ってるわけじゃないし…」
「むしろめっちゃ晴れてるけど」
「だよねぇ…」
具体的に何がどうなってるんだろう。
二人で首を捻ってる時だった。
「行ってきます!」
お隣の家から一人の少女が出てきた。僕らのいる方とは反対方向に歩いていく。
いや行く方向はどうでもいい。問題なのは、お隣さんは花陽さんのご実家のはずで、少女が住んでるわけないということ。
あと、
「…………ねえ、紫苑。あれって…花陽さん、だよね?」
「…うん、僕もそう思った」
「…音ノ木坂の制服着てたよね?」
「うん」
「………花陽さんそういう趣味が
「違う、そうじゃない」
そこは花陽さんの名誉にかけて否定しておこう。食い気味に。
「もしかしたら…ここ、過去なんじゃ…」
「過去?」
「うん、花陽さんが高校生時代ってくらい昔の…」
「……………え?え?そ、そんなまさか…いくら照真さんがすごいからって、過去に行くなんて…しかも腕時計で」
「腕時計かどうかすらよくわかんないけどねそれ。それに、ほら」
過去にきたかもしれない。その言葉の根拠は、僕が指差す先にある。
それは、
「さ、桜が…咲いてる…」
「ね。少なくとも、今僕らがいるここは夏じゃないんだよ」
「にゃああ…」
そう、見事に桜が咲いているんだ。
夏に桜が咲いてたら困る。初音島になっちゃう。ご存知ない?初音島。
「うぅ、ごめんね…」
「ん?」
「また私のせいで紫苑が大変な目に…」
玲ちゃんが半泣きでしょぼんとしてる。玲ちゃんはテンション高い割に繊細だから結構自分の過失を気に病んだりするのだ。
「…まあ、よくあることだし気にしてないよ」
「でも、今度はもう帰れないかもしれないし…」
「それこそ今更だよ。君のせいで何度迷子になって何度帰れないと覚悟したものか」
「ゔっ」
元々玲ちゃんは後先考えないタイプだ。頭が悪いわけではないけど、彼女のお母さんに似たのか、思いついたら即行動しちゃうのだ。よくわかってる。何年一緒にいると思ってるんだ。
だいたいそういう時の尻拭いは僕の役目だし、僕がそういう役回りを演じているのは僕がいつも玲ちゃんの側にいるからだ。
「いいんだよ、別に。絶対僕が君を守るから」
「………うん」
他に人がいる時には絶対こんなこと言わないんだけどね。
玲ちゃんがしょんぼりしてる時だけ特別だ。
「で、具体的にどうするかなんだけど」
「照真さん、いるかなぁ?」
「いたとして、僕らを入れてくれると思う?」
「わかんない…」
とりあえず開発者本人に帰る方法を教えてもらう、というのは多分無理だ。元々僕らも数えるほどしか会ったことない人だし、僕らが生まれてないかもしれない時代では初対面のはずだ。警戒されて当然と言える。
「仕方ない。元の時間にいる春陽さんが頑張ってくれると信じよう」
「だ、大丈夫かなぁ…」
「大丈夫だよ。行って帰って来れないようなものをそこらへんに置いとくタイプじゃないだろうし」
「そう…かな?」
「多分」
まあわかんないけど信じるしかない。
「とりあえず僕らが自発的に帰ろうと思ったら、絶対照真さんに会わなきゃいけない。そして照真さんに会う方法があるとしたら…」
「あるとしたら?」
「花陽さんしかないよね」
「じゃあ…」
「うん、花陽さんを追いかけよう。追いかけるというか、たぶん音ノ木坂に行けば会えるよね。制服着てたし」
そして人任せではいられないから、僕らも動こう。照真さんに会うには現状花陽さんの力を借りるしかない。
それに、運が良ければ現役時代のμ'sの練習も見れるかもしれないしね。
というか見たいしね。
というわけで音ノ木坂に到着。若干今より校舎が綺麗だね。20年近く前なんだから当たり前か。
春休みなんだろうか、部活してる生徒しか見当たらない。まあ桜咲いてる時期なんて基本春休みだよね。そんなことない?
「さてμ'sはいるのかな」
「あっお父さんだ」
「よく見えたね」
「あれは見えるよ。目立つもん」
「確かに」
正門の外から見つけられるかなって思ってたけど、玲ちゃんのお父さん…創一郎さんがめちゃくちゃ目印になった。うーん、やっぱりでかいな。制服が微塵も似合わない。
てか創一郎さんに肩車されてるのうちのお父さんじゃんね。何してんのお父さん。
「…入っていいのかな?」
「いいんじゃない?僕らここの生徒だし」
「未来の、だけどね…」
まあ正門開いてるんだから入っていいんだよきっと。
というわけで堂々と入門。たのもー。
って気楽な感じ出してたら空から何か降ってきた。
ズドンッ!!って音と地響きを連れて創一郎さんが飛び降りてきた。こわ。失禁しそう。しないけど。しないよ?
「…今日来客があるとは聞いていない。何の用だ」
「えっ怖っ」
「警備員が不在の間は俺が目を光らせている。不法な侵入は見逃さないぞ」
「ひええ…やっぱり怒られたじゃん!」
「こんなに怒られると思ってなかった」
割とガチめなやつだ。すみませんでした創一郎さん。でもちょっと事情が事情なのでとりあえず花陽さんにだけは会わせて。
…とは言えないから言いくるめよう。
「いえ、僕の幼馴染がスクールアイドル始めたいから、μ'sの練習をどうにかして見させてもらえないかなと思って」
「見学か?そうか…なるほど、そういうこともあり得るか」
「突然で申し訳ないですけど、いけます?」
「聞いてこよう」
「やった!ありがとうお父…お兄さん!」
「…今お父さんって言いかけなかったかあんた」
玲ちゃんがノリで喋った結果口を滑らせそうになった。まずいまずい、流石に未来から来ましたって言うのは良くない気がする。なんとかごまかして玲ちゃん。
「えっ、や、やだなあそんなわけあはは」
「そうか…そんなに老けて見えるのか…」
「あっ気にするのそこなの?!」
「メンタルがお豆腐だ」
ごまかせたけどなんかダメージを負わせてしまった。何故か勝った。やったね。やったくない。
落ち込んでる創一郎さんをどうしようか考えてたら、昇降口から誰か出てきた。誰かじゃないわお父さんだわ。若い頃のお父さんだ。あんまり今と変わってないな。
「何してんの創一郎」
「俺はおじさんだ…」
「は?」
「この子の何気ない一言が創一郎さんの心を傷つけた」
「えっ玲のせい??」
「当たり前だよ?」
「何、創一郎の知り合いなの君達」
「いいえ」
「じゃあ何で名前知ってんの」
「今あなたが名前呼んだので」
「確かに」
危ない。つい創一郎さんの名前を呼んでしまった。お父さんが直前に名前呼んでくれなかったら即死だった。
「それで君達は何しに来たの。デートかな」
「違います」
「えっ」
「即答するのはどうかと思うよ」
デートではないよ。緊急事態だからね。別に玲ちゃんが好きじゃないってわけではないんだけどさ。
好きかって言われるとあれだけどさ。
好きだけどさ。
それをまっすぐ伝えられる人種って限られてるじゃん。
「μ'sの練習、見せていただけたらなって思いまして。4月からスクールアイドル始めようかと思ってるので」
「えっ君がやるの」
「僕がやるわけないでしょ。隣の玲ちゃんがやるんです」
「はっ、はい!」
「えっ君高校生なの。デカくない?」
「そ、そんなに老けて見えますかぁ…?」
「そうじゃないよ物理的にデカいって話してるんだよ。創一郎みたいなリアクションしないで」
話が無限に進まない。
「まあ、練習見るのは構わないよ。とは言っても今日は最終調整しかしないけど」
「最終調整?」
「何君ら、μ'sの練習見に来てμ'sのライブスケジュールは知らないの」
「お恥ずかしながら」
「正直だ」
何かのライブ前なのかな。
「明日やるファイナルライブの調整。まあ、残念ながら最後の新曲の合わせは終わっちゃったけど」
あ、そうか。
卒業前ということは、ライブがあり得るのはアメリカライブかストリートライブかファイナルライブしかない。他校の生徒がいないということはファイナルライブに決まってる。
「…ファイナル、ライブ…」
「そだよ。ちょい創一郎、ちゃんと告知したの?この子達知らないみたいなんだけど」
「確実に全員に情報が行き渡るとは限らねぇだろ。だいたいメインで広報したのは茜だ」
「そうだっけ」
「てめぇコラ」
「痛い痛い」
お父さんが創一郎さんに顔掴まれて吊り上げられてる。まあ時々見る光景だ。時々見るとはいえ、痛い痛いといいつつ無抵抗なのはいいのかお父さん。
「…ま、練習くらい見てもいいだろ。本番とは衣装も舞台も違うわけだしな」
「まあそうだね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますっ!!」
「で、君達名前は?」
「紫苑です」
「玲です!」
「まさか下の名前が来るとは思わなかった」
「普通苗字から名乗らねぇか?」
「ついノリで」
「何のノリ」
これは玲ちゃんと事前に決めたこと。ここでは絶対苗字を名乗らない。僕はともかく、玲ちゃんの「星空」という苗字は極めてレアだ。怪しみの塊になる。
玲ちゃんがノリと勢いでフルネーム言っちゃうかもしれないと思ってヒヤヒヤしたけど、ちゃんと対応してくれてよかった。
「まあいっか。紫苑くんと玲ちゃん、ついてきて」
「「はーい」」
あとお父さんが細かいこと気にしないタイプでよかった。
「というわけで見学だって」
「わー!わざわざ来てくれたの?!」
「あっはい」
「私、高坂穂乃果!よろしくね!!」
「存じ上げております」
「なんかそっちの男子、茜に似てるわね」
「そうかな」
「玲ちゃんっていうの?おっきいにゃー!」
「あ、あはは…」
「すごい、絵里よりもはるかに背が高いですね…」
「むむむ…もしかしてうちより大きい…?」
「希、その手はやめなさい。初対面の子にわしわしは禁止よ」
というわけでお父さんに屋上まで連れてきてもらった。扉を開けるなり現役版μ'sの方々が寄ってたかってきた。子供時代の親世代に物珍しい顔で集られるこの状況。カオスだね。
「ほらほら練習始めるよ。練習を見に来てくれてるんだから」
「そっか!」
「いっくにゃー!」
「元気だなぁ」
「凛は元気だけが取り柄だからな」
「だけじゃないよ?!」
なんだか今も昔も似たような感じだなみなさん。
なんかわちゃわちゃしつつも、練習が始まればみんな真剣だ。
「1,2,3,4,5,6,7,8…」
(創一郎さんが拍とるんだね)
(お父さん、歌は下手だけどリズム感悪いわけじゃないから)
(なるほど)
「ストップ。にこ、前に出過ぎだ」
「そんなことないわよ!」
「出すぎだよにこちゃん」
「…あ、あれよ。創一郎を試したのよ!」
「また適当なこと言ってる…」
「何よ!」
「仲良いね」
「「うっさい!!」」
「あぶふぇ」
言うほど真剣じゃないかもしれない。っていうかお父さんがよくお母さんに殴られるの昔からなんだね。今より容赦ない気がする。
まあでも、わちゃわちゃしてて楽しそうだよね。僕らも楽しくやってるけど、ここまでではないと思う。
楽しいって気持ちをみんなが全身で表してる感じがする。みんなに届けたいって気持ちが伝わってくる。
これがμ'sの強さだったんだろうな。
「実際にこちゃんはセンター横だしもうちょっと前に出てもいい気もする」
「だからってことりより前に出たらダメだろ」
「それはそうだね」
あとマネージャー2人が強い。
「…」
「どうかしたの玲ちゃん」
隣にいる玲ちゃんはずっと黙ってる。どうしたのかと思ったら、目をキラキラさせて練習を見ていた。
「すごいなぁ…って」
「ん?」
「すごいなって、思ってたの。歌で、ダンスで、こんなに気持ちが伝わってくるんだなって」
「そうね。僕もそう思ってたところ」
同じこと思ってたんだね。
「それがこいつらの強さだからな」
「創一郎さん」
「みんな楽しいから、好きだからこうしてやっていられる。使命感とか義務感がないから、全身で好きを表現できる」
「そうだよ!!」
「うわびっくりした」
「私たちはスクールアイドルが大好きで、それをみんなに伝えたい!だからどんなに大変でも頑張れるんだ!!」
好きだから、楽しいから。結構そういうのって難しいんだ。
玲ちゃん達だって、みんな「お母さん達に負けないくらいすごいスクールアイドルになる!」って頑張ってる。目標を超えるために努力してる。何かに打ち込む人たちってだいたいそんな感じだ。
でも、μ'sはそうじゃなかった。
好きだって気持ちをみんなと分け合いたいから頑張る。誰かに、何かに勝つためじゃない。頂点を目指して敵を倒していったんじゃない、楽しく歩いてたら勝手に頂点に着いてしまったんだ。
誰にも負けないとかそんな話じゃない。そもそも戦ってすらいなかったんだ。むしろ挑んできた相手も巻き込んで楽しもうとするくらいの勢いだ。
だから、優勝した時のキャッチコピーが「みんなで叶える物語」だったのか。
「よーし、この調子で
「もう5時だから帰るよ」
「ええっ?!明日本番だよ?!」
「明日本番だから帰るんだよ」
「ゆっくり休みなさいよ。明日寝坊したら許さないわよ?」
「にこちゃんもちゃんと起きてね」
「起きるわよ!!」
「ぐぇ」
もうこんな時間だったのか。時間経つの早いな。
とりあえず、何とか照真さんに会って帰る方法を考えなきゃいけない。そう、忘れそうだったけど目的は照真さんだ。
そう思って花陽さんに話しかけようと思った時だった。
『リブート開始』
「うわびっくりした」
「えっ、ななな何?!」
「玲ちゃん落ち着いて」
『再構成。帰還プログラム再定義…完了。開始します』
「何か腕時計から変な音声流れてるけど」
「あーっ、あれです。そろそろ門限だから早く帰ってこいってやつです」
「なにそれ」
「すみません、急いで帰らなきゃいけなくなったので」
「えっ?!紫苑、結局これ何が
「ありがとうございました。ほら行くよ玲ちゃん」
「わわわ?!」
玲ちゃんの腕時計(仮)から謎の音声が聞こえてきた。帰還がどうのこうの言ってるから、きっとこれは元の時間に帰る合図だ。たぶん。
ワープみたいなことする瞬間をお父さんたちに見られるわけにはいかない。
玲ちゃんの手を掴んでダッシュで校舎を出て、人目につかないところへ。お父さん達は今頃何が何だかわからないみたいな感じになってるだろうけど、まあ致し方なし。
「はぁ、はぁ…まだ猶予はあるみたいだね」
「も、もう…急に手を握らないでよ…」
「何だって?」
「何でもないっ!」
玲ちゃんはそっぽを向いてしまった。どうしたのさ。
『強制帰還システム「カウンターサモン」を開始します』
「何かやたら強そうな響きしてる」
「帰れるってこと?」
「たぶん」
「たぶん…?」
名前の響き的に帰れそうじゃない?詳しくないから多分だけど。
「まあダメだったらまた花陽さんに会いに行けばいいし。お父さん達に見られなければ
「やあ」
「うわ」
「きゃあああ?!」
いつのまにか後ろに創一郎さんとお父さんがいた。びびった。お父さんは相変わらず創一郎さんに肩車されてる。
いや何で追ってきたの。
「なんか怪しみ深いと思って追ってみたらこんな人気のないところに来るなんて」
「不純異性交遊は許さんぞ」
「ふっふじゅっいやそんなっ不純じゃないもん!!」
「否定するとこそこじゃなくない?」
「ラブラブじゃん」
「ラブラブじゃないです」
玲ちゃんがパニクってる。それより今出会うのはまずいと思うんだよ。でも創一郎さんから逃げられるわけないじゃんね。
「まあ大丈夫だよ。君達が何者かって何となく想像ついてるから」
「ほんとに?」
「だって君僕に似すぎだし」
「わかる」
「そっちの女の子はわかんないけど」
「えっ」
「えっ」
バレてた。僕だけ。何で玲ちゃんのことはわからないの?顔がすごい似てるじゃん。
「君が僕とにこちゃんの子供だってのは確定的に明らかなんだけどね」
「にこと結婚する気満々かよ」
「ほかの女の子と結婚するとかあり得なくない?」
「まあ…有り得ねぇな」
「でもそっちの凛ちゃん似の子がそこまで大きくなる理由がわからない」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
マジで言ってんのお父さん。
「…まさか、君が初見で俺をお父さんって呼びかけたのは…」
「あー、えっと…ご想像にお任せします…」
「そ、そうか…」
「なんか照れ度の高い空気になるのやめて」
こっちもバレたね。大丈夫なの、これ。
「こんな人生のネタバレしちゃって大丈夫かなぁ」
「いいんじゃない。僕なんて別にネタバレでも何でもないし」
自信ありすぎじゃない?
「それより、そこの玲ちゃんもスクールアイドルやるんでしょ。μ'sは…お母さん達の昔の姿はどうだった?」
「はい、あの…凄かったです」
「語彙力」
「あうう、なんていうか…見てただけの玲も楽しくなっちゃうような、そんな感じがしたんです」
「ふふん、そうでしょ」
「何でお前が得意気なんだ」
「僕らマネージャーだし」
お母さん達って案外μ'sの話しないんだけど、実際に見てみたら確かにすごかった。
「僕ね、ちょっと心配だったんだ」
「え?」
「僕らがいなくなったあとのスクールアイドルがどうなるのかなって。大会とかあるからさ、
「…」
「まあいつかはそういう流れになるとは思ってるけどさ。勝ちたいっていう向上心自体は否定しないけど、勝つのが目的になっちゃいけないと思うんだよ」
「トップを目指すのは構わねぇ。むしろガンガン目指せばいい。だが、それが何のためのトップなのかは考えなければな。勝ちたいから勝つってのより、もっと心を打つ理由があった方が人を感動させられる。それを俺たちはよく知っている」
仰る通りだ。
今も昔も、勝つことに執着する人はたくさんいる。スクールアイドルに限らず、部活動に留まらず、強豪ですらヒエラルキーの下層を虐げる文化はどうしても消えない。去年くらいにどっかの強豪スクールアイドル部でもイジメが発覚して廃部になったとか聞いたし、人の汚い部分っていうのは簡単には無くならない。
でも、そういう時代だからこそ、人々に希望を見せるのがアイドルなんだろう。
μ'sは好きなことを全力でやり遂げた、その素直さが人々に届いた。他のスクールアイドルだったら、例えばAqoursは母校の名前を残したいっていう真摯な想いがみんなに伝わった、
そういう人間の善性が一番人の心を打つんだろう。
「まあ多分うちの子たち誰もそんなこと考えてやってないけどね」
「好きでやってるからな。だがそれでこそμ'sだろ」
「わかる」
それを無意識でやるのが一番すごいのかもしれないけどね。
『「カウンターサモン」の外部入力が完了しました。起動まであと1分』
「あっ帰らされるの忘れてた」
「ええっ、せっかくお父さんからいいお話聞けたのに!」
「お父さん…」
「創一郎、自覚は無いけどリアルお父さんなんだから落ち込まない」
突然腕時計(仮)から声が聞こえてきた。そうじゃん謎システムが起動しそうなんじゃん。多分これ強制送還されるやつだよね。
「もうちょっとお話聞きたかったのに…」
「ねー」
「安心しなよ」
「ああ、安心しな」
腕時計(仮)のカウントダウンが終わりそうという時に、僕らのお父さんは今と変わらない笑顔を向けてくれた。
「「未来で待ってるから」」
『カウンターサモン起動』
その音声と共に、再び地面が消えた。
最後の最後でカッコいいことしないでほしいんだけど。
「さて、そろそろ僕らも戻ろうか」
「…そうだな」
「未来ではタイムマシンも作れるようになってるんだね。楽しそうだ」
「どうせ湯川だろうな。まったく、ネタバレはあんまり歓迎しないんだがな…」
「僕はともかく、創一郎は大したネタバレなかったじゃん」
「…お前本気で言ってるのか?」
「なんで?」
「そうか…お前の恋愛経験ってめちゃくちゃ特殊だもんな…」
「照れる」
「褒めてねぇ」
「痛い痛いちぎれる首ちぎれる」
「痛っ!」
「むぎゅ」
なんかデジャブを感じる着地の仕方をした。何故玲ちゃんは毎度僕の上に落下するのか。
「よ、よかった…帰ってきてくれた…」
「あ、春陽さんお疲れ様です」
「お疲れ様ですじゃないよ!」
周りの景色はいつもの地下研究室。ちゃんと戻ってこれたみたいだ。何やら頑張ってくださったらしい春陽さんは椅子にもたれかかってぐったりしてるけど。
「お父さんが来てくれなかったらどうしようかと…」
「あ、照真さん」
「全システム正常。シャットダウン」
「照真さんがなんとかしてくれたんだ!」
「お母さんがおやつ持ってきてくれた時に、お父さんを呼んできてもらったんだよ…」
「なるほど。で、花陽さんは?」
「君たちのご両親に電話してる」
「「えっ」」
「だって帰ってこれなかったら一大事だったんだよ?!連絡しておかないわけにはいかないよ!!ただですら1時間もこの時間軸にいなかったんだからね!!」
おっとこれは怒られるフラグだ。主にお母さんに。困る。
「にゃあん…ごめんなさい…」
「はあ…いいよ、無事に帰ってきてくれたんだから」
「お詫びにいっぱい遊ぼう!」
「ほんとに反省してるの?!」
うん、玲ちゃんはいつも通りだな。まあスクールアイドルへの考え方は少し変わったかもしれないけど、そのくらいか。
とりあえず僕らは一旦帰って無事を知らせることにした。また遊びに行くけどね。だって玲ちゃんが何かやらかさないか心配じゃん。
というか、過去では日が沈みかけてたのにこっちではまだお昼前だから時差ボケしそう。
「一時的ただいまー」
「ちょおっと紫苑!!あんたもう心配したじゃないの!!」
「ぐぇえ」
「にこちゃん、そんながくんがくん揺らしたら紫苑死ぬよ」
「死なないわよ茜じゃあるまいし」
「僕には今紫苑にやってるのよりパワフルにやってない?」
やっぱり怒られた。僕はむしろ被害者だと思うんだけどね。玲ちゃんの巻き添え食らったわけだし。
ちなみに姉ちゃんは東條家にお邪魔して光さんと受験勉強しに行ってるからいないよ。
「おかえり紫苑」
「ただいま、お父さん」
「
「よくわかったね」
「にこちゃんに電話が来た時にピンときたよ」
「何よ、何の話?」
「未来人紫苑誕生秘話だよ」
「はぁ?」
お父さんは昔起きたことをちゃんと覚えてたみたいだ。お父さん頭いいからね。僕にも分けて欲しかった。勉強は姉ちゃんの方ができるからね。僕もバカではないんだけど。
「あれは何かの役に立ちそう?」
「うん、玲ちゃんも何か掴んだみたいだし」
「ならよかった」
「だから何の話よ!」
「ぐぇえ」
「やっぱりお父さんに向けての方が容赦なくない?お父さん死ぬよ」
「これくらいで死んでたら茜は1,000回くらい死んでるわよ」
「慈悲が欲しい」
きっと玲ちゃんは大切なことを学んできた。大変な目にあったけど、それに見合うくらいの収穫はあったかもしれない。
「じゃあまた行ってくるよ」
「忙しいね」
「玲ちゃん放っておくと危ないし」
「大好きじゃん」
「違う」
保護者みたいなものだから。好きだからとかそういう理由じゃないから。
とにかく、これからもっと僕らは成長できそうだ。やっぱりμ'sは偉大だった。
お母さん達が起こした奇跡のような一瞬を、今度は僕たちが起こそうか。
諦めない限り、奇跡は何度でも起こるはずだからね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
過去には仲良さそうな紫苑君と玲ちゃんに行っていただきました。2人の両親に似ている部分が上手いこと表現できていたらなーと思います。紫苑君にはツンデレ成分を、玲ちゃんには豆腐メンタル成分を混ぜてみました。
歴史を重ねるほど遠くなる原点の想いを伝えるようなお話にできていたらいいなーと思います。どうだったでしょうか。μ'sの出番が少なかった気がしますが満足頂けたでしょうか。
今後もリクエストお待ちしておりますので、何かありましたらどうぞ遠慮なく!!(ただしAqours編が遅れる)