笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回、新たにお気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!!ありがとうございます!!久しぶりにお気に入り増えました…寿命伸びました…これ言うの2ヶ月ぶりくらいな気がします…。これからも頑張って書いていきますね!!
今回はにこちゃん家族話の完結編です。 原作に色々首突っ込んでくる男性陣をお楽しみください。
と言うわけで、どうぞご覧ください。
「まったく、困ったものね」
にこの家を後にして、夕焼けの中を歩く俺たち。未だに天童さんがついてくるが気にしないことにする。
「でも、
「にこちゃんの家では、元から私たちはバックダンサーってこと?」
にこの言葉はかなり曖昧だった。何が元からなのかさっぱりわからん。
「いや、そうじゃねーな」
「多分、
「…俺が言おうとしたのに」
希と天童さんは何か心当たりがあるようだ。
「どういう事です?」
「にこっちが1年のときスクールアイドルやってたって話、前にもしたやろ?…あ、創ちゃんはその時まだいなかったかも」
「いや、知っている。スクールアイドルの情報は可能な限り網羅していたからな」
「流石やね…それならええか。きっとその時、妹さんたちにも話したんやないかな。アイドルになったって」
確かに、にこなら言いかねない…というか間違いなく言うだろう。夢が叶ったのだ、それを応援してくれる身内になら俺だって言うだろう。
「でも、ダメになった時、ダメになったとは言い出せなかった。にこっちが1年の時から、あの家ではスーパーアイドルのままなんやと思うんよ」
「確かに間違っちゃいないのかもしれない。
「確かに…ありそうな話ですね」
「もう。にこちゃんどんだけプライド高いのよ…」
「真姫ちゃんと同じだね!」
「茶化さないの!!」
希と天童さんの推論は、かなり共感できる。
立場は全然違うが、にこの両親があまりいないとしたらあいつは兄妹の中でも一番の精神的支柱だ、俺と近い。一家の柱として、「やっぱりダメだった」なんて言葉ほど言いにくいことはない。
弟達をがっかりさせるわけにはいかない。
嘘をついてでも、希望を見せ続けるのが最年長の使命だと思うのだ。
それをプライドと言うのかどうかは、俺にはわからないが。
「でも…プライドが高いだけなのかな…?」
「え?」
「アイドルに凄く憧れてたんじゃないかな。本当にアイドルでいたかったんだよ…私もずっと憧れてたからわかるんだ」
「それもあるんだろうな。妹達のためにってのもあるだろうが、ダメだった、アイドルじゃ無くなったって自分から宣言するわけにはいかなかったのかもしれない。…結構あるもんだ、望まない現実は口に出すのもはばられるってな」
「自己暗示みたいな?」
「近いかもな。せっかく憧れのアイドルになれたのに、易々と手放すわけにはいかなかったんだろうな」
誰よりも叶えたかった夢があり、それが叶ったのに…もしそれが奪われるようなことがあったら。きっと自分を欺いてでも逃げようとするんだろう。俺もそうするかもしれない。
「1年のとき、私もにこがチラシを配っているのを見たことある。その頃は私もアイドルにも興味無かったから…あの時、声をかけていれば…」
「んーそれは違うぜ絵里ちゃん。何が違うって、過去の行いに『もしも』って考えること自体が間違いだ。その頃には思いつきもしなかった行動を悔いても何も進まない。大事なのはどうやってにこちゃんを引っ張り上げてやるか、だぜ」
「…引っ張り上げる?」
「そう。だって今のままじゃあ、にこちゃんはμ'sのライブを妹ちゃん達に見せられない。だって実際のμ'sはバックダンサーじゃねーからな。あの子達にナマでライブを観てもらうには、事実と空想にしっかり整合性を持たせてやらなきゃならねー」
そう、今考えるべきはどうやってにこを助けるか。あいつが嘘をつかなくてもいいようにしてやらなければ、今後にこの心が晴れることもないだろう。
「とは言いますが、にこはμ'sに入ってからも嘘をつき続ける程度には意地っ張りですよ?いまさら何か訴えたところで聞いてくれるでしょうか…」
「なーに言ってんの海未ちゃん。聞いてくれるわけないじゃん」
「ですよね…」
一番の問題はにこ自身だと言っていい。あの意地っ張りの権化をねじ伏せる方法が何かあるだろうか…
…ん?
「…待てよ。そういえば、茜からにこがμ'sに加入した経緯は聞いたぞ。その手は使えないか?」
よくよく考えてみれば、にこがμ'sに入ること自体が簡単なことではなかったはずだ。何せ二年間守ってきた根城を新しくできたスクールアイドルに明け渡すことになるんだから。
それを乗り越えてにこをμ'sに迎え入れたときの策は…。
「え?どういう手?」
「
あまりピンときていない様子のμ'sの面々に、仕方がないから具体的に言ってやる。
「…ライブをしよう。にこの妹達のために。観客はあの3人だけでいい、μ'sはバックダンサーじゃなくて、にこを含めたお前ら全員のグループだって見せてやれば…!」
「…惜しいな」
「なんだと?」
天童さんが口を挟んだ。挟んだのはいいが、「惜しい」とはどういうことだ?「いい」や「悪い」ではなく?
「そこまで察して、計画できたのは想定の範囲内で優秀だよ。だが足りない。俺たちがやるべきことは
「何言ってんですか。あんたがそう言ったんじゃないですか」
「いや、残念ながら若干違うのさ。俺は、『
何が違うんだ。
「何が違うんだって顔してんな。にこちゃんシスターズにとってにこちゃんはスーパーアイドルだ。
「…そんなの、どうしろって」
要するに、にこの妹達の夢を壊さないようにしつつバックダンサーというイメージを払拭しなければならない、と言いたいのだろう。だが、どうすればそんなことができる?現実とにこの嘘は全く違う。どちらも守るなんて…
「あっ!いいこと思いついた!!」
そう思っていたのだが、穂乃果が何か思いついたらしい。
一体どうする気だ?
『もしもし?茜くん?』
「はいはい波浜茜ですよー。どうしたの穂乃果ちゃん」
にこちゃん宅を後にして自宅で絵を描いてたら穂乃果ちゃんから電話がきた。
え?お風呂入ったのにわざわざ帰宅して絵を描いてるのかって?いや僕はお風呂入ってないもの。みんな入ったって矢澤一家のみなさまのことだからね。にこちゃんが「私たちも寝る」って言ってたって?言ってたね。でも僕は帰りました。にこちゃんの隣で寝れるわけないじゃん。心が保たない。
まあそんなことより、珍しくお電話がきたんだから答えてあげないと。
『あのね、ちょっとお願いがあるんだけど…近くににこちゃんいないよね?』
「大丈夫、僕はもう帰宅したからね」
『そっか!よかったー。えっとね…』
そのまま議題を話し出した穂乃果ちゃん。聞けば聞くほど穂乃果ちゃんらしい手段で、確かに有効な気がする。天童さんが何を言ったのかわかんないけど、やっぱり最善策を打ってくるね。
「…わかったよ。早速準備を進めておくよ」
『ありがとう!急な話でごめんね!』
「気にしないで。それよりも、君たちもちゃんとやってね」
『うん!じゃあ、また明日!』
「はーい」
電話を切ってしばらくスマホを見つめた後、僕は画材を片付けて準備を始める。
にこちゃんを嘘つきにするわけにはいかないしね。
今日は朝からちょっとおかしいとは思ってた。
茜は先に学校行っちゃうし、創一郎も朝練にいないし、お昼ご飯の後に茜はどっか行っちゃうし。授業はどうしたのよ。どうせあいつ授業聞いてないけど。仕事の都合で学校を休むことも多いから、皆勤賞も惜しくはないってことかしら。
「…だからって何でこころ達を連れてきたのよ?」
「びっくりした?」
「びっくりしたとかの問題じゃないわよ」
放課後に玄関まで来た私を待っていたのは、茜、こころ、ここあ、虎太朗の4人だった。何で茜は授業サボってまで迎えに行ってんのよ。
「まあまあ。にこちゃんの出番なんだから早く屋上向かって」
「えっええ?!」
「はいUターンUターン」
そしてそのまま茜に強制的に屋上に連行されそうになった。何すんのよ。
「ちょっ、どういう…」
「創一郎あとは任せた」
「了解」
「ってぎゃあああああ?!」
抵抗しようとしたら、どこからかやってきた創一郎に一瞬で連れ去られた。一回玄関から飛び出して、そのまま跳び上がって屋上に着地。絶叫マシーンみたいな動きはやめなさいよ。
そして、創一郎に降ろされた屋上には、小型のステージが組み上がっていた。
「…どうなってんのよ」
「歌うんだよ、にこちゃん!」
「穂乃果…一体どういう…」
「さ、こっちこっち!!」
「えっちょっわあああ?!」
今度は穂乃果に腕を引っ張られて舞台裏へ。
舞台裏には、μ'sのメンバーが全員集まっていた。
「ほんとに一体なんなのよ…」
「にこちゃんのステージだよ!」
「だからそれが何なのって聞いてんのよ!!」
ハッキリと言わない穂乃果に、つい大きな声を出してしまう。歌う事自体はいい。いつでも歌えるようにしてるから。でも、状況が理解できるか、納得できるかは全く別の話よ。
「…にこちゃんの、こころちゃん達への最初で最後のライブだよ」
「…茜?」
いつの間にか後ろにいた茜が、私の疑問に答えた。客席の方からはこころ達と創一郎の声が聞こえてくる。どうやらライブが始まるまで創一郎が相手してくれるみたい。
「最初で、最後ってどういうことよ…」
「にこちゃん。最近僕は思ってたんだ。やっぱり嘘を貫くのはどうしても心が辛いよ」
「…それとこれと何の関係があるのよ」
「それを今から話すんだよ。にこちゃんは当然妹達を悲しませたくない。嘘だったなんて言いたくない。でも今まで言ってたことを否定しなきゃ、あの子達にはライブは見せられない」
わかってるわ。だって私はスーパーアイドルでもないし、μ'sはバックダンサーなんかじゃない。でも今更どうしろって言うのよ。
「だったらどうしようか?発想を変えようか。もう今まで言ってきた嘘は諦めよう。その代わり、今から現実に寄せていこう」
「何言ってるか全然わかんないわよ…!!」
茜の言ってることもよくわからない。はっきり言いなさいよ!!
「にこちゃん、君が直接、あの子達に伝えるんだ」
「嘘ついてたって?」
「違うよ。
「今日で…終わり?」
「そう。
…そっか。
嘘をついていた、とは言わない。
嘘をつくのをやめるだけ。
ちゃんと嘘から現実に違和感なく移るために、アイドルとしての私の最後のライブをしようってことなのね。
…何よそれ。
みんなして気を使っちゃって。
練習もしなきゃいけないのに、わざわざこんなステージまで用意して。
…ほんと、みんなバカなんだから。
「でも、曲はどうするのよ。何を歌えばいいの?セトリとか無いじゃない」
「そりゃにこちゃんが歌いたい曲を歌えばいいよ。任せて、どんな曲でもすぐ流せる準備はしてあるから」
「何で準備万端なのよ…茜らしいわね」
舞台裏の機材をぽすぽす叩いてドヤ顔する茜はやっぱりちょっと腹立つわね。
「まあいいわ、あとは衣装よ。まさかスーパーアイドルに制服でライブしろなんて言わないでしょうね?」
「それなら!」
そう言ってことりが後ろ手から取り出したのは、ピンクを基調としたフリルいっぱいのすごく「アイドルらしさ」を詰め込んだ衣装だった。…これを昨日の夜から用意したって言うの?
「こんなのどうやって準備したのよ…」
「雪村さんにお願いしたら作ってくれたの!」
「…よく受けてくれたわね」
「ゆっきーは『こんな正統派なアイドル衣装、逆に清々しいな。サービスだ、俺なりに矢澤にこに合うようデザインを加えてやる』ってめっちゃノリノリだったよ」
「そ、そう…」
あの人も大概感覚がよくわかんないわね。
「ちなみにバッチリお金とられたよ」
「えっ」
「えっ、てことり…あの人一応プロなのよ?そりゃお金くらいとるわよ…」
「材料費だけで数万いってた」
「えっ」
「そりゃこれだけ凝ってたらそうなるわよねぇ…」
ことりは気軽に頼んだみたいだけど、そりゃプロだもの、仕事にはお金払わなきゃ。ことりもたまに抜けてるわね…。
「ご、ごめんなさい…」
「まあ今回はにこちゃんのことだったから僕が払ったけど、今度は気をつけてね」
「何であんたが払ったのよ」
「にこちゃんのことだから…身内のことは身内で済ませでっ」
「誰が身内よ!!」
「痛いよ」
まだ身内じゃないわよ。幼馴染よ。っていうか手術してから前より頑丈になっててちょっと悔しいわ。
「ほらほら早く準備しないと。お客さんが待ってるよ」
「あーもーわかったわよ!」
急かされたから仕方なく茜に見えないところに行って着替える。衣装は豪華な割には着やすく作られていて、メイド服とかWonderful Rushの衣装と同じようにサイズはピッタリだ。…なんか悔しい。
「どう?」
「可愛い」
「あんたはもうちょっと語彙力ないの?」
「可愛いに全てが詰まってるんだよ」
茜の感想は(嬉しいけど)あんまりあてにならないわね。
「わあ!かわいいね!」
「にこっちらしいやん!」
「あ、ちょっと後ろのリボンが崩れてるわ。ちょっと待ってて」
他のメンバーはちゃんと細かく見てくれるわね。茜ももっと細部まで見なさいよ(嬉しいけど)。
急いでメイクも済ませて、幕の裏側に立つ。後ろには他のメンバーも整列している。
何て言うかは決まった。
今から見せるのは、想像上の私じゃなくて、等身大の私よ。
「…いってらっしゃい、にこちゃん」
「うん」
茜はそれだけ言って、ステージの幕を開けた。
「…こころ、ここあ、虎太朗。歌う前に話があるの」
いざ言おうと思うとちょっと喉が詰まるけど、ここまで来て引き返せない。まったく、前も今も引き返せないような状況にしちゃって…力ずくなんだから。
「実はね…スーパーアイドルにこは、今日でおしまいなの!」
「「「ええっ?!」」」
「アイドル辞めちゃうの…?」
「ううん、辞めないよ。これからはここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやっていくの!」
「でも、皆さんはアイドルを目指している…」
「ばっくだんさー」
「…そう思ってた」
本当に、最初は情熱が足りてないと思っていた。技術も足りないと思っていた。でもみんな本気で、みんな必死に練習してて、私も負けそうなくらいだった。穂乃果が一度抜けてからもっと本気になれて、この9人じゃなきゃダメなんだって思えたのよ。
「…けど、違ったの。これからはもっと新しい自分に変わっていきたい。この11人でいられる時がいちばん輝けるの!ずっと、ずっと!!」
もちろん、創一郎がいろんな些事を片付けてくれて、何より茜が側にいてくれることも大切なの。
みんなが私を変えてくれたのよ。
「私の夢は、宇宙No.1アイドルとして、宇宙No.1ユニットμ'sと一緒に、より輝いていくこと!それが一番大切な夢…私のやりたいことなの!!」
「お姉様…」
ちゃんと話を理解できてるのはこころくらいかもしれないけど、いつかここあにも虎太朗にもわかる日が来ると思う。…だから覚えていて、今日の私の姿を、今の私の言葉を。
「だから、これは私が一人で歌う最後の曲…」
そこまで言うと、後ろにいたみんなは舞台袖にはけていった。
後は歌うだけ。
スーパーアイドル矢澤にこの、最初で最後のライブを。
「にっこにっこにー!!」
最高の笑顔で、届けるわよ!!
で、約2週間後。
僕もにこちゃんも無事練習に復帰した。いや僕は練習しないんだけどさ。
「これでこころちゃんたちもライブに呼べるね!!」
「やったにゃー!!」
「そうよ!!だから中途半端な出来じゃ許さないわ、もう一回やるわよ!!」
「えーっ!」
「にこっち気合い入ってるなぁ」
「今まで心に引っかかっていたのが取れたからかもしれないわね」
「僕もスッキリしたよ」
「茜はあんまり変化がわからないわね…」
「そんなぁ」
久しぶりの練習でにこちゃんは元気いっぱいだった。一応ストレッチと筋トレは自宅でやってたとはいえ、いきなりがっつり練習するのは怖いけどね。
「怪我さえしなければ問題ねぇだろ。とりあえず10分休憩しろ、水分補給だ」
「うー…」
「にこ…気持ちはわかりますよ…!!」
「海未のとは違うわよ!!」
うん、海未ちゃんは熱血スポーツ漫画だからね。色々違うね。
「ふぅー疲れた…」
「……これで、ライブに………」
「…花陽ちゃん、どうしたの?」
休憩を始めたμ'sのみんなの中で、花陽ちゃんだけぼーっとしていた。だいぶ涼しくはなってきたけど熱中症かな?それはよくない。
と思ったけど、そんなことじゃなかった。
「…あっ、あの!!……みんなに、会って欲しい人がいるの…!!」
凛ちゃんですら心当たりがないって顔してた。
っていうかそんな、ご両親に婚約者を紹介したいみたいなノリで言われても困っちゃう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
なかなか文章の表現に困ったお話でした。にこちゃんソロライブに根拠ある理由を叩き込むために天童さんとか波浜君に頑張ってもらいましたが、逆に意味不明になってるかもしれません。その場合はごめんなさい。
天童さんは相変わらず先読みの達人、真面目なら頼りになる人です。胡散臭いですが。
にこちゃんを後押しする波浜君、ちゃっかりお金取る雪村君。雪村君のちょい役率が異様に高い気がします。メインのお話はまたいづれ。
次回は凛ちゃんウェディング…の前に、ちょっとオリジナルを挟みます。アニメ二期にやたらオリジナル話を突っ込んでしまってるせいで進みが遅いですが、ストーリーの関係上色々予定があるのです…。