笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
のんたん誕生日おめでとうございます!!のん誕ではありますが、特別編とかではありません…。ひいっごめんなさい!まだのんたん主役にするには話が進んでなさすぎるので…!来年はできたらいいなあ。
前回は感想もいただきました。感想も寿命伸びますね!!ありがとうございます!!頑張ります!!
というわけで、どうぞご覧ください。
「…あつい」
「そだねぇ…」
「死ぬ…」
夏真っ盛りのある日のこと。
僕は瀕死だった。
体力おばけの高坂さんまでバテてるんだ、ネガティヴ側体力おばけの僕が生きていられるわけない。溶ける。マジで。
「っていうかバカじゃないの?!この暑さの中で練習とか!茜死ぬわよ?!」
「溶ける」
「そんなこと言ってないで早く練習するわよ。波浜くんは日陰にいるといいわ」
にこちゃんが抗議するが、絢瀬さんには効かなかった。なんであなたはそんな元気なの。ロシアンガールじゃないのかよ。暑いのダメじゃないのかよ。
「日陰あんまりないんだけど」
「俺の影があるだろ」
「君は君自身の熱がすごいんだよ」
滞嶺君は見事にタンクトップに短パンであった。見事にムキムキだ。ムキムキすぎて代謝が凄いのか、彼なんか体温高い。暑い。
というか滞嶺君の後ろにはすでに小泉さんが隠れている。何してんの。
「花陽、これからは先輩も後輩もないんだから。ね?」
「は、はい…」
絢瀬さんが優しく言っても若干縮こまる小泉さん。未だに微妙に苦手らしい。まあ一時期怖かったしね。暑い。
「そうだ!合宿行こうよ!!」
「はあ?急に何言い出すのよ」
「思考の方向性が全くわからないね」
高坂さんがなんか言い出した。ほんとに急だね。何がどうなって合宿が出てきたんだ。まっきータイプか。過程すっ飛ばして結論が出てくるタイプか。前もそんなことあったな。
「あーなんでこんないいこと早く思いつかなかったんだろう!!」
「何の話だよ」
「僕が聞きたいよ」
高坂さんの思考に追いつけない。
「合宿かぁ、面白そうにゃ!」
「そうやね、こう連日炎天下だと体もキツいし」
「君ら順応早いね」
星空さんと東條さんはノリノリだった。よくそんなすぐ納得できたね。
「でも、どこに?」
「そりゃあ海だよ!夏だし!」
疑問を投げた小泉さんに対していかにも当然というように答える高坂さん。何がそりゃあなんだ。
「高坂さん、簡単に言うけど場所やら費用やら当てはあるの?」
「えっ?えーっと、それはぁ…」
言ってみたら戸惑った。これは何も考えてなかったな?いや考えてないと思ってたけどさ。
「…ことりちゃん、次のバイト代いつ入る?」
「え、えぇっ?」
「ことりをあてにするつもりだったのですか…」
「他人の金をむしり取るんじゃないよ」
まさかの他力本願。
「あっ、波浜先輩ならお金持ってますよね!!」
「今僕他人から金を取るなと言ったところなんだけど」
「うう…あっ!そうだ!真姫ちゃん家なら別荘とかあるんじゃない?!」
「別荘なんてあるわけねーですよ」
「あるけど」
「あるのかよ」
「ブルジョワだね」
人を当てにし続けた結果謎の大当たりを引いた。てか別荘あるんかい。金持ちの極みじゃないか。さすが医者の娘。滞嶺君も思わずツッコんだ。
「ほんと?!真姫ちゃん!お願い!!」
「いやいや個人宅をそう簡単に借りていいわけないでしょ」
「仕方ないわね…聞いてみるわ」
「いいのかよ」
「実は満更でもねーだろお前」
「なによ!!」
高坂さんが頼んだらあっさり承諾した。マジかよ。君らノリ軽すぎるだろ。
「本当?!」
「やったにゃー!」
「俺にくっつくな」
「汗でべっとりしてるにゃ」
「殺すぞ」
「やめなさい」
まさかの臨海別荘使用許可(予定)が出てよろこぶ皆様。滞嶺君に飛びつく星空さん。そして惨劇未遂。僕は血なんて見たくないよ。あと東條さんと絢瀬さんは何をこそこそ相談してるの。まあいいや。
「合宿行くのは勝手だけど、僕らはどうしたらいいのさ」
「行かねえぞ。弟達を置いて合宿なんて」
「本音は?」
「女子だらけの空間に寝泊まりなんてできるか」
「右に同じだね」
とりあえず、合宿と言われても最も困るのは僕らだ。僕はにこちゃん以外興味ないからいいんだけど、滞嶺君は大変だろう。色々危ない。うん、色々。
「何か問題かにゃ?」
「問題ないよ!」
「嘘だろ」
「この子達の未来がすこぶる心配だ」
無警戒極まる星空さんと高坂さん。おたくの性教育とかどうなってんの。暮らしてきた環境が気になるわ。嘘だわ気にならないわ。
「いいじゃない。信頼してるってことよ」
「僕はにこちゃん以外興味ないからいいんだけどさ」
「ふん」
「ぐえ」
「俺の苦労も考えてください」
「大丈夫よ、負担はかけないわ」
「そうじゃねぇ」
にこちゃんの肘鉄に悶絶してる間に滞嶺君が危機に陥っていた。あかん、絢瀬さんも性教育がなってないタイプだ。説得が効きそうな東條さんもにやけてるしこれは詰んだ。
…まあ、海に行くそうだし、せっかくなので新曲のPVでも撮っておけばいいかもしれない。他に人居ないだろうし都合がいい。
「というわけで合宿行ってきます!」
「あー行ってらっしゃい」
「桜さんも来ましょう!!」
「何でだよ」
穂むらに寄ったら穂乃果が合宿行くとか言い出した。勝手に行けばいいが、茜も巻き込まれるらしい。先日の滞嶺とかいうデカいのも巻き込まれるらしい。こいつら蹂躙されないだろうか。性的な意味で。
「はじめてのフルPVを撮るんです」
「そりゃよかったな」
「なのでアドバイスがほしいんです!」
「断る」
「何でですかー!!」
机をバンバン叩いて抗議する穂乃果。やめんか、パソコンが落ちる。
だいたい俺が行ったら他のメンバービビるだろ。何だあいつってなるだろ。いや全員に顔割れてんのか、だからって一緒に海行こうとはならんだろ。
「みんなにはもう言いましたし!!」
「先に俺の予定を聞けよ。あと何で反対意見が出なかった」
「『桜さんは大丈夫そう』ってみんな言ってました」
「てめーらは俺の何を知ってるんだ」
ポンコツか女子ども。
全員漏れなく純粋培養乙女か。
「だいたい俺に意見貰ってどーすんだ」
「桜さん歌上手らしいですし、参考になるかなって」
「アバウトすぎんだろ」
「いいじゃないですかー行きましょうよー」
「引っ張んな」
「ううううう」
「引っ張んな」
唸りながら袖を引っ張る穂乃果を振りほどいてチョップを入れる。「あうっ」と言って頭を抑える穂乃果。…意見をやるのはいいんだが、俺の要求についてこれるとは思わないんだが。
だが、まあ。
無碍にするのも気がひける。
「…謝礼はもらうぞ」
「………えっ」
「そこをちゃんとメンバーと協議したら行ってやる」
「やったあああああああああ!!!!」
「うるせえ」
何だかんだ承諾してしまった。つーか本当に謝礼の件はちゃんと相談するんだろうか。しないだろうな。
心配だが、ちょっと楽しみではある。
「本当に来たんだね」
「悪いかよ」
「答えかねる」
合宿当日。
駅でにこちゃんと一緒にみんなを待ってたら、高坂さんに連れられて桜が来た。呼ぶとは言ってたけど本当に来るとは思わなかった。だって桜だし。
ちなみに滞嶺君はまた執事服だった。どんだけ気に入ってるんだ。
「桜さん、よろしくお願いします」
「あー…おう」
「桜、コミュ障してる場合じゃないよ」
「黙ってろ」
「よ、よろしくお願いします!」
「お、おう」
「もっと気の利いた返事しなさいよ」
「黙れっつーの」
園田さんや小泉さんが挨拶したら、桜は明らかに慣れてない返事をした。まあ慣れてないよね。でも君メイド喫茶で会ったんじゃなかったっけ。にこちゃんですらつっこんでるよ。
「さて…みんな集まったところでやっておきたいことがあるの」
バカやってると、絢瀬さんから声がかかった。なんだろう。合宿するって決めたときにコソコソ言ってたやつか。
「それは…先輩禁止よ!!」
「ええっ?!先輩禁止?!」
「声でけえよ」
「いつものことだよ」
「周りの視線が腹立つ」
「滞嶺君は殺気を振りまかないの」
絢瀬さんが宣言したところ、高坂さんが驚きの声をあげた。声が大きいのはまあ確かに。視線が痛いのも確かに。でも君らはもう少し世界に優しくなろう?
「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩はもちろん大事だけど、踊っているときにそういうこと気にしちゃダメだから」
「そうですね、私も三年生に合わせてしまうところがありますし…」
「そんな気遣いまったく感じないんだけど」
「まったくだね」
僕とにこちゃんに関してはさしたる敬意を感じないのは何でだろう。
「それはにこ先輩や波浜先輩が上級生って感じがしないからにゃー」
「誠に遺憾だね」
「上級生じゃないならなんなのよ!」
「うーん…後輩?」
「ていうか子供?」
「マスコットとかと思ってたけど」
「飾りだろ」
「うおい」
君らは僕らをなんだと思ってんだ。
「じゃあ早速今から始めるわよ、穂乃果」
「僕らの扱いについてはノーコメントなのね」
「はい!良いと思います!え…ふう、…絵里ちゃん!!」
「うん!」
「ふうー、なんか緊張!」
「僕のツッコミにもノーコメントなわけね」
「茜、強く生きなさい」
「生きる」
僕らの絶望はことごとくスルーして早速敬語撤廃を始める絢瀬さん。とりあえず僕らをスルーしないで。でもにこちゃんに励まされたから生きる。
「っていうか僕と滞嶺君はすでに敬語撤廃してるわけだけど」
「あなたたちの関係を見ていて思いついたことだもの。でも、そうね…あなたたちも名前で呼ぶとかどうかしら」
「名前ね。創一郎だっけ」
「ああ、お前は茜だったな」
「ついにお前呼ばわりに」
僕と滞れ…創一郎は名前で呼び合うことになった。余計敬意が感じられなくなった気がする。
「じゃあ凛もー!…ふう、ことりちゃん!!」
「はい!よろしくね、凛ちゃん!」
星空さんも乗っかり、南さんが返事する。まあ高坂さんや星空さんはむしろ敬語ない方が楽なのかもしれない。
「それに真姫ちゃんも!」
「えっ?」
南さんが促すと、西木野さんは戸惑いの声をあげた。君は咄嗟に敬語出ない子なんだからうろたえることもないでしょうが。
「べっ別に今わざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ!!」
「照れてんな」
「敬語出ないくせにね」
「うるさいわね!!」
にこちゃんに次ぐツンデレガールは今日もツンデレらしい。ブレないね。
「それに…茜くん、創一郎くん。あなたたちにも名前で呼んでほしいの」
「えっ嫌だけど」
「えっ」
「名前呼びはにこちゃん特権だもの」
急に話を振られたと思ったら僕らも巻き添え計画だったらしい。でも僕はにこちゃん以外名前で呼ぶ気はない。にこちゃんファーストだもの。絢瀬さんショック受けてるけど気にしない。
「いや、茜…名前呼ぶくらいいいじゃない」
「やだよ、にこちゃんに言われたって嫌だよ」
最近にこちゃんファーストが破れてきてる気がするからたまには断固死守しなければね。
「じゃあ創一郎くん!」
「名前で呼ぶな」
「照れてるにゃ」
「照れてねぇ」
「でも創一郎くんって呼びにくいから創ちゃんって呼ぶにゃ!!」
「やめろ」
「創ちゃん…いいね!!」
「マジでやめてください」
「創ちゃん、敬語禁止だよ?」
「ああ??」
僕が断固拒否している間に創一郎がひどい目に遭ってた。可哀想に。一応一年生だからね彼。
「名前くらい呼んでやってもいいじゃねーかよ」
「桜は関係ないじゃないか」
「まあ関係ねーけどよ」
巻き込まれ大魔王の桜が他人事のように言う。実際他人事か。
「そうだ!桜さんにも敬語無くしていいですか!!」
「何でだよ」
「ほんと何でさ」
巻き込まれ大魔王、またもや巻き込まれる。可哀想に。μ'sの決め事なのにμ'sに関係ない桜まで巻き込む意味ないでしょうに。
「桜さんも今日はみんなと仲良くして欲しいですし、桜さんも先輩禁止になれば茜くんもやってくれそうだし!」
「茜くんって言われるとなんかぞわぞわする」
「慣れろ、俺はやらん」
「僕もやる気ないんだけど」
慣れない呼ばれ方するとぞわっとする。
「うー!!やりましょうよー!!」
「だから俺関係ねーだろ…」
「勝手にやればええやん!」
「なるほど!」
「やるなアホ」
桜も強行突破寸前である。頑張れ桜。
「まぁ、これから合宿で慣れていけばいいわよ」
「絶対慣れねぇ」
「俺関係ねぇ」
「なんだいこの悲劇的状況」
「さて、改めて。これより合宿に出発します」
「無視かい」
3人の怨嗟の声は届かず。男性陣に人権をください。
「部長の矢澤さんから一言!」
「ええ?!にこ?!」
「頑張れにこちゃん」
「助けなさいよ!!」
絢瀬さんの無茶振りにうろたえるにこちゃん。助けろと言われても。どう助けりゃいいの。応援するしか僕にはできない。
「え、えーっと…しゅ、しゅっぱーつ!!」
…。
「それだけ?」
「考えてなかったのよ!」
「お前の嫁だろ、助けてやれよ」
「一体どうしろと」
「誰が嫁よ!!」
なんか場が静まってしまった。桜も助けろとか言うけど具体的にどうしろと。でもにこちゃんは僕の嫁だよ。将来的には。
こうして、唐突に始まった夏合宿が始まった。
…大丈夫かなあ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
巻き込まれ大魔王の桜。今後もきっと巻き込まれていきます。不憫…笑。