笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
そしてあけましておめでとうございます。2019年も気合い入れてこの作品を書いていきます!頑張ります!!
そしてちょうど映画の初日舞台挨拶に行ってまいりました。友人が当ててくれたのに着いていきました…友人が神…ありがとう…。μ'sのキリがついたらAqoursの二次創作も書きたいですね!一緒にやるとおそらくどっちかが疎かになるのでダメです!笑
さて今回はちょっと一話分オリジナル話です。ささやかな男性陣紹介話です。短め(当社比)なので気楽に読んでいただきたいですね!
というわけで、どうぞご覧ください。
「よーっし、今日の練習はこれでおしまいだ!ダクソして寝ろ!!」
『ありがとうございました!』
都内某所、ちょうど舞台の練習が終わったところだ。脚本兼監督の天童は今日もいつも通りよくわからないことを言っている。まあ練習中は真面目だからいいんだけどね。
真面目だからって厳しいわけでもない。誰が出来て誰が出来ないとかは彼は全部把握しているから、出来が悪かろうが最終的に綺麗に舞台が進むのなら怒る必要もない。おかげで彼の舞台に乗る人は基本的に表情が明るい。そこまで想定してやってることなのかもしれないけどね。
「よし、まあ想定の範囲内の進捗ではあるな。これなら初日には余裕だろ。大地、飯行こうぜ飯」
「流れるように誘ってくるね」
「流れ大事だぜ?ハイパーイケメンヒーローの天童さんがご飯に誘うとか、世の女性たちが嫉妬に狂ってしまうからな」
「何食べる?」
「おっとスルースキル高いなお前」
天童が何か言ってるけど気にしないでおこう。
「予定通りだとラーメンだけど」
「俺が予定外のことするわけないだろ?さあ行くぜ!まだ明るいうちに!!」
「もう夜だけど?」
「存じ上げておりマース」
舞台の練習は朝から晩までみっちりやる。単純な練習時間の問題だけじゃなくて、多忙な人も隙を見て参加できるようにしてあるんだ。かく言う僕も午前中は番組の収録に行っていたし。
そして、その後にラーメン屋に行くのは既に決まっていた。わざわざ今思いついた、みたいな誘い方をしてくることも決まっていた。ぜんぶ天童の脚本通りのシナリオだ。
で、シナリオ通りならば。
「あっ、天童さん!」
「それに御影さんも!」
「いえーいハローまきりんぱなプラス滞嶺君よ!今日も可愛いな女の子たち!!」
「えへへ」
「今日は後ろから来ないんすね」
「俺がいつも背後に忍び寄ってるみたいな言い方やめんか」
「そうじゃないっすか」
「んー否定できない」
「何やってんの天童…」
μ'sの一年生たち…小泉さん、星空さん、西木野さん、滞嶺くんがいた。もちろん天童の読み通りだ。
でも毎回後ろから忍び寄るって、何でそんなことしてんの天童。不審者だよそれ。
「ふっふっふ…君たち、さては練習後だろう?腹も減っておろう!奢ってやるぜ!感謝するがいい!!」
「本当ですか?!」
「おう!大地がな!!」
「ちょっと待って」
僕に押し付けるなよ。
一緒にお店に入り、当然のように同じテーブルに座る。これが何の違和感もなく出来るから天童はおかしいと思う。
「ふむ…男性陣と女性陣で分かれてしまったからなんだか合コンみたいになってしまったな!!」
「「えっ」」
「黙ってください」
「辛辣の極み」
「私塩ラーメン」
「こっちはマイペースの極み」
天童が変なこと言うから小泉さんと星空さんは顔を赤くしてしまったし、滞嶺くんには怒られた。西木野さんは無視してメニュー決めてた。いきなり情報量が多いやり取りだ。
まあこれも天童のシナリオ通りではある。
天童が用意してくれた脚本通りにしていれば僕も困らないし、対応もしやすいね。
「僕は醤油ラーメンで。天童、余計なこと言うと滞嶺くんに殺されるよ」
「まっさかぁ。殺されはしないさ。俺は担々麺にするか」
「殺す気はありませんが、不可抗力で死んでも知りません。俺は豚骨」
「えっ怖」
「凛も豚骨ラーメンにするにゃ!」
「私は塩ラーメンにします」
「おいおい誰か味噌頼んでやれよ」
「言い出しっぺの法則って知ってるかい?」
「そういうこと言っちゃう〜?」
万に一つも天童が殺されることはないと思うけど、滞嶺くんだったらやれそうだから怖いな。
「ここって替え玉どんだけいけたっけ?」
「100円払えばいくらでもいけますよ」
「おっ良心的。男子学生の味方だな。…どうでもいいけど、滞嶺君敬語上手くなったな?」
「茜に教わってます」
「面倒見いいかよ」
「茜は面倒見いいですよ?練習で誰か倒れたり怪我したこと一度も無いですから」
「いつも気温と湿度と私たちの体力を考えて練習メニューを作ってくれているんです」
「はぁ…すごいんだね、波浜くん」
「あいつ異常なレベルで博愛主義だからな…にこちゃん以外」
天童の仕事仲間だという波浜くん、何度か会ったけどそんなにすごい人なんだな。
全員のラーメンが運ばれてきたので、まんなでいただきますをして食べ始める。滞嶺くんが「全員揃っていただきますが基本です」と言って聞かなかったから、最初に届けられた天童が「麺伸びるやんけ…」って言ってしょんぼりしていた。
「そうそう、君らのこの前のライブ聴きに行ったぜ。随分とレベルを上げたもんだな!」
「あ、ありがとうございます…」
「…」
「今メキッて音したけど何事」
「創ちゃんが割り箸握り潰しました」
「…創一郎、あの一件がトラウマになっちゃったみたいで」
「ああ…まあ、それはうちの大地も似たようなもんだ」
「いや全然違うよ?」
どうやら、滞嶺くんはハロウィンイベントでの女装コスプレが随分心に効いているらしい。僕はよく女装するから気持ちはわからないけど…まあ、筋肉隆々の彼がプリキュアは確かにかわいそうかもしれない。僕は雷帝だったけど、役に入っていたから恥ずかしくもなかった。
「まったく女装くらいで…。うちの大地を見てみなさい、何回女装してると思ってんだ」
「たまに女性役もやるからなぁ」
「あ、去年やっていた映画の『残響』にもお姫様役で出てましたよね!」
「ああ、見てくれたんだね。ありがとう、小泉さん」
「下手に女性使うより女らしいからなコイツ。…つーか、あの作品若干お色気シーン入れたはずなんだけど。花陽ちゃんそういうのお好きなん?」
「ええええっ?!ち、ちちち違います!!そんなことないです!あんなシーンがあるなんて知らなかったんですぅ!!」
「天童、そういうことは言わない方がいいよ」
「セクハラだにゃー」
「うそん」
シナリオ通りとはいえ、天童はなんで盛大に自爆しに行くんだろう。
「まあ滞嶺君には自力で立ち直ってもらうとしてだな。この前のライブ、結構反響あったみたいだぜ?最終予選に向けて順調に進んでるようじゃないか」
「そうだね。一緒に練習している役者さんたちも話してたし、いい調子なんじゃないかな」
「ほ、本当ですか?!」
「やったにゃ!」
「何言ってるの。これからでしょ」
「ふっふっふ、真姫ちゃんよ照れなくていいんだぜ?」
「ご馳走さまでした」
「ガン無視とは恐れ入った」
「替え玉ください」
「滞嶺君、君それ5玉目だよな?食うの早くない?」
「天童、ご飯は静かに食べなよ」
「踏んだり蹴ったりとはこのこと」
天童はほんとによく喋るけど、台本通りに演技してるのか素なのかどっちなんだろう。
滞嶺くんが食べ終わるのを待って(18玉食べてた)、みんなでご馳走さまをしてお店を出る。μ'sの一年生たちとはここでお別れだ。
「じゃあ、俺たちはこっちなんでな。応援してるぜ美少女たち!!」
「そ、そんな…美少女なんて…」
「早く帰ってください」
「何で滞嶺君がキレてんの…ふしぎ…謎が謎呼ぶミステリー…」
「変なこと言ってないで帰るよ天童。じゃあみんな、僕も応援してるよ。頑張ってね」
「ありがとうございます!」
天童は星空さんを照れさせて滞嶺くんに睨まれてた。そのまま一年生たちは仲良く逆方向に去っていった。滞嶺くんも一緒だし、暗い夜道でも安全だろう。
「さて、僕はこっちでいいんだっけ」
「ああ、そっちから神田明神方面に迂回すれば誰とも会わないはずだぜ。まあ万が一会っちゃったらカバーストーリーで何とかせい」
「一回も使ったことないよ?」
「最近調子悪いから油断すんな」
「はいはい。明日は夕方から参加するね」
「知ってるぜ。また明日な」
「うん、じゃあね」
途中で天童とも別れた。こういう時は、天童に誰ともすれ違わない道を教えてもらっている。人に会って騒がれても嫌だし、わざわざ変装するのも面倒だからね。
「えーっと、明日は朝から昼まではバラエティ番組の収録、昼から夕方まではドラマの撮影、夕方から夜は舞台の練習か。今日のうちにやっておくことは…えっと台本どこいったかな…」
明日の予定を確認しながら、鞄に入れてある台本を探す。
台本といっても、
天童が用意してくれた、「僕」という役のための台本。これがあれば、僕は何も心配いらない。
「今日は帰ってからお風呂に入って、歯を磨いて寝るだけか。これなら心配いらないね」
たまに「今日は風呂に入らずに寝る」とか、「腕立て伏せ20回の後に風呂に入る」とかいう謎の指示がある時があるから、こういう帰って寝るだけの日はありがたい。
「さて、明日も
「あれ、御影さん?」
「あら、本当だわ。お久しぶりです」
…μ'sの、絢瀬さんと東條さん。
そんなバカな。
誰にも会わないはずじゃなかったのか?!
『
天童が言っていたこと、あまり気にしていなかったけどこういうことか。
シナリオ通りに進まないことがあるなんて初めてだ…!!
…いや、こういうときの対処も用意してある。落ち着いて、落ち着いて…
「おや、絢瀬さんに東條さんじゃないか。こんばんは。こんな夜遅くにどうしたの?」
「希のバイトが終わるのを待っていたんです。夜道に一人で、なんて危ないですから」
「もう、大丈夫やって言ってるのに」
「万が一ってこともあるでしょ?心配なのよ」
「ふふっ、仲が良いね」
どうやら東條さんのアルバイト帰りらしい。東條さんが神社でアルバイトしているっていうのは聞いていたけど、こんな時間までやっているとは思わなかったな。
「とはいっても、女の子2人っていうのも結局危ないし…僕としては見過ごせないからね。せっかくだから2人とも送っていくよ」
「え?!そ、そんな…大丈
「ありがとうございます!」
「ちょっと希?!」
「ええやん?えりち、この前御影さんが出てるドラマにハマってたやん。帰りながらお話できるよ?」
「そ、それは…」
「そうなの?嬉しいな、ありがとう。今やってるのは確か『真珠の塔』か『ネクロノミコン』だったかな。どっちだろう」
「あ、あの…『真珠の塔』です…」
μ'sの子らに会うときの僕は「紳士的なお兄さん」だ。天童から、不測の事態があったときのためにそういう役をもらっている。数時間程度ならこれで誤魔化せるはずだ。
台本はないけど、役になりきって、役だったらどうするかって考えてアドリブをするつもりでいればいい。何日も乗り切るのは無理だけど、アドリブだけで数時間なら何とかなる。
「えりちはおばけとか暗いのが苦手なので、ネクロノミコンは見れないんです」
「そっそそそそんなことないわよ?!」
「そう?僕もあれは怖いと思うよ」
「ですよねっ!!!」
「あれっさっき『そんなことない』って言ってたのに」
「ううう!!」
恥ずかしさのせいか、絢瀬さんは顔を赤くして走っていってしまった。追いかけようか迷ったけど、結構すぐに立ち止まったからその心配は必要なかったみたいだ。多分、街灯が少なくて暗いせいだろう。顔を赤くしたまま、涙目でぷるぷるしながらこっちを睨んでいる。ドラマで使えそうな表情だね。ちょっとかわいい。
「このまま引き返すって選択肢もあるんですけど…」
「あっはは…流石にそれは可哀想かなぁ…」
東條さんは面白がっているようだけど、流石に悪ノリはしないでおく。だって絢瀬さんすっごい睨んでるし。涙目で。結構可愛いところあるんだね彼女。
「何で追いかけて来ないのよー!」
「えりちが勝手に走ってったんやん?」
「そうだけど!」
「潔いね…」
結局絢瀬さんの方が引き返してきた。これは送ってあげて正解だったかな。
「そうそう、君たちのハロウィンのライブ、僕も見に行ったんだよ。凄く良かった」
「そうだったんですが?ありがとうございます!」
「でも、御影さんがいたら大騒ぎになりそうですけど…」
「まあ僕も仮装してたからね、僕だとは気づかなかったんじゃないかな」
流石に僕がイヴァン雷帝の仮装をしているとは思わないだろうし。
「あと、滞嶺くんのインパクトが強かったっていうのもあるかも」
「あ、ああ…なるほど…」
「あの後は流石に可哀想になったのか、茜がもっとカッコいい仮装に着替えさせてましたけど…」
「ああ、ラオウだね。ちゃんと見たよ」
そう、滞嶺くんはμ'sのライブが終わった後、波浜くんの手によって衆目の目を逃れ、再び現れた時には世紀末覇者になっていた。しかもその後、僕の巨大な姿を見て「俺よりデケェとはいい度胸だ」とかよくわからないことを言いながら相撲を仕掛けてきたからよく知ってる。ラオウってそんな野蛮じゃなかったと思うんだ。当然のように僕が負けたし。
「目立ってましたからね…」
「目立つ以前に相撲挑まれてるからね僕」
「…えっ」
「えっじゃあ…あの怪獣って…」
「そう、僕だよ。僕だけど怪獣…まあ怪獣だけどさ…」
間違ってないんだけどなんだかヘコむね。
「ご、こめんなさい…。でも、あんな着ぐるみを着てどうやって動いていたんですか?」
「あれね、天童が雪村くんと湯川くんに頼んで作ってもらったやつでね。なんだかよくわからないけど上手く動かせたよ」
「…なんだかよくわからないけど?」
「うん、なんだかよくわからないけど」
僕もあれがどうなってるのかよくわかんない。着て動いてみたら動いた、としか。体躯の大きさが全然違うはずなのになぁ。
「おっと、この辺りまで来れば夜でも人通りがあるから安心かな?」
「あ、はい。まだ開いているお店もありますし、大丈夫だと思います」
「ならよかった。僕はできるだけ人通りが少ないところを移動したいから、申し訳ないけどご案内はここまでだね」
「なぜわざわざ人通りが少ないところを…?」
「いやぁ、人に見つかると囲まれるんだよね…変装してないしさ…」
「なるほど…」
話しているうちに、アキバのなかでも大きい通りのあたりまで来たようだ。最後まで送っていくつもりだったけど、僕もあまり人に出くわすのは困るからここまでだ。あとできれば台本に無いことを長く続けたくない。
「御影さん、今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「どういたしまして。気をつけて、早く帰るんだよ」
「「はい!」」
お辞儀だけして、そそくさと二人は離れていった。僕が見つからないようにできるだけ早く離れようとしてくれているんだろう。いい子たちだ。
さて。僕も帰ろう。今度こそ真っ直ぐ。
『天童、本当に調子悪いんだね…帰りに東條さんと絢瀬さんに会ったよ』
「…………まじ?」
『うん、まじ。カバーストーリーがなかったら逃げてたかもしれなかったよ、ありがとう』
「あーいや…そこは俺のせいだしな、お礼はいらねえよ。しかしそうか…希ちゃんと絵里ちゃん…」
『流石に天童も疲れてるんじゃないのか?休んだら?』
「これでもバッチリ8時間寝てんだがなあ…」
家帰ってから未来のシナリオを修正していたら、大地から電話がかかってきた。そんな予定は無かったから嫌な予感はしていたが、やっぱりそうだった。シナリオの読みが外れたらしい。
(また希ちゃんが絡んでくるか…一体何なんだあの子)
明みたいな同族や、湯川君みたいな人智を超えたレベルの天才の行動が読めないのはわかるんだが…希ちゃんにそんな大それた才能は無かったはずだ。
ずっと原因を考えているが、まるでさっぱりわからん。
(直接話してみるのが確実か…?いや、話したことはあるしなぁ、そういう問題じゃあねーよな。だとしたら何だ?何が原因で読めないんだ…)
『どうしたの天童』
「何でもねーよ。まあまたシナリオ修正するから待ってろ。すぐに渡す」
『ああ、ありがとう』
最低限の返事だけして電話を切る。予想外の動きのせいでまた修正し直しだ。
大地が希ちゃんと絵里ちゃんに出会ったことで何が変わるか…やはりいつもより読みにくい。読めるが、絶対こうなるという確証が得られない。不確定要素を含んだシナリオだ。
こんなに困ったのは初めてかもしれねーな。
だが…こういう窮地は乗り越えてこそだ。
絶対読み切ってやる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
若干闇を感じる御影さんのお話でした。ついでにお互い意識し始めた凛ちゃんと滞嶺君。式場が来い。
御影さんの闇な部分は他の男性陣同様またいつかメインで取り上げます。男性陣闇深いな!!
新年一発目がオリジナルでしたが、今年もどうぞよろしくお願いします。