笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
いろんな作品の二次創作案は出てくるのですが、そんな全部同時進行できないしどうしよっかなー!状態です。好きにしろよって?仰る通りでございます()
というわけで、どうぞご覧ください。、
「こ、ことり先輩が、この秋葉で伝説のメイド「ミナリンスキー」だったんですか?!」
「そうです…」
「そういえば部室のサインにも反応してたね」
場所は変わって某メイド喫茶。…初めて入ったけど以外と普通な見た目だね。もっとこう、ピンクでギラギラしてるイメージがあったけど。店員がメイド服なこと以外は普通だ。あとメニューが恥ずかしいくらい。
「酷いよことりちゃん!そういうことは教えてよ!!」
「うぅ…ごめんなさい〜…」
幼馴染である高坂さんや園田さんも知らなかったようで、高坂さんが憤慨している。そんなに怒らなくてもいいだろうに。
「言ってくれれば遊びに来て、ジュースとかご馳走になったのに!!」
「そっちかい!!」
「なんてセコい発想だ」
怒ってるベクトルがおかしかった。
「じゃあ、この写真は?」
「店内のイベントで歌わされて…撮影、禁止だったのに…」
俯いて答える南さん。僕らに内緒にしていたバイトがバレたこと自体だけでなく、禁止されていた上で隠し撮りされていたのもダメージが来ているんだろう。週刊誌じゃないんだから隠し撮りなんてしなくてもよかろうに。週刊誌もしないであげてほしいけど。
「なぁんだ、じゃあアイドルってわけじゃないんだね」
「それはもちろん!」
「でも何故です?」
何故って何でメイドなんかしてるのかってことだろう。いやバイトくらい自由にさせてあげなさいよ。僕なんて働いてるよ。滞嶺君も僕のもとでバイトしてるよ。てか滞嶺君さっきから静かだな。目を閉じて瞑想してるな。女の子耐性ないのかな。
「…ちょうど3人でμ'sを始めた頃、帰りにアルバイトのスカウトされちゃって…」
「いまどきスカウターなんているのだね」
スカウトされる南さんもびっくりだがスカウトする方もびっくりだ。しかもメイド喫茶だし。普通に考えたら怪しいことこの上ない。南さんも警戒なさいよ。しかも話の内容的にはメイド服にテンション上がっちゃったからみたいな感じらしい。警戒なさいよ。
「自分を変えたいなって思って…私、穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違って、何もないから…」
「何もない?」
「穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張っていくこともできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしてない…」
「にこちゃんより持ってるじゃなうぼぁ」
「セクハラよ」
何もないと言うからにこちゃんより胸があるよと伝えようとしたら拳が飛んで来た。なんかキレが増してる気がする。痛い。しかし胸の話ってよくわかったねにこちゃん。
「そんなことないよ!歌もダンスもことりちゃん上手だよ!」
「衣装だってことりが作ってくれているじゃありませんか」
「少なくとも2年生の中では一番まともね」
色々フォローが飛んでくるが、南さんの表情は暗いままだ。
「ううん…私はただ、2人についていってるだけだよ…」
それだけ言って、後は何も語らなかった。
「何も頼まずに出てきてしまったけどいいのかな」
「仕方ないですよ、滞嶺くんが限界みたいですから」
「あんな空間に居られるか」
「結局店内で一言も話さなかったもんね」
「ヘタレにゃ」
「なんだと」
「にゃにゃにゃ」
あの後すぐに南さんはバイトに戻り、僕らは店を後にした。滞嶺君のメンタルが限界だったため何も食べたりすることなく。そんなにいたたまれなかったかな。その割には星空さんと仲良くじゃれてるけど。じゃれてるっていうか頭掴んでぐりぐりしてるけど。
「まあ今日はここまでかな。練習する時間もなくなっちゃったし、各自ランキング上げの作戦でも考えようか」
「茜は何か策はあるの?」
「ないね」
「なによ、あるかと思ってたのに」
「待ってな、今すぐ思いつく」
「ないならないでいいわよ!!」
とりあえずは時間も時間なので帰ることにする。他のメンバーとは別れた後、にこちゃんの家に寄るか寄らないかを考えていた時。
「茜、ことりのことどう思う?」
「にこちゃんには及ばないけど可愛いと思うよ」
「そうじゃなくて!!」
「んべっ」
正直に答えたら鞄が飛んで来た。痛い…あれっあんまり痛くない。さては置き勉してるなにこちゃん。
「どうしたら解決できるかって話よ!!」
「それ僕が考えるんかい」
「考えなさいよ」
「えー」
正直僕がなんとかしなくても幼馴染のお二人がなんとかしてくれると思うよ。あとにこちゃんのことじゃないし。
「あんたマネージャーでしょ」
「にこちゃんそう言って全部僕に押し付ける気じゃないだろうね」
「んなわけないでしょ。同じ部の仲間なんだからちゃんと考えてあげなさいよ」
仲間。
今まで長いこと僕らのもとに居なかった存在。
確かに大事にすべきかもしれない。
結果的ににこちゃんにつながる…かもしれないし。それなら少しは気にかけてあげようかなぁ。
「しかし、そうは言っても言葉でなんとかなるものじゃなさそうだけどなぁ」
「だからどうしたらいいと思うかって聞いてんのよ」
「そんなこと言われても」
僕困っちゃう。
「結局は穂乃果と海未への劣等感を感じてるわけよね?」
「そうだと思うけど、だからって自分の優勢に拘るタイプでもないじゃないか」
要はそこがややこしい。
優れていたいと思うわけでもないのに劣等感に苛まれたり、過剰に自身を卑下したりする子へのフォローはなかなか難しい。だいたい何を言っても否定しちゃうからだ。
いわゆるメンヘラに多い気がする。
ああいや南さんはメンヘラではないと思うよ。多分。
「だからそれを何とかしなさいよ」
「無茶言わないでよ」
というかにこちゃんも考えなさいよ。
そのままにこちゃんの家まで考えていたけど、解決案は思い浮かばなかった。
翌日である。
「秋葉でライブよ!!」
絢瀬さんがなんか言い出した。
「頭打ったのかい」
「何でそんな反応になるの?」
急すぎるし。絢瀬さんが言うとは思わなかったし。理由がわかんないし。急だし。
「え?そ、それって…」
「路上ライブ?」
「ええ」
高坂さんや南さんも疑問形だ。そりゃそうだ。ていうか路上ライブってスクールアイドルがやるものだろうか。バンドとかじゃないだろうか。スペース的に。
「秋葉といえば、A-RISEのお膝元よ?!」
「それだけに面白いやん!」
「でも、随分大胆ね?」
「秋葉はアイドルファンの聖地。だからこそ、あそこで認められるパフォーマンスができれば、大きなアピールになる」
まあそうなんだけどリスクを考えると結構な博打じゃないかな。いや、博打でもしないとラブライブには出れないのか。
「良いと思います!」
「楽しそう!」
「怖いもの無しだね君ら」
「リスク計算とかしてねえんだろ」
「だろうね」
一部の子らがリスク計算なんてできないことは知ってたけど。
「しかし…凄い人では…」
「人が居なかったらやる意味ないでしょ」
「そ、それはそうですが…」
「こっちはこっちでリスクのベクトルがおかしいね」
「ほんとにまともな人いねえな」
「君が言うか」
園田さんは死ぬほど恥ずかしがってるし。問題はそこじゃないでしょうに。あと滞嶺君、君もおかしいからね。あと君はファンなんだからもうちょい優しくしてあげて。
「一応言っておくけど、逆にあの場で認められないようならむしろ人気は落ちると思うけど大事かい」
「認められればいいんですよね!」
「元気でよろしいけど、君そんなんだから数学できないんだと思うよ」
高坂さん絶対途中計算とかしない子でしょ。
「まあ、リーダーがいいって言うならいいんじゃないっすか」
「じゃあ決まりね」
「じゃあ早速日程を…」
「その前に」
なんだかゴリ押しなまま参加が決定した。いいのかな。しかもさらに絢瀬さんがなんか被せてくる。だんだん考えるのが面倒になってきた。
「今回の作詞はいつもと違って、秋葉のことをよく知っている人に書いてもらうべきだと思うの。…ことりさん、どう?」
「えっ、私?」
「ええ。あの街でずっとアルバイトしていたのでしょ?きっとあそこで歌うのにふさわしい歌詞を書いてくれると思うの」
「秋葉ならにこちゃんも詳しいけど」
「働いてる人には敵わないわよ」
「にこちゃんが素直だと」
「何が不満なのよっ」
「んがっ」
作詞者も変えるときた。しかし秋葉がどうとかなら、にこちゃんも秋葉には入り浸ってる気がする。しかしにこちゃんは素直に引き下がった。意外だ。驚いたらにこちゃんの裏拳が鼻に刺さった。痛い。
「それいい!すごくいいよ!」
「やった方がいいです!ことりなら秋葉にふさわしい良い歌詞が書けますよ!」
「凛はことり先輩の甘々な歌詞で歌いたいにゃ!!」
「それは俺も聞きたいです」
「ノリノリだね」
皆さまが絢瀬さんの提案に賛同して南さんを応援する。しかし滞嶺君急に鼻息荒くなったね。確かに南さんならかわいらしい歌詞になりそうだけどさ。
「そ、そう?」
「ちゃんといい歌詞作りなさいよ?」
「期待してるわ」
「頑張ってね!」
「…う、うん。が、頑張ってみるね!」
かくして作詞担当になった南さん。
歌詞ってそんな簡単に作れるのかな?
「…で、案の定難航してるわけか」
「案の定じゃないよ!!」
「俺からしたら案の定だ。そんな簡単に歌詞作れるかよ」
穂乃果の幼馴染である南ことりが何の流れか知らんが歌詞担当になって数日後、穂むらに寄ったときにそんな話をされた。ちなみに今日は園田と南が2人とも同席している。一応この2人は面識がある。というか穂むらに入り浸っているのに幼馴染に遭遇しない方が難しい。
南はなかなかにしんどそうな顔をしていた。なかなかプレッシャー食らってるようだ。
「うう…ごめんなさい…」
「あんたが謝ることじゃないだろう。負担を考えないで押し付けたやつらが悪い」
「穂乃果が悪いの?!」
「お前らみんながな?」
「う…確かに、ことりの負担を考えていませんでした…」
「園田は素直で助かる」
「穂乃果は?!」
「犬」
「人ですらない?!」
単純にプレッシャーが大きいということもあるだろうが、劣等感がどうのって話があった矢先らしいし、気合いが空回りしてるところもあるだろう。健気でいいことだが不憫だ。
「ちょっとくらいアイディアくらい出してやれよ」
「いえ…私たちも考えてはいるのですが、やはり秋葉にふさわしい歌詞と言われるとなかなか思いつかなくて…」
「ほんとに作詞担当かよ」
「うっ」
「ちょっと桜さん!海未ちゃんまで凹んじゃったじゃん!」
「あ、ああ…すまん、穂乃果と同じノリで話してしまった」
「私の扱いがひどいよぅ!!」
凹みガールがもう1人増えてしまった。仕方ねーだろ、穂乃果は多少罵倒してもへこたれないんだし。茜も天童さんもそうだし。そんなノリでしか喋ったことねーんだよ。
まったく埒もあかないので、元気の出る曲でも流してやることにする。手元のノーパソにスピーカーをつないで、音量抑えめで曲を再生。一般に出回っていない試作品を特別に流してやる。ほんとはこれに歌が入るんだが、まあなくてもいい曲だ。
「…この曲は?」
「気にすんな」
「桜さんが作った曲?」
「…それを公言すんなって散々言ったはずなんだがな…」
疑問を呈してきた園田をはぐらかそうとしたら穂乃果が口を滑らせよった。俺がサウンドクリエイターのサクラであることはあまり知られたくないし、作曲してることさえ知らないでいてほしい。
…とは、穂乃果にはいつも言ってるんだがな??
「…あっ」
「え?水橋さんは作曲できるんですか?」
「これも水橋さんの曲なんですか?」
「…あー、まあそうだ。他言無用だぞ、秘密の趣味だ」
「波浜先輩にもですか?」
「…あいつは知ってるからいい。が、あんまり外で話題にしてほしくねーな」
「わかりました…しかし穂乃果…」
「だ、だって話し相手は桜さんだったもん!!」
「言い訳すんな」
園田が穂乃果をジト目で諌めるが、まあ知られてしまったものは仕方ない。言いふらさないでいてもらうだけだ。園田や南ならそう心配いらないだろう…多分。いっそμ's全体に伝えておくのもありだが…いや、やっぱり穴は少ない方がいいな。
「それで、この曲はなんていう曲なんですか?」
「まだ名前はつけてないし、歌詞もないし、誰が歌うかも決めてない。完全な試作品だ」
本当に何も決まっていない。インスピレーションが湧いたから書いただけだ。強いて言うなら太陽みたいな曲ってくらいだろう。眩しい日に書いた気がする。
「じゃあ私歌いたい!」
「何言ってんだお前」
「だって誰が歌うか決めてないんでしょ?」
「まあそうだが…そもそも世間に公表するかどうかもわかんねー曲だぞ」
「いいじゃんー歌いたいよー!!」
「穂乃果、わがまま言うんじゃありません!」
「でも、私も水橋さんの曲歌ってみたいなあ…」
「ことりまで…!」
なぜか穂乃果が立候補してきた。別に構わないんだが、こいつのために一曲こしらえたと思うと若干悔しい。あとこいつらの腕で曲のイメージを発揮しきれるか怪しい。
だがまぁ…。
「あー、じゃあ…歌詞とタイトルを用意してきたらお前ら用に一曲用意してやる」
「ほんと?!」
腕前はともかく、こいつらが俺の曲を歌うところは…ちょっと聞いてみたい。
「本当にいいんですか?」
「ああ、まあ曲はここにある試作品から選んでもらうけどな。一から作るのは面倒だし」
「穂乃果やことりのためにそこまで…」
「…君も選ぶんだぞ?」
「え?」
「お前ら用に作るって言っただろ。3人それぞれに作ってやる。不公平だからな」
「い、いえ、私は…」
「海未ちゃんもやろうよ!ソロだよソロ!」
「それが嫌なんです!!恥ずかしいじゃないですか!!」
「…投げキッスしてる子が恥ずかしいとか言うか?」
「なっなんで知ってるんですか?!」
「PV見たからに決まってんだろ」
せっかく曲を提供しようかと思ったのに、約一名が拒否反応を示した。嫌なら嫌で構わないが、恥ずかしいっていう理由はアイドル的にはどうなんだ。
「まったく、俺が無償で曲を提供してやるなんて相当稀だぞ?それを蹴るとはなかなか豪胆だなおい」
「そ、そうなのですか…?」
「この前電話で40万とか言ってたもんねー」
「いらんことばっか覚えてやがるなお前」
確かに天童さんにそんくらいふっかけた記憶はある。まあ、例え天童さんじゃなくても、仕事は結構割高で請け負ってるのも事実。むしろ向こうが金を積んでくる。
それくらい価値があるってことだな。
「海未ちゃんも、こんな曲も歌ってみたいよね?」
「う…そ、それは…確かにそうですが…」
「ね?一緒に歌おう?」
「…そ、そこまで言うなら…」
南の後押しもあって園田も承諾した。これで公平だな。…しかし、一緒に歌おうって言っておいてソロしか用意しないのも釈だから、南と園田のデュオも考えておくか。
…なんで俺はこんなノリノリなんだ?
「桜さん、早く曲聴かせてよー!」
「やかましいほの犬」
「犬じゃないよ!!」
犬がうるさいので早速試作品を流してやる。ノリで作って結局お蔵入り…というのは割と頻繁にあるから何だかんだ言って助かる。作られた曲も、活躍の場ができて喜んでることだろう。
とりあえず一通り聴かせてやった。どの曲も真剣に聴いていて、穂乃果さえ(表情はうるさかったが)静かに聴いていた。ここまで真摯に聞いてくれるとやはり嬉しいもんだ。
「すごいですね…」
「すてき…」
「ふわぁ…」
全部終わったら、3人ともため息をついて一言だけ感想を述べた。感想というか、嘆息というか。穂乃果は単語ですらないし。
まあ、よくあることか。音楽の前じゃ言葉では語れない感動もある。最高の演奏の後は拍手すら躊躇われることすらあるんだしな。
「本当に…よく思いつきますね、こんな素晴らしい曲が…」
「あー、つってもそこら辺うろつきながら感じたことを曲にしてるだけなんだがな…」
うろつくにしても、散歩もあれば海外渡航もある。とにかく目にしたもの聞いたもの感じたものを全部音に込めるだけだ。場合によっては依頼主と一緒に出歩いて感想を聞いたり…
「…あ」
「どうかしたの?」
いいこと思いついた。
歌詞もそうだった。結局は、その場で感じたことを言葉に変えてるんだったな。
それなら、秋葉でメイドやってる南の手伝いをするというなら…。
「お前ら、メイドやってこい」
「「…え?」」
自分たちもその場の感覚を共有するのが一番だ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ソロは桜に作らせることにしました。真姫ちゃんに全部曲作らせるには荷が重すぎるでしょ…?そうじゃない?