笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
皆様LOST WORLDは楽しんでいらっしゃるでしょうか!!虹ヶ咲のアニメも楽しんでいらっしゃるでしょうか!!ラブライブシリーズの展開が増えていくのは嬉しいですね…!これは虹ヶ咲編も作らねばならない流れ…?!(Aqours編をはよ作れ)
今回はprintempsに続いてリリホワのお話です。
というわけで、どうぞご覧下さい。
「山登りなんて久しぶりだから楽しみだな!!」
「せやね、怪我せんように気をつけてね?」
「はっはっはっこの天童さんがそんなヘマをするわけない…なくない?」
まだ日が上ったばかりの早朝なのに、ちょっと前でテンション高めなのは天童さんと希のカップル。俺はげんなりしている凛を背負って歩いているところだ。
凛がげんなりしている理由は当然、山だ。高校一年の時に海未に山登りさせられたのが余程効いたらしい。
で、当の海未は。
「んふーっ楽しみですね明さん!!」
「え、ええ…そうですね…」
「………松下さん、やばくなったら最悪俺が運びますから」
「はい…ぜひお願いします…」
彼氏を置いてけぼりにしている。テンション的な意味で。
そりゃそうだ。松下さんは根っからのインドア派なんだから。山登りなんて苦行でしかない。
それでも引き受けたのは、読心を使うまでもなく海未がウキウキノリノリだったからだろう。俺だって凛がノリノリだったら何でも引き受けてしまう自信がある。
「ぷークスクス。明クンよ、そんなテンションで大丈夫か?明日筋肉痛になっちゃっても知らないぜ?」
「…ちょっと黙ってくれませんか?」
「あらやだこわーい。安心しな、何があっても俺と滞嶺君で最後まで連れて行ってやるよ。如何に無様を晒そうとなぁ!!ふはははは!!」
「明日以降、社会的に抹殺されても文句言わないでくださいね?」
「そういう方向の攻撃は卑怯だぞ」
で、もう一つ懸念を挙げるとすればこの二人だ。行動を読む天童さんと心を読む松下さんは微妙に相性がよくないらしく、若干気が重い。
そういう仲裁をするのは得意じゃないんだよな。ぶん投げて解決するのは得意なんだが。
「う〜…凛も頑張って歩く…」
「無理しなくていいんだぞ。軽いし」
「ううん、大丈夫にゃ。創ちゃんの隣で歩きたいし」
「…そ、そうか」
背中でもぞもぞしていた凛も自力で山を登る覚悟を決めたようだ。まあ、前みたいな結構なヤバさの山ではないし、凛の身体能力なら問題ないだろう。
嬉しいことも言ってくれているしな。
「見て見て奥さん。あんなところで青春してますわよ」
「ほんとやねぇ、微笑ましいね」
「…わ、私も明さんの隣を歩きますね」
「ええ、それはとても嬉しいのですが、ゆっくりお願いしますね?ゆっくり進んでくださいね??」
「はい!もちろんです!!」
「あっちょっと待って基準を僕にっ、貴女の基準でゆっくりでは意味が…!!」
「海未ちゃんテンション上がりまくってんなぁ」
「うちらも手繋いで並んで歩こっか」
「任せんさい。パワーアップした天童さんは手を繋ぐくらいなんてことないぜ!!」
「冷や汗かいてる」
「…………なんてことないぜ!!!」
俺と凛を見て、残り2組が騒ぎ出した。4人とも歳上なんだが、全く歳上には見えない。
隣にいる凛を見下ろすと、凛も苦笑いして俺を見上げてきた。凛はそのまま俺の手を握って歩き出した。
まあ、細かいことは後々考えるか。
山登りは始まったばかりだ。
案外山は険しくなく、ところどころ大きめの段差はあるが比較的平坦だ。少し標高も高くなって景色も良くなってきたし、このまま
「ってコラァ!!」
「どうしたんですか天童さん」
急にデカい声出されると驚くぞ。
「全っ然平坦じゃないわ!!そりゃ崖とまでは言わねぇ、重装備じゃなくても登れるレベルだけどお前ほどスイスイ登っていけるものでもないわ!!見ろ君の愛しの凛ちゃんを!!疲れ果ててるだろ!!」
「天童さんどうかしましたかにゃ?」
「ごめん全然疲れてないな!!じゃあ代わりに明を見ろ!今にも死にそうだぞ!!」
「……………………いちいち、引き合いに、出さなくて、いいんですよ…」
「すまんブチブチにキレちゃうくらいお疲れなわけね。悪かった。とまあこういうことだよ!ペース落としてペース!!」
4人を途中で追い抜きはしたが、いつのまにか結構な距離が空いていた。そんなに大変だったとは思えないが、まあ松下さんは特に日頃運動していない方だろうし、配慮は必要かもしれない。
「仕方ないっすね…。ちょっと先のベンチで凛と待ってますよ」
「バーカお前ほんとバーカ!!ちょっと先ってどこだよ!!見えねぇよ!!まさか随分先にあるアレじゃなかろうな?!」
「アレしかなくないですか?」
「ほんとバーカお前!!」
そこまで罵倒されることだろうか。
「そんなにバカだろうか…」
「もーっ!天童さんっ創ちゃんがしょんぼりしちゃったじゃないですかー!」
「この豆腐メンタルめー!!」
豆腐で悪かったな。
ちょっとへこんでしまったから、近くの岩に腰掛けて後続を待つことにした。後ろは崖だが問題ない。凛は俺の膝の上に座って頭を撫でている。これが天使か。
しばらく頭を撫でられた後、凛は俺の胸に頭をぐりぐりして甘えてきた。天使か。まごうことなき天使だな。
「…どうしたんだ凛」
「んにゃーん」
「ゔっ」
破壊力抜群の甘え顔を向けられて一瞬心臓が止まった。
ついでにのけぞったらバランス崩した。
「おっと」
「わわわっ創ちゃん?!」
バランス崩した勢いで後ろに落下。膝に乗った凛も諸共だ。
まあ崖から落ちるくらいならなんてことはない。凛を抱きかかえて、崖を何度か軽く蹴り飛ばして勢いを殺し、十分減速したタイミングで斜面に着地した。崖とは言っても切り立った岩肌ではないからな。そんな危ないところに凛を連れてはいけない。
「悪い、バランス崩した」
「大丈夫!創ちゃんと一緒なら安心にゃ」
なんていい子なんだ。一生守る。
さっさと戻るために、凛をお姫様抱っこして崖を駆け上る。駆け上るというか跳んで登ってるんだが。垂直な壁でも駆け上れるしな、跳べば。
華麗に元の場所に着地すると、ちょうど天童さんと希が到着したところだったらしく、着地の衝撃に天童さんがビビっていた。
「うおっ?!何で今下から飛んできた?!」
「ちょっと落ちた」
「ちょっと落ちたでそんな平然としていられる高さじゃないんですけど?!」
「そうですか?崖っぽいですけど斜面だから死にはしませんよ」
「俺からしたらこれは斜面じゃなくて壁なんだよなぁ!」
天童さんがビビり散らしているがなぜだろう。希も遠い目をしている。変なことをしただろうか。
「…はぁ、はぁっ、むっ無駄ですよ天童君。どうやら、っ、彼の中では、大したことではない、ようなので」
「マジかよ那珂ちゃんのファン辞めます。これだから天才は…!」
「あなたも天才じゃねぇですか」
「もちろん俺も含めてだぜ。てか滞嶺君敬語崩れてきてないかね?」
「まあ慣れた仲だからいいかと思って」
「なんだよ天童さんはちょっと嬉しいぞこのやろう」
「いっくん友達少ないもんねー」
「うるせぇ!知人は並の人間の数百倍はおるわ!!」
後ろから松下さんも海未に支えられて追いついてきた。海未は若干しょげている。山登りにテンションを上げすぎて松下さんの体力を根こそぎ奪ったことに罪悪感でも感じているのだろう。
「…急で悪いんだが、希は何で天童さんをいっくんと呼んでんだ?」
「名前が一位だからいっくん」
「やたら可愛らしいな」
「やめんか。せっかく慣れてきたというのにちょっと恥ずかしくなるだろ」
「いっく〜ん」
「くぉーら背中に頭をぐりぐりするんじゃない。ラブラブカップルを見せつけるのは今じゃないぜ」
今更だが本当に仲良いなこの二人。天童さんはだいたいいつも胡散臭いのに、希といる時だけはただのいい人に見える。見えるだけかもしれないが。
「うーっ凛も負けないにゃ」
「ん゛っ、どうっどうしたんだ凛」
「凛も頭ぐりぐりして対抗するにゃ」
「おっおう」
「おい滞嶺鼻血出てんぞ」
仲のいい二人を見て凛が対抗心を燃やしたようで、俺の胸に頭をぐりぐりしだした。やめろ、可愛さが限界突破して俺が死ぬ。
そしてよく見ると海未も松下さんに頭をぐりぐりしていた。負けず嫌いかよ。
「おっほー!!ついに山頂に到着だな!!いやーいい景色だ、雲が近い!!」
「んーっ、スピリチュアルやね!」
「や、やっと着きましたか…はぁ、つ、疲れた…」
全部で1時間以上歩いただろうか、ついに山頂にたどり着いた。なるほど、この程度の傾斜でも長く登ればこんなに高くまでこれるのか。山はすごいな。
「わぁ…すっごく高いにゃー」
「そうだな。足場は悪いが、もう少し登れるところがあるぞ」
「行ってみよ!」
「山登りを嫌がっていた割にはアクティブだな…」
「前みたいに危なくないもん」
「確かにな」
凛も元気が出たようで何よりだ。険しすぎない道のりだったのがよかったのだろう。
「………あの、滞嶺君、申し訳、ありませんが、僕からしたら、ものすごく、険しい道のり、でしたよ」
「いやものすごくってほどじゃなかったが、実際楽な道のりではなかったぞ。君と凛ちゃんの身体能力の高さを思い知れちくしょう」
「…そうですか」
「そこ落ち込むところじゃないでしょお?!」
案外厳しい道のりだったようだ。
なんとなくそんな気はしていたが、俺の思う「普通」は割と普通じゃないらしい。
高校入るまではちょっと力が強い普通の男子だと思ってたんだがな。
「創ちゃんっ」
「…どうした?」
「普通でも普通じゃなくても、創ちゃんは創ちゃんだよ。凛は創ちゃんがだーい好きにゃ」
「ゔっ」
「おっと心臓発作で倒れても誰も病院まで連れて行けねーぞ?」
「罵倒にも弱いのに褒められるのにも弱いって生きづらそうですね…」
うるせぇな。
「はっはっはっ他人の心の声が聞こえちゃう誰かさんの方が生きづらいだろ絶対」
「他人の行動全部把握しないと気が済まない誰かさんには言われたくないですね?」
「ほーう言ったな貴様」
「満身創痍の僕に何をするつもりですか」
「自分の貧弱さを盾にする…だと…」
「さりげなくディスるのやめてほしいのですが」
「バレたか」
歳上2人が急に煽り合いを始めた。胃が痛くなるからやめろ。
「やめてくださいよ。何であんた達微妙に仲悪いんですか」
「んー?そりゃ才能の相性が悪いからな」
「僕は彼の心を読む。天童君はそれを念頭に入れてシナリオを組む。僕はそれを読んで、気に入らなければ裏をかく。天童君はそれを見越してシナリオを修正する…と、心理戦のイタチごっこが始まるんですよ。お互い徹底的に思い通りに動かないわけですから、気に入らないことばかりですよ」
これ以上ないくらい面倒な組み合わせだな。よく喧嘩しないでいられるもんだ。
そう思っていたが。
「まあ、だからといって嫌いなわけじゃないのさ」
「え、そうなんすか」
「そうですよ。気に入らないのは否定しませんが、人としては悪くない方ですから。他人の人生まで手の届く限り救おうとする姿勢自体は好ましいんです」
「相手を思いやり、最も傷つかせず、最も穏便に事が進むようにコントロールできる。読心とかいうレア能力の使い道としては相当倫理的に優秀だろ?流石は准教授ってところだ、割と尊敬してんだぜ」
「…なんか、意外ですね。2人ともよく険悪な雰囲気になってたと思うんですが」
「まぁ気に入らないしな」
「気に入らないですからね。今みたい僕が言おうとしたことをわざと先に言ってきたり」
「おっそ〜い♡雑ぁ〜魚♡」
「突き落としますよ?」
「こっから落ちたら死ぬなぁ」
ややこしい2人だな。
「それに共通点もあるからな」
「?」
「「愛する人を幸せにしようと思う強い意志」」
「…それは俺にもありますけど」
「もちろんそうだろうが、少し意味合いが違うんだよ。君や藤牧君、茜あたりは根っからのお人好しだから、人を大切にするのは当然ってタイプだろ?」
「あー…まぁ…」
それはまぁ、大切にするべき人はたくさんいるからな。
「俺や明はな、自己中なんだよ」
「はあ」
「普段は自分が最優先です。天童君は自分が一番優秀だという自負があるから、僕は他人に邪魔されたくないから…と理由は違いますが、まずはこの才能を自分のために使うということに関しては同じです」
「俺は他人を蔑ろにしてきたし、明は他人に無関心を貫いた。それが最も幸せになれる方法だと思ったからな」
「でも、僕の前には海未さんが…」
「俺には希ちゃんが来てくれた。そのせいで世界変わっちまったんだよ」
「自分より大事な人ができてしまいましたから。こんな僕らを愛してくれる人を、幸せにしないわけにはいかないんですよ」
驚くほど早く流れていく雲をバックに、清々しそうな表情で2人はそう言った。
なるほど、わからなくもない。俺は元々自分よりも弟達を優先してきたし、雪村さんや桜さん、御影さんは自分が幸せになるのを諦めた人だった。湯川は元々花陽のためにしか生きていないし、藤牧さんなんかは他人を救うことに人生捧げている。…茜はよくわからん。
パートナーと出会うまで、自分を最優先に生きてきたのはこの2人だけだったんだな。
俺たちの認識では、恋人とは幸せにすべき人の一人だ。勿論一番幸せにしたい人ではあるが。
でも、天童さんと松下さんは、恋人とは幸せにすべき
重さが違うな。
「重すぎませんか」
「そんなことないよ。うちは幸せやん」
「はい。それにそういうところも含めて好きになったんですよ」
「あらま聞いてたのか?恥ずかしいぜちくしょう」
「どうせわかっていたのでしょう…えっ本当に恥ずかしがってるのですか?」
「俺だって常に未来予測してるわけじゃねーのー。つか心読むな変態」
「あなたに変態呼ばわりされる筋合いは無いんですけど」
今までどこにいたのか、希と海未がひょっこり顔を出した。こいつらは多少愛が重いくらい平気なのか。
と、不意に背中に何かが飛びついてきた。何かというか、間違いなく凛だが。
「ん、どうした」
「…凛も」
「ん?」
「凛も、創ちゃんの一番がいい…」
背中に顔を押し付けながらそんなことを言う凛。会話のどこを聞いてどう解釈したのかわからないが、若干しょんぼりしている。
「安心しろ」
「にゃあん」
背中から引き剥がして正面に持ってくると、ちょっと涙目で顔を赤くして目を逸らす凛がいた。ちょっとご機嫌ナナメな天使がここにいた。本格的に心臓が止まりかねないかわいさだ。
「凛は紛れもなく俺の中で一番大切な人だ。今も、これからも、ずっと」
「あぅ…」
「誰かぁー!!誰かブラックコーヒーをくれぇー!!このままでは砂糖になってしまうー!!」
「僕たちも人のことは言えないと思いますよ」
「抱けえっ!抱けっ!!抱けー!!」
「それ言いたいだけじゃないですか」
「声に出して言いたい日本語TOP10,000くらいには入るんじゃないかね」
「範囲広すぎません?」
外野が何か言ってるがほっとこう。
だいたい、愛の重みがなんだろうが関係ない。凛は誰よりも幸せにしてみせる。一つの誓いだ。
「さ、そろそろ降りてお昼ご飯食べに行こ?お腹空いて動けなくなっちゃう」
「ん?ああ、もう10時回ってんのか。案外時間かかってたんだな」
「……………あっ、そうか、降りなきゃいけないんですよね…」
「あ、明さん、帰りはロープウェイを使いましょうか…」
「ロープウェイあったんですか…」
「えっ何でロープウェイなんか使うんですか?」
「滞嶺君…明を殺す気か…?行きに様体を心配してたのは幻聴だったのか??」
「俺が担いでいきますよ」
「遠慮しておきます…」
「茜は嬉々として乗ってくるのに…」
「創ちゃん、男性がみんな茜くんみたいな感じじゃないんよ?」
いつの間にかいい時間になっていたようだ。しかしわざわざロープウェイを使うのは…お、そうだ。
「じゃあ俺は凛を担いで先に降ります」
「いやそうはならんだろ」
「しかも何で貴方達が先に到着する前提なんですか…」
「でも創ちゃんだったら先着きそうやね」
「着くでしょうね…」
何故か変な目で見られた。
この後、宣言通り俺は凛を背負って先に一直線に麓まで降りた。当然ロープウェイより先に着いたわけだが、ロープウェイに乗っていた4人は全員遠い目をしていた。何故だ。
ちなみに凛は俺と二人きりになれたことにご満悦のようだった。いい笑顔だったから俺の心臓は弾け飛んだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
天童さんと松下さんの関係を中途半端に描写したままだったような気がしたので、せっかくなのでここで深掘りしました。あとはひたすらイチャイチャさせただけです。滞嶺君の鼻血が止まらない!笑