笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
またお気に入りしてくださった方がいました!!ありがとうございます!!毎投稿ハッピーですよ私!!!死にそう!!!生きる!!!!(うるさい)
そして善子誕生日おめでとう!連投してるおかげで誕生日ジャストに祝えましたよ!!あなたも祝いましょう!レッツ黒魔術!!
まあタイトルが前書きのテンションと落差ありすぎなんですけどね。毎回タイトルは遊んでますが、しばらくはそんなテンションじゃなくなりそうです。
というわけで、どうぞご覧ください。
「待って、待って…待ってよ、何もラブライブ出場を諦める必要はないじゃないか!!」
「いいえ…その必要があるのよ。穂乃果が倒れたのは私たちの責任でもあるもの。誰か1人でも穂乃果を止めていれば、ああはならなかった…」
「嫌だ…嫌だ!!失敗は次に活かすものだろ?!ここで辞めてしまったらもう二度と!こんなチャンス来ないじゃないか!!」
「だからこそ、よ。目先の目標のために身を削っていては本末転倒よ」
穂乃果が倒れた翌日、全員で集まって、ラブライブ出場を辞退しようという運びになった。反対者が出るかもしれないとは思ったが、まさか茜がこれほど強烈に反発するとは思わなかった。一種鬼気迫るものを感じるほどの苛烈さで絵里に食ってかかっている。
「だめだ…そんなの、せっかく…」
「いいのよ、茜」
「…にこちゃん」
「私だって、メンバーを潰してまでラブライブに出ようなんて思わないわよ。これが一番いいの」
「いいわけない…いいわけない!!だってにこちゃんは!!」
「いいのよ!!!」
ガンッ!!と椅子を蹴って立ち上がるにこ。悔しそうに唇を噛みながら、しかしまっすぐ茜を見据えて。
「私だって悔しいわよ!!スクールアイドルの頂点を目指したいわよ!!でも、でも!!穂乃果を犠牲にしてまで辿り着いて、それが心から喜べるとも思わないわ!!」
「に、にこちゃん…」
「…」
「…わかったよ。にこちゃんが、そこまで言うなら…」
にこの慟哭を聞いて、茜も覚悟を決めたようだった。震える手ではあるが、目の前のパソコンを操作し…
スクールアイドルランキングから。
μ'sの名を。
…消した。
「…これでいいかい」
「…うん」
「…ごめんなさい。私たちがもっと穂乃果のことを気にかけていれば…」
「…いい、いいよ。それ以上…何も言わないで…」
いつもの飄々とした態度は鳴りを潜め、すっかり意気消沈してしまっている茜は弱々しく立ち上がり、自分の鞄を持ってフラフラと出て行ってしまった。
「茜があれほど反対するとはな…」
「きっとにこの夢が叶いそうだったからよ。彼の中心はいつもにこだから」
「…そうね」
「にこにも、悪いことしちゃったわね…」
「いいわよ…。私も帰るわ。茜が心配だし」
「そうやね…今日はもう解散にしよっか」
希の提案で今日のところはお開きということになった。どうせ今の状態で練習などしても身に入らないだろうし、そうすべきだろう。
海未とことりは先に帰り、絵里と希は生徒会の仕事があるそうで残っていった。だから今帰路につくのは一年生の4人だ。
「残念だったけど…これでよかったんだよね」
「よかったかどうかで聞かれれば、全体を通してまったく良くはないが…悪くはないと信じている」
「にこちゃんも茜くんも…なんだか可哀想にゃ」
「仕方ねぇよ、俺たち全員が背負うべき罪だ」
「そうよね…」
案の定意気消沈している3人。花陽もアイドル好きとしては辛い選択になっただろう。
しかし…このまま暗い顔させ続けるわけにもいかない。
「…よし、お前ら、うちの弟どもと遊んでいけ」
「「「え?」」」
「遊んでいけ。動けば少しぐらい気も紛れるだろ」
そう言って振り返ると、キョトンとした顔でお互い顔を見合わせた後、こっちに笑顔を見せてきた。何笑ってんだ。
穂乃果が倒れた日から数日経った。
あの日はとにかく必死に穂乃果を回復させようとして病院に連れて行くまで全部ついていった。結局風邪をこじらせただけで命に別状もなく、数日寝ていれば回復するとのことだった。
とはいっても心配だったから毎日見舞いに行っていたのだが…。
「あーん」
「…」
「…桜さーん?早くー」
「そろそろ自分で食えよ…」
なぜか俺が餌付け役をやらされた。
しかも割と元気だ。
心配してソンした気分になる。
「もう粥でもねーんだし、自力で食えるだろ…」
「えー、でも咳はでるよ!」
「熱は引いただろ」
「咳はでるよ!!」
「ゴリ押しすんな」
意地でも食わせてほしいらしい。なんなんだ。
しかも今食わせてるのはおやつのプリンだ。おやつにまで俺を使うんじゃねえ。
「あーーーーーーーん」
「わかったわかったもうはよ食え」
「あむっ…んーっ美味しい!」
「あーあーよかったなはよ食え」
「まだ食べてる!!」
「うるせえはよ食え」
「桜さんもしかして照れてる?」
「照れてねえはよ食え」
誰がてめーなんかに照れるか。マジで心配して損した。
「あー」
「ったく何で俺がこんなこと…」
「お邪魔しま…す…?」
「げっ」
「あむっ…あ、海未ちゃん!ことりちゃん!」
ちょうど餌付けしているタイミングでμ'sの奴らが来た。全員ではない、2,3年の女子どもだけだ。茜はいねーのかよ。いなくてよかった。
「よかったぁ、起きられるようになったんだ!」
華麗にスルーしてくれた。ありがてえ。
「うん!風邪だからプリン3個食べてもいいって!」
「食わせねーからな?」
「何で?!」
「どう考えても食いすぎだ」
「心配して損したわ…」
「奇遇だな絢瀬、俺も毎日思ってるわ」
「ひどい?!」
確かにそんなこと言ってた気がするが、そんな大食いさせるわけねーだろ。
「それで、足の方はどうなの?」
「ああ、うん。軽く挫いただけだったし処置も早かったから、腫れが引いたら大丈夫だって」
「藤牧さんにもお礼を言いに行かなければなりませんね」
穂乃果は倒れた時に足を挫いたらしく、右足には包帯が巻かれていた。俺は熱に気を取られてまったく気がつかなかったが、藤牧が即座に気づいて患部の冷却やら固定やらを迅速にやってくれた。感謝しかねぇ。
「…本当に今回はごめんね。せっかく最高のライブになりそうだったのに…」
「穂乃果のせいじゃないわ。私たちのせい…」
「でも、
「はい」
穂乃果の言葉を遮って絢瀬が差し出したのは、数枚のCD。手書きで表面に曲名が書かれている。有名どころからマイナーまで、ゆったり系ピアノ曲が目白押しだった。その選曲センス嫌いじゃない。
「真姫がピアノでリラックスできる曲を弾いてくれたわ。これ聴いてゆっくり休んで」
「わぁ…!!」
弾いたのか、この曲数。やるなあの赤髪ツリ目。
とか感心していたら、穂乃果がおもむろに窓をバッと開け、
「真姫ちゃん!!ありがとーーー!!!」
「何やってんだ?!」
「アンタ風邪引いてんのよ?!」
「うわ!ごほっげほっ」
叫び出した。
恐らくは外にいる西木野に。
馬鹿だな。
「ほら、病み上がりなんですから無理しないでください」
「ありがとう。でも明日には学校行けると思うんだ」
「ほんと?」
これは本当だ。熱が引いたのは一昨日、足の腫れもほぼ引いたし、咳も相当収まった。もう平気だろう。
「うん。…だからね、短いのでいいから、もう一度ライブできないかなって!ほら、ラブライブ出場まであと少しあるでしょ?何ていうか、埋め合わせっていうか…何かできないかなって!!」
「お前病み上がりでライブやってまた倒れたらどうすんだよ」
「今度は無理しない!短くてあんまり激しくない曲をやるから!」
「そういう意味じゃねーんだがな」
穂乃果も罪悪感は感じているようで、そんなことを今いるメンツに相談した。まあ、あと少しっつーかもう3日しかないようだが、間に合うか?
…というか。
なぜ当のメンバーたちは黙っている?
「…みんな、どうしたの?」
「穂乃果…ラブライブには、出場しないわ」
「…え」
俺も。
今初めて聞いた。
…当たり前か。それでも茜が伝えてくれるかと思っていたが。
「理事長にも言われたの。無理しすぎたんじゃないかって、こういう結果に招くためにアイドル活動をしていたのかって。それでみんなと話し合って…エントリーをやめた。もう、ランキングに…μ'sの名前は、ないの」
「そんな…」
「私達が悪いんです。穂乃果に無理をさせたから…」
「ううん、違う。私が調子に乗って、」
「誰が悪いなんて話してもしゃーねーだろ。…もうやっちまったことだ」
「桜さんの言う通り、あれは全員の責任よ。体調管理を怠って無理をした穂乃果も悪いけど、それに気付かなかった私達も悪い…」
「えりちの言う通りやね」
μ'sっつーのは誰も彼もが優しく、一人で責任を背負いこもうとする。そうではない、みんなで責任を背負わねば。つーか矢澤がやたら静かだと思ったが、これが原因か。茜も、矢澤のことだから言い出せなかったのかもしれない。
つーか最近あいつと連絡とってねーな。
「…じゃあ、私たちはもう行くわね」
「うん…ありがとね」
「桜さん、穂乃果をお願いします」
「俺がいつも暇だと思ってねーか?」
「そうよ、桜さんも学校あるはずだし」
「あっ…そ、そうですよね。ごめんなさい」
「…いや、いいさ」
…ダメージは受けたが、それは園田のせいじゃない。むしろ、絢瀬の言葉だ。
全員が出て行ったあと、穂乃果は重々しく口を開いた。
「…桜さん、ラブライブ…だめだって」
「…ああ、残念だな」
ベッドの端に腰掛け、身を起こす穂乃果を見つめる。何でもなさそうな顔をしながら、瞳は大きく揺れていた。さっき俺もダメージ負ったからだろうか、なんだか愛おしく思えてきた。
ああ、きっと状況のせいだ。
俺が穂乃果なんか好きになるわけねー。
だけど、
「わっ」
「…泣きたい時は泣いておけ。我慢するのは、辛いだろ」
「…うん」
こんな心身が衰弱した女の子を、放っておくのは。
俺にはできないから。
今だけ、今だけは、ちょっとくらい抱きしめてやってもいいだろ。
穂乃果は俺の胸に顔を埋めて、意外にも静かに泣いていた。
「結局、高坂穂乃果には伝えられないまま決めてしまったんだな」
『…仕方ないんです。穂乃果ちゃん、ずっとラブライブに夢中だったので…』
「まあ、決めてしまったものはどうしようもない。発つ前に伝えな、せめてな」
『はい…』
「では、俺は先方に連絡しておく。君も早く準備するといい」
『…はい。ありがとうございます』
そこで通話は切れた。南ことりもこれからフランス渡航の準備を行うのだろう。
「さあ、どうだ?俺のシナリオ通りだったろ?」
「…まさしくな。あんた一体何者だ?」
今いるのは誰もいない劇場の控え室。俺が座る車椅子の後ろには、いつもの蓮慈ではなく、見慣れない長身の男がいた。
天童一位。
世界最高と名高い脚本家だ。
「言っただろ?ただの茜の友達だぜ」
「怪しいことこの上ないな」
「わーお何この信頼感の低さ」
…しかし、なんというか、おちゃらけているというか。茜や水橋桜氏のようなオーラがさっぱり感じられない。ただのいじられ役だ。
「そんな態度だから信用ならないんだ」
「つっても、今のところシナリオ通りだろ」
「それは否定しないが」
「だろ?」
「…蓮慈や茜とはまた違った方向で鬱陶しいなあんた」
「ひどくなーい?わたくしそんなに悪行を成したつもりないんですけどー?」
本当になんか腹立つやつだ。
しかし、彼の言う通り、現状は彼の描いたシナリオ通りの展開が続いている。初めて会ったのはこの間のライブのときだが、そこから彼のシナリオだったらしい。
彼のシナリオの始まりは高坂穂乃果が倒れたことをきっかけに描き出されたそうだ。
その後、翌日の夜にはスクールアイドルランキングからμ'sの名が消えていた。
以降、茜から連絡が来なくなった。
音ノ木坂の入学案内がネット上に掲載された。
そして。
「今、南ことりがフランス行きを決めたのも…シナリオ通り」
「おーい一人で喋ってんじゃねーぞー、泣くぞー」
「おい、このままシナリオ通り行くと…」
「おお、急に話しかけてきたな。そうだな、
数日以内に、穂乃果ちゃんはμ'sを抜ける」
彼は、たとえ現実であっても、今後起こりうるシナリオを読むことができるのだろうか。そんなの、蓮慈でもできない未来予知の類だ。
「はっはっは、もしかして未来予知できるとか思ってる?いやーわかっちゃう?俺ってば天才だからなー!!」
「本当にうざいな」
「だからもうちょいソフトにさあ?!」
本当に所作が腹立つやつだ。
「…まあ、冗談は置いといて。未来予知してんじゃねぇよ。俺は人の行動をちょっと先読みするだけ。それもできるだけ多くな。そうすると、取れる行動がだんだん絞られていく。ある人とある人の関わりがまた別の行動を阻害する…そんな一連の流れを読むだけ」
「十分化け物の所業だ」
「そうかもな」
今度はふざけた返事をしなかった。
「まあ人となりがわかればさらに精度が増す。だから茜や桜はお手の物よ。…そして、ここからが俺の本領」
今の本領じゃなかったのか。
「俺も悲劇作家じゃないんでね、できれば予測した悲劇は未然に防ぎたい。だから、俺自身が物語に介入して、少しだけレールを切り替えてやる。…それを繰り返して、一つの悲劇から起こる最悪の悲劇を回避する。それが俺が作れる最高傑作だ」
「そんなことが…」
「可能さ。ちょうどいいからあんたにも介入してもらう、いや介入してもらわなきゃハッピーエンドは飾れねぇ。あんたが今までにとった行動も全部巻き込んで、利用して、みんな笑えるエンドを取りに行くぜ」
なんとも荒唐無稽。
ふざけたことを言っているとしか思えない。
…だが、このまま南ことりを孤独で送り出すのも癪ではある。
「…具体的に、どうする気だ?」
信用ならなくても、何もしないのは気に入らない。
「まあぶっちゃけ穂乃果ちゃん離脱までは防げねぇ案件だ。だからそこから先の改変をする。第1目標は穂乃果ちゃんの復帰、ことりちゃんの離脱阻止、茜の回復の3点。他にも問題点は山積みだが、まずはこれさえ押さえればいい。他の結果はオマケだ」
「…待て、茜がどうしたっていうんだ」
「あいつこのままだと死ぬからな」
「は?」
さらっと恐ろしいことを言いやがった。
「だから、命を救うついでに性根を叩き直す。あいつの異常性を回復するまたとないチャンスだからな」
「はあ…」
さっきから異様に饒舌だが、こういう人なのだろうか。
しかし、茜の「異常性」とは…一体なんだ??
最後まで読んでいただきありがとうございます。
巻き込まれ大魔王の水橋氏、ついにデレる。さあ想像したまえ、水橋君の胸でさめざめと泣く穂乃果ちゃんをッ!私が泣いちゃう!!
波浜君と滞嶺君も心が辛そうですが、今後どうなるやらですね。
そして水面下で動くは天童さんと雪村君。あんまり活躍してこなかった天童さんが本気出し始めました。
「こんなネタキャラで大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」