笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回からまたお気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!ありがとうございます!!また寿命伸びます!!(まだ言ってる)
更に☆9評価もいただきました!ありがとうございます!
評価ももっと増えるように頑張りたいですね!自己満作品ですけどね!!
さて、今回はオリジナル話です。影の薄いあの人、もしかしたらサブタイトルでわかるかもしれません。文字の意味そのものではなく、語感です。
というわけで、どうぞご覧ください。
もし、人の心が読めたなら。
そう思ったことはありませんか?
多くの人は一度くらいあるかと思います。
そして、それに対してよく言われるのは、「心が読めるのもいいことばかりではない」ということです。
僕…松下明は、そのことをよく知っています。生まれつきといいますか、物心ついたときから「見聞きした言葉の真意を汲み取る」能力に長けていたようです。他人の言葉はもちろんのこと、誰かの文字や印刷された言葉であってもその「本心」を見抜くことができました。
もちろんいいことだってあります。人の機嫌を損ねない立ち居振る舞いができますし、この能力を駆使して文学の世界において大いに貢献できています。
それでも、やはり。
人々の悪意、私を利用せんとする打算、妬み嫉みの数々を、意図せずして受信してしまうのは…とても心苦しいことです。
それは赤の他人に限らず、お父様やお母様でさえ、優しくはあっても私の能力に寄せる打算的な期待を感じ取ってしまうため…どうしても信用できなくなってしまいました。
どうせ他人は他人です。
私のような、俗に「天才」というレッテルを貼られてしまった人々は、一般の方々にとっては動物園の中の動物達のような別世界を生きる見世物にしか見えないのでしょう。
そんな人々なんて、信用できるわけがない。
…例外があるとすれば。
「お兄さまー!夕飯の準備ができましたよー!」
「はい、ありがとうございます。すぐに向かいます」
「今日はですね!私がシチューを作ったんですよ!」
「本当ですか?楽しみですね」
「はい!楽しみにしていてください!!」
いつも、微塵の裏もなく私を「すごいお兄さま」と思って尊敬してくれている私の妹…松下奏くらい、でしょうか。
「今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます…!」
「いえいえ、僕も日曜日くらいは休憩したいですから。大学は秋学期の講義が始まったばかりで忙しくもないですしね」
「そうなんですか?」
「ええ。大抵の国立大学は10月1日から秋学期の講義が始まりますから」
今日はμ'sの園田海未さんが作詞の相談をしたいということで、喫茶店で二人で会う約束をしていました。よくメールでのやり取りは行いますが、直接会って話すのは少し珍しいことです。
「では早速…」
「まあまあ、せっかく喫茶店に来たんですから、まずは何か注文しましょう。お代は僕が持ちますから」
「ええっ?!そ、そういうわけには…」
「大丈夫ですよ。僕はお給料を貰っている身ですから、学生よりはお金に余裕があります」
「ですが…」
「こういう時は言葉に甘えるのも、ひとつの礼儀かと思いますよ」
「そ、そういうことなら…」
いきなり本題に入ろうとする園田さんにまずは釘を刺しておきます。喫茶店を指定したのはこういう目的もありました。園田さんは素直で誠実、かつ真面目な方ですが、少し熱意が過ぎるところがあるようなので、少しゆとりを持てる場での会食を選ばせていただきました。
「パフェなどは食べますか?」
「ええ?!そんな高いもの、払っていただくというのに頼めません!!」
「ふふ、冗談ですよ。そう言うと思っていました」
緊張を緩めるにも、あまり堅苦しい場所ではない方が良いでしょう。実際かなり緊張していらっしゃるようですし。
…園田海未さん。
非常に裏のない性格をしていますね。なかなかお目にかかれないほどの素直さです。悪いことは悪いと断言できる方なのでしょう。言葉の裏など見なくても顔に出てしまうほど、というのはあまりよくないかもしれませんが。ババ抜きやパーカーでは勝てないでしょう。
今までのやり取りの感じでは、私を利用して成上ろうなどという打算も見受けられません。純粋に私から技術を教わろうとしているようです。
まあ、今後どうなるかは期待しませんが。
「僕は…そうですね、フレンチトーストとコーヒーをいただきましょうか。園田さんはどうしますか?」
「えっと…では、私もフレンチトーストと…紅茶をいただきます」
「はい。では注文しますね」
ウェイターさんを呼んで、料理を注文します。ウェイターさんは私のことを知らないようですが、彼の言葉の様子からどうやら兄妹だと思われたようです。流石に似てないと思うのですが。
「さて、落ち着いたところで、本題に入りましょうか」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ?」
本題に入ろうとするとすぐにまた緊張してしまったようです。実直でなによりなのですが、少しやりづらいですね。天童君のように他人もコントロールできればよかったのですが、そこまでの才能は僕にはありません。
「えっと、とりあえず今ある詩を見せていただけますか?」
「は、はい。えっと…これです」
「ありがとうございます。拝見させていただきますね」
「お、お願いします…」
差し出されたのは1冊のノート。恐らく様々な単語を連ねた草案用ではなく、一つの詩としてまとめた清書用でしょう。もちろん、これだけでもどんな言葉を並べたかを想像するのは難しくありません。特に手書きでは筆跡のおかげでより多くの情報を読めます。
「ふむ…たくさんありますね」
「は、はい…どれか一つでも歌に出来ればと思って…」
「ふふっ、いいじゃないですか。全部歌にしてしまいましょう」
「そ、そんな…真姫が大変になってしまいますから…」
「ああ、そうか…作曲の手間は考えなければいけないですね」
詩としての完成度はかなり高いので勿体ないですが…いや、作曲家の知り合いもいるじゃないですか。
「…一部、水橋君に依頼しておきましょうか?」
「へっ?」
「僕が水橋君に依頼して、出来た曲をμ'sに差し上げる…それなら問題ないでしょう」
「問題ありますよ!それだと費用は…」
「ええ、僕持ちですね」
「そんな簡単に…」
「いいんですよ。優れた詩を後世に残せない方が、文学者としては心苦しいですから。僕結構お金持ちですしね」
こういう事をするから打算的な付き合い方をされるのだとはわかっているのですが…実際、文学者としての本能を止めるのは簡単ではないんです。
人付き合いよりも、文学の保存の方が大切でしょう。
「そ、そうは言いますが…」
「ふむ…そうですね…まずは詩のアドバイスをしてから考えましょうか。まずはこの『Dancing stars on me』から見ていきましょうか」
「は、はい…」
園田さん、ちょっと押しが弱いのは心配ですね。
「詩の基本ができていますから、より意味のある言い回しであったり語感の調整なんかをしましょうか」
「はい、お願いします!」
「例えば、…」
実際、僕の目からしてもかなり出来のいい詩の数々です。もちろん、悩んだ末に良い言い回しが思いつかなかったところなどもあるようですが、全体として良くまとまっています。高校生でここまでとはなかなかいかないでしょう。
「…ふむ、この詩はとてもいいですね。これはこのままで十分かと」
「本当ですか?!」
「ええ。『嵐の中の恋だから』…なるほど、一つの詩の中で2人の人物が掛け合う手法、面白いですね。僕もちょっと浮かんできました」
良い作品を見るとこちらも創作意欲が湧いてきますね。「恋」に「嵐」とは、いい単語を繋げたと思います。荒れ狂う恋の様を連想しやすく、見た人が情景を思い浮かべやすいでしょう。
持参したルーズリーフに、頭の中で繋ぎ合わせた詩を一気に書き連ねていきます。「恋」に「嵐」。園田さんは悲愴を感じさせる詩でしたから、僕はもっと情熱的な詩にしましょうか。
「…と、こんなものでしょうか。ふむ、題名も少し拝借して…『Storm in lover』、というのはどうでしょうか」
「す、すごい…僅か数分で詩が…」
「あっ…すみません、今日は相談に来ていただいたのに、僕が好きなことをしてしまいました」
「い、いえ!大丈夫です!むしろ松下さんの作詩風景が見られてよかったといいますか…!」
つい平然と自分の作詩をしてしまいました。今日の本題から逸れてしまいましたね…。こういうところは天童君や御影君と変わらないですね。芸術家の性というものかもしれません。
「あ、せっかくなのでこの詩に曲をつけて今度お渡ししますね」
「ええええ?!そ、そんなっあのっ」
「テンパり過ぎじゃないでしょうか…?」
作った曲を眠らせておくのも忍びないので、曲にしてプレゼントさせていただくことにしました。園田さんは申し訳なさと嬉しさで言葉が出てこないご様子ですが、嫌がられていないのなら問題ないでしょう。
今日はその後も、緊張した園田さんと共に実に十作の詩についてアドバイスを差し上げました。今後もどんな詩を作ってくださるのか、楽しみですね。
園田さんと別れたあと、少し大学に寄って解読中の古書を取りに戻ろうと思い、大学に向かっていると。
「おーやっ明じゃねーか!なんだなんだ休日出勤か?准教授はお忙しいなおいおいおい!!」
「こんにちは天童君。今日もいつも通りですね」
「おう、俺は今日も平常運転だぜ。つーか大学行くなら俺もだから一緒に行こうぜ一緒に」
「側から見ると学生が准教授にタメ口きいているように見えると思いますけど、いいんですか?」
「よくねーわ。それはよろしくない。俺の評判が落ちるのは全くよろしくないアイムアパーフェクトヒューマン」
後ろから駆け寄ってきて横に並んだのは天童君でした。彼も今年、僕が務める国立大学に入学していたようで、ごく稀に顔を合わせます。流石に学内で声をかけることもありませんね。
大体、天童君は特に信用できませんし。
僕と同じように人心に関する天才で、僕が対個人に特化しているとすれば彼は対団体に特化した天才です。
彼は多くの人の行動を予測できますが、各個人の心境までは予測できません。対して僕は個人の本音まで見抜くことができますが、団体の動きは見抜けません。同じような特性を持ちながらほとんど真逆の性質を持っているわけです。
その上で、彼は
そんな予感がしてなりません。
「ちなみに天童君は何をしに大学へ?」
「ふふーん、何だと思いますー?」
「提出し忘れた課題を提出しに行くんですよね」
「…たまには外してくれてもいいんだぜ?」
「外したところで特に見返りもないでしょう?」
「ないな」
どうせ課題を提出しにいくという口実で僕の行動を読みに来たのでしょうが、そこを言及してもまともに答えてはくれないでしょう。
「…ところで、最近μ'sの方々によく関わっておられるようですが。何かご心配ごとでも?」
「おっと、誰に聞いたんだ?いや、わかってることを聞くのは無駄だな。茜だろ?柳進一郎の新作の表紙を描いたっつってたからな」
「何を言いますか。あなたがそう仕向けたのでしょう?」
「ばーか仕向けなくても自然とそうなるのはわかりきってるわ。作風が『未来の花』に近かったしな」
彼との会話はこんな感じで、腹の探り合いみたいになるのであまり好きではありません。実際に彼の言う通り、彼に舞台化していただいた「未来の花」に近い雰囲気の作品を書いたので、表紙は同じ絵師の方に頼もうと思っていたのです。
お互いが真意を知った上での会話なんて、気持ちが悪いにも程があります。
「…天童君、僕との会話は気持ち悪くなりませんか?」
「えっなになに?急に思春期来ちゃったの先生よ」
「僕は正直気持ち悪いですよ」
「あっガチなやつね」
あまり表面的なやりとりばかりしていても気持ち悪いだけなので、思い切って正直に聞いてみました。
「気持ち悪い…うーむそうなのか…なんかショック…」
「どうせわかっていたことでしょう?」
「…明、ちょっと勘違いしてるみたいだがな。俺はお前さんみたいに人の心まで読めないだぞ」
「知っていますよ。ですが、どういうリアクションをされるかは予測できるでしょう?」
…これはどういうことでしょうか。
どうやら本気で悲しんでいるようです。予測できていたと思ったのですが…。
「あー予測できるぜ、リアクションはな。だがな、
「…っ」
「あんたみたいに対人特化じゃねぇからな。…正確には
「…失礼しました。僕としたことが、読み切れず…」
「いーや構わねぇよ。俺も最近変なのを相手にするとシナリオ通り進まないことも出てきたからな…」
内心、「しまった」と思いました。
彼が僕とは違う種類の天才であることはわかっていたのに、「何でも読めている」という先入観で決めつけてしまっていたようです。迂闊でした。天童君も珍しく若干傷ついてしまったようですが、彼自身も最近は調子が悪いようで、「まあそういうこともあるだろ」と思っているようです。
「はーほんとに…読めない奴は読めないもんだな。茜や桜や大地は余裕なのに、湯川君とか明は完全には無理だ。天才でもない希ちゃんもよくわかんねーしなぁ…」
「…希ちゃん?」
「ああ、希ちゃん。知ってるだろ?μ'sの子なんだしさ」
憂鬱な表情で不満を連ねる天童君が、不意に意外な名前を出しました。東條希さん、もちろん知っています。知らなかったのではなく、意外だったのです。
何の脈絡もなく一個人に言及するようなタイプではありませんから。
これは、もしかすると…。
「…ははあ、そういうことでしたか」
「何の話やねん」
「いえ、何でもありませんよ。人生何があるかわからないな、と思ったまでです」
「なるほどわからん」
不機嫌そうな顔をする天童君は、どうも本当に僕の言葉の意味を掴めていないようです。
それでいいんです。
恋心には、自分で気づいた方がいいと思いますから。
大学から資料を回収した後、特にすることも無かったためそのまま帰宅しました。まずは自室でパソコンに向かい、メールを送ります。
宛先は水橋君。
園田さんの相談に乗っていた時に作った詩から曲を作っていただくためです。自分で言った手前、後回しにはできませんからね。
返事はすぐに返ってきて、2日ほど時間が欲しいとの旨が書いてありましたので承諾しました。普通は2日で曲はできないと思います。
…実は、水橋君はかなり苦手です。
信用できないとかの問題ではありません。悪い人ではないのはわかるのですが、見抜ける本心の更に奥。
例えるなら、曇りガラス越しに心の中を見ているような。
嘘をつくにしてもここまで完璧に嘘をつける人はそうはいないでしょう。二重人格とも違います。
同じような現象は、以前の波浜君にも見られました。しかし彼の本心はちゃんと見抜けていたのです。水橋君はそれを更に徹底したような、自分自身すらも完全に欺かない限りはこうはならないでしょう。
そんな心理状態を目前にして、平然としていろという方が無理な話です。
しかし、まあ、彼とのやりとりは最低限で済みましたので助かりました。今日はもう予定はありませんし、張り切って古書の解読をしましょう。
と、思っていた時でした。
「…おや?メールが届いていますね…」
先ほどの水橋君とのやり取りの間には無かったメールが届いていました。ちょうど今届いたのでしょう。
差出人は天童君でした。さっき会ったはずなんですが。
メールの本文には、
『明の小説を原作とした映画を思いついたから、ちょっと話を聞いてくれないか?』
とありました。読む予定だった古書を机に置いて、了承の旨を返事して再び出かける準備をします。
「あれっお兄さま、またお出かけですか?」
「はい。ちょっとお仕事のお話をしなければいけませんから」
「そうでしたかぁ。勉強教えてもらおうと思ったのになあ」
「それなら、夜に少しだけ見ましょうか。夕飯までには帰ってきますし」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
「ちなみに理数系は教えられませんよ?」
「大丈夫です!英語なので!!いってらっしゃい、お兄さま!!」
「はい、行ってきます」
玄関で靴を履いている時に奏が居間から出てきました。妹の奏は私のような異常は持たない普通の女の子なので、時々文系教科については僕に聞きにきます。理数系はさっぱりですが。
玄関から出て少し歩くと、
「お、早かったな。
「
「オッケー、じゃあ行こうか」
天童君を相手取るなら、必ず気にしなければならないことがあります。
それは、
そして、僕は更にその先、彼が裏で考えていることまでバッチリ読み取れます。
真の要件は、なんて事はない、僕らの日課です。
行けばわかりますよ。
(お、いたいた。目標5番の路地、SJ-7-3通路の北側143m先)
(君の予想誤差3m、今日は調子良さそうですね)
(ああ、任せろ。じゃあ手筈通り)
(了解しました)
さて、僕と天童君は人通りのない路地裏に居ます。
こんなところに何をしに来たと思いますか?遠くから聞こえる声に耳を傾けてみましょう。
「だから足りねぇっつってんだよ!早く金出せよオラ!!」
「ひぃっ!!も、もう持ってないよ!!本当に無いんだ!!」
「はあ?何言ってんのお前。無いなら増やせばいいだろ」
「そ、そんな無茶な…」
「あァ?!」
「ひいい!!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!す、すぐに増やしてくるから!!」
言うまでもないでしょうが。
カツアゲか何かですね。
天童君のことは信用できませんが、こういった正義については別です。そこについては僕らの利害は一致しました。
こういう人達がいるから、割りを食う人が出てくるんです。
だから悪い芽は摘んでおきましょう。
もちろん暴力的な手段は使いません。天童君は何故か非常に喧嘩に強いですが、僕は力ありませんから。
ならばどうするか。
僕はただ、声を聞きながら携帯電話の準備をするだけです。
「なぁおい、一番簡単に金を増やす方法教えてやろうか?」
「は、はい?」
「…盗むんだよ。ほら、表は大通りだろ?誰も気づきはしねぇよ」
「そ、そんな…」
「できねぇのか?なら
「ちょーっと待った!!話は聞かせてもらったぜ!!ついでに言うと君らがそこの少年に蹴りを入れてる現場もバッチリ撮影済みだからあんまりデカい態度とってるとうおおおおおお拳来たああああああ?!?!」
「…おい、何だお前」
「えーっとちょっと待って?お兄さん方ちょっと待って?いやこちら暴行事件の証拠押さえてるわけでして」
「ふざけんな消せ!!」
「いったあああああ!!マジパンチしやがったこいつ!!」
犯罪現場に完全に空気読めない感じで天童君が突っ込んでいきました。殴られたようですが、どうせ演技でしょう。ちょっとかすり傷を負う程度に抑えて大仰なリアクションをとれば、
さて、それでは僕の出番です。すぐに110番に電話をします。
「あっあのっ、警察の方ですか?!えっと、新宿の路地裏で人が殴られていまして…ええ、新宿駅南口から…えっと近くにあるのは…」
そう、僕の役割は「目撃者」。
会話する相手の心境は読めますから、
そうすれば、あとは天童君が時間稼ぎをしている間に警察が到着しますから、拘束していただければおしまいです。事情聴取も目撃証言が済めば帰れますし。
ぱっと思いつく程度の、しかし位置の特定には十分な情報を提供したらあとは警察の方が見つけやすい位置まで移動して待機し、誘導するだけです。夕飯までには問題なく帰れるでしょう。
…こんな「悪人狩り」を、天童君が察知する度に行っています。もちろん僕らがともに暇な時に限りますが…いや、天童君のことですから単独でもやっているかもしれません。
悪人は咎めましょう。悪者は裁きましょう。
どうせ信用に足る人間なんていないのですから。命を奪わないだけ有情だと思っていただきたいものです。
「あれは…松下さん?こんなところで何を…」
久しぶりに練習がお休みだったので、松下さんに詩のアドバイスをもらった後もしばらくお買い物をしていたのですが…何故か、今朝会った時とは違う服装の松下さんが、誰かに電話をしていらっしゃいました。何やら焦っているようでもあります。
声をかけようと、思ったのですが。
電話を切った直後に、路地裏に投げかけた視線が。
背筋が凍るほど冷たくて。
息が詰まって、足も止まって、声なんてとてもかけられませんでした。
どれくらい私が立ち止まっていたかわかりませんが、警察官の方々が複数人いらっしゃって、焦ったような表情の松下さんと共に路地裏に消えていきました。
…一体、何だったのでしょう。
松下さんがあんな眼をするなんて、何があったのでしょう…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
おそらく一番謎だった松下先生です。文学者ということでサブタイトルを七五調にしました。お気づきでしたか?
作中で一番捻くれている人物登場です。9人も男性がいるんだからこういう人がいてもいいだろう、と思ってこんなに捻くれさせました。他人絶対信用しないマン誕生の瞬間です。あとシスコン。
悪人狩りについては、賛否両論ありそうですが…そこらへんは次回の後書きに回します。あとこんな時にもネタ化を忘れない天童さん。
そして忘れた頃に水橋君の不穏な伏線を垂れ流していくスタイル。何なのでしょうね!(すっとぼけ)