笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼
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ご覧いただきありがとうございます。

またお気に入りしてくださった方がいました。ありがとうございます!もうすぐ20人です!寿命が200年伸びます!!
自己満作品ではありますが、読んでくださる皆様のためにも気合入れて書かなきゃって思います。頑張ります。

というわけで、どうぞご覧ください。




会いたくない時に限って知り合いに会う

 

 

 

 

「…なんで僕らはまたメイド喫茶に来てるんだろね」

「猛烈に帰りてえ」

 

 

なぜか僕らは南さんの働くメイド喫茶に集合していた。なぜかと言われたら、昨夜高坂さんから「メイドやるからみんな来てね!」とかいうメールが届いたからだ。何してんの。しかも桜に言ったら「ああ、すまん、俺の提案だ」とか言ってきた。あいつそんな趣味があったのか。

 

 

「にゃー、遊びにきたよ!」

「えへへ」

「秋葉で歌う曲なら秋葉で考えるってことね」

「帰らせろ」

「しつこいね」

 

 

元気に扉を開けて突入する1年生。そしてあくまでも帰りたい滞嶺君。なんだかんだ言って帰らないあたりは責任感の強い彼らしい。

 

 

「ではでは早速取材を…」

「やめてください!」

「映像技術なら負けないよ」

「張り合わないでください!!」

 

 

続いて入ってきた東條さんが園田さんにビデオカメラを向ける。そういうことなら僕も参加しよう。バッチリにこちゃんを映してやる。

 

 

「なんで私を撮ってんのよ」

「そりゃにこちゃん撮るでしょ」

 

 

被写体はにこちゃんに決まってる。だってにこちゃんだもの。最高のモデルだ。うん、最高。

 

 

「はぁ…それよりはやく接客しなさいよ」

 

 

にこちゃんが何故かでかい態度で2年生たちに注文する。まあ多分なんだかんだいって遊びでやらせる気もないんだろう。バイトしてるからにはちゃんと働かせようという話。だと思う。だよね?

 

 

「いらっしゃいませ。お客様、3名様でよろしいでしょうか?」

「は、はいにゃ」

「それでは、ご案内致します」

 

 

バッチリだった。

 

 

バッチリメイドな南さんがいた。

 

 

プロかよ。

 

 

「…3名様だと僕らは含まれないわけね」

「ちっこい組だろ」

「誰がちっこい組よ!」

「残念ながら身長ワースト3なんだよにこりんぱなは」

「何よにこりんぱなって」

「君ら3人組の名前を今つけた」

 

 

にこちゃん、星空さん、小泉さんでにこりんぱな。我ながらなかなかのセンスだと思う。

 

 

しかしまあ、南さんの本気には驚いた。ありゃ伝説のメイドとか言われても納得だ。もうここに就職すればいいんじゃないかい。

 

 

 

 

とか思って感心して眺めていたら、視界の端に車椅子を捉えた。ただの車椅子なら気にも止めないのだが、あの裁縫道具満載の重戦車と、その後ろで待機する隻腕の青年を見たら確信した。

 

 

「ゆ、ゆっきーとまっきーがいる…?!」

 

 

ビデオカメラ落としそうになった。首からストラップかけておいてよかった。

 

 

何を隠そう、僕の数少ない友人であるゆっきーこと天才ファッションデザイナー…雪村瑞貴とまっきーこと天災級の天才医師…藤牧蓮慈が、店の隅っこで店長らしき人と話をしていたのだ。

 

 

「やっと気付いたようだぞ瑞貴」

「ほんと矢澤さんが絡むと周り見えないな、あいつ」

「波浜くん、知り合い?」

「…うん、まあ友達だね」

「波浜くん友達いたんやね」

「男ならにこちゃん怒らないからね」

 

 

向こうは事前に気付いていたらしい。まあまっきーがいたら隠れるなんて不可能なわけだけど。

 

 

「しかしまあこんなところで何してんの」

「服の製作依頼に決まってるだろ。今後女性層の獲得に向けて執事服を作って欲しいと頼まれてな」

「男装させるのか」

「一応男性も雇うらしいが」

「一応なのね」

 

 

まあ男装させてもいいんだけどさ。悪くはないと思うけどさ。そういう趣味の方もいるみたいだし。

 

 

「作るのは構わないが、客寄せになるかは別の話だから一度試させるのがよいか、と言う話をしていたところだ」

「やらせるのかい」

「それが一番効果が目に見えるだろう」

 

 

基本的に服飾については惜しみなく提供する派のゆっきーは、男装だろうがなんだろうが作るものは作るみたいだ。

 

 

「しかし急にメイド服から執事服にチェンジしろと言われても困りそうだけど」

「そこは店側でなんとかしてもらうしかないな」

「私たちが関わることでもなかろう」

「ってかまっきーに関しては全般的に関係ないよね」

 

 

まっきーは病院行きなさいよ。てか病院どうしたの。さぼるんじゃないよ。

 

 

呆れていると、ぐいっと後ろからつまみ上げられた。見ずともわかる、というかそんなことできる人間は1人しか知らない。滞嶺君だ。一応振り向いて見ると気まずそうな顔の滞嶺君がいた。サングラスでよくわからないけど。

 

 

「おい、俺をあの空間においてくんじゃねえ」

「頑張りなよ」

「無理がある」

 

 

そんなことだろうと思ったよ。

 

 

「茜が言っていたマネージャー君かな?なるほど、なかなか完成された肉体じゃないか」

「…でかくないか?」

「なんだてめぇら」

「何で君はそんな攻撃的なの」

 

 

見るなり品定めするまっきー、慄くゆっきー、威嚇する滞嶺君。なんだ君ら。いやゆっきーは割と正しい反応か。

 

 

「…五体満足な男性が2人…」

「ゆっきー不穏なこと考えてない?」

「案ずるな茜。私たちにしてみれば五体満足は非常に羨ましいものだ」

「そりゃそうだろうけど絶対その意図じゃないよね」

 

 

正しい反応じゃなかった。

 

 

ゆっきーは両足がないし、まっきーは右腕と右目が無いのは百も承知。僕はともかく滞嶺君のような身体能力の化身みたいなのが羨ましいのも間違いないだろう。いやどうだろう、筋肉ダルマは願い下げかもしれない。

 

 

でも今ゆっきーが考えているのはいかにして僕らに執事服を着せるかだと思う。

 

 

それは困る。

 

 

僕はコスプレ趣味はない。

 

 

どうにかして論破を試みよう。

 

 

「ゆっきー、僕らじゃ平均身長からかけ離れていてあんまりいいサンプルとは言えないんじゃないかな」

「身長関係あるか?」

「無いのかよ」

 

 

ダメだった。

 

 

身長差50cmオーバーの2人組ならいける気がしたけど気のせいだった。

 

 

「ふざけんな、俺が執事服なんか着るものかよ」

 

 

今度は滞嶺君がすこぶる不機嫌顔で言う。そうだ、彼の威圧感ならゆっきーも突破できるかもしれない。

 

 

「何故だ?」

「無意味だ。どうしても着せたいなら金を積め金を」

「10万出そう」

「よし早く着るぞ」

「ポンコツめ」

 

 

ダメだった。

 

 

むしろノリノリになった。首根っこ掴まれて引きずられる。どんだけ金に弱いんだ。いやゆっきーも出し過ぎだろ。コスプレするだけで10万ってなんだ。プレミアかよ。

 

 

 

 

 

 

「…なんでサイズがぴったりなんだろうね」

「…全くキツくねえ」

「俺が作ったからな」

「サイズが無いからって数分であつらえられるものじゃないよね」

「すげー動きやすい」

「数十分で精密模写しやがる奴に言われたくないな」

「何も言えないね」

「快適だ」

「滞嶺君腕振り回さないで怖い」

 

 

早速着せられた。当然僕らのサイズの執事服はなかったので、急遽作った。服は急遽作れるものじゃ無いと思う。あと滞嶺君、そんなに腕ブンブン振ると怖い。当たると即死しそう。トラップかよ。

 

 

「はっはっは、よく似合うじゃないか。早く矢澤嬢の接待をしてくるといい」

「この格好で接待するのは抵抗があるよ」

 

 

まっきーが他人事のように言ってくるが、にこちゃんのお世話は日常の中でこそするものであってこんな格好でするものじゃない。てか笑われそう。

 

 

「…滞嶺、少し屈め」

「何でだ」

「怖くなくしてやる。早く屈め」

「余計なお世話だ」

「とかいいつつ屈むんだね」

「素直だな」

 

 

ゆっきーが滞嶺君の圧倒的ヤのつく人感に流石に何かしら思ったのか、その顔をどうにかしようとし始めた。今はサングラスにオールバックだが、何とかなるのかなこれ。

 

 

しばらく髪をもしゃもしゃした後、そっとサングラスを外した。

 

 

「こんなもんだろう」

「わあ」

「流石は瑞貴、人のデザインは一流か」

「変なことしてねーだろうな」

「君に変なことしたら死にそうだ」

「まあ殺すな」

「物騒な」

 

 

髪は完璧にときほぐされ、綺麗に真っ直ぐ整えられている。それでサングラス外すだけでなんか仏頂面のSPみたいになった。誰これ。

 

 

「わあ!波浜先輩が執事になってる!」

「ついに見つかった」

「…」

「にこちゃん無言で写メるのやめなさい」

 

 

高坂さんが大声で宣告するもんだから視線が集まった。にこちゃん後でその写真は消しなさい。

 

 

「…となりにいるのは、まさか滞嶺くん…??」

「まさかで悪かったな」

「…かっこいい…」

「あ?」

「なっなんでもないにゃ!!」

 

 

1年生は滞嶺君の変貌に見とれている。まああの威圧感が消えたら普通にかっこいいだろうしね。でかいし。でかいのは関係ないか。

 

 

「あ、波浜くんこっち向いてー」

「何撮ってんの東條さん」

「だってせっかくやし?」

「せっかくだし?」

「絢瀬さんも便乗して撮らない」

 

 

3年生こぞって僕を撮るのやめなさい。にこちゃん顔がマジだから怖いよ。可愛いけど。今度はにこちゃんがメイド服着なさいよ写真撮りまくってやる。

 

 

もう諦めて執事するしかないか。知り合いが来ないことを祈ろう。

 

 

 

 

「あっ桜さん!!」

 

 

 

 

死んだ。

 

 

「ちょっ波浜くんどうしたの?!」

「知り合いが来たからショックで死んだのよ」

「にこ、軽いわね…」

「茜は恥ずかしいと死ぬのよ」

「にこちゃん僕はもう疲れたよ」

「はいはい」

「ひどい」

 

 

膝から崩れ落ちたら心配された。いやにこちゃんは心配してくれなかった。いやきっと心配してくれてるはずだ多分。塩対応なのも照れ隠しだと信じてる。信じてる。

 

 

「あっ、お姉ちゃん!」

「あ、亜里沙?!どうしたのよ、こんなところに!」

 

 

にこちゃんにしなだれかかっていたら、桜の後ろから金髪少女がひょっこり現れた。まさか桜が道端の金髪少女を拾ってくるわけないが…いやわからん。桜だし。

 

 

「お知り合いかな」

「私の妹よ」

「なるほど、よく似ている」

 

 

妹さんだった。しかし絢瀬さんに似ているが、さっきから動きがオーバーなので中身は全然似てないと見える。

 

 

「雪穂から、穂乃果さんたちが働いてるって聞いて一緒に来たの!」

「カラオケで一回見かけたか?改めて、水橋桜だ。穂乃果の店の常連で、今日のことの発案者だ。こっちの金髪の子は雪穂の引率のついでに着いて来た」

「す、すみません…」

 

 

桜が改めて自己紹介した瞬間に不満そうな顔をし、絢瀬さんが謝る。桜はコミュ障だもんね。当の絢瀬さんの妹さんは頭にハテナを浮かべてる。天然ちゃんであらせられたか。

 

 

「あっ雪穂!」

「お姉ちゃん!…似合わないね」

「ちょっと!!」

「似合わなくはねえが…」

「ほんとですか?!」

「今の無し」

 

 

亜里沙ちゃんの後ろから更にもう一人召喚された。高坂さんの妹さんらしい。桜から話は聞いたことあるけど見るのは初めてだ。…こっちも中身は似てないなあ。

 

 

「今混んでるから相席でもいい?」

「あー、俺は後で案内してくれ。さっきから気になりすぎることがあるからな」

「?…わかりました!」

 

 

桜は妹たちを先に案内させると、僕の方に向き直った。だろうね。予想はしてた。当たって欲しくなかった。

 

 

「…お前何してんだ??」

「僕が聞きたいね」

 

 

ほんとに僕が聞きたい。

 

 

「実際何してんだ」

「執事服着せられてウエイターさんだね」

「それは見ればわかる。何でそんなことしてんだ」

「やらされたんだよ」

「全く理解が追いつかねえぞ」

「全くだよ」

 

 

僕も理解が追いついてない。隣にいる滞嶺君はノリノリで…

 

 

「…あれっ滞嶺君どこ行った?」

 

 

隣にいない。

 

 

「誰だ滞嶺って」

「新しいマネージャーだよ。すごくでかい男」

「なんだその雑な紹介は。…だが、でかい男ならあそこにいるぞ」

 

 

桜が僕の後ろを指差す。振り返ってみると…

 

 

「あっあのっ、チェキお願いしてもいいですか?!」

「…チェキって何だよ」

「これです!」

「インスタントカメラかよ…俺が撮ればいいのか?」

「ち、違いますっ!あの、い、一緒に写って欲しいなって…」

「わ、私も!」

「私も次お願いします!」

「あ、ああ??」

 

 

なんか女の子に囲まれてた。

 

 

「何あれ」

「俺が聞きたい」

 

 

何あれ。

 

 

「…お前はウエイターしなくていいのかよ」

「僕がトレイを持てると思うかい」

「無理だな」

 

 

さくらがつっこんできたが、残念ながら僕はこの手の仕事がとんと向いていない。力無さすぎて。

 

 

まあその分楽できる。

 

 

「あ、あの」

「ん?何用ですかな」

「チェ、チェキ、お願いできますか…??」

 

 

楽できなかった。

 

 

予想外だった。

 

 

今日予想外の出来事多くない?

 

 

こら桜、ほくそ笑むな。どこ行くのさ。置いて行かないで。マジで。

 

 

「あの…」

「………承りました、お嬢さん」

 

 

ちくしょう。お仕事だし、これ断るわけにもいかないだろ。

 

 

なんでにこちゃん以外の女の子に媚を売らねばならんのだ。

 

 

 

 

 

 

 

面白いことになってる茜を置いて相席に案内されたら、矢澤と他μ'sの子2人、そしてさっき連れてきた雪穂とそのお友達の席だった。およそ南あたりが知り合い同士座れるように気を利かせたのだろう。しかし天然金髪少女の相手をまたしなければならんのか。

 

 

「とりあえず矢澤、殺気をしまえ」

「殺気なんて出してないわよ」

「視線で人殺せそうな目してるにゃ」

「してない!!」

「視線で人が死んじゃうんですか?!」

「比喩だ比喩」

「ハラショー…日本語って難しいですね」

 

 

しかし矢澤が茜に群がる女子を射殺さんばかりの視線を投げているのはいただけない。亜里沙というらしい雪穂のお友達が変な誤解してるだろうが。ハラショーって何だ。

 

 

「…そうか、ロシアから来たって行ってたな。ハラショーもロシア語か」

「そうみたいなんですけど、私も意味はよくわからなくて…」

 

 

そういえば道すがら素性は聞いていた。絢瀬絵里の妹でロシアから来たクォーターガールだと。クォーターなのにこんなロシア感満載の顔立ちになるものか?遺伝はよく知らん。

 

 

ロシアンガールだったりアサシン矢澤だったり、猫少女だったりひたすら米食ってる少女だったり個性が強すぎて辟易していると、今度は机の隣に車椅子の男と片腕の男がやってきた。

 

 

誰だこいつら。

 

 

「失礼…そちら3人がμ'sの子だな?」

「えっは、はい…」

「話は良く茜から聞いているよ。まあ、だいたい矢澤嬢の話だが。私は藤牧蓮慈、医者をやっている。こっちの車椅子は雪村瑞貴、ファッションデザイナー。ともに波浜茜氏の友人…といったところか」

「は、はぁ…どうも…」

「突然すまないな。茜が気にかけている矢澤さんがどんな人か気になったし、μ's自体も気になったし」

「茜の知り合いらしき男性も始めて見たしな」

「俺も、茜に友人がいるとは思わなかったな。水橋桜、茜の仕事仲間だ」

 

 

急に来たから警戒したが、どうやら茜の知り合いのようだった。あいつ友達とかいたんだな。

 

 

「仕事仲間ね…。なんだかんだ言ってやはり知り合いは多いのだな」

「そりゃそうだろう。元来の性質をそうそう無視できないさ」

「私が天才であるようにな」

「ほんとウザいなお前」

 

 

藤牧と雪村は俺の挨拶に対して勝手に2人で話し始めてしまった。コミュ障か?俺が言えることではないが。

 

 

「お医者さんってことは真姫ちゃんのご両親とおんなじにゃ」

「ああ、西木野嬢とは既に話してきた。以前にも会ったことがあるのだが…覚えてはいなかったな…」

「10年前のことなんて普通覚えてねぇよ、向こうは5歳だぞ。…あなたは星空凛さんかな?お隣が小泉花陽さん、さらにその隣が矢澤にこさんか」

「はっはい!」

「…私はあんたたちのこと知らないんだけど」

 

 

俺は矢澤と2年生しか把握してなかったが、雪村はバッチリ把握しているようだった。矢澤の機嫌が悪そうだが、おそらく「茜の知人に知らない人がいる」のが気に入らないんだろう。

 

 

「それはそうだろう、私たちは貴女に関係ないからな。逆に水橋氏は仕事という側面で、貴女の財政に関わるから存在を伝えられている。彼の中心は常に貴女であるし、逆に言えば彼はそれ以外のことを一切考慮しないからな」

「…そうだとは思うけど」

 

 

藤牧がやたら自慢げに解説するのを聞いて、矢澤の顔が曇る。

 

 

 

…何か不自然な反応だ。

 

 

 

藤牧の説明はなるほど確かに奴の特性を言い当てているが、それでも自分に伝えられなかったことに納得いかないと言うことだってできる。しかしそうじゃない、矢澤は「自分の知らない茜の知人」がいること自体にはなんの抵抗もなく納得し、しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな感じだ。

 

 

そんな矢澤の反応は藤牧と雪村にも奇怪に映ったようだった。

 

 

「…ん?そうだとは思うのか?あれほど矢澤さんに固執するのは当事者であろうと不自然かと思えそうだが」

「まさか…いや、それはないか。…そうか、μ'sだな?μ'sとの関わりが…ふむ…」

「…あのなぁ蓮慈、勝手に解決されても何も伝わって来ねえんだって」

「ああ、すまない。だがわざわざ言うことでもないだろう」

 

 

不自然と言った。

 

 

茜の矢澤好きはやはり不自然なのか。あまり人との関わりが多くないからそこまで気にならなかったが、あれほど固執するのは異常なのか。

 

 

まあしかし、それは納得だ。

 

 

あいつの家やばいしな。

 

 

「あ、あの…」

 

 

茜について考えを巡らせていると、大量のライスをいつのまにか完食した小泉がおずおずと声をかけてきた。あまり自分から発言するタイプには見えないが…何事だろうか。星空も不思議そうな顔をしている。

 

 

「何かな、小泉嬢」

「あの、…いえ、やっぱり何でも…」

「ああ、()()()()()()()()()。事故で失った」

「えっ」

「…せっかく配慮して言うのをやめてくれたのに看破するやつがあるか…」

「何かまずかったかな?」

「空気読めないってやつね」

「KYにゃ」

「けーわい?」

「思いやりが足りてないってこと」

「ハラショー…」

 

 

小泉が遠慮して聞かないでおいたことに、どうやってか知らないが問われなかった問いに見事答えてみせる藤牧。そして総スカンを食らう藤牧。頭を抱える雪村。亜里沙は相変わらず天然。カオス空間だ。

 

 

「しかし、私の右腕がどうかしましたかな?」

「その話題拾うのかよ」

「なにかマズかったか?」

 

 

自称天才の藤牧は致命的に空気が読めないらしい。

 

 

まあ空気読めないのは俺も茜も同じことだろうが。

 

 

「ほ、ほんとになんでもないんです!」

「いやしかし

「蓮慈、店長に執事の需要を報告しに行くぞ。押してくれ」

「会話を遮るのは失礼だと思わないか?」

「お前の方がよっぽど失礼だ。早く行くぞ。…いろいろ申し訳なかった。勝手ながら失礼する」

「は、はあ…」

 

 

遠慮なく話を進めようとする藤牧を、雪村がファインプレーで撤退させた。

 

 

「何だったのかしら」

 

 

2人が店の奥に消えてから矢澤が口を開いた。

 

 

「俺が聞きたい。そもそも何者なのかもよくわかんねぇよ。矢澤はなんか知らないのかよ」

「私だって初めて会ったわよ」

 

 

俺も矢澤も知らない茜の友人なんているとは思わなかった。あいつ交流のほとんどを矢澤で完結させてるしな。

 

 

6人で呆然としていると、ヘロヘロな茜が近づいてきた。死にそうな顔をしていて笑える。

 

 

「に、にこちゃん、助けて…あんなの無理ぃ…」

「何よ、情けないわね」

「にこ先輩顔が緩んでるにゃ」

「緩んでない!!」

「緩んでるの?」

「緩んでないって言ってんでしょ!!」

「ぶぎゃ」

 

 

早速矢澤に縋り付いた茜。そしてにやける矢澤。照れ隠しにヘッドロックを極められる茜。相変わらず不憫だ。

 

 

「なあ茜、藤牧と雪村とかいうやつらが来たんだが、何者だ?」

「ゔぇ…あー、彼ら君達のところにも来たんだね。友達だよ」

「私も知らなかったんだけど」

「そりゃにこちゃんの人生に関係ないもん」

 

 

さも当然の如く言う茜。いくらなんでも矢澤中心主義が過ぎるだろ。

 

 

「あ!マネージャーの波浜さんですよね!チェキお願いしてもいいですか?!」

「まじ?」

「ダメですか…?」

「…ダメじゃないです」

 

 

そして亜里沙ちゃんからの突然の死刑宣告に死ぬ茜。今のは可哀想すぎた。なんたってチェキ地獄から逃れるために矢澤の元に来たのに、死角から一撃食らわされたのだ。そりゃ辛い。だが面白い。

 

 

結局枯れた笑顔で満面の笑みの亜里沙ちゃんと並び、矢澤にチェキを取られていた。あんな瀕死の茜は初めて見たかもしれん。

 

 

よくわからんことばっか起きたが、まあ最後はレアものを見たということで良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はみんな来てくれてありがとうね!」

「いいわよ、それくらい」

「そうだよ、僕らなんて働いたからね」

「死にてぇ」

「…波浜先輩と滞嶺くんは一体何があったんですか?」

 

 

業務が終わってから、南さんがお礼を言いに来た。うん、ほんとに疲れた。滞嶺君はもう目が死んでる。あんなに人気出るとは。

 

 

「何もかもこいつのせいだよこいつ」

「…だから悪かったって。あれほど人気が出るとは思いもしなかったんだ」

「私は思っていたがな」

「「「じゃあ言えよ」」」

 

 

ゆっきーを非難したらまっきーが酷いこと言ってきよった。男三人の心が一つになった。この天災め。

 

 

「それより、アイディアは出たんでしょうね?」

「うん!おかげで作詞が進みそうだよ!」

「よかった!桜さんのおかげだね!」

「俺は提案しただけだ。行動したのはお前らだろ」

「それでも、桜さんの助言があったから掴めたんです。ありがとうございます!」

「あー、おう、そうか」

「桜さん照れてる?」

「照れてねえ」

 

 

被害甚大ではあるけど、当初の目論見通り作詞の手がかりは掴めたらしい。そうか、そういえば作詞のためだったか。結局僕ら関係無いじゃん。執事なんてやらなくてよかったじゃん。

 

 

「それじゃあ今度の日曜日、秋葉でライブをしましょう!」

「日曜日?!」

「絢瀬さん、練習時間とかまるで無いんだけど」

「ここじゃあまりスペースはとれないし、パフォーマンスは最小限にしましょ。あと衣装はメイド服で!」

 

 

絢瀬さん、なんかむちゃぶりが加速してない?大丈夫?お兄さん心配なんだけど。主に心労が。てかお兄さんじゃないわ同級生だわ。

 

 

「あ…服は流石に全員分はないかも…」

「ないなら俺が作ろう。寸分違わずつくってみせるぞ」

「そんなことできるんですか?」

「そこのでかい奴の執事服も俺が作ったんだから間違いない」

「そうだったんですか?すごいですね…!」

 

 

そりゃゆっきーは世界的なファッションデザイナーだもんね。南さんは知らないのかな?ああ、そういえば顔出ししてないな彼も。

 

 

「てか滞嶺君いつまでそれ着てるの」

「腹立つくらい快適だ」

「そりゃ俺が作ったんだからな」

 

 

滞嶺君は未だに執事服着ていた。でかいから今までサイズが合う服がなかったんだろう。あと怖がられないのも大きいかもしれない。僕はすぐ着替えた。即刻着替えた。

 

 

「…でも私たちの衣装を寸分違わず作るって…」

「にこちゃん、深く考えたらだめよ」

 

 

世の中知らなくていいこともある。知らない方がいいこともある。うん。

 

 

 

 

 

ゆっきーは一目でスリーサイズ含め体型に関するステータスを看破できるとか、多分知らない方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

ライブ当日。

 

 

ゆっきーはほんとに全員分、お店のものと全く同じデザインのメイド服をほんとに寸分違わず作ってきた。みんな感動していたけど、にこちゃんは怪訝な顔をしてるし、南さんと東條さんは顔が赤くなってる。東條さんほんと意外と初心だな。

 

 

「で、なんで僕らは執事服なんだろうね」

「俺は私服だ」

「君はいつから執事服がデフォルトになったのさ」

 

 

なぜか僕らも執事服を着せられた。滞嶺君は自ら着てきた。何、気に入ったの。

 

 

 

 

 

曲名は「Wonder zone」。

 

 

 

 

 

たしかに、秋葉らしい曲だった気がする。

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は登場人物多目です。そして被害者波浜少年。まあこの話をしたら男性陣は執事になるしかないですよね!!



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