笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
そしてあけましておめでとうございます(激遅)
のんびり書いていたらすごく時間かかってしまいました…。
前回からお気に入りしてくださった方も2人(たぶん)いるんですから早く書きなさいよ私!!
今回は、多音さんに「夫婦喧嘩してから仲が深まるところを見てみたい!」との感想をいただいたので喧嘩させました(外道)。そういえば本作で喧嘩してるところあんまりなかったなぁ…と思ったので書いてみました。
というわけで、どうぞご覧ください。
※安定の1万字です。
人には得手不得手がある。
だから他人のできないことを指差してバカにしてはいけない。当然のことだ。
「ぶぁーっははははははは!!!縄跳び10回で!!ヘロヘロに!!なってる!!!プギャー!!!」
「天童さん…死んで」
「これ以上ないってくらいドストレートな罵倒!!」
でもそんなの関係ねぇ!!
生粋の愉悦部にして煽り勢のこの俺!天童サマが!!他人の不出来を馬鹿にしないわけがない!!
俺ってばできないことの方が少ないタイプの人間だしな。うーんクズだな!!
ちなみに今は見ての通り、茜の体力作りを見学してるところだ。そう、見てるだけ。実働部隊は藤牧君の仕事だ。俺は働かねえ。そして滞嶺君は「殺されそう」という茜の意見によりリストラされた。今頃死ぬほど落ち込んでいることだろう。
「10回跳べるようになっただけでも快挙なのですよ、天童氏。始めた頃は5回で瀕死でしたから」
「もう立てない」
「世界にはこんなに貧弱な生き物がいるんだなぁ」
「しみじみ言わないでください」
それにしても幼児もびっくりな体力だ。いや幼児の方が体力ありそうなレベル。幼児の体力なめんな。
藤牧君の自宅にある(なぜか無駄に広い)トレーニングルームを使っているのだが、開始早々茜は床のシミになりかけている。貧弱も極まりない。
「やっと体力作りをする気になったのは喜ばしいことではあるのだがな、今までよく生きて来れたな」
「うっさい」
「しかしまた何で急にやる気出してんだ?いや知ってるけど」
「知ってるなら聞かないでくれませんか」
「不機嫌すぎるぅ〜」
茜はマジで運動嫌いである。心の底から嫌っている。だからにこちゃんにブツクサ言われても頑として運動しなかったんだが、最近ついに重い腰を上げたのだ。
それは何故か。
「体力不足で彼女と喧嘩するやつなんて見たことねえよ俺ちゃん」
「言わないでください」
「なんだ、そんな理由だったのか?」
「そんな理由とはなんだ。にこちゃんとガチ喧嘩したの初めてだから凹みまくって穴あくくらいだぞ」
「ナマコかよ」
「ナマコは穴空かないでしょ」
「いや?ナマコの体細胞はキャッチ結合組織で出来ているから穴を開けることは難しくない。具体的には、長時間圧力を加えることで『溶ける』性質を持つため、胴体の一部を指で押さえ続ければ穴が開く」
「マジレスやめて」
はーいナマコの豆知識知らなかったヤツ挙手ー。ナマコは内臓全部無くなっても再生する超生物だから舐めちゃいけないぜ!!ほんとに生物なのかねアレは。何で俺はナマコの解説してんだ??
ともかく。初のガチ喧嘩を解決できなくて、悩んだ挙句頑張って喧嘩の原因そのものを克服するという結論に至ったらしい。まあ確かに根本の原因を解決するのは大事だと思うけどな、先に仲直りするって考えはなかったんかい。
「つーか体力つけても仲直りは出来んだろ」
「他に何も思いつきません」
「何で仲直りする唯一の手段が体力作りなんだよ。どーゆー思考回路してんだ」
「何話したらいいかわかんない…」
「うーん、話し合いで仲直りするのが難しいのはわからんでもないんだが」
「天童さんは喧嘩した時どうしてるんです」
「俺が話術で負けるわけないだろ?」
「クズだ」
「お前ェ!!!」
希ちゃん一筋なのに変わりはないからいいんだよ!!
え?さっき自分でクズって言ったじゃん、だと?それはまああれだ、他人に言われるのはなんか違うだろ。違うんだよ。
「しかし天童氏のいう通りだろう。順序が違う。体力をつけるのは急務ではあるが、矢澤嬢と話をつけて解決した後にすべきだ。先回りして後の問題を潰しておくのも悪いことではないのだが、先延ばしにしてはいけない事象もあるのだ」
「うー」
「ほら唸ってないで立って歩いて帰るんだよお前の愛しのにこちゃんの元へ」
「ううう」
「いや立てコラ引っ張ってんだから」
「疲れて立てない」
「今縄跳び10回跳んだだけじゃんよ!!」
無理矢理立たせようにも既に足腰が限界のようだ。マジでどういう身体の構造してんだこいつは。
「はぁ…」
「ため息ついてもレポートは進まないわよ」
「わかってるわよ」
今日は絵里と一緒に希の家に来て課題のレポートを書いてるんだけど…憂鬱で全然進まないわ。
絵里も希も頭良いからガンガン進めてるけど、私は全然進まない。別に私の頭が悪いってわけじゃないのよ。違うったら。
頭が回らない理由があるだけ。
「茜くんと喧嘩したの、まだ気にしてるん?」
「悪かったわね」
「心配してるのよ。にこと茜が喧嘩するなんて珍しいから」
「…いつも殴ってるのは喧嘩に数えないの?」
「それはにこが一方的に殴ってるだけじゃない」
「いつも殴ってる自覚はあったんやね」
そう、茜と喧嘩した。
何かされたわけじゃないし、いつもしているやりとりだったはずなのに、何故か凄くムカついて、私が一方的にキレて家から追い出しちゃった。
そんな、追い出すほどのことじゃなかったのに。
「一体何があったの?」
「…大したことじゃないのよ。茜が…最近一緒に出かけてくれないってだけ」
「喧嘩の原因っぽくないね」
「だから大したことじゃないって言ったでしょ。でも最近って言っても半年近くずっとだし。理由はいつも『疲れちゃうから』だし。体力つけなさいよって言ってもめんどくさがるし。なんかムカついちゃって」
「うーん…確かに同じリアクションされたらイラッとくるわね」
昔はもっと、私のためならって無理にでも動いてくれたのに。…そういう茜に私も甘えてたんだろうし、そのままじゃダメだったと思うけど、でもやっぱり、なんか嫌だったのよ。
「絵里は御影さんと喧嘩したりしないの?」
「しないこともないけど…大地さん、私が怒るとものすごく落ち込むから…」
「なんか想像できるわね…」
「素の大地さんは結構子供っぽいから、拗ねちゃう時もあったりして、そういう時はちょっと言い合いになったりするわね」
「それで…どうやって仲直りしてんのよ?」
「…大地さんが涙声になっちゃうから…」
「まったく参考にならないっ!!」
「茜くんは全然泣かへんもんね」
「人生で3回しか見たことないわよ」
「思ったより多いわね」
当たり前だけど、御影さんと茜は人種が違いすぎるわ。参考になるはずない。多分天童さんも似たような感じ…いや案外茜と似てるかも?
「希はどうなのよ」
「うちと天童さんはよく喧嘩するよ」
「
「意外ね…」
「だって天童さん、すぐ女の人とお食事行ったりしちゃうもん」
「クズじゃないの」
ある意味予想通りだけど、天童さんやっぱり悪い人なんじゃない?
「…ほんとはね、出来る限り避けようとしてくれてるのは知ってるんよ。どうしても必要な会食だけ選んで、出来るだけ2人きりにならないように頑張ってくれてる。でも、やっぱり…やだって思っちゃうことは沢山あるし、そういうときは喧嘩しちゃうな」
「…ふーん」
「希って独占欲強いものね」
「そ、そんなことない!」
希って結構寂しがりだし、余裕ありそうに見えて心配性だから不安になるのもわかる。
「で、どうやって仲直りするのよ?」
「それは…仲直りっていうか、うちが落ち着いたらおしまいっていうか…」
「どういうこと?」
「…天童さん、絶対にうちを責めないから。いつも、うちが我慢できなくて、わーって言っちゃって、それを絶対反論せずに聞いてくれて、謝ってくれて、うちも落ち着いたら謝って、いつもそれでおしまい」
「…それ喧嘩じゃなくて希が勝手に爆発してるだけじゃない」
「う、うん…」
それはそれで参考にならないけど、これはどっちかって言うと希に遠慮なくわがままを言わせる天童さんがすごい。
よくある痴話喧嘩みたいな言い方してるけど、そもそも希は自分の本音を他人に話すのがめちゃくちゃ苦手なタイプだし。多分そういう性格もカバーするように動いてるのね、天童さん。悪そうな雰囲気出しといて茜より遥かに気が利くのがちょっとムカつく。
「わかってたけどやっぱりあんまり参考にならないわね」
「当たり前よ。普通じゃない人たちばかりだもの」
「…そういえばそうね」
よくよく考えると、いや考えなくても元μ'sメンバーの彼氏たちは変な才能を持った変な男ばっかよね。今更だけど。頭の中が一番マトモなのは創一郎か御影さんかしら。松下さんは常識人だけど心読めちゃうし。
「はぁ…じゃあ誰に聞いても参考にならないわね」
「聞くこと自体は悪くはないと思うわよ?情報は多いに越したことはないわ」
「そうやね。経験値にはなるかも」
「うーん…」
まあ、変なら変で逆に似通ったところがあるのかもしれないわね。今度会った時に聞いてみようかしら。
「さ、まずは目の前のレポートを片付けてからね」
「うっ」
「にこっち全然進んでへんよ?」
「覗くんじゃないわよ!!」
喧嘩とは全く関係ない障害もあるけど。っていうか何で絵里と希は話しながら終わらせてんのよ。
「喧嘩…か」
「…俺たちが喧嘩するタイプに見えるか?」
「創一郎は見た目だけならそう見えるよ」
「そ、そうか…」
「凹まないの」
翌日、バッキバキに筋肉痛な体を労りながら創一郎と一緒にジムに来た。結局体力作りは続けます。はい。というかお察しの通りまだにこちゃんとは話せてません。はーいどうせ僕はヘタレでーすイェーイ。
創一郎はヤバい大きさのベンチプレスを軽々こなしながら僕の話を聞いていた。ちなみにゆっきーも義足のリハビリでウォーキングマシンをゆっくり歩いてる。僕もゆっくり歩いてる。走ろうとしたら創一郎に止められた。
そして実はもう1人ジムに来てる。
「……………………???」
「寝転がってるだけじゃ腹筋は鍛えられねぇぞ湯川」
「…………りっ理論上は………上体が……上がる……………???」
「理論に体が追いついてない模様」
湯川君だ。
創一郎が連れてきたらしいんだけど、腹筋するやつの上で微動だにしない。
お仲間がいて僕はとても嬉しい。
とっても嬉しい。
「ほら腹筋に力入れて、こう…」
「いっいたたたたたっ痛いっ」
「無表情で痛がられても痛みのレベルがわかんねぇよ…。いや、これ腹筋云々よりも整体した方がよさそうだな。そりゃそうか、生活の大半は座ってモニター見てるとか花陽が言ってたしな。腰悪くなるに決まってる」
「腹筋…」
「つか何でまた急に腹筋鍛えるとか言い出したんだお前」
「腹筋鍛えるとか言い出したのは…腹筋鍛えると花陽が喜ぶと天童が言っていたから」
「天童さん…また余計なことを…」
「僕も腹筋したい」
「まずは脚の筋肉痛を労われ。それからだ」
「ひぃん」
腹筋バキバキになったらにこちゃんを悩殺できそうな気がする。無理かな。無理か。仮に悩殺できるとしても僕は腹筋バキバキにはなれません。
「湯川君も喧嘩とかしなさそうだよねぇ」
「喧嘩?」
「そう喧嘩。しないでしょ」
「喧嘩?」
「もしかして喧嘩の概念自体をご存知でないのか」
「ふっ。俺は知っているぞ」
「普通は知ってるんだよなぁ」
湯川君、まさかの喧嘩というものを知らなかった模様。本当に知識の偏りがパない。あとドヤ顔するタイミングじゃないよゆっきー。今日の面子は頭脳の偏りもパない。
「雪村さんは…少なくともことりが怒ることはなさそうですが」
「…全く無いわけではない。…いや、怒ったふりはよくするんだが、どうも怒っているようには見えないからな」
「まあ怒るの得意なタイプじゃないよね。どっちかっていうとゆっきーが短気なのが心配」
「…そんなことはない」
「どの口が言うか」
ことりちゃんとゆっきーだったら圧倒的にゆっきーの方が短気だ。バカにされると秒でキレるし。ことりちゃんに手を出すやつがいたら呪い殺すと言わんばかりの視線を投げつけてくるし。今も睨んできたし。怖いね。
「…むしろ俺が怒ることなんてない。俺がことりに文句を言えるものなんてないからな」
「ゆっきー案外ネガティヴなんだよね」
「そうなのか?」
「…そんなことはない」
「ネガティヴじゃない人はゆっきーみたいに煽られてすぐキレたりしないんだよ」
「なんだと」
「そういうとこだぞ」
ほらまたすぐ睨む。
創一郎はベンチプレスから離れて、床に転がってるダンベルを持ち上げた。…多分ダンベル。両端のおもりがすごい大きさしてるけど。
「ふっ…俺も凛と喧嘩することはほとんどないな。だから仲直りの手段を聞かれても答えられん」
「役に立たないなぁ」
「ダンベルぶん投げるぞ」
「殺す気じゃん」
「80kgのダンベルで死ぬかよ」
「極めて高確率で死ぬよ」
まあ創一郎はそうだと思ったよ。見た目に似合わず喧嘩しない…いや悪いやつは容赦なく叩きのめしてるけど。時々ご迷惑なヤンキーをアスファルトに叩きつけてるのを見かけます。怖すぎ。
でもメンタルは豆腐だから多分愛する凛ちゃんに怒る勇気などないのである。筋肉が解決できる問題に限り無敵、それが創一郎。脳筋め。いや脳筋の割には勉強できるしなんて言えばいいのか。
てゆーかそのダンベル80kgもあるの?人間より重いじゃん。
「湯川君はさっき聞いた通りだし。花陽ちゃんが湯川君に怒るのも想像できないし」
「まあ…そうだな。花陽の性格的にもそう簡単に怒らないだろう」
「…喧嘩なんてしないに越したことはないだろ」
「……………………そうだね」
「今まさに喧嘩してるヤツにそういうこと言わないでください」
「理論上は……………持ち上がる………………」
「あーやめろやめろ湯川、280kgのベンチプレスなんかお前ができるわけないだろ。持ち方だけ妙に綺麗だが無理は無理だ、持ち上げることも出来ない。好奇心だけでチャレンジすんな潰されて最悪死ぬぞ」
「………駆動式外骨格
「反則すんな」
湯川君が何かやってるけど今の僕はゆっきーの一言で致命傷を負ったのでそっちでなんとかしといて。
「ほんとにどうしよう」
「…謝るしかないだろ」
「ああ、俺もそう思う。結局許してもらうには謝って、反省して改善するしかない。まぁ謝るだけじゃなく、何が悪かったのかを明確にして同じことをしないように努力しねぇとダメだろうが」
「うぇえ」
「真姫みたいな声出てんぞ」
「それは真姫ちゃんに失礼じゃないかな」
謝るって言ったってね。そもそも話聞いてくれるかどうかってところから始まるんだよ。謝るところまでたどり着けるかの問題。だってにこちゃん頑固だし。
「何にしても、最終的には謝らなきゃならねぇだろ。謝らずに済むわけねぇんだし。どうやって謝るかは…自分で考えなきゃダメだろ」
「考えてわかるんだったらもうやってるよ」
「不貞腐れるなよ」
「不貞腐れてませんー」
どうすべきかはわかってるけど具体的にどうしようかってのが思いつかないんだってば。
「…先回りなり待ち伏せなりしておけばいいんじゃないのか」
「発想がストーカーのそれじゃねぇですか」
「それだ」
「嘘だろ」
ぎこちなくてくてく歩いてるゆっきーがぼそっと言った言葉で閃いた。なるほどその手があった。
だって僕はにこちゃんの家の合鍵持ってんだもん。
「ゆっきーが服作る以外で初めて役に立った」
「…なんだと」
「睨まない睨まない。ところで創一郎、僕もう歩き疲れたんだけどどうやって止めればいいのこれ」
「歩くだけしかしてねぇのに疲れるの早すぎだろ…にこがキレるのもわかるな」
「やめて」
「………………………痛い」
「あーバカ湯川っ何で中途半端に重いバーベル持ち上げてようとしてんだ。今腰やっただろお前、いかに持ち方が上手くて腰に負担がかかりにくいとは言っても限度があるんだぞ」
そうと決まれば即実行、したいんだけどこれどうやって止まればいいの。創一郎止めて。湯川君が大変なことになってるのも承知してるけどまずこれ止めてへぶっ。
「…おい滞嶺創一郎、茜がコケたぞ」
「あーもうっお前らは幼児か?!」
失礼なこといいよる。
幼児の方が体力あるよ。
「おまたせー!はいっ!ほむまん!!」
「ありがと」
「それにしてもにこちゃんから相談だなんて珍しいね?」
「大学の課題のことは流石にわかりませんよ?」
「ちょっと。にこをなんだと思ってるのよ」
「にこちゃん頭悪いじゃない」
「真姫ちゃんが良すぎるだけよ!!」
「いえ…客観的に見ても悪い方かと…」
「うっさいわね!!」
何とかして大学の課題を終わらせた次の日。穂むらに穂乃果と海未と真姫ちゃんに集まってもらった。
そうよまだ茜と話せてないのよ。悪かったわねヘタレで。
「茜と喧嘩をしたから仲直りしたい…とのことですが…」
「何で私たちなの?」
「あんたたちが一番喧嘩してそうだからよ」
「「「そんなことない」よ!」ですよ?!」わよ!!」
ちなみに。このメンバーは私が独断と偏見で選んだわ。絵里と希は昨日聞いたからいいとして、凛とかことりは喧嘩しなさそうだし、花陽は彼氏の性質も考えて論外。穂乃果はいっつも桜を振り回してるし、海未は元々頑固だし、真姫ちゃんはどっちかっていうと藤牧がアレだから。
「私なんて喧嘩にすらならないわよ」
「えー嘘でしょ?」
「嘘じゃないわよ!蓮慈は私が文句言うと全部受け入れて直してくるから喧嘩にならないのよ。直してくれてるのにそれ以上文句言えないし」
「さすが万能の天才ね…」
「初めて会った時はもっと偉そうだったのにねー」
「穂乃果っそんな言い方してはいけませんよ」
「いいわよ別に、事実だし。昔は天才だ天才だってうるさかったし、多分何言われても直さなかったと思うわ」
「真姫の方がはるかに辛辣ですね…」
だいたい藤牧のお母さんの手術が成功したときくらいから天才って言わなくなったらしい。茜が言ってた。自分にも不可能なことがあるって気づいたとかなんとか言ってたらしいけど、正直嫌味にしか聞こえないわ。あいつに出来ないことって何よ。片腕片目で脳外科手術する奴なのに。
「過剰なことされても怒るの通り越して呆れちゃうし」
「過剰なこと?」
「…去年だったかしら、美味しいからって言って渡してきたみかんがすごく酸っぱかったことがあって」
「はあ。別の酸っぱくないみかんをわざわざ選んで買ってきたのですか?」
「そんなレベルじゃないわよ。新しく品種改良したみかんを育て始めたわ」
「一周回ってバカじゃない?」
加減ってものを知らないのかしら。
「そんな感じだから怒るに怒れないわよ」
「なるほどね…。海未はどうなのよ?」
「えっと…まぁ、確かに時々喧嘩はしますが…」
「やっぱりしてるんじゃない」
「うっ」
「でも松下さんって心読めるんだよね?喧嘩しないように頑張ったりしそうじゃない?」
「明さんは私といる時はあまり心を読まないようにしているんです。だから都合よく争いを避けたりはしなくて…」
「天童さんみたいな感じね」
「そうかもしれませんね。それで、明さんは…ちょっと頑固なところがあるので、時々喧嘩にはなります。最後にはお互い謝っておしまいではあるんですが」
「2人とも頑固なら喧嘩にもなるわよ」
「私は頑固じゃありません!」
「「「………??」」」
「なんですかその顔は!!」
ちょっと何言ってるかわかんないわね。
「穂乃果はどうなのよ」
「私の弁明は?!」
「えー!喧嘩なんてしないよ!!桜くんが怒ってるだけで!!」
「それは喧嘩じゃない?」
「喧嘩じゃないよ!」
「そんなことだろうと思ったわよ。痴話喧嘩に慣れすぎてるだけじゃないの」
「そんなことないよ!!桜くん文句言った後はすぐお仕事に戻っちゃうもん」
「相手するの諦めてるだけじゃない?」
穂乃果のズボラさに腹を立てて叱ったはいいけど全く手応えなくて諦める桜が容易に想像できるわ。
まあでも、それはそれで円満なのかも…?桜もああ見えて穂乃果に甘いし、案外喧嘩だと思ってなさそうだし。
「まあ要するに、まともに仲直りしたことはないわけね」
「謝りはするよ!」
「当たり前です。自信満々に言わないでください」
「海未ちゃんが厳しい…」
「いつもじゃない」
…。
悪いことをしたなら謝る。もちろんそれが当たり前。
でも、私、まだ茜に謝れてない。
それに…今までも。茜に本気で謝ったことってほとんどないかもしれない。だって茜は私が謝るまでもなく許してくれる。「にこちゃんが好きだから」って言って。それに甘えて殴るわ蹴るわ、挙句勝手にキレて追い出すわ…。
それでも茜は私を怒らない。ヘタレなのもあるとは思うけど、何より優しいから。どれだけ私に傷つけられても、きっと「そんなんで嫌いになんかならないよ」とか言うのよ、あいつは。
このままでいいの?
いいわけないわよ。
茜から卒業するって約束したじゃないの。茜はもう一人で歩いてるじゃないの。私だけ甘えて今まで通りってわけにはいかないわ。
「いいよ、にこちゃん」
「…えっ」
「茜くんに会いに行くんでしょ?そんな顔してた」
「………穂乃果、あんた時々怖いわ」
「なんで?!」
「まあでも、ありがと。行ってくるわ」
穂乃果が察し良すぎて怖いわ。
昔から変な時だけ役に立つんだから。ま、μ'sのリーダーやってたんだから当然のスキルかもしれないけど。
私も負けてられないわ。
「あ、おかえりにこちゃん」
「………………何で自分の家にいないのよ」
「息切らしてるあたり一回うちに寄ったのかな」
「あんたは…あんたはこういう時に限ってタイミング悪いわね!!」
「ぶぎゃる」
にこちゃんの家でカレー作りながら待ち伏せしてたら、にこちゃんがぜーぜー言いながら帰ってきた。ダッシュしたのかな。
「…あんた鼻どうしたのよ」
「鼻?今しがた殴られたよ」
「殴ったのはデコよ!!怪我してる鼻に追い打ちかけるほど性格悪くないわよ!!」
「デコならいいってわけでもないんだけどなぁ」
脳震盪とか起こしそうじゃない?刃牙だったら起こせると思う。多分創一郎もできる。
「体力作りしてたら顔から転んだ」
「っ」
「大丈夫だよ、創一郎がなんとかしてくれたし。まっきーがいれば即完治ではあったけど、まあ高望みはしないよ」
にこちゃんが辛そうな顔してたからフォローいれといた。どうよこの見事なフォロー。褒めていいんだよ。
「要するに大したことないから
「ごめん…っ!!」
「わあ」
突然抱きつかれてしまった。全然見事なフォローでは無かった模様。っていうかなになに一体どうしたの。嬉しいけどハグは喧嘩してた2人がすることではないよ。いや仲直りするつもりだったけど。
「私が…っ、私がつまんないことで怒ったから無理したんでしょ。私がわがまま言ったから…」
「…なんだ、にこちゃんも気にしてたの」
「なんだって何よ」
「むしろ僕の方が謝ろうとしてたのに。ごめんね、いつも言い訳ばっかりしてお出かけ断っちゃって」
謝りながら、僕もにこちゃんの背に手を回す。ちょっとだけ震えていた。
「…私が悪いのよ。今までずっと、なんでも言うこと聞いてくれる茜に甘えてきたのが悪かったの」
「だからってデートお断りし続けて許されるわけじゃないんだよ」
「そうかもしれないけど!…私だけ独り立ちできてないみたいで、それはダメってわかったのよ。だから、ごめん」
「僕もなんだかんだ言ってにこちゃんに甘えてきてたんだからお互い様だよ。ごめんね」
ちょっと強めに抱きしめてあげたら、にこちゃんの力も少しだけ強まった。ハグが共鳴してる感じがする。まあ実はちょっとと言いながら結構強めに抱きしめてるんだけどね。筋力の敗北。敗北を知りたいどころか敗北しか知らない。どうも茜です。
「まあ結局お互い悪かったってことだよ」
「…そういうことにしといてあげるわ」
「何で譲歩してあげたみたいになってるんだろう」
「うっさいわね」
「うぐぇ」
ハグからの鯖折りが極まった。僕は死んだ。嘘嘘死なないよ。
「でも、出かけたら茜が疲れるのくらい知ってていつも誘ってるから気にして断らなくてもよかったのに」
「そう思ってるのは知ってたけど、それだとにこちゃんが不自由しちゃうでしょ」
「気にしないわよそんなの。茜と出かけるっていうのが大事なのよ」
「嬉しくてキュン死しちゃう」
「ふん」
「ぶぎゃる」
今度は頭突きが飛んできた。にこちゃんの技は多彩。
「僕が気にするんだよ。にこちゃんに気を遣わせちゃうくらいなら家にいた方がいいと思っちゃったの」
「なによそれ。言わなきゃわかんないわよ」
「だよね」
にこちゃんから離れて作りかけのカレーの様子を見る。丁度良い感じに煮込まれてるみたいだ。
「これだけ長く一緒にいても、
今日のカレーもいつものように美味しくできそうだ。
で、数日後。
「ふぎぃ…」
「ふむ、腹筋5回に到達するとはなかなか気合が入っているな」
「ま、今まで2回もいかなかったことを考えると急速な進歩っすかね。昨日腕立て伏せやらせて、一昨日は休みで…明日は縄跳びでしたっけ」
「その通りだ。筋肉に負荷がかかる運動は、筋繊維の回復を待ってから行うのが最も効率が良い。故に日によって行うトレーニングを変えるのがベストだな。…やはり君は私の知り合いの中でも特に優秀だな、滞嶺君。運動の事に関しては尚更」
「ま、ある意味専門っすからね。茜、聞こえたか?明日は縄跳びやるからな」
「ぶぁい」
「なんだ今の声」
「緊張状態で喉が閉まったか」
どうせ体力づくりするなら全力でやんなさいよ、というにこちゃんの計らいにより、超エキスパート部隊(2名)が結成されて僕の面倒を見にきた。なんてこった。まあ、創一郎がヤバい運動させてくるかと思ったけど、まっきーのおかげである程度抑えられてる。ある程度ね。キツいものはキツい。
「……………っていうかさぁ、これ、体力づくりって、いうか、筋トレ、では」
「兼ねてんだよ。体力だけつけても意味ねぇだろ」
「歩き続ける体力があるだけでは歩き続けることはできない。そのための筋力が伴って初めて運動は可能となる。ウェイトリフティングのような瞬間的な筋力を競う競技は別だがな」
「つっても持ち上げた姿勢を指定時間続けなきゃならねぇわけですし、完全に体力が不要なわけじゃないっすよ」
「支えるだけなら体力はいらないさ。必要なのは姿勢を保つ筋持久力だな」
「それはまた別なんすね…」
「僕を置いて、専門的な、話、進めないで」
死なないように考えてくれてるとは思うけど、どっかで死なないか心配だ。
頑張るけどさ。にこちゃんと心置きなくお出かけするために。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
…これ喧嘩なの??(自問自答)
ちゃんと喧嘩してるのか怪しい…これが今まで書いてこなかった弊害ですか…。
にこちゃんと茜くん意外の皆様はダイジェストでお送りしました。多分ガチ喧嘩が一番多いのは海未ちゃんと松下さんです。
これからものんびり更新していきますので、よろしくお願いします。