笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

今週は台風やら地震やらで大変ですが、皆様ご無事でしょうか。私の家では瓦が数枚吹っ飛びました。冗談じゃない威力でしたね…地震もやばいことになってますし…。皆様お気をつけて、私はここでこの小説を書き続けますので!!…ほかに出来ることありませんもん…。

とにかく、今回は合宿編の続きです。山がやばいことになってるのに山登ってる場合ですか!!←

というわけで、どうぞご覧ください。




スランプって言ったら「んちゃー」だよね

 

 

 

 

「へっくし」

「もうっ…無事だったからよかったけど」

「「「ごめんなさい…」」」

「いえ、創一郎は謝らなくてもいいのよ?」

「いや、茜落としちまったし…」

「流石にそれは君のせいじゃないよ。ふぇっくし」

「茜くんくしゃみかわええな」

「嬉しくない…」

 

 

川に見事にダイブした僕は、速攻で創一郎に拾われた。山の中なだけあって結構冷水だった。寒い。創一郎にダッシュしてもらって帰ったのもあって超冷えた。手術してなかったら文句なしで死んでた。創一郎?ピンピンしてるよ。彼も川に入ったはずなんだけどね。おかしいね。僕変なくしゃみ出るから冷えるの嫌なんだけど。

 

 

ちなみに、にこちゃんはリスに盗られたリストバンドを取り返そうとしていたらしい。25って書いてあるやつね。僕が買ってあげたやつだね。嬉しい。ふぇっくし。寒い。一応暖炉つけてもらったんだけどね。ごめんね。後でサンタさん来れるように掃除しとくね。

 

 

「茜、大丈夫?」

「大丈夫だよ。にこちゃん無事だったし。へっきし」

「めっちゃくしゃみしてるじゃないの」

「にこちゃんが可愛いせいだよ」

「ふん」

「ぐぇ」

 

 

にこちゃんが心配してくれたから褒めてあげたらタオルで首絞められた。何でさ。もうちょっと労ってよ。

 

 

「まったく、よくもあんな木々の生い茂る坂道を衝突も転倒もせずにいられたな」

「それは創ちゃんも一緒にゃ」

「俺がそんなヘマするわけねぇだろ」

「にゃにゃにゃ」

 

 

凛ちゃんと創一郎もじゃれていた。体格差のせいで親子に見える。でも実際よく衝突も転倒もせず走り抜けられたよね。

 

 

「静かにしないと。上で海未ちゃんたちが作業してるんやし」

「あ、そっか…」

「へっくしゅ」

「茜くん、本当に大丈夫?」

「肺が辛くなってきた」

「大丈夫じゃないじゃないの!」

「大丈夫だよ。帰ったらまっきーに診てもらおう。ふぇっくし」

 

 

くしゃみしてたら肺が痛くなってきた。くしゃみってこんなに疲れるんだね。

 

 

「お茶、用意しました!はいっ茜くん」

「ありがと。んむむ、あったまるわ」

「創ちゃんもどうぞ」

「ああ、ありがとう。俺はそこまで冷えていないが」

「何でさ」

「動けば勝手に乾いてくれるだろ」

「乾かないよ」

 

 

花陽ちゃんがお茶をくれた。温かい飲み物は冷えた体に嬉しい。創一郎は一体どういう体のつくりしてるんだろうね。未知だね。

 

 

「あ、じゃあ海未ちゃんたちには私が持ってくよ」

「うむむ、本来は僕のお仕事なんだけど」

「茜はじっとしてなさい。暖まるまではね」

「ふえーい」

 

 

お茶運びすらできないマネージャー。これは無能では?どうも無能です。しにたい。

 

 

「…つーか、真姫と桜さんはどこ行ったんだ?」

「そういえば見当たらないわね…」

「桜は海未ちゃんかことりちゃんのところかもしれないけど、真姫ちゃんがいないのはちょっと不思議だね」

「疲れて気晴らしでもしてるんじゃない?」

 

 

別荘に戻ってきてから結構経つけど、最初から今まで真姫ちゃんも桜も見かけなかった。流石におトイレだったらそろそろ戻って来ると思うのだけど…どうかしたのかな。

 

 

とか思っていたら。

 

 

「みんなー!大変!大変だよ!!」

 

 

穂乃果ちゃんがすごいスピードで戻ってきた。一体どうしたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「スランプ?!」」」」」」」

「…まあ要するに、今までより強いプレッシャーがかかってるということらしい」

 

 

作業組の面倒を見ていたのだが、トイレ行った隙に全員いなくなってしまっていた。西木野はピアノの前からいなくなったし、園田は遺書みたいな書き置きを残して消えてやがったし、南に限っては額に布切れで「タスケテ」ってご丁寧に飾ってあった。助けてっていう割には平気そうじゃねーかオイ。

 

 

南の部屋から布生地を繋げて作ったロープらしきものが窓の外まで続いていたため、窓から覗き込んだら外で3人とも縮こまっていた。何してんだ。靴を履いて玄関から回り込んで、一体どうしたのか聞いてみたら…ご覧の有様。何をそんなにダメージ受けてんだ。

 

 

そして、どうやって連れ戻すか考えているところに穂乃果がやってきた、といったところだ。ナイスだ穂乃果。

 

 

「はい…気にしないようにはしているのですが…」

「上手くいかなくて予選敗退になっちゃったらって思うと…」

「わ、私はそんなの関係なく進んでたけどね!」

「嘘つけ」

「その割には譜面真っ白にゃ」

「勝手に見ないで!」

 

 

まあ、とにかく見事に衣装も作詞も作曲も進んでないわけだ。まあ俺じゃないんだし、そんな簡単に曲なんてできないか。

 

 

「つーか、衣装はよく知らんが、作詞作曲はかなり労力を食う作業だぞ。この3人に頼りすぎじゃねーか?そりゃスランプにもなるさ」

「確かに、3人に任せっきりっていうのもよくないかも…」

「普通に考えて僕とか衣装作れるんだから手伝えばよかったね」

「えっ」

「にこちゃんそんな悲しそうな顔しないの」

「してないわよ!」

「ふぐっ」

 

 

俺はかなり作業が早いが、何も楽な仕事ではない。結構疲れるのだ。拍子、調、テンポ、曲の長さ、使用する楽器、パート分け、和音構成などなど…考えなきゃいけないことは腐るほどある。キツいに決まっている。

 

 

「そうね…責任も大きくなるから負担もかかるだろうし」

「じゃあみんなで意見出し合って、話しながら曲を作っていけばいいんやない?」

「そうね、せっかく12人もいるわけだし」

「おい俺も手伝うのか」

「アドバイザーとして呼んだのに」

「この働き方は予想してなかったな」

 

 

がっつりお手伝いさんじゃねーかよ。ギャラ寄越せ。そういえば前回の合宿の手伝いの謝礼もらうの忘れてたな。どうせ穂乃果も覚えてねーだろうが。

 

 

「じゃあ私の作詞した『にこにーにこちゃん』に曲を

「あれはダメだと思うよ」

「ぬぁんでよ!!」

「…なーんて12人で話してたらいつまで経っても決まらないよ?」

「驚くほど纏まりがねーな」

「いつものことです」

「ダメだろ」

 

 

こりゃ確かに「みんな揃って」は悪手だな。

 

 

「それなら、ちょうど3の倍数人いるわけだし、衣装班、作詞班、作曲班で別れたらどうだ?各班4人なら意見もまとめやすいだろ」

「それが良さそうだね」

「でもどうやって分けましょう…?」

「公平にクジでいいんじゃないかしら。せっかくだから男性3人は各班に分かれてもらいましょう」

「つまり俺たちは別枠か。どうする?」

「くじでいいんじゃない。専門の分野にぶつけてもいいけど、専門でないところのことを考えるのも一手だと思うし」

 

 

結局全員くじ引きという流れになった。まあ、文句も出ないしそれが妥当か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってどーして別荘があるのに外でテントを張らなきゃならないのよ!!」

「ほんとだよ」

 

 

そんなわけで、こちら作曲班。見事にBiBiの3人で集まったわけだけど、何故かテント張ってる。みんなが。だって僕より絵里ちゃんとか真姫ちゃんの方が背高いしパワーあるから。僕は役に立たない。つらいね。これは無能では?どうも無能です。さっきもやったねこれ。

 

 

「少し距離取らないと、3班に分けた意味がないでしょ?」

「いいじゃない。ちょうど別荘にテントあったし」

「別荘大きいんだからこんなに距離取らなくてもよかろうに」

 

 

わざわざアウトドア生活しなくてもいいじゃない。死ぬよ僕。体力的に。

 

 

「こんなんで本当に作曲できるの?」

「…私はどうせ後でピアノのところに戻るから」

「ほら、やっぱり戻ろうよ。結局戻るならわざわざ別荘から離れるのは悪手だよ」

「でもそれじゃあ不公平でしょ?」

「そこの問題か」

 

 

不公平でいいじゃん。公平に命を取り扱ったら僕死ぬよ。僕の体力の無さをなめるな。うーん泣きたくなってきた。

 

 

「じゃあ食事でも作りましょうか。真姫が少しでも進めるように」

「…っ」

「照れてる?」

「照れてないわよ!」

「おっと危ないうごっ」

「ちょっと、茜大丈夫?」

「思ったより平気だけど痛い」

 

 

真姫ちゃんをいじったら正拳突きが飛んできた。飛んできたが、にこちゃんよりはるかに遅い。それなら避けれる。避けれるけど、避けたらテントの支柱に頭ぶつけた。言うほど硬くはなかったけど痛いものは痛い。

 

 

「まあ別荘に戻れるなら僕がやるよ。必殺料理人波浜茜にお任せあれ」

「何を殺すのよ」

「にこちゃんのハート」

「ふんっ」

「うばっ」

 

 

回し蹴りを食らってこけた。痛い。僕の本日の夕飯は土ですってか。訴訟案件ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺が衣装班なのは完全に悪手だと思うんだがなぁ…」

「ま、まあ…くじでしたから…」

 

 

俺は今、川縁のでかい岩に座って呑気に釣竿を垂らしていた。餌はついていないが。ぼさっとしながら呟いたら、少し離れたところにいる南から返事が来た。南はスケッチブックを持って衣装案を考えているようだった。小泉は何か助けになるものを、散歩がてら探しに行った。穂乃果は寝ている。後で叩き起こす。

 

 

「衣装なんて一番わかんねえよ…年中ジーパンとコートでどうにかしているような男だぞ」

「そういえば…たしかに桜さん、いつもコート着ていますよね」

「ああ…まあ、気に入ってんだよ」

 

 

本当はもうちょい諸々の事情があるんだが、そんなことは言う必要もないだろう。

 

 

「お肌が弱かったりするんですか?」

「んー、まあ確かに強くはないな。日焼けすると痛くて仕方ねぇ」

「へぇー…私たちと同じですね」

「なんか嬉しくねーな」

 

 

女子と同じって言われてもな。

 

 

「あ、そういえば桜さんに聞きたいことがあるんですけど」

「あ?何だ?」

「桜さんって穂乃果ちゃんのこと好きなんですか?」

「…何言ってんだお前」

 

 

何わけわからんことを言ってんだこの子は、釣竿落としそうになっただろうが。

 

 

「いえ…桜さん、穂乃果ちゃんのためにいろんなことしてくださってるので、そうなのかなーって」

「そんなにいろんなことしてねーよ」

「え?でも合宿にも来てくださってますし、ソロも作ってくれましたし…」

「別に穂乃果のためではないんだがな…よっと」

 

 

そう、別に穂乃果のためにやっていることではない。断じて違う。

 

 

釣り針に引っかかった魚を水を張ったバケツに突っ込んで、再び川に投げ入れることで余計な考えは払拭する。

 

 

「…あれ?桜さん、餌つけてました?」

「つけてねーぞ」

「あれっでもお魚…」

「釣り針の近くに魚が来た音がした時に引っ掛ければ釣れる」

「ええ…」

 

 

何ドン引きしてんだ。

 

 

水の音聞いていればそのくらいできるわ。

 

 

「…とにかく、別に穂乃果のために協力してるんじゃねーよ。μ'sの音楽性に興味があっただけだ。別段上手いとも言えないのに、なんだか知らないが応援したくなるような…そんな歌にな」

「上手とは言えないんですね…」

「俺が上手いと思う歌なんて出会ったこともねーわ」

 

 

あまり耳が良すぎても困るんだ。

 

 

「それじゃあ、穂乃果ちゃんのことはどう思ってるんですか?」

「犬」

「犬?!」

 

 

犬だろ。遊んで遊んでってわんわん言いながら尻尾振ってる犬。ぴったりだ。

 

 

くだらないことを話していたら、小泉が帰ってきた。手には花を持っている。

 

 

「あ、花陽ちゃんおかえり〜」

「ただいま、ことりちゃん。調子はどう?」

「うん、一息ついたら少しイメージが湧いてきたよ!…あれ、それは?」

「花か。結構な種類咲いてるもんだな」

「綺麗だなって思って。同じ花なのに、ひとつひとつ色が違ったり…みんなそれぞれ個性があるの。今回の曲のヒントになるといいな」

「ありがとう、花陽ちゃん!」

 

 

まあ、個性という意味ではμ'sにはちょうどいいヒントだろうな。個性があるどころか有り余ってるようなやつの集団だしな。

 

 

「そこのサボリ魔にも見習ってほしい働きぶりだな」

「そういえば…穂乃果ちゃんは?」

「あ、あはは…」

「テントの中でぐっすり寝てるぞ。それはもうぐっすりな」

 

 

まったく起きてくる気配がないからな。

 

 

「まあ…この山の空気も美味しいし、運動したあとなら風だって心地良いから眠くなっちゃうのはわかるかな…」

「そうだね…なんだか私も眠く…」

「…いっそ寝てきたらどうだ。眠いのに作業は進まないだろうし、一度眠ってスッキリさせればアイデアも浮かんでくるかもしれん」

「い、いえ…もうちょっとだけ…」

 

 

実際、半袖でなければかなり過ごしやすい気候だ。夏みたいにクソ暑くないし、寄ってくる虫も少ない。昼寝するにはちょうどいい。

 

 

作業は進まないが、何も考えるだけが作業じゃない。意味もなく眠るのもアリだと思っている。

 

 

「ちなみに、桜さんはどんな衣装がいいと思いますか?」

「衣装に関しちゃ何もわかんねーよ…」

「うーん…じゃあ、好きなものとか、景色とか、何かありませんか?」

「それがなんか関係あるのか?」

「何でもヒントになるかもしれませんから!」

 

 

俺の好きなものを聞いたところでヒントにはならんと思うがな。

 

 

「好きなもの…ね…」

 

 

音楽は好きだが、流石にそれは彼女らもわかっているだろう。好きなもの…景色…。何があるだろうか。

 

 

…あ、ひとつだけ思いついた。

 

 

「…オーロラ」

「オーロラ?」

「ああ、一度北欧に行った時にたまたま見れた。なんつーか、レースのカーテンの海みたいだったな。あれは好きと言って差し支えないだろう」

「オーロラかぁ…いいなぁ…」

「北欧自体はクソ寒いから二度と行きたくないがな」

 

 

アザラシの生肉で暖をとるような世界に行きたいわけないだろ。現代では流石にやっていないだろうが。

 

 

「レースのカーテン…ありがとうございます!もっとイメージが湧いてきました!」

「そりゃよかったな。一回寝ていろ、目が閉じそうになってるぞ」

「ふぇっ」

 

 

本気で眠くなってきているらしく、うとうとし始めているのがよくわかる。そんな状態でいるよりは一回寝ろ。どうせほのかも寝てんだ。

 

 

「そ、それではお言葉に甘えて…」

「桜さんはどうするんですか?」

「どうもしねーよ。もうちょい釣りを続けて、飽きたら散歩するなり寝るなりするさ」

 

 

テントに戻る南と小泉を見送りながら答える。まあ正直釣りはもういいかと思うが。結構疲れるんだ、耳を澄ませるのも。

 

 

「よっと…6匹目か。真っ二つにすればちょうど人数分だな」

 

 

6匹目が釣れたところでやめておこう。食うならキリのいい数でやめておくのが吉だ。

 

 

この後どうしようかとも思ったが、先程散歩すると言っておいたし散歩でもするか。こんな大自然に来る機会はそうそう無いしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃああああああああああああ!!!」

「凛!絶対にこの手を離してはなりません!!死にますよ!!」

「いやあああ!!今日はこんなのばっかりにゃああああ!!!」

「ファイトが足りんよー!!」

 

 

こちら作詞班。

 

 

なぜか山を登っている。

 

 

…俺は構わないんだが、いや、海未も希もノリノリなんだが、作詞しに来たんじゃなかったか?

 

 

一応、俺は凛が落ちて来てもいいように崖下で待機している。

 

 

「もう無理いい!!」

「あっ凛!!」

「よっと」

「わっ?!そ、創ちゃんんんん!!!」

「絶対趣旨見誤ってるよな…。凛は何泣いてんだ」

「死ぬかと思ったにゃあ!!」

「俺がいなかったら死んでたな」

「にゃあああああ!!」

 

 

もう凛は山登りをできるような状態じゃないな。精神が。まあ、普通に考えて作詞をしに来て山登りするとは思わないな。薄着では寒いだろうし、過酷なことこの上ない。逆に何で海未と希は装備が万全なんだ。

 

 

「この先は背負って行ってやる。ほら」

「うう…ありがとう…」

 

 

半泣きで背中によじ登って来る凛を背負って山登りを再開する。何度か抱えたり掴んだりしたことはあるが、改めて背負うとかなり軽い。しかも後ろで鼻をすする音が聞こえるせいで、なんだか悪いことをしている気分になる。

 

 

腕で支えている太ももは柔らかいし。

 

 

首に回してくる腕は細いし。

 

 

おい、なんだこれは。

 

 

「あれ?創ちゃん顔赤いやん?」

「赤くねえ」

 

 

別に山登り自体は大した運動じゃねぇ。凛を背負った程度で息切れしたりもしねぇ。

 

 

だが、動悸はするのだ。

 

 

なんだこれは。

 

 

希はにやにやしてんじゃねえ。

 

 

「…雲がかかってきた。山頂まで行くのは無理やね」

「そんな…ここまで来たのに…!!」

「山頂まで行く気だったのかよ」

「うぅ、酷いにゃ!凛はこんなとこ全然来たくなかったのに!!」

 

 

来たくなかったわけではないが、他にやることがあるのにやることではないだろうな。

 

 

「…仕方ありません。今日は明け方まで天候を待って、翌日アタックをかけましょう!山頂アタックです!!」

「まだ行くのかよ」

「当然です!何しにここに来たと思ってるんですか!!」

「作詞に来たはずにゃあ〜!」

「…はっ!!」

「まさか忘れてたの?!」

「別荘まで放り投げていいか?」

「やっちゃえ創ちゃん」

「おうよ凛」

「えっえええ?!ちょ、ちょっと待ってください!!」

 

 

せめてインスピレーションがどうのとか言えよ。本当に登りたかっただけかよ。他のメンバーに申し訳ないわ馬鹿野郎。

 

 

「わ、忘れてなんかいませんよ?!山を制覇し、成し遂げたという充実感が創作の源になると私は思うのです!」

「あ゛あ゛?」

「ひいっ?!ごめんなさい嘘です山に登りたかったんですー!!」

 

 

睨んだらゲロった。あんまり女子を睨むとかしたくないんだから勘弁してくれ。

 

 

「まあまあ創ちゃん、そのくらいにしといてあげて。海未ちゃんも、気持ちはわかるけどここまでにしといた方がいいよ」

「ですが…」

「あ?」

「こーら創ちゃん、威嚇しないの。海未ちゃん、山で1番大切なのは何か知ってる?…チャレンジする勇気やない、諦める勇気。わかるやろ?」

「希…」

「つってもお前も全力で悪ノリしてたじゃねぇかよ」

「やっぱりバレてた?ごめんね、凛ちゃん」

「にゃああん」

「猫かよ」

「凛にゃ!!」

 

 

ここにきてやっと希が海未を諭してくれた。遅ぇよ。雲がなければ山頂見えるくらいまで来てんだぞ。

 

 

「凛ちゃん、創ちゃん、下山の準備。晩御飯はラーメンにしよ」

「ほんと?!」

「急に元気になったな」

「だってラーメンだよ?!」

「痛えよ首を絞めるな」

 

 

ラーメンという単語に過剰反応する凛。どんだけ好きなんだ。

 

 

「下に食べられる草がたくさんあったよ。みんなで取りに行こ」

「…草?」

「うん、草。さ、行くよー」

「…何でそんなこと知ってんだ?」

「さ、さぁ…?」

「謎にゃ」

 

 

おかしいだろ。何で食える雑草を知ってんだ。どこでそんな知識を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、このままだと…火を消したら真っ暗よね?」

「そりゃそうだね」

「何?まずいの?」

「もしかして苦手なの?」

「まさか…。あはは…待っててね、ちょっとだけ…」

 

 

夜になって暗くなったので焚き火をしていると、絵里ちゃんが怖がり始めてしまった。急に意外性出してきたね。でも確かに、夏の時も桜が電気消した瞬間悲鳴聞こえた気がする。あれもしかして絵里ちゃんのか。

 

 

「絵里にあんな弱点があったなんてね」

「この歳にもなって暗いのが怖いなんてね!」

「面白くなりそうだから今度肝試しやろ」

「え?!ちょっと待って、茜が肝試しやるのは絶対だめ!!死人が出るわ!!」

「出ないよ」

 

 

何で肝試しで死ぬのさ。

 

 

「出るわよ!絶対えげつない怖さにしてくるじゃない!!」

「怖くなかったら肝試しにならないじゃん」

「度がすぎるって言ってんの!!」

 

 

いや肝試しだよ?怖くしなきゃ。ブラックでダークでホラーなペインティングを施すよ。屋外より逃げ場のない屋内がいいんだよね。学校貸してもらおうかな。天童さんにシナリオ作ってもらって、ゆっきーにホラーな衣装作ってもらって。我ながら完璧だ。目指せ創一郎も裸足で逃げ出すホラー。

 

 

 

 

 

「…まったく、こんな3年生のために曲を考えないといけない身にもなってよ」

 

 

 

 

 

…ん?

 

 

今のは違うね。

 

 

「「今何て言った?」」

「え?」

 

 

にこちゃんとハモった。嬉しい。嬉しくて禿げるわ。つるぴかりーん。ごめん今のナシ。

 

 

「今、3年生のためにって言ったわよね!」

「だったら何よ?」

「まあそんな気はしていたよ。3年生のためにいい曲作って、3年生のために勝とうって思ってたんだね」

「そ、そんなこと…」

「いい?真姫。曲はいつも、どんな時も!みんなのためにあるのよ!」

「っ!!」

 

 

本当にそんな気はしていた。

 

 

僕らが卒業するって、これが最後のラブライブだって言ったから。穂乃果ちゃんも優勝しようって言ったから。

 

 

そのためにって思って、気負ってるんじゃないかなって。

 

 

「桜もよく言うんだ、『誰に依頼されようが、音楽は誰のものでもなく、悉く聴衆のためにある。歌う側のものではない、別の何かに捧げるために作られるものだ』って。君が作るべきは、僕らのための曲じゃなくて、みんなに聴いてほしい曲なんだ」

「…二人とも何偉そうに言ってるのよ」

「部長とマネージャーだもん、当たり前でしょ」

「マネージャーは当たり前でいいのかな」

「いいのよ!」

「ふぐっ」

 

 

桜は音楽に対して非常に真摯だ。必ず偽りなく、自分の作りたい曲ではなくて聴衆が求める曲を作る。音楽が何のためのものかという確たる答えを、彼なりに持っているからだろう。

 

 

にこちゃんも部長として、ちゃんとみんなのことを見ているし、先導もしてあげているようだ。こう見えてにこちゃん観察力あるんだよね。でも裏拳は痛いよ。

 

 

と、そんな話をしながらにこちゃんは焚き火に放り込んだ何かしらを木の枝でほじくりだして、軍手をして表面を剥がしはじめた。そして中から出てきたものを真姫ちゃんに差し出す。

 

 

「…これは?」

「焼き芋よ。焚き火といったら焼き芋でしょ」

「そうなの?」

「そうよ。ほら茜も」

「ありがとあっついっっ」

「何で素手で芋を掴むのよ」

「つい」

 

 

素手ではとても熱かった。当たり前だね。何してんだ僕。

 

 

「食べたわね!食べたからにはにこを1番目立つようにしてよ!3年生なんだし!!」

「何ソレ台無し!!」

「僕はそんな残念なにこちゃんも好きだんげっ」

「誰が残念よ!!」

 

 

にこちゃんが顔を真っ赤にして木の枝を投擲してきた。照れてるんだね。でも言わないよ。照れてる?って聞いたら追撃が来るのはわかってるもん。でも木の枝の時点で既に痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、翌朝。

 

 

起きたら真姫ちゃんはいなかった。

 

 

さては別荘に戻ったな?と思って僕も戻ってみると、真姫ちゃんだけでなくことりちゃんと海未ちゃんもピアノ周りで寝ていた。そっと近づいて譜面を覗くと、「ユメノトビラ」と書かれた楽譜がバッチリ完成していた。衣装と歌詞も書けている。

 

 

きっとみんな何かを掴んで、それを形にできたんだね。こんな短時間でよくやるよ。

 

 

「じゃあ、僕も頑張ってあげなきゃね」

 

 

そっと楽譜と歌詞と衣装案を取って並べ、スケッチブックを取り出して振付けを考える。大丈夫、どれを見ても3人の想いが伝わってくる。

 

 

僕もすぐに完成させられそうだ。

 

 

「誰かと思ったら茜か」

「ん、創一郎。君もいたのか」

「朝食を作りにきた」

 

 

まさかの創一郎もいた。ちょうど味噌の香りが漂ってきて、味噌汁を作ってくれているのがわかる。なかなかのママン属性だね。

 

 

 

 

 

 

 

その後、μ'sのみんなも別荘に戻ってきた。眠っている3人を起こさぬように近づき、みんな嬉しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

さあ、ラストステージに向けて。

 

 

 

 

聴いてくれるみんなのために、頑張ろうか。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちょうど男性陣が3人いたので各ユニットに配置しました。これも予定通り…ではなくたまたまです。
濡れても勝手に乾く滞嶺君、音だけで釣りをする水橋君と謎の才能を発揮しております。相変わらず無駄にスペック高いですねぇ君たち!!笑

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