笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

今日も連投です。
今回は特にシリアス多めなので、私も静かにいきます。
あまり過激ではないですが、一応「残酷な描写」タグをつけておいた理由がこのお話になりますので、苦手な方はご注意を。

というわけで、どうぞご覧ください。




ひとりの盲信の真相

 

 

 

 

 

「よーい、スタート」

 

 

ここしばらくは、私と花陽、凛、創一郎の4人で活動していた。天童さんと話した後も、なかなか茜の元に行く勇気が出ず、こうして練習することで気を紛らわせていた。

 

 

「ゴール!!」

 

 

今走っているのは凛と花陽。私はさっき走って、今は休憩中。この長い階段を走って上るんだからそう何度も連続してできない。創一郎はできそうだけど。

 

 

「はぁ、はぁ…」

「かよちん遅いにゃー」

「ご、ごめん…はぁ、はぁ、久しぶりだと、きついね…」

「当たり前だろ。運動しなかった分だけ体力は失われる…だからこその基礎練だ。夕方にやるのは比較的涼しいから、あと太陽が背を向く形になるからだな。眩しくないし目に優しい」

「…あんた本格的にマネージャーになってきたわね」

「マネージャーだからな」

 

 

穂乃果が抜けてから他のみんなは多少なりとも落ち込んでるのに、創一郎だけむしろやる気に満ちていた。なんかあったの?

 

 

 

 

 

「あっ!」

「…凛ちゃん、花陽ちゃん、にこちゃん…創ちゃんも」

「…穂乃果ちゃん」

 

 

 

 

 

そこに、階段を上ってきたのは…穂乃果。私たちが練習しているのを見て驚いているようだった。

 

 

「練習…続けてるんだね」

「当たり前でしょ?スクールアイドル続けるんだから」

「え?」

 

 

私の答えにさらに驚く穂乃果。廃校を免れた今、穂乃果としては活動する意味はないと思ってるのかしら。

 

 

「…μ'sが休止したからって、スクールアイドルをやっちゃいけないって決まりはないでしょ」

「でも、何で…」

 

 

何で、ですって。

 

 

愚問にも程があるわ。

 

 

 

 

 

 

「好きだから」

 

 

 

 

 

 

それが私の全てよ。

 

 

「私はアイドルが大好きなの。みんなの前で歌って、ダンスして、みんなと一緒に盛り上がって、また明日から頑張ろうって…そういう気持ちにさせてくれるアイドルが、私は大好きなのよ!!」

 

 

そう。私はアイドルが大好きで…私自身も、アイドルになりたかった。

 

 

茜が応援してくれた夢を、叶えたいの。

 

 

だから。

 

 

 

 

「穂乃果みたいにいい加減な『好き』とは違うの!!」

 

 

 

 

ちょっときつい言い方をしてしまった。勿論嘘はない。私の「好き」にはいろんなものが詰まってるもの。

 

 

「違う!私だって…」

「…どこが違うの?自分から辞めるって言ったのよ。やってもしょうがないって」

「それは…」

「にこちゃん、言い過ぎだよ…」

 

 

凛に咎められたけど、これは言っておかなきゃいけない。私は…中途半端にアイドルをやってほしくなかったから。

 

 

「ううん、にこちゃんの言う通りだよ。…邪魔しちゃってごめんね」

 

 

バツの悪そうな顔をして私たちに背を向ける穂乃果。

 

 

「待ちなさい」

「…?」

 

 

それを、私は呼び止めた。もう一つ言っておかなきゃいけないことがあるから。

 

 

「今、茜は全く連絡が取れないわ。あんたが辞めた日から」

「え…」

「元凶は私だけど…トドメを刺したのは、あんたよ。私がなんとかするけど…あんたが茜に謝らない限り、私はあんたを許さないわ」

「…うん、わかった」

 

 

穂乃果は顔を伏せて返事をし、そのまま階段を降りていった。…茜のことは言わないわけにはいかなかった。あいつの悲劇を、知ってもらわなきゃ。

 

 

 

 

 

 

『…なあにこちゃん。誠に不愉快だろうが…君が茜を救えない理由を言い当ててやる』

『何ですって?』

 

 

あの日、何かを悟った天童さんが言った。

 

 

『その理由はな、…君のくだらない独占欲だよ』

『…独占欲?』

『そう。きっと君は心から茜に恋し、愛したんだろう。俺も知らない過去からな。幼いながら本気だったんだろ』

 

 

天童さんの指摘は確かに腹立たしく、でもきっとそうなんだって納得できた。

 

 

だって、今でも茜が女の子と仲良くするのは気に入らないもの。μ'sのメンバーでさえ、あまり積極的に関わっているとつい睨んじゃう。確かに酷い独占欲だ。

 

 

『今一度知らなきゃいけない。茜は君だけのものじゃないってことを。君一人で考えて助けられるもんじゃないってこと。だって現にあいつは病んでるわけだしな』

『…病んでるの?』

『多分なー。君にも連絡せずに引きこもるなんてそうじゃなきゃありえねーだろ?…だからさ、仲間を頼りな。君の知らない場所で補佐はするからよ。…だから、

 

 

 

 

どうか…茜を救ってくれ』

 

 

 

 

 

 

そうよ。

 

 

茜は…私のものでは、ないわ。

 

 

「なあにこ…元凶がどうのとか、一体なんの話だ?」

「…うん。今から話すわ」

 

 

ちょうど今日の練習はここまでだし、話すタイミングとしては今よね。花陽と凛も不安そうにこっちを見てるし。

 

 

「昔、茜に何があったのか…聞いて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は人気者だった。

 

 

運動は冗談みたいにできなかったけど、みんなと話をするのも好きだったし、勉強は得意だったし、運動音痴も笑いに変えられる程度にはユーモアもあった。僕はみんなが大好きで、きっとみんなも僕が好きだったと思う。みんなのためならなんだってできるって思ってた。

 

 

もちろんにこちゃんとも、保育園時代から仲良くしていた。家も近かったし、2人でよく遊んだりもした。その時はもっといろんな友達と遊んでいたけど。

 

 

父さんは数学者で国立大学の准教授だったし、母さんは専業主婦をしつつ趣味で漫画を描いてネットに上げたりしていた。親の影響で勉強もいっぱいしたし、絵もたくさん描いた。その道の才能があったのか、たまたま幼い頃から親しんできたからか、とにかく運動音痴を優にカバーできるほどの絵の技術と頭脳が僕にはあった。

 

 

絵を描くとみんな褒めてくれたし、喜んでくれた。みんなが喜んでくれるのが嬉しくて、沢山絵を描いた。ポスターなんかの絵にも使われて、結構名前が知れ渡っていた。

 

 

8歳の時、そんな僕に一つの招待状が届いた。

 

 

夏休みに日本全国の才能ある子供を集めて合宿し、交流しようというものだった。

 

 

「というわけで僕が波浜茜です」

「へぇ、君が波浜少年か。私は藤牧蓮慈だ。よろしく」

「…俺は雪村瑞貴。同年代は俺たちだけなのか?」

「っていうか大半中学生以上だし」

「1桁の年齢は私たちだけだな。まあ当然か、この私に匹敵する頭脳などいないだろうしな」

「何この人」

「俺に聞くなよ」

 

 

この時、はじめてまっきーとゆっきーに出会った。まっきーは今と同じくらい…いや今よりはるかに鬱陶しいやつだった。ゆっきーは変わんない。

 

 

「こら、蓮慈。あまり自分の才能を過信するんじゃない。驕りは成長を止めるぞ」

「む、父様。失礼しました」

「大丈夫よ。お父さんも怒ってるわけじゃないわ」

「うん、わかってるよ母様。少し驕りが過ぎてしまった」

 

 

彼の両親は共に医師で、世界的にも有名な人だった…らしい。僕は当時よく知らなかったし、今から調べても10年経ったら多分埋もれてるから当時の評判はわかんない。

 

 

とにかく、かなりの人格者だったことは覚えてる。

 

 

「これはこれは…藤牧先生、お会いできて光栄です」

「こちらこそ、波浜先生。先月の論文、拝見させていただきましたよ。非常に画期的な式でした…プログラムにも組み込みやすい。ただ数学として進歩するのみならず、ITにも衝撃を与えるでしょう」

「それほどのことではありませんよ。2つの変数の比例関係を見出し、1つの変数として再定義しただけですから」

「それだけでどれだけ計算が簡単になるか計り知れませんよ。それに…」

 

 

父さん…波浜大河はまっきーのお父さんと議論に火がついてしまった。流石についていけない。

 

 

「ははぁ…やっぱり天才の親も天才ってことなのか?」

「そんなことはないよぅ。私たちはただの一般人だけど、瑞貴はこんなに立派だもの」

「その通りですよ、雪村さん。私も夫はあんなのですが、私は一介の医師にすぎませんし」

「私もただの専業主婦ですもの!!」

「波浜さんはともかく、藤牧さんは十分優秀じゃありませんかね?」

 

 

一方の母さん、波浜藍はテンション高めで雪村夫妻に絡んでいた。テンション高いのはいつものことだったわ。

 

 

「僕らはもうバス乗っちゃっていいのかな」

「扉は開いてるが、入っていいのかはわからんな」

「開いてるのだから入っていいに決まっている。さあ行くぞ」

「うわ力強い」

 

 

合宿施設まではバスでの移動だった。親に取り残された僕らは、まっきーに連れられて車内に連行された。まっきーは何故か力も強かった。反則じゃない?

 

 

車内はまだ誰もいなかったため、僕ら3人で最後列を陣取った。しばらくしてから他の子供達や親たちも乗り込んできた。

 

 

「あれ、雪村君のご両親は?」

「うちの親は今日もこの後仕事だ。夏休みとはいえ、平日だから普通はそうだと思うんだがな」

「私の両親は医師でありながら参加しているぞ?」

「絶対おかしいと思うんだよな」

「うちは父さんはともかく母さんは暇だから」

「茜ー聞こえてるわよー!」

「やばい」

 

 

一応このイベントは親も同行可能だった。平日のくせに割と参加者多かった。うちもそうだったし。

 

 

出発時刻になって程なくして、バスは出発した。最初は都市部を走っていたが、だんだん山の風景に変わっていった。

 

 

「とりあえず仲良し計画として、雪村君はゆっきー、藤牧君はまっきーって呼ぶね」

「なんだそのダサいあだ名」

「いいじゃないか、私は構わないぞ。私だと判別できればなんだっていい」

 

 

まずは仲良くなろうと思って、早速あだ名をつけた。安直な感じもしたけどまあいいかと思った。

 

 

「ところで、2人はどんなすごい人なの」

「私は見ての通りの天才だ。すでにストークスの定理程度ならマスターしている…他の大方のことはできないことの方が少ないな」

「なんでこんなに自信満々なんだろうな」

「ねー。僕より上手く絵を描けるのかな」

「非常に残念だが、そういった芸術方面は探究分野ほど明るくない。出来なくはないが、天才には至らないな」

「何故こんなに鼻につく言い方なんだこいつ」

「にやけてるからじゃない?」

「…素直に賞賛されなかったのは初めてだ」

 

 

自信満々で自己肯定感の塊みたいなまっきーも、同じく天才の枠組みにいる僕らからはただの腹立つ頭いいやつでしかなかった。だからこそ仲良くなれたとも言えるけど。同じ土俵に立てる人自体が少なかっただろうからね。

 

 

「俺は立体把握とデザインだな。小物とか服とかを、完成品から展開図をすぐに連想でき、展開図から完成品を想像できる。立体的なデザインのセンスも買われたな」

「服作れるの?」

「ああ。…あんまり気にしたことないが、難しいらしいな」

「むう…私も服は作ったことはないな。できなくはないだろうが」

「最後の一言いるか?」

 

 

ゆっきーはゆっきーで気が短かった。一言だけでむっとする程度には。

 

 

「僕はお絵かきだよ。鉛筆でデッサンしてることが多いけど、水彩画とかもやるしデジタルで描いたりもするよ」

「また芸術分野…まあ私がいたら探究分野の天才は呼べないか」

「猛烈に腹立つな」

「落ち着いて」

 

 

まっきーの無自覚煽りがすごく的確にゆっきーの逆鱗を貫いていくからすっごいハラハラした。やめようよ。

 

 

 

 

 

その後も僕ら3人は話を続け、かなり仲良くなった…と僕は思っている。まあ悪くはない。多分。

 

 

 

 

 

そんな、なんの変哲も無い一コマに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズゴッ!!!!!!っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい音を立てて、大岩が降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

僕の身体は宙を舞った。全ての景色がスローモーションで流れていく。声が悲鳴と爆音に掻き消される。

 

 

同じように投げ出されそうになって、両手でシートにしがみつくゆっきーが見えた。

 

 

何かを叫びながら、左手でシートを掴み、右手を僕に向けて伸ばすまっきーが見えた。

 

 

僕は反射的に手を伸ばした。まっきーの手に触れ、一瞬引かれて微妙に軌道が逸れたが、僕の筋力では彼の手を掴み続けることはできなかった。

 

 

 

 

 

ゆっきーの姿は落石で見えなくなった。

 

 

 

 

僕に向かって叫ぶまっきーの右腕が巨石に吹き飛ばされるのを見た。

 

 

 

 

吹き飛ぶ眼下で、父さんと母さんが岩に押し潰されゆくのが見えた。

 

 

 

 

 

2人が僕に向かって、手を伸ばしているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

僕には、ゆっきーも、まっきーも、父さんも母さんももっと沢山のいっしょにいる人たちも…助けられなかった。

 

 

 

 

 

僕のせいではないけど、叫び声をあげるほど悔しかった。

 

 

 

 

 

そして、背中を何かが突き破り、壮絶な痛みで僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの日までは、茜は誰とでも仲良くできたし、誰彼構わず助けるような…正義感の塊みたいなやつだったわ」

 

 

茜に起きた悲劇を、ほとんど伝聞ではあるけど、私の知る限りを花陽、凛、創一郎に伝えた後で、私はそう続けた。

 

 

「背中には引き千切れたバスの手すりが突き刺さっていたそうよ。背中から胸にかけて貫通していて、奇跡的に心臓を避けていたのを加味しても生存できたのは本当に奇跡だって、そう聞いたわ」

 

 

あの日病院に運ばれた茜には、半年以上面会すらできなかった。元々体力のなかった茜に、肺の大部分を損傷するような大怪我だったのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()間違いなく死んでいたと言われるほど。

 

 

「そして、久しぶりに会った茜は…絶望した顔だったわ。目が死んでた。もう冗談みたいに笑わなかったわ」

 

 

病院で初めて面会した日には、茜はご両親の死を聞いていた。即死だったそうだ。

 

 

「…茜は同年代の中では圧倒的に大人だったわ。人のことを考え、人のために頑張れるやつだった。いろんな不幸を受け入れて克服できるやつだった。…だから、大人すぎたから、ご両親の死を真正面から受け止めてしまった。忘れたり、否定したりして逃げなかった」

 

 

きっとあいつは、逃げることを知らなかった。逃げ道を知らなかった。だから、ご両親の死も逃げずに受け止めてしまったせいで…もう、発狂寸前だったの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茜!茜、よかった…目が覚めたのね!!」

「…にこちゃ」

 

 

どれだけ気を失っていたのかわからないけど、とりあえず目は覚ました。しばらくして容体が安定してから、西木野先生から両親は即死だったと伝えられた。ゆっきーは両足が潰されて重症だが意識は随分前に戻り、まっきーは右腕と右目を失った上でピンピンしていることも聞いた。あともう1人生存者がいたそうだが、後はほぼみんな即死だったとか。

 

 

「…茜?大丈夫?」

「…にこ、ちゃん」

 

 

肺の状態も聞いた。実際呼吸もロクにできなかった。でも何より、父さんにも、母さんにも、もう会えないことが僕の心に重くのしかかった。

 

 

もう、父さんの声は聞けない。

 

 

もう、母さんの手は握れない。

 

 

涙さえ流すこともできなかった。

 

 

 

 

「…にこちゃ。父さん、母さんも、死んじゃったよ」

「え…」

「…僕、僕だけ生き残っちゃったよ」

「茜…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕…どして、生き残っちゃったんだろ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

死にそうな声で、死にそうな言葉で、にこちゃんに漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私は、その頃から茜が好きだったわ」

「急に変なカミングアウトするんじゃねぇよ」

「いやわかってたにゃ」

「わかるよね」

「嘘だろおい」

 

 

そう、私は茜が好きだった。…ええ、今でも好きよ。みんなに好かれる茜に、みんなのために頑張る茜に恋して、羨ましくて…独り占めしたかった。

 

 

「茜はいつもみんなのものだった。あいつも私1人を見ることはなかった。幼馴染だから関わりは多かったけど、あいつにとって特別なんてことはなかったのよ」

「それが、茜がおかしくなったことに関係あんのか?事故自体にお前関わってねぇんだろ」

「ええ。だからこの後なのよ。…私は思ったの。思ってしまったのよ。幼いながら、私は本気で好きだったから、幼かったから止まらなかった」

 

 

そう、幼かったから。しかし、それで片付けて放り投げるわけにはいかない。何年前の罪でも、私の罪だから。

 

 

 

 

 

 

「今、心が壊れそうな茜なら…私のものにできるって、思っちゃったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…茜、私はあなたが生きててよかったと思うわ」

「…僕、何もできなかったよ」

「ううん、何ができたかじゃないの。あなたが生きててくれたこと、それだけでとっても嬉しいの!」

「…せっかく生き残ったのに、何のために生きればいいかもわからないよ」

 

 

僕の心は限界だった。

 

 

両親が目の前で死んで、無謀にも受け入れてしまって、平気なわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの簡単よ!あなたはきっと、私のために生きててくれたのよ!大丈夫、私もずっと一緒にいてあげるから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

 

 

僕が生きていくには、その言葉に縋り付くしかなかったんだ。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

…自分で読み返していて泣きそうになるので困ったものです。
波浜君は、端的に言えば「超博愛主義」です。自分が死んで誰かが助かるなら平気で死にに行くような人間です。
それが、他の被害者や愛する両親を差し置いて自分だけ生き残ったら。しかも満足に呼吸もできない状態で。しかも一瞬にして天涯孤独です。8歳で。このまま退院して放り出されても即刻死ぬでしょう。
そこに刺さったのが、幼いにこちゃんの無邪気な願望です。
波浜君はそれに救われ、それ以外の一切を失いました。
そんな最後の柱も折れた波浜君、ちゃんと助けてあげないといけませんね。

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