笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼
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ご覧いただきありがとうございます。

またお気に入り増えていました。感想もいただきました。更に10年寿命伸びました。嬉しすぎたので次話投げます。ほんとちょろいわー。

あと、海未ちゃんお誕生日おめでとうございました。来年までに海未ちゃんがハッピーエンドしてたらおまけ書きたいですね。進まないんですよ話が。

というわけで、どうぞご覧ください。

ちなみに突然シリアスしたりするのでご注意ください。


やりたいことは好きなだけやらなきゃ損だと思う

 

 

「はあ、スクールアイドルを始めた子がいると」

「そうなの。廃校を阻止するためにって言ってるんだけど…」

「えりちは自分が頑張ってるのに余計なことしてほしくないんやって」

「希の言い方だと私が嫉妬してるみたいじゃない!」

「違うのかい」

「違うわよ!私はスクールアイドルみたいなリスクの大きい方法には反対って言ってるの」

 

 

放課後の教室で勉強会をしている折に、絢瀬さんがそんな話をしてくれた。2年生3人組がスクールアイドルを始めたと。僕としては後継者が出てくれて嬉しい限り、あわよくばにこちゃんも入れてくれと切に願うわけだが、生徒会長様はあんまり乗り気じゃない様子。こりゃ一回様子見てあげた方がいいかもしれない。

 

 

にこちゃんと友人関係でわちゃわちゃした翌日、ちょうど絢瀬さん&東條さんが「勉強を教えてほしい」と相談してきたので快諾しておいた。そしたらにこちゃんもいつの間にか乱入していた。そんなわけだ。

 

 

つまりこの場にはにこちゃんもいるわけだけど、

 

 

「…ぐう」

「静かだと思ったら、寝てたのね…」

 

 

ぐっすり寝ていた。そんなに勉強が嫌だったか。

 

 

「起こしましょうか」

「いーや、ほっといて。スクールアイドルの話をしてる時に起きたらそれはそれでうるさいから」

「にこっちはほんとにスクールアイドル好きなんやね」

「スクールアイドルっていうかアイドルがね。それにしても、その子たち、君が承認してやらないと、部を作るなりしないと非公認扱いにならないか」

 

 

基本的にスクールアイドルは好き勝手やるもんじゃない。練習場所とか資金とか諸々必要ということで、部活として機能するのが一般的だ。学校側から直々に承認もらうこともあるらしいが、まあ面倒ゆえに普通やらない。部活承認に人数が届かないときくらいだ。事実にこちゃんもアイドル研究部を発足させたわけだし。

 

 

で、部活承認人数は5人。

 

 

普通に足りてない。

 

 

「そうよ。だからまずメンバーを揃えて来なさいって」

「っていうか僕らアイドル研究部に入ればいいだけな気もするけど、その存在はちゃんと伝えてあるの?」

「…それは」

「…意外とせこい戦い方するね絢瀬さん」

「余計なお世話よ」

 

 

基本的には同じような活動内容の部活は承認できない。場所と予算がもったいないからだろう。だったら今機能停止中のアイドル研究部に入ってくれれば何も問題ないのだけど、その存在を意図的に隠しているらしい。

 

 

「まあ君のやり方を邪魔するつもりはないけど。でもスクールアイドルはにこちゃんに必要だからね、僕は彼女らを支援するつもりで動くよ」

「…何よ、全然味方してくれる人がいないじゃない」

「東條さんがいるじゃないか」

「希もあの子たちに肩入れするもの」

「そんなことないよ。うちはいつもえりちの味方や」

 

 

なんだか複雑な感じになってるけど、まあいいや。絢瀬さんの友達になるのはいいけど、あくまで最優先はにこちゃんだ。

 

 

「まあ廃校は僕も気分がよくないし、如何なる手段でも応援することにするよ。それより今は勉強だ勉強」

「…あなたは落書きばっかりしてるじゃない。」

「ラフと呼んでくれ。勉強は家帰ってからやるよ」

「勉強風景も見たかったのに」

「使い終わった参考書でも見るかい」

「いいの?それなら見せてもらおうかしら」

 

 

そんなこともあろうかと、鞄に突っ込んでおいた参考書を引っ張り出す。表紙が擦れて、中の紙も寄れて汚れたひたすら汚い本が数冊。

 

 

「はいどーぞ」

「こ、こんな風になるまでやり込んでるの…」

「そんなもんでしょ」

「いやいや、ここまで汚れてるんは見たことないで…」

 

 

お二人にドン引きされる。そんなに変かなあ。

 

 

とりあえず話は勉強に戻ったのでにこちゃん起こそう。

 

 

「にーこちゃん、朝だよー」

「んむう」

「あっ可愛い」

 

 

起きずにむにゃむにゃしているにこちゃんを見てつい本音が出てしまった。絢瀬さんと東條さんを見たら冷ややかな目線をくれた。どうしたの。寒いよ。視線が。

 

 

「あなた、息をするようににこを可愛いって言うわよね」

「流石にひくわ」

「何を言うか。にこちゃんが可愛いのは自明だから何度言おうと恥ずかしくないぞ」

「ペットやないんやから」

「それ採用」

「やめなさい」

 

 

名案をいただいたのに却下されてしまった。

 

 

「いいじゃないか。にこちゃんがお手してくれたら幸せだよ。ねえ、にこちゃん」

 

 

にこちゃんの方を向いて声をかけたら、にこちゃんの体がビクッ!っとはねた。他2名は驚いているけど、僕は気づいていた。にこちゃんを呼んだタイミングで既に起きていて、僕が可愛いって言ったせいでなんか起き辛くなってしまったことはお見通しだ。

 

 

 

うん、ごめんにこちゃん、反省してる。

 

 

 

後悔はしていない。

 

 

「…、ぐ、ぐう」

「寝たふりしてもダメだよにこちゃん。不自然な寝息はすぐわかる」

「何でにこの寝息に詳しいのよ」

「そりゃ何度も一緒に寝てるからねえ」

 

 

ガタン!!と3方向からでかい音がした。僕以外の3人が一斉に立ち上がった音だ。どうしたみんな、トイレかい。連れションかい。女の子って連れション好きだよね。でもその割には表情が深刻だよ。彗星でも降って来たのかい。降ってきても僕とにこちゃんは入れ替わらないよ。

 

 

「ちょおおおおおおおおっとおおおおおおおお?!?!その言い方だと誤解生むでしょおおおおおおおおお!!!!」

「やっぱ起きてんじゃん」

「に、にこ、まさかあなた…!」

「にこっち、大人になるにはまだ早いんじゃ…」

「違う!違うから!!そういうのじゃないから!!誤解よ!宇宙ナンバーワンアイドルがそんな汚れたこと…!」

「なんだい。あんなに喜んでたのにその物言いは酷くないか」

「茜は黙れえええええええっっ!!!」

 

 

立ち上がった理由がなんとなく想像できたので、敢えて煽ってみる。そしたら、バッシいいいいんといい音のするビンタが飛んできた。痛い。

 

 

「おぶう」

「違うの!そういういかがわしいことはいっっっっっさいない!ないんだからああああああ!!!!!」

「ちょ、わかったから落ち着きなさいにこ!波浜くん死んじゃう!」

「そんなに揺すったら波浜くん首折れるよにこっち」

「あうあう」

 

 

完全にテンパったにこちゃんに全力で揺すられる。意外とパワーあるねえ。おかげで首もげそう。ごめんて。

 

 

ちなみに一緒に寝た、というのは、にこちゃんの弟くんと妹ちゃんの寝かしつけをやっていたってだけ。にこちゃんと2人でやってたんだけど、いつもにこちゃんが速攻で寝ちゃうから寝息はよく聞いた。ついでに寝顔もよく拝んだ。役得というやつだ。しかもにこちゃんとご両親に喜んでもらえる。最高。

 

 

「もう帰る!!」

「待て待てにこちゃん、それなら僕も帰る」

「ついてくんな!」

「あふん」

 

 

遂に鞄を持って飛び出しちゃったにこちゃん。追いかけようとしたら教科書が飛んできた。だから教科書は武器じゃないって。

 

 

「…何というか、あんなに元気なにこは初めてみたわ」

「にこっちいつも不機嫌そうにしてるもんね」

「やっぱりそうなのかい」

 

 

にこちゃんの奇行を見て呆然とする生徒会役員共。ぽつりと言った言葉は彼女らが思っているよりはるかに大きな意味があった。

 

 

友達できたくらいじゃ笑顔にできないのか。

 

 

「にこちゃんほっとけないし、僕も帰るよ。君らはどうする?」

 

 

今更にこちゃんには追いつけないだろうけど、このまま居残るのもなんか気に障る。一応にこちゃんを追うため、ということにして帰ろうと思ったが、絢瀬さんと東條さんを置いていくのも気が乗らない。ジェントルマンだからね。え?何か文句ある?

 

 

「私たちは一度生徒会に寄ってから帰るから心配いらないわ」

 

 

要らぬお世話だった。

 

 

「そうかい、それじゃあまた明日ということで」

「ええ。気をつけて帰ってね」

「ばいばーい」

 

 

3人で教室を出て、鍵を閉めて別れる。鍵は絢瀬さんが返しておいてくれるらしい。便利だ。

 

 

 

 

とは言っても、走るつもりもないので普通に歩いて帰る。まっすぐ帰るつもりだったけど、何かピアノの音が聞こえてきたからちょっと寄り道して音楽室に向かった。途中で音楽は途切れてしまったけど、流石に3年目ともなれば音楽室くらい直行できる。

 

 

音楽室にたどり着くと、誰かが自分が来た道とは違う道へ走り去っていくのが見えた。にこちゃん以外にも廊下ダッシュを厭わない子がいるとは。

 

 

それはさて置き音楽室へ入場。

 

 

「…今度は誰?」

「僕だけど」

「いや誰よ」

 

 

音楽室には1人の女の子がいた。赤い髪のつり目の女の子。ピアノの前に座っているから、多分この子がピアノを弾いていたんだろう。

 

 

「僕は波浜茜、3年生だよ。今度はって、さっきも誰かいたのか」

「ええ。2年生の変な先輩が曲作ってくれって」

「曲?」

 

 

自分も名乗らんかいって文句言おうと思ったけどちょっと後回し。2年生の子が、曲を作って欲しいと。確かスクールアイドル始めた子も2年生。もしかして。

 

 

「スクールアイドルの子に頼まれたのか」

「何でわかったの?!」

 

 

僕の問いに驚愕で答える赤髪少女。目を見開いておっかなびっくりこっちを見ている。反応が面白いけど後回し、予想通りだ。だけど作曲担当もいないのによくスクールアイドルやろうと思ったな。ノープラン極まるね。

 

 

「しかし、作曲っていっても歌詞はあるの?」

「さっき貰ったわ。これ見てもダメだって言うなら諦めるって」

 

 

そう言って四つ折りの紙をひらひらさせる赤髪少女。ちゃんと作詞担当はいるようだ。あとは衣装担当がいればいいけど…心配だ。

 

 

「私はスクールアイドルなんてチャラチャラしたのは嫌いなんだけど」

「へえ。僕は2年前スクールアイドルのマネージャーやってたけどチャラチャラしたつもりはなかったなあ」

「うぇえ?!あなたスクールアイドルやってたの?!」

「マネージャーね」

 

 

すごい叫び方するなこの子。そしてすごい申し訳なさそうな顔してるけど、それよりも年上には敬語使おうね。面倒だから訂正しないけど。あと僕はスクールアイドルじゃないからね。マネージャーだからね。

 

 

チャラチャラしたのは嫌いと言う割には嫌そうな顔をしていないので、なんかスクールアイドル始めた子がうまいこと説得したんだろう。なかなかカリスマのある子じゃないか。

 

 

にこちゃんほどではないけど。

 

 

「そうだよ。今は部長のマネージャーだけど」

「?」

 

 

首を傾げる赤髪ちゃん。なんだ割と可愛いじゃないか。

 

 

にこちゃんほどではないけど。

 

 

「まあそんなことより、言う割には乗り気に見えるけど」

「そ、そんなこと…」

「スクールアイドルの子にはなんて言われたの?」

「え?えっと、チャラチャラしてそうに見えて大変なんだって」

 

 

へえ。

 

 

意外と真に迫ること言うじゃないか。

 

 

2年生の子たち、だいぶ興味が湧いてきたぞ。

 

 

「確かに実際大変だけど、よく理解できたね」

「…腕立て伏せやらされたのよ」

「はい?」

「それも笑顔で」

「はあ」

 

 

何をさせてるんだか。まあ、笑顔で踊るの大変だぜって言いたかったのだろうけど、腕立て伏せじゃなくてもよかろうに。ステップとかさ。

 

 

「散々だったわ」

 

 

髪の毛をくるくるしながら言う赤髪ちゃんは、やっぱり言う割には嬉しそうだ。ピアノを弾けるし作曲もできるのなら、音楽好きと見て間違いないだろう。結局この子もスクールアイドルに興味を持ってしまったということだろう。メンバー増えるかも。5人まで増えるかはわかんないけど。

 

 

そうしたら、絢瀬さんもアイドル研究部の話を出さざるを得なくなる。

 

 

そして必ず新生スクールアイドルたちはにこちゃんの元へやってくる。

 

 

そうなれば、あとはにこちゃんを引っ張りこむだけだ。

 

 

楽しくなってきた。

 

 

にこちゃんの笑顔が、いつの間にか近くなってきた。

 

 

「何笑ってんのよ気持ち悪い」

「失礼な子だな」

 

 

不本意ながら顔に出ていたらしい。いけないいけない、ポーカーフェイスでなくちゃ。

 

 

「で、君は作曲するの?」

「…私は、」

 

 

聞いたら、とても辛そうな顔をして言葉を詰まらせた。何か重大なものを抱えているんだろう、実は指が動かないとか。指がないとか。いやそれだったらピアノ弾けてないか。

 

 

「私の音楽は、もう終わってるから」

「何々聞こえない」

 

 

精神的な話だった。なんだい。

 

 

「だからっ!私の音楽は終わってるって言ってるの!」

「いやセリフが聞こえないんじゃなくてさ」

 

 

なんか勘違いしてるようなのでしっかり言っておく。まあ僕がわかんないように言ったんだけどさ。

 

 

今僕が聞きたいのは君の予定がどうとかじゃないんだ。

 

 

「君の本音が、聞こえないって言ってるんだ」

 

 

真剣な表情でまっすぐ赤髪ちゃんを見つめると、表情を引きつらせて固まってくれた。にこちゃんから「凍りつくからやめて」と評判の表情だ。もちろんやめない。便利だもの。

 

 

「君がどうしたいか、だよ。君の事情は知らないけど、やりたいことを我慢して諦めていかなきゃいけない未来なんて悲惨でしかないんだよ」

「そっ…そんな、知った風に言わないでよ!」

「だから知らないって言ってるじゃないか。君のことは知らないけど、僕のことはよくわかる。どんなに足掻いたって泣き叫んだって取り返せない未来があることを知っている。だから言ってるんだ、取り返しがつくうちに後悔しないようにしろって」

 

 

赤髪ちゃんは黙っていた。急になんか重そうな話を振られて反応に困ってるんだろう。よくある。いやそんなに頻繁にはないか。ないわ。

 

 

「さあ、もう一度聞こうか」

 

 

一歩近づいて告げる。赤髪ちゃんの表情は夕陽が逆光になっていて見えないけど、目が潤んでるように見えた。怖がらせすぎたかなあ。

 

 

なんにせよ、彼女の後押しはしてあげなければなるまい。ここまで言った責任もあるし、新生スクールアイドルのためでもあるし、何よりにこちゃんの笑顔のためだ。

 

 

「君は、どうしたいの」

「…、私は、」

 

 

一回目に聞いた時と同じ切り方をして、しかし声は震えていたし、もっと長い時間をかけて言葉を選んでいるようだった。

 

 

そして、答えが紡がれる。

 

 

「…わからない。わからないわよ…!」

 

 

そう言ってその場で泣き崩れてしまった。えー、これ僕が泣かせた感じか。やだなあ、にこちゃんに怒られそう。黙ってよ。

 

 

赤髪ちゃんは数分泣いた後に結構すぐ復活し、立ち上がった。意外と精神の強い子だ。にこちゃんに次ぐくらい。まあ立ち直ったならなんの文句も言うまい。初めから文句なんてないけど。

 

 

「まあ答えはゆっくり出せばいいか。だいたい僕が答え聞かなきゃいけないわけでもないし」

「あれだけ言っといてあっさりしてるわね…」

「そういう人種なの。まあ日が落ちる前に帰りなさい、ご両親心配するでしょ」

「…そうするわ」

 

 

鞄を持って立ち上がる赤髪ちゃん。相変わらず仏頂面してるけど、ずいぶん柔らかい表情になった。ちょっと気が楽になったのか、とにかくいい顔だ。涙の跡がなければ。

 

 

「…顔洗って帰りなよ。涙の跡がすごいから」

「誰のせいだと思ってるのよ…でも、」

 

 

文句を言ってから、少し恥ずかしそうにこっちを見る。何々告白かい。やだなー初対面なのに。ってそんなわけないか。

 

 

「その…ありがと」

 

 

礼を言って頭を下げる赤髪ちゃん。プライド高そうな子なので頭を下げる光景には少し驚いた。しかし、はて、お礼を言われることしただろうか。寧ろ泣かせたからって言って怒られそうなんだけど。あれ、もしかして親御さんに報告したりしないだろうかこの子。やだ怖い。

 

 

「何のお礼かわかんないな。僕は先に帰ってるよ、幼馴染が僕を置いて帰っちゃったし」

 

 

後が怖いので、後ろで何か言ってる赤髪ちゃんは放っておいってさっさと帰ることにする。ついでににこちゃんも怒ってそうだ、追いかけてこなかったって言って。はあ、困った。

 

 

家に着いてから、赤髪ちゃんの名前を聞くのを忘れてたことを思い出した。まあいっか。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございました。

6,000時超えてました。ノリノリですね私。文章自体はだいぶ前にできてはいましたが。

途中で波浜少年がなんか意味深なこと言ってますが、登場するオリキャラはだいたい後ろ暗い過去があるので気にしないでください。暗い過去持たせとけばカッコよくなるとか思ってないです。ええ、思ってないです。


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