笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回、またもやお気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!!そして遂に30人に届きました!!つまり私の寿命が300年に到達しました!!!ありがとうございます!!もっともっと面白いお話を書けるように頑張ります!!!ほんとに!!!
あとAqoursの4thライブも当たりました!!私そろそろ死ぬんじゃないでしょうかっ!!!嬉しい!!!だから何だって話ですけどね!!!
というわけで、どうぞご覧ください。
翌日の放課後は練習…のはずだったが、何故かみんなで神田明神の階段の上にいた。なんでさ。いや知ってるけどさ。
「いい?これから二人でこの石段をダッシュで競争よ!!」
「…何で競争?」
正確にはにこちゃんと穂乃果ちゃんだけ下にいる。理由は今にこちゃんが言った通りだ。
「穂乃果ちゃんをやる気にさせたいみたいだけど…」
「強引ですね…」
本当に強引だ。まあ話し合いでなんとかするとは思ってなかったけどさ。
一応僕も階段半ばあたりで様子見しよう。
「また今度にしようよ。今日からダンスレッスンだよ?」
「ラブライブよ!私は出たいの!!だからここで勝負よ!!私が勝ったらラブライブに出る!穂乃果が勝ったら出ない!」
そんな声が聞こえた。
やっぱりにこちゃんは是が非でもラブライブに出たいのだ。穂乃果ちゃんの心情がどうあれ、実力で押し切ってしまおうと思う程度には。
多分にこちゃんも、穂乃果ちゃんが何を恐れているかは気づいてる。
でも、残された時間を考えると…説得に悠長に時間をかけるわけにもいかないのだ。
「…わかった」
穂乃果ちゃんも同意してくれた。
あとは、最後の夢を賭けた競争を制するのみだ。
…まあにこちゃんが負けても僕がなんとかするけど。
「いい?行くわよ。よー」
それに。
「ーいどん!!」
「ええっ?!」
…やると思った。
自分が号令かけるのをいいことに、穂乃果ちゃんの準備ができる前にフライングダッシュをキメた。
やるとは思ったけどそこまでする?
「にこちゃんずるい!!」
「ふん!悔しかったら追い抜いてごらんなさい!!」
「何で勝者みたいな言い方してんの」
言い方の上から目線感がすごい。
それを聞いて穂乃果ちゃんも急いで走り出した。速さは互角くらいだし、階段でどれだけスタミナの差が出るかってところだ。
と。
「あっ?!」
にこちゃんが、躓いた。
「ぐぇ」
「ああっ茜、大丈夫?!」
「に、にこちゃんが無事でなにより…」
咄嗟に受け止めようとしたけど、結構な勢いで転んだにこちゃんに押し潰された。痛い。おかしいな、肺が治る前には転びそうになった花陽ちゃんをキャッチしたはずなんだけど。勢いが違ったね。あと意外と胸の弾力があーやっぱ今の無し考えるのやめよう。
「にこちゃん、茜くん、大丈夫?!」
「わ、私は平気よ…」
「僕も大丈夫だよ」
「いや大丈夫には見えないわよ」
流石に心配になったのか、穂乃果ちゃんもこつちに寄ってきて足を止めた。大丈夫だよ、にこちゃんの盾になったんだもん。あーでも肋骨が痛いかも。今度まっきーに診てもらおう。
「もう、ズルなんてするから…」
「…うるさいわね!ズルでも何でもいいのよ、ラブライブに出られれば!!」
「にこちゃん…」
穂乃果ちゃんを睨みつけながら言うにこちゃん。いやそれはプライド無さすぎないかい。言わないけどさ。
「今なら、今度なら…μ'sの9人でいいとこまでいけると思ってたのよ。…優勝じゃなくてもいい。せめていい思い出になるようにしたかったの」
僕の上から退いて、今度は俯いて答えるにこちゃんの声は重々しかった。
そりゃそうだ。
…あれっ雨降ってきたな。
「勝負は一旦お預けにして上行こうか。雨降ってきた」
こんなところで風邪ひかれても困るしね。
石段の上まで登って雨宿りしている間に、三年生組で事実を伝えた。
「そうよ。三月になったら私たち四人は卒業。こうしてみんなと一緒にいられるのも…あと半年」
「それに、スクールアイドルでいられるのも在学中だけ」
「そんな…」
そう。
当たり前だけど、僕らはもう卒業するのだ。
留年したらわかんないけど、昨今の高校で留年はまあ無いんじゃなかろうか。少なくとも僕はしない。にこちゃんもまあ大丈夫だと思う。多分。
そして、スクールアイドルの名を冠することができるのは、高校生だけ。
「別にすぐ卒業しちゃうわけじゃないわ。でも、ラブライブに出られるのはこれがラストチャンス」
「これを逃したら、もう…」
「…本当はずっと続けたいと思う。実際、卒業してからもプロを目指し続けている人もいる。でも、この9人で出られるのは今回しかないの」
「僕だってそうだよ。すでにプロであり、その仕事でこれからもスクールアイドルのライブのお手伝いとかするとは思うけど…μ'sのマネージャーでいられるのは卒業するまでなんだよ」
9人と2人でできたアイドル研究部は、このメンバーでいられるのは、僕らが卒業するまで。
それを超えてしまえば、アイドル研究部はまた別の世代に変わってしまう。
僕らはいなくなり。
次の子たちが入ってくる。
「やっぱり、みんな…」
「私たちもそう。たとえ予選で落ちちゃっても、9人で頑張った足跡を残したい…」
「凛もそう思うにゃ!」
「ここまでやってきて、何の痕跡もなかったら…寂しいだろ」
「やってみてもいいんじゃない?」
一年生のみんなも同じ気持ちらしい。よかった。三年生組だけそう思ってたらなんか悲しいところだった。
「ことりちゃんは?」
「私は、穂乃果ちゃんが選んだ道ならどこへでも!」
まあことりちゃんはわざわざ留学をキャンセルしてここにいるくらいだしそうだよね。
「また自分のせいでみんなに迷惑をかけてしまうのでは、と心配しているのでしょう?ラブライブに夢中になって、周りが見えなくなって、生徒会長として学校のみんなに迷惑をかけるようなことがあってはいけない…と」
「…全部バレバレだね」
そりゃバレるよ。そこなお二人は君の幼馴染なんだし。まあ気付くように仕向けたのは僕なんだけどさ。わぁなんだか黒幕感。天童さんはいつもこんな気持ちなのかな。
「…始めたばかりの時は何も考えないでできたのに、今は何をやるべきかわからなくなる時がある」
ちゃんと周りが見えるようになったからね。
「でも、一度夢見た舞台だもん。やっぱり私だって出たい。生徒会長やりながらだから、また迷惑かけるときもあるかもだけど、本当はものすごく出たいよ!!」
うん、知ってる。
僕はちゃんと知っている。君が望んだ未来も、君が抱え込んだ苦悩も、知っている。
もう、無邪気に理想に手を伸ばすことはできなくなった。
無謀で無鉄砲な挑戦はできなくなった。
残念ではあるけど、それも一つの成長なんだ。
…まあ、だからと言って理想を諦める必要もないんだけどさ。
「…みんなどうしたの?」
特に合図もなく、10人が穂乃果ちゃんの前に整列した。
こういう時心が一つになれるのは…素晴らしいことだね。とても。
「穂乃果、忘れたのですか?」
「え?」
海未ちゃんから穂乃果ちゃんへの問い。その疑問符には答えず、10人で歌い始めた。もちろん、僕も、創一郎も。
曲は、「ススメ→トゥモロウ」。
どこかで披露した曲ではないんだけど、歌われたのはμ'sが発足した時だって聞いた。初ライブよりも前。敢えてかっこいい言い方をするなら、これが全ての原点ということだろう。
だって、可能性感じたんだ。
そうだ、進め。
後悔したくない、目の前に僕らの道がある。
…そうやって、歩いてきたんだろう?
ねえ、穂乃果ちゃん。
歌を聴いた穂乃果ちゃんは、いつのまにか笑顔になっていた。やる気になってくれたようだ。
ちゃんとみんなの本心が語れてよかった。
「よーっし、やろう!ラブライブに出よう!!」
「ほ、穂乃果?!」
「なんで雨降ってるところに出ていくの」
「知らないわよ!」
元気100%になった穂乃果ちゃんは、叫ぶや否や屋根の外へ飛び出した。何してんの。風邪ひくよ。
そして。
「雨!やめええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
いや本当に何してんの。
「…嘘でしょ?」
「これは超常現象かな?」
「…」
「創一郎、まさか自分もやれるとか思ってないよね」
「…………まさか。そんなにバカじゃねえ」
「怪しい間があったけど」
…本当に晴れた。
何?天候操作系特殊能力持ちだったの穂乃果ちゃん。メガリザードンYなの。晴れパ作らなきゃ。
「本当に止んだ!人間その気になれば何だってできるよ!!」
「今のはその気になって出来ることではないよ」
「ラブライブに出るだけじゃもったいない!この11人で残せる最高の結果…優勝を目指そう!!」
「とても華麗なるスルーだね」
久しぶりに華麗にスルーされた。そういえばこの子たちスルースキル高かったね。うーん辛い。
「まあ、優勝を目指すってのは賛成だがな。むしろ中途半端に参加するよりは、そっちの方が燃えるだろ」
「別に君が出るわけじゃないんだけどね」
「馬鹿か。俺が出るわけじゃないから余計に燃えるんだろ」
「保護者かよ」
「創ちゃんは大体凛たちのお父さんだから保護者で合ってるよ!」
「合ってねぇよ」
「でも…優勝とは大きく出たわね?」
「面白そうやん!」
戸惑う人も、賛同する人もいるけど…まあ結果は変わらないだろう。
ラブライブに出場し、優勝する。
僕らの、最後の思い出を残す挑戦だ。
「というわけで、またラブライブに出ることになったよ」
「またではねーだろ。前回は出てないんだから」
「確かに」
久しぶりに茜と天童さんと俺で打ち合わせした後、茜からそんな話を聞いた。まあ、穂乃果もやる気出したようでなによりだ。
「うーんめでたいな!!また彼女たちのライブが見られるとはな!生きがいが増えるってもんだ!!」
「何適当なこと言ってんですか」
「大丈夫、天童さんはいつも適当なことしか言ってないよ」
「なんで俺そんなに信用ないの??」
天童さんが胡散臭いことを言っていたからつっこんでおいた。この二人もいつも通り…いや。
「…そういえば茜、矢澤のことばかり話さなくなったな」
「うん。…にこちゃんに怒られたからね」
「何で怒られるんだ」
「言ってなかったっけ」
茜はいつも通りではなく、矢澤のことだけでなくμ's全般の出来事を話すようになっていた。事情をかいつまんで聞いたが、穂乃果が凹んでる裏でそんなことがあったのか。
「まあどうせ天童さんの導きなんだろうけどね」
「どうせって何だどうせって」
まあ実際そうなんだろうな。
「これからもちょっかいかけにくるんでしょう?」
「そりゃそうだ。たまに様子見ておかないとより良いハッピーエンドにできないからな」
「ストーカーかよ」
「こらそこ口を慎みなさい」
いつも通り変態的な考え方をする人だ。これだけの才能がなければ捕まってそうだなこの人。
「いいじゃねぇかよー。茜も自然体になったし、穂乃果ちゃんも元気になったし!これ以上何を望むんだよー」
「だから感謝してますよ」
「じゃあストーカーとか言うなよ」
「それは桜が言ったことですし」
「確かに?」
「…さーせん」
「目を見て言いなさい」
いやだって事実だし。
「…それより、μ'sのみんなをちゃんと優勝できるスクールアイドルにしなきゃ」
「んー、まあなあ。A-RISEとの対決もあるわけだし、しっかり強化しておかねぇとサクッと負けるもんな」
「やっぱりそうなんすか?」
「そりゃな、あの子たちは随分洗練されているからな。勝者とか覇者とか、そんな言葉に相応しい」
「歌ってのはそういうもんじゃねーと思うんですがね…」
確かにA-RISEは比較的歌も上手いと思うが、それが良いかどうかはわからない。個人的にはμ'sの方が好きだ。
「そう、そこなんだよ」
そして、天童さんは珍しく真面目な顔で返してきた。
「コンクールじゃないんだ。上手いから勝てるってわけじゃない。そもそも歌やダンスの上手さで判断するものじゃない。どれだけ聴衆を魅了したか、という点で争うんだ。極論、歌はド下手でもかまわん」
「ド下手は嫌ですよ」
「極論だっつってんじゃねえか」
真面目な声で真面目なことを言う天童さん。だが横槍を入れたらいつもの調子に戻った。なんなんだこの人は。
「まあ、あの子たちが勝てる未来は幾らでもあるさ。答えは…そうだな、何であの子たちはスクールアイドルをやってんのかって考えたら多分わかるだろ」
そう言って踏ん反り返る天童さんはやたら余裕そうだった。
…この人には、何が見えているんだ?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
穂乃果ちゃんパワー恐るべし…きっと滞嶺君でもできない。できないと思いますよ?多分。
そして肝心なお話は知らなかった水橋君。いっつも巻き込まれるくせに肝心なところは聞かされないあたりに不憫さがにじみ出てますね…笑