笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

前回もまたお気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!!ありがとうございます!!毎回これを言えるのすごく嬉しいですね!!連投の影響で普段投稿しない曜日にも投稿してるせいでしょうか?まあ嬉しいからなんでも良いです!!

というわけで、どうぞご覧ください。





救った未来、救えなかった未来

 

 

 

 

 

穂乃果の家まで見舞いに行った翌日、俺はいつも通りμ's一年生ズと共に部室へと向かっていた。

 

 

「穂乃果ちゃん、元気になってるといいけど…」

「まあ…元気じゃなかったら希がなんとかするだろ…」

 

 

今朝方、復活した穂乃果にも会ったが、やはりラブライブへの未練があるようだった。それはそうだろうとは思う。しかし、それも乗り越えて次に活かさなければならない。…希のわしわしマックスを見たくないというのもあるが。

 

 

「うん…あれはもうこりごりにゃ…」

「お前食らったことあんのかよ」

「…その目はなに?」

「いやお前…うおっ何だ急に飛びかかってきやがって」

「なんか聞きたくないセリフの予感がしたにゃ!!」

「別に貧乳が悪いとは言ってねぇぞ」

「フシャーーー!!!」

「うおっ」

「…何やってんのよ」

 

 

正直に言ったら猫みたいに飛びかかってきた。引っ掻かれたり抓られたりするがさほど痛くは無い。そんなヤワな肌では無い。真姫も花陽も呆れた顔をしているし、さっさとどいてほしい。あと一般モブの視線が痛い。

 

 

「にゃ?!」

「急にでかい声出すなアホ」

「創ちゃんこれ見てこれ!!」

「創ちゃんはやめろ」

「見て!!」

「聞けよ」

 

 

背中にしがみついた凛が後ろを振り返らせようと頭を両手でひっつかんで叫ぶ。うるせえよ、耳悪くなるだろ。

 

 

仕方なく振り向くと、一枚の張り紙が目に入った。別に目を引くような煌びやかさあるわけでもなく、なんの変哲も無いただの白い紙に印字してあるだけだ。

 

 

しかし、内容は。

 

 

 

 

「来年度…」

「入学者…」

「受付の…」

 

 

「「「「お知らせ?!?!」」」」

 

 

 

 

まさか!!

 

 

「早くみんなに伝えなきゃ!!」

「あっ凛ちゃん!待ってぇ!!」

「え?ま、待ちなさいよ!!」

「おいコラ置いてくな」

 

 

一気に駆け出す三人娘。待て、置いていくな。どうせすぐ追いつけるが。

 

 

速攻で3人捕らえて屋上に運び、扉をバンッ!と開け放ち3人を放り投げる。

 

 

「お前ら!!!!」

「大変にゃ!!」

「た、助けて…」

「何してんの君ら」

「大変にゃ!!」

「うん、ちゃんと聞こえてるから大丈夫だよ」

 

 

既に他のメンバーは勢揃いしており、茜も日陰でぐったりしてはいるがいつもの調子だった。そこはまあ安心して、しかし言葉で説明するのもなんか気にくわない。

 

 

「いいから来い!!」

「一体何がぐえ」

 

 

とりあえず茜をひっつかんで掲示板の元へ戻る。茜は死にかけたが、後からちゃんと他の面子もついてきた。茜は死にかけたが。

 

 

「…来年度、入学者受付のお知らせ?」

「これって?!」

「中学生の希望校アンケートの結果が出たんだけど…」

「…どうやら、去年よりはるかに多かったそうだよ…。だから、音ノ木坂は存続。来年も新たな一年生が入ってくるってこったね」

「再来年はどうなるかわからないけどね」

「じゃあ後輩できる?!」

「うん!」

「やったにゃー!!」

 

 

絵里や茜の解説に喜ぶ一同。これは喜ぶしかないだろう、何しろμ'sは音ノ木坂存続をかけて作られたスクールアイドルだ。多くの苦難を乗り越えて、これほどのことを成し遂げた。

 

 

音ノ木坂を救った…!!!

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!」

「うわっ?!」

「創ちゃんどうしたの?!」

「お前らっ!これが叫ばずにいられるか!!!」

「元気だね」

 

 

俺が頑張ったわけでもないのだが、無性に達成感がこみ上げてきて、つい叫んでしまった。みんなの鼓膜は無事だろうか。

 

 

「よし、こういう時はどうすればいい!今なら4tトラックも持ち上げれられるぞ!!」

「何言ってんの」

 

 

喜びを言葉で表現したら茜に引かれた。しかし今は本当にそんな気分なのだ。何だってできる、そんな気分だ。

 

 

しかし肝心の「何すべきか」は全くわからん!!

 

 

「落ち着きなさいよ。…でもせっかくだし、明日お祝いパーティーするわよ!お菓子買ってきなさい!」

「了解ッ!!」

「待ってお金どうすんぶぇ」

「来い財布!!」

 

 

にこの提案を受けて即出発。金は後で集めるとして、とりあえず茜を財布代わりに連れて行く。財布役なら瀕死でも構わん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではとりあえず…にっこにっこにー!」

「開幕はそれ安定なんだね」

「うるさい」

「はい」

 

 

そして翌日、大量のお菓子とメンバーたちによる料理を部室の奥の部屋に並べてパーティーが開催された。飾り付けなんかもしてなかなか豪華になっている。片付けが面倒かもしれないが、今そんなことを気にするのは野暮だろう。

 

 

「みんなー!グラスは持ったかなー?」

 

 

そして、一応部長であるにこが場を取り仕切っている。まあおそらく仕切り役としては最後まで保たないだろうが。

 

 

「とりあえず学校存続が決まったということで…部長のにこにーから一言!挨拶させていただきたいと思います!!」

「おおー!」

「にこちゃんがんばれー」

 

 

意気揚々と演説を始めるにこ。今回は挨拶を準備したんだろう。しかし茜が微妙に疲れたテンションなのが心配だ。海未とことりも何故か喜ばしいとは言えない顔をしている。

 

 

「思えばこのμ'sが結成され、私が部長に選ばれた時からどれくらいの月日が流れただほうか…!!」

「あっこれ長いやつだ」

「たった二人のアイドル研究部で耐えに耐え抜き、今こうしてメンバーの前で思いを

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

「ちょっと待ちなさーい!!!」

「そんな気はしてたよ」

「どう考えても長ぇよ」

 

 

大方の予想通り、フリーダムなμ'sたちは話が長いと見るや否や乾杯してしまった。にこの制止も振り切ってお菓子や料理に手を伸ばす女子達。何でもありだなこいつら。

 

 

「お腹すいたー。にこちゃん、早くしないと無くなるよ!」

「…卑しいわね…」

「みんなー!ご飯炊けたよー!」

「何でご飯があるんだ寄越せ」

 

 

俺は俺で白米をいただく。結局俺もフリーダムだな。

 

 

ご飯を山盛りにして少し離れると、絵里と希が保護者さながら優しくメンバーを見守っていた。

 

 

「ホッとしたようやね、えりちも」

「まあね…肩の荷が降りたっていうか」

「何だ、そんなに肩肘張ってたのかお前」

「生徒会長だもの。責任を感じるところではあるわよ」

 

 

そういえば、花陽が以前の絵里は怖かったとか言っていた気がする。合宿前までは実際に怖がっていたくらいだしな、色々気苦労があったのだろう。

 

 

「μ's、やってよかったでしょ?」

「…どうかしらね。正直、私が入らなくても同じ結果だったと思うけど…」

「そんなことないよ。μ'sは9人、マネージャーが2人。それ以上でも以下でもダメやってカードは言うてるよ」

「ああ、きっとお前ら9人でなければ俺も手伝わなかったと思う。絵里が不要だった、なんてことは絶対無ぇ」

「…そうかしら」

 

 

誰かが居なくなったら成り立たない。それがμ'sだと俺は思う。名前も9人の女神なんだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…みんなにちょっと話があるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然ですが、ことりが留学することになりました」

 

 

 

 

 

 

 

突然の話に、頭がついていかなかった。

 

 

 

 

 

 

「2週間後に日本を発ちます」

 

 

ことりが?留学?突然、このタイミングで?

 

 

「…は?」

「ちょっと…どういうこと?」

「前から服飾の勉強をしたいと思ってて…そしたらお母さんの知り合いの学校の人が来てみないかって…。ごめんね、もっと早く話そうと思ってたんだけど…」

 

 

誰も彼もが困惑していた。信じられなかった。ここまで一緒にやってきて、廃校を乗り越えて、ここからまた始まると思った矢先。

 

 

「学園祭でまとまっている時に言うのはよくないと…ことりは、気を遣っていたのです」

「それで最近…」

「行ったっきり…戻ってこないのね?」

「うん…高校を卒業するまでは…」

 

 

高校を、卒業するまでは帰ってこない。

 

 

それはつまり、彼女が音ノ木坂に帰ってくることはないということ…。

 

 

 

 

 

 

 

「…どうして、言ってくれなかったの…?」

 

 

 

 

 

穂乃果は震える声で呟きながら立ち上がった。そう、そうだ。今最も不自然なのは、彼女が留学のことを知らなかったこと。海未は知っていて、穂乃果は知らない。一番の幼馴染であるはずなのに。

 

 

「だから…学園祭があったから…」

「…海未ちゃんは知ってたんだ」

「それは…」

「…どうして言ってくれなかったの?ライブがあったからっていうのもわかるよ。でも…私と海未ちゃんとことりちゃんはずっと…!」

「穂乃果…」

「…ことりちゃんの言うこともわかってあげな

 

 

 

 

 

 

 

「分からないよッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

叫び声が炸裂した。

 

 

今まで聞いたことのないような…そう、多くの修羅場や阿鼻叫喚の地を渡り歩いた俺も聞いたことのないような、怒り、悲しみ、嘆き、戸惑い…様々な負を全部投げ込んだような、叶うなら死ぬまで聞きたくなかった、恐ろしい叫びだ。

 

 

「だって!いなくなっちゃうんだよ?!ずっと一緒だったのに!離れ離れになっちゃうんだよ?!それなのに…!!」

「…何度も言おうとしたよ?」

「………え?」

 

 

多くを叫んで糾弾する声を、ことりが止めた。今にも泣きそうな声で、表情で。

 

 

「でも、穂乃果ちゃんライブに夢中で、ラブライブに夢中で…だから、ライブが終わったらすぐ言おうと思ってた。でも…あんなことになっちゃって…。聞いて欲しかったよ!穂乃果ちゃんには!!一番に相談したかった!!だって!…穂乃果ちゃんは初めて出来た友達だよ?!ずっと側にいた友達だよ?!!」

 

 

ことりも抑えきれない涙を流して、堰を切ったように言葉を投げ出した。ああ、きっとそうだったのだろう。彼女は優しかった。友人の邪魔をしたくなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

 

 

「そんなの…そんなの!当たり前だよっ!!」

 

 

 

 

 

全てタイミングを、逃してしまった。

 

 

 

 

 

「ことりちゃん!!!」

 

 

叫んで飛び出していってしまったことりを、追いかけられる者はいなかった。俺も動けなかった。ここで彼女を捕らえる勇気がなかった。連れ帰ってきてどうしたらいいかなんて、何も思いつかなかった。

 

 

こんな状況では、これだけ鍛えた筋肉も全く役に立たないな…。

 

 

「ずっと…行くかどうか迷っていたみたいです。いえ、むしろ行きたくなかったようにも見えました。ずっと穂乃果を気にしていて、穂乃果に相談したらなんて言うかとそればかり…。黙っているつもりはなかったんです。本当にライブが終わったらすぐ相談するつもりでいたんです…分かってあげてください」

 

 

海未の弁明は主に穂乃果に向けたものだろう。穂乃果も放心してはいるが、聞こえてはいるようだ。他のメンバーもうなだれて、人によっては涙を浮かべて黙っている。

 

 

「…もう、今日は帰ろうか」

 

 

一人、全くの無表情を貫く茜が言った。決して何も感じていないわけではない。奴は真顔が緩い笑顔みたいなやつだ、無表情になんてほとんどならない。

 

 

あいつもどこか、ダメージを受けているのだろう。

 

 

…茜の言葉に反論する者はなく、静かに片付けて、みんな無言で去っていった。

 

 

俺はみんなが去った後、屋上に行った。屋上の真ん中で膝をつき、両手も地面についた。こんな体勢をとるのはいつ以来だろうか、負けたときくらいしかこんな無様な格好はしなかった。

 

 

…何も出来なかったのが悔しかった。

 

 

きっとできることは無かったが、それでも…無力な自分に腹が立った。

 

 

 

 

 

 

「—————————————————————————————ッッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

音に表現できないほど叫んだ。

 

 

上体を逸らして天を仰ぎ、地球の裏まで届けと、太陽まで届けと言わんばかりに叫んだ。

 

 

張り裂けるほど。

 

 

…壊れそうなほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい、あんたの指示通り動いているが…本当に大丈夫なんだろうな?」

「まーた心配性だな。大丈夫だって言ってんだろ?何も問題ないって!あと俺一歳だけ年上だからね?!」

 

 

今日も俺と天童一位は劇場の空室で裏工作をしていた。劇場なんか勝手に使っていいのかと思ったが、彼がこの劇場の責任者なんだそうだ。何者だこいつ。

 

 

「敬語は使う気になれないな。全く事態が見えないし好転しているようにも思えない、これで信用を得られると本気で思ってるなら無理があるぞ」

「ねぇそんなに俺のこと嫌いなの?泣くよ?泣いちゃうよ俺?」

 

 

南ことりが留学を決めてから数日、俺は天童一位の指示通りの行動を起こしていた。今していることが本当に役に立っているのか…というか読みが外れたら恐ろしいことになる。恐ろしい胆力と自信だ。

 

 

「責任取れるんだろうな…」

「さあなー。あーもしもし?オレオレ。あー待てっ詐欺じゃねー!天童!天下一品天童さんですぅー!!てめっ聞いた上で切ろうとすんな!ああ?!嘘つくな!!見える、私にも見えるぞ!!」

「…マジでなんなんだ?」

 

 

…急に電話しだす天童一位。動きが読めないにも程がある。

 

 

「いやさぁ桜、お前茜の家行ったことあるだろ?なんか変なもんなかったかなーって。あ?いいじゃねーかネタになるだろ?あいつもそろそろ舞台化していいと思うんだよ。………ほう、そんなんあるのか。気持ち悪いなあいつ。…何だとコラ、俺は気持ち悪くないぞ。今世紀最大の気持ち良さを放ってあー待て待て俺が悪かったーッ!!!」

「…」

 

 

会話の内容が気になりすぎる。

 

 

そういえば、俺も蓮慈も茜の家には入ったことがないな。まあ、お互い相手の家に入ろうなんて思わないんだが。

 

 

何が勘に触るかわからない地雷源みたいなもんだしな、自宅なんて。

 

 

「あ?直接聞いたところであいつは変とは思ってねーだろ?第三者の意見が大事なんだよ。……だーかーらー仕事!俺、仕事では真面目だろ?!違うの?嘘?もうマジ無理マリカしよ…」

 

 

本当に仕事の話なのか、今回の作戦の話なのか判断に困る。

 

 

「あー、お前もか?やっぱ怪しいよなー、ここに来て引きこもるとか。一回にこちゃんに聞いてみるかな。……ん?ああ、大丈夫だ。俺も面識ある。お前は穂乃果ちゃんの心配してろ…おっと口が滑ったわ。はっはっはもう用は済んだから切るぞーお達者でー!!」

「…」

「よーし、俺もちょっと行動に移すかなー!カリスマムーブ見せちゃうぞー!!」

「…本当にうざいな」

「ねぇみんな俺に冷たいのはなんで?死にたくなるじゃん?」

 

 

今回うざいと形容したのは電話後の言動のことではない(うざいのは否定しないが)。

 

 

電話の最後の言葉。…口が滑ったとか言ったが、あれはわざと滑らせたのだろう。水橋桜の意識を高坂穂乃果に向けるための布石。一体どれほどの経験があればあんなに自然に布石を打てるのか。

 

 

…まさか俺も?

 

 

「さて、俺もそろそろ出番だな…」

「あんた自身も動くのか?」

「当然よ。予定通りなら明後日かなー、ちょっと前後するかもしれねーけど」

 

 

そう言って、「んじゃまたなー」と軽い挨拶をして出て行く天童一位。その背中はただの軽い男にしか見えないが、得体の知れない風格も纏っていた。

 

 

彼が考えていることは、今でもわからない。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は情緒不安定な滞嶺君。感激で叫んだり辛くて叫んだり忙しい子です。なんだかんだ言って彼も高校一年生ですから。半年前くらいまでは中学生だったんです。精神的にも不安定にもなります。
あとは今日も元気に裏工作、天童さんと雪村君。何してるんでしょうね!!!

ちなみに、最近波浜君視点が少ないのは意図的にやってます。


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